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原油価格をみるための基礎知識  小菅 努
http://www.asyura2.com/14/hasan92/msg/383.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 12 月 21 日 14:55:05: igsppGRN/E9PQ
 

原油価格をみるための基礎知識
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kosugetsutomu/20141220-00041654/
2014年12月20日 21時21分 小菅努 | 大起産業(株)情報調査室室長/商品アナリスト


ニュース報道などで、原油価格動向が大きく取り上げられることが増えている。しかし、一般消費者にとっても身近なガソリンや灯油などと違い、国際原油価格がどのように形成されているのかは、余り知られていないようだ。本稿では、原油マーケットの世界について、その基礎的な見方を紹介する。



■原油マーケットとは?


原油は世界各地で取引されている国際商品であり、一言で原油マーケットといっても、何か世界の原油価格を統一的に決めるマーケットが存在する訳ではない。日本企業の株価形成であれば、東京証券取引所がほぼ独占的な地位を占めている。しかし、原油価格は取引参加者の各種ニーズに応じて幾つかの違った取引体系が存在しており、また原油価格形成に影響を及ぼしたい各国の政治・経済的な思惑もあって、世界各地に似たようなマーケットが多数設置されている。


原油取引体系としては、1)現物市場、2)先渡し市場、3)先物市場の三つが代表的な存在になるだろう。「現物市場」は原油の現物を取引するものであり、売買契約の成立とその履行がほぼ同時に行われ、原油取引の基本になるものである。そして、ここから派生して実際に原油を売買する契約履行時期を3ヵ月後といった将来に設定する取引も存在し、それが「先渡し市場」と「先物市場」である。


各市場は相互補完の関係にあるが、現物市場と先渡し市場は統一的な取引規格が存在する訳ではなく、また取引参加者が取引情報の公開を嫌う秘匿性が強いこともあり、原油価格の指標性という観点では、十分な役割を果たせるとは言い難い。一方、原油先物市場は各取引所によって、取引対象とされる原油油種(=標準品)、取引単位、受け渡し日、取引に必要な資金(=証拠金)などの詳細な規格が設定されており、日々の価格動向も公表されているため、通常は「原油市場=原油先物市場」を指すことになる。メディアの記事でも、○○原油「先物」価格と記載されているものが多いはずだ。


■原油先物取引の仕組み


では、原油先物取引とは何だろうか。商品先物取引の定義は、1)ある特定の商品を、2)一定数量、3)予め定められた価格で、4)将来の一定期日に受け渡しする、契約取引とされている。要するに、6ヶ月後や1年後といった将来の決まった期日に原油を売買することを、予め約束する取引のことである。


一般には、原油現物取引が存在すれば十分のようにも思われるかもしれない。しかし、原油価格の変動は原油の生産者にとっても消費者にとっても、経営上の大きな不確実性をもたらすことになり、そこに原油先物取引のニーズがある。


例えば、1年後に原油を購入する予定がある企業にとって、現在1バレル=100ドルの原油価格が1年後に120ドルまで上昇した場合、原油調達コストは2割上昇してしまうことになる。もちろん、逆に安く原油を調達できる可能性や、調達コストの上昇分を顧客にそのまま転嫁できる可能性もある。ただ、企業経営上はそうした不確実性(リスク)は背負いたくないものであり、先物市場を利用して将来の原油調達・売却価格を決定し、原油価格変動のリスクを避けることが頻繁に行われている。これを、先物市場を利用した「リスクヘッジ」と言い、石油の大口需要家である航空会社や電力会社、化学産業、生産者である石油メジャーや石油精製業者などが活用している。また、一部産油国も国家歳入が過度に変動すること抑制するために、原油先物・オプション取引を活用している。


下の表は、NYMEX原油先物市場における実際の原油先物価格である。この場合だと、2015年1月に受け渡しを行う原油は1バレル=54.62ドル、その半年後の7月に受け渡しを行う場合は56.65ドルで原油取引を行うことが可能になる。これによって、今後の原油価格動向に関係なく、原油調達・売却価格を固定して、安定的な企業経営ができることになる。



(画像出所:CMEウェブサイトを筆者加工)


ちなみに、このいつ受け渡しをするのかという期限を「限月(げんげつ)」と言い、7月に受け渡しするものは「7月物」や「7月限(がつぎり)」と呼ばれることになる。通常、(海外で)原油価格という場合には、受け渡しまでの期間が短い「期近(きぢか)」価格を指す。特に最も期間が短いものを「当限(とうぎり)」というが、ニュース記事では「期近物」と表記されているものが多い。この表の場合だと、期近物=54.62ドルとなる。なお、NYMEX原油先物市場の場合だと、最大で9年先の原油先物取引まで行うことが制度上は可能である。


そして、原油先物取引では実際に原油の受け渡しを行わず、期限(納会)前にその時点の差金決済によって取引を終了できるため、資産運用手段としても活用されている。原油価格の上昇を予想しているのであれば買い、逆に原油価格の下落を予想しているのであれば売りで、想定通りの値動きになれば利益が生じる。そして、予想が外れた場合には損失になる。ヘッジファンドやHFT(高頻度取引)、ローカルズ(地場筋)と言った短期投機筋の他、近年は年金基金や商品インデックス(指数)ファンドなどの長期投資家も、原油先物市場における主要プレーヤーになっている。また、個人投資家も活発な取引を行っている。ただ、商品先物取引は総取引金額の5〜10%程度の証拠金を担保に取引を行うことが可能なため、ハイリスク・ハイリターンの投機取引であることに注意が必要である。


■世界の主な指標原油


この原油先物市場であるが、域内の石油消費を背景とした北米・欧州・アジアが三大市場になる。



(画像出所:筆者作成)


北米では、CME傘下の米ニューヨークにあるNYMEX(ナイメックス)において、WTI(ウェスト・テキサス・インターメディエイト)原油先物が取引されている。正式には「軽質低硫黄原油(Light Sweet Crude Oil)」と言われ、米テキサス州とニューメキシコ州で産出される油種である。欧州では、イギリスにあるICE Futures Europeにおいて、北海油田で産出されるブレント原油先物が取引されている。また、アジアでは日本の東京商品取引所(TOCOM)において、中東産原油(ドバイ原油)が上場されている。いずれも、産出地域によって硫黄度などの品質が異なるため、一言で原油と言っても全く同じという訳ではない。


従来、原油価格と言えばほぼ100%がWTI原油価格(NY原油価格とも表記される)のことを指していた。WTI原油そのものの産出量は日量30万バレル前後と推計されており、世界全体の原油産出量の3%程度に過ぎない。しかし、1)北米という世界最大の石油消費をバックグラウンドとし、2)1983年に設立された世界最初の原油先物市場という歴史的成熟度、更には3)世界の投機マネーが集まる米国の高い流動性を背景に、指標原油として高い評価を受けていた。


ただ、近年はブレント原油先物取引もWTI原油に匹敵またはそれを上回る高い流動性を確保したことで、ブレント原油価格に注目する向きも増えている。特に、原油輸出が原則として禁止されている米国の原油価格が国際原油価格よりも割安となる傾向が強くなっているだけに、国際原油価格動向の指標としてはブレント原油の方が適切と評価する向きも増えている。NYMEXもブレント原油先物を重複上場するなど、世界の主要商品市場の間で、指標性を巡る激しい勢力争いが行われている最中である。


一方、日本の輸入原油はその8割以上が中東産となっているため、厳密にはWTI原油ともブレント原油とも異なる価格論理に支配されている。日本の原油調達先は、サウジアラビア、UAE、カタールなどが上位にあるが、この地域の原油価格は仕向け地の制約がないドバイ原油(UAE)やオマーン原油を基準に設定されるため、東京商品取引所(TOCOM)ではドバイ原油(2015年5月まではドバイ原油とオマーン原油の平均価格)を取引対象としている。日本の経済専門メディアが、WTI原油やブレント原油と並んでドバイ原油価格を取り上げることが多いのには、このような背景がある。


WTI原油先物やブレント原油先物が存在すれば、日本の原油先物市場は必要ないという議論もある。しかし、日本が調達する原油は約1万2,000kmもの長距離を大型タンカーで往復45〜60日かけて運ばれるため、運送コストの影響なども考慮する必要がある。特に、イラン沖のホルムズ海峡や、マレー半島のマラッカ海峡といった海域は治安も悪く、保険コストなども国際政治環境によって大きく変動する。また、WTI原油先物やブレント原油先物はともに1バレル(約159キロリットル)単位で米ドル決済の価格表記だが、日本の場合はキロリットル当たりで計算することが多く、為替レートの影響(円安で上昇、円高で下落)も考慮する必要がある。このため、WTI原油の1983年、ブレント原油の1988年には大きく遅れたものの、2001年から東京でも原油先物取引が行われるようになっている。



(画像出所:筆者作成)


下の表はTOCOMの中東産原油先物価格であるが、1キロリットル=4万6,180円で取引されている。日本においては、期近物よりも受け渡しまでの期間が長い期先物の方が流動性が高い(=売買高が多い)ため、通常は期先価格(この場合は2015年5月渡し)を見る。これを1,000で徐した46.18円が1リットル当たりの原油価格となり、ガソリンや灯油価格などの原材料コストになる。



(画像出所:TOCOMウェブサイト)


 

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コメント
 
01. 2014年12月22日 06:50:25 : jXbiWWJBCA

【第537回】 2014年12月22日 倉都康行 [RPテック(リサーチアンドプライシングテクノロジー)株式会社代表取締役]
原油価格急落でルーブルも暴落
「98年」ロシア危機は再来するか
――RPテック代表取締役 倉都康行

プーチン大統領は年末の年次記者会見でルーブル暴落に触れたが、対策に具体性は乏しく、市場の失望を誘った
Photo:REUTERS/AFLO
原油価格の続落を背景に、先週15日にルーブルは対ドルで60台に乗せ、16日には80ドルまでの暴落を演じて、世界の資本市場の眼をロシアに釘付けにした。株式市場への売りが強まる「リスクオフ」の嵐の中で、ドル円が一気に115円台まで下落するなど、市場には1998年のロシア危機の再来に怯えたパニックの気配も感じられた。

今日、ロシア経済は厳しい状況にある。プーチン大統領は「危機が克服されるまで最悪2年はかかる」と述べた。欧米の対ロ露制裁がすぐに緩和される見通しは乏しく、原油価格の更なる下落を予想する向きもある。やはり歴史は繰り返されるのだろうか。

ロシア国民もドル買いに走る


くらつ・やすゆき
RPテック(リサーチアンドプライシングテクノロジー)株式会社 代表取締役。1955年生まれ。東京大学経済学部卒。東京銀行、バンカーストラストを経て、チェースマンハッタンへ移籍。チェース証券取締役東京代表を経て、2001年4月に独立、現在に至る。著書に『投資銀行バブルの終焉―サブプライム問題のメカニズム』(日経BP社刊)、『12大事件でよむ現代金融入門』(ダイヤモンド社)などがある。
 この「ロシア売り」は、先週突然に始まったわけではない。年初以降1ドル30ルーブル前半の水準で推移していた為替相場は、ウクライナ問題に端を発する欧米の対ロ制裁強化にはそれほど動じることは無かったが、原油価格の下落傾向が顕著になるにつれて下落し始め、10月に40台を突破するとその勢いが止まらなくなってきたのである。

 10月末にはロシア中銀がルーブル安と物価上昇を抑制するために1.5%の利上げを行い、11月には通貨バスケット制度の廃止を発表して、為替介入額の上限を定め一定の相場変動を容認する姿勢を見せたが、その中途半端な策がルーブル売りを加速した印象が強い。

 12月11日の1.0%の利上げも通貨防衛としての明瞭なメッセージとは言えず、昨年6月に大統領補佐官から横滑りでロシア中銀総裁に就任したナビウリナ女史の若さと未経験が露呈したようにも思われた。

 その過程で、ロシア国民が自身の資産を外貨に替える動きも強まり、銀行にドルを求める人々の長い行列ができたという。ルーブル売りを主導したのは投機筋だけではなかったのだ。

原油60ドル台なら2015年はマイナス成長

 もっとも、先週ルーブルが一気に暴落した理由は、1バレル50ドル台にまで急落した原油相場を背景に、海外勢のロシア政治経済に対する不安感と不信感が一気に噴出したものと見てよいだろう。ロシア中銀は15日の深夜に政策金利を10.5%から一気に17%にまで引き上げるという荒療治を行ったが、時すでに遅しの感は否めなかった。

 同中銀は、2015年の資本流出は今年の1340億ドルと同程度の1200億ドルに達するとの見通しを公表すると同時に、原油価格が60ドル台で推移するならば、来年の経済成長率はマイナス4.5〜4.7%に悪化し、2016年も同0.9〜1.1%とマイナス成長が続く可能性がある、と警告している。また通貨安を背景に11月のインフレ率は中銀目標の4%を大きく上回って9.1%に上昇しており、来年初には二桁突入が確実視されている。

 そしてルーブル安は、ロシア企業が抱える外貨建て債務の返済可能性への懸念も強めている。欧米の対ロ制裁により、ドル建てやユーロ建ての債務を抱える大手金融機関やエネルギー企業は、欧米資本市場から締め出されたままである。

 こうした状況が、「ルーブル危機」から「ロシア危機」に至るリスクを連想させるのは当然だろう。1998年には大手ヘッジファンドのLTCMがロシア国債のデフォルトで破綻寸前に追い込まれ、世界の市場が混乱する中でドル円が130円台から110円台に急落(ドル安)するという事態が起きたことは、まだ多くの投資家の脳裏に焼き付いている。やはり歴史は繰り返されるのだろうか。

ポイントはロシアの外貨準備

 昨年5月にFRBのバーナンキ議長が量的緩和の終了を示唆したことを契機に、新興国通貨売りが発生した。経常赤字や対外債務額の大きさが嫌気されて、インドやインドネシア、トルコ、ブラジル、南アフリカなどの通貨が急落したことから、市場では1997年のアジア通貨危機との相似性と相違性が話題になったことは記憶に新しい。

 確かに海外資本に依存している構造や成長基盤の脆弱さなど、当時と共通する点はあったものの、新興国全体としては1990年代と比べものにならないほど、経済状況は改善していた。

 具体的には、為替介入や対外債務の返済原資となる外貨準備が豊富であることや経常赤字が縮小傾向にあること、国の対外債務のうち外貨建て債務シェアが相対的に低下していること、為替が変動相場に移行していること、などが相違点として認識され、最悪の事態はひとまず回避されたのである。ちなみに昨年は、ルーブルには全くと言ってよいほど影響が及ばなかった。

 だがその1年半後に、ロシアは最悪の事態を迎えることになった。ウクライナ問題を発端とする欧米の対ロ制裁には何とか耐えてきたロシアも、原油価格の急落には為す術がないように見える。そこで重要になるポイントは外貨準備だ。

 プーチン大統領が就任した1999年当時、約1330億ドルに上る対外債務に対して同国の外貨準備は僅か130億ドルに過ぎなかったが、その後は石油価格の上昇にも恵まれて2008年には5000億ドル超にまで急増した。これが同大統領の「政治資本」になったと言えよう。強気の外交の裏側に「外貨準備あり」、である。

 確かに数千億ドルという数字を見れば同国にはまだ余裕がありそうに見える。経常収支も黒字基調が続いており、景気後退で輸入が減少すれば黒字額が増える可能性は高い。市場には、ロシアはまだ1年程度は持ちこたえられる、といった見方も根強い。ウクライナ問題で同大統領が強硬な姿勢を貫いたのも、豊富な外貨準備で対外債務返済は何とでもなる、という思いが心の支えになっていたからだろう。

近々にロシア危機が起きる可能性は小さい

 だが原油価格下落という逆風に加え、市場でのルーブル売りに対峙するためにドル売り介入を進めた結果、外貨準備は11月末時点で3736億ドルにまで減少した。その額は今月に入ってさらに縮小したはずだ。ロシア中銀は、今後も700億ドル規模の市場介入を行う方針を表明している。

 また、この4000億ドル近い外貨準備がすべて危機対策に使えるわけではないことにも注意を払っておきたい。そのうち約1700億ドルは安定基金と福祉基金の二つのソブリン・ウェルス・ファンドに組み入れられて運用されており、流動資金への換金が難しい。実際に政府が機動的に使える資金は恐らく2000億ドルに満たない。

 となれば、市場のルーブル売りへの反撃と、約6000億ドルと見られる民間の対外債務への支援には、必ずしも十分とは言えなくなる。ロシア中銀に拠れば、2015年の資本流出は今年の1340億ドルと同程度の1200億ドルに達する見通しであり、資本規制導入が検討されても不思議ではない状況にある。

 とはいえ、近々ロシア危機が起きる可能性は小さいだろう。来年末までの民間企業・銀行における対外債務返済額は1300億ドル規模と、とりあえず管理可能な水準にあるからだ。銀行経営不安に関しては、ロシア中銀が流動性供給のコミットや保有証券時価会計の停止(含み損が表面化しない)、不良債権償却基準の緩和(貸倒引当損失が少なくなる)といった策を繰り出して、徹底サポートの姿勢を見せている。

経済の欠点が露呈し残る危機のタネ

 だが今回のルーブル急落は、原油収入を上手く成長資源に使ってこなかったロシア経済の欠点を浮き彫りにした、という意味で危機のタネは残る。原油価格が70ドル台であった2007年の成長率(実質)は8.5%を記録したが、110ドル台に上昇した2012年は3.4%、13年は1.3%に止まり、資本流出も加速した。石油歳入増は賃金引き上げや年金給付増そして防衛費拡大を促したものの、エネルギー依存経済からの脱却には失敗したのである。市場はそうした経済的本質に目を向け始めている。

 下落しているのはルーブルだけではない。同国10年債利回りは2007年以降で最高となる15%台に乗せ、ドル建て国債の利回りは7.5%を超えてアフリカ諸国並みの水準となっている。また同国株式市場ではズベルバンクやロスネフチなど海外市場から締め出された金融・エネルギー大手の株価が軒並み急落し、ドル建てのRTSS株価指数は年初の1390台から40%以上の大幅な下落を記録している。

 理由は異なるが、通貨売りはトルコやインドネシアなど他の新興国にも波及し始めている。ロシアと同じように、資源国でありかつ成長への構造改革が遅れるなど政治的課題が山積みのブラジルなどに飛び火しないとも限らない。来年の米国利上げを契機に、ロシア発の新興国危機が起きる可能性も否定しえない。国際金融市場は、そんな混乱を何度も繰り返してきたのだ。

 プーチン大統領はまだ強気を維持しているが、ルーブル暴落が同大統領の戦略的失敗を露呈したものだとすれば、市場の信認回復への第一歩として、ウクライナ問題での歩み寄りが必要になるかもしれない。もっともその選択は、同大統領の14年間にわたる独裁体制にピリオドを打つことになりかねない。

 一方で欧米にも、対ロ制裁強化という史観に欠ける硬直的な外交姿勢が、自らの経済にネガティブ・フィードバックをもたらす可能性が出てきた。仮にロシア危機が発生すれば、オバマ大統領やメルケル首相に非難の矛先が向けられることも想定される。

 ロシア危機再来を回避するには、国際政治が蓄積してきた妥協や打算の知恵による局面打開策が望まれる。だが、現代の政治家にどれほどの度量を期待できるのだろうか。
http://diamond.jp/articles/-/64094


 

【第27回】 2014年12月22日 芥田知至 [三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員]
需給緩和要因が相次ぐ原油 下値模索が当面続く
原油相場の下落が続いている。国際指標であるブレント原油価格は、6月に1バレル当たり115ドル台の高値を付けた後、11月27日のOPEC(石油輸出国機構)総会の前日26日には78ドルを割った。総会後もさらに原油相場の下落は続き、12月12日の終値は62ドルを下回った。米国産のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油は58ドルを割り込んだ。 
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OPEC総会までに、原油相場が下げた背景には、(1)イラク情勢の悪化が原油の供給障害につながるとの懸念が後退した、(2)大幅に落ち込んでいたリビアにおける原油生産が持ち直し傾向で推移した、(3)中国や欧州を中心とする世界景気の減速が原油需要を押し下げるとの観測が強まった、(4)サウジアラビアの販売価格の引き下げを受けて需給緩和観測が強まった、(5)各種報道などから原油需給が緩和する中でもOPECは減産に踏み切らないとの観測が徐々に強まった、などがある。 
ベネズエラなどが減産によって原油価格の下落に歯止めをかけたい意向を示したものの、サウジアラビアなどは原油市場におけるシェアの維持を重視し、減産に対して強硬に反対したとされる。事前の予想は総会での減産決定の有無双方に分かれていたため、実際に減産の見送りが決定されると、原油相場は大幅に下落した。 
総会後の急落後も、原油相場の下落には歯止めがかからなかった。12月2日のイラク政府とクルド自治政府による原油輸出についての合意も原油需給の緩和要因と目された。 
その後、米紙がサウジアラビアの原油相場見通しを報じたこと(3日)、サウジアラビアが1月積みの原油販売価格を引き下げたこと(4日)、イラクが原油販売価格を引き下げたこと(8日)、などが下げを加速する要因になった。 
また、10日にはOPECが、12日にはIEA(国際エネルギー機関)が、それぞれ原油需要見通しを下方修正し、売り材料となった。 
原油市場では、速いテンポでの下落が続き、相場の落ち着きどころの目安が見失われている状況だ。 
なお、こうした中、ブレント原油とWTI原油の価格差は縮小傾向にある。各油種間で販売競争が強まるといった市場の思惑が反映されているものと思われる。 
原油市場を取り巻く環境を見ると、(1)中国や欧州を中心とした世界景気の鈍化や低燃費車の普及などによる原油需要の停滞、(2)米国のシェールオイルを中心とした原油供給の増加、(3)地政学的な諸問題の膠着、などは今後も続くと予想される。 
原油相場を反転させる明確な材料が出てくることは見込みにくい。当面、原油相場は下値模索を続けるだろう。 
芥田知至) (三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員
http://diamond.jp/articles/-/64096


【第182回】 2014年12月22日 週刊ダイヤモンド編集部
原油安・通貨危機で水を差された安倍新政権に透ける誤算と打算
12月14日投開票の衆院選で自民党が圧勝し、安倍晋三政権は安定した政権基盤を確立した。これを受け、改革に向けてさらにアクセルを踏むことが期待される。しかし、政権内部からはある打算が透け、市場では原油安という誤算が生じている。原油安が続くようなら、長期政権に黄色信号がともりかねない。
衆院選投開票日の12月14日午後9時40分を過ぎたころ、圧勝を確実なものにした安倍晋三首相は東京・永田町の自民党本部4階の開票センターに現れた。顔には余裕の笑みをたたえていた。 
しかし、メガバンクのベテランディーラーは、「総理の余裕の中に焦りも生まれたはず」と政権の先行きに早くも不安を覚えていた。選挙後の数日間で金融市場が大混乱に陥ったからだ。 
今、原油価格の急激な下落によって、日本を含む世界中の金融市場が大きく揺さぶられている。特に資源国ロシアの通貨ルーブルは16日に米ドルに対して約11%も急落。一夜明けた17日には一部の銀行がルーブルから外貨への両替を停止するなど動揺が続いており、にわかに通貨危機の様相を呈している。 
12月16日、原油安とロシアの通貨ルーブル急落を嫌気して、NYをはじめとする世界の株式市場が下落した Photo:REUTERS/アフロ
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原油安に端を発した混乱は資源国のみならず、アジアの新興国にも波及、さらに欧州や米国への飛び火が懸念されて世界同時株安を招き、日本も対岸の火事とはいえない事態に陥りつつあった。 
日本にとって原油安は、企業や家計の負担を軽減して景気を下支えするため、恩恵は大きいはず。しかし、原油安による投資家心理の悪化で世界的にリスク回避の姿勢が強まった結果、安全資産と見なされる円を買い、さらに日本株を売る展開となっている。16日の外国為替市場は一時1ドル115円台に突入、日経平均株価も続落し、344円安で1カ月半ぶりの安値に沈んだ。 
一方、電撃解散に踏み切った際、安倍首相は消費税率の10%への再引き上げを先送りして 、デフレ脱却を確実にすると語った。そのため、今回の圧勝によって成長戦略や構造改革の断行に大きくかじを切り、さらに国内経済が改善することによる株高が期待されている。
ところが、日本株で7割前後の売買シェアを握る、ヘッジファンドをはじめとした外国人投資家たちは、与党が国会運営で強い主導権を握れる絶対安定多数を確保したことに、ある疑念を強めている。 
「圧勝による慢心で、経済最優先という日本株買いの大前提が崩れてしまうかもしれない」との不安が広がっているのだ。
もちろん、「選挙後の安倍首相については、即座に賃上げや法人減税の実現に向けた手を打っており、評価する外国人投資家が多い」(市場関係者)。 
しかし、政権基盤がより安定したことで、安倍首相が経済優先の姿勢にブレーキをかけ、悲願である憲法改正など、安全保障政策に軸足を移すようなことがあれば、期待を裏切られた外国人投資家が一気に失望売りに転じかねない。 
ヘッジファンドや年金基金など米国の大手機関投資家47社に対して、パルナッソス・インベストメント・ストラテジーズが選挙直前に実施したアンケートでも、自民党が辛勝した場合より圧勝の方が、慢心が生まれやすいために日本株を売り越しやすいとの結果が出ている。 
実際、安倍首相に極めて近い政府高官は「選挙でより安定した政権基盤を確保できれば、首相は自らの信念に従って思う存分仕事ができることになる。多少支持率が落ちてもいい」と周辺に語っており、圧勝の裏に打算が透ける。 
世界経済の混乱に圧勝の慢心重なれば
政権基盤にリスク
そもそも原油安のきっかけは、原油が世界的に供給過剰であったにもかかわらず、サウジアラビアなど産油国12カ国で構成される石油輸出国機構(OPEC)が11月27日の総会で、減産せずに生産目標を現行の日量3000万バレルに据え置くことを決めたことにある。 
OPECの決定を受けて原油安が加速。7月下旬に1バレル100ドルを超えていた原油価格(WTI)は、ロシアのルーブル危機が深刻化した12月16日に一時54ドルを割り込んだ。 
石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之上席エコノミストは、「原油は2015年前半まで価格の上昇要因に乏しく、市場ではいよいよ1バレル40ドル台が織り込まれ始めており、上昇に転じるのは15年後半以降だろう」と原油安の長期化を指摘する。 
原油安が継続した場合、企業業績へのプラス効果がある一方、今回のようなリスク回避による世界経済の減速というデメリットも出てくる。 
18日にはひとまず、米連邦公開市場委員会(FOMC)後の声明が景気に配慮した内容と受け止められ、前日の米国相場が大幅上昇したことを受け、日経平均株価は3営業日ぶりに1万7000円を上回った。 
ただし、憲法改正という打算に、原油安の長期化が世界経済の不透明感を増幅するという誤算が重なれば、安倍政権の土台は足元から崩れかねない。 
山口圭介) (「週刊ダイヤモンド」編集部
http://diamond.jp/articles/-/64118 


02. 2014年12月22日 07:58:22 : jXbiWWJBCA

非OPEC産油国に生産削減求める−UAEエネルギー相 
  (ブルームバーグ):アラブ首長国連邦(UAE)のマズルーイ・エネルギー相は原油の過剰供給が市場に打撃となる中で、石油輸出国機構(OPEC)加盟国以外の産油国が「無責任」な生産を削減すべきだとの見解を明らかにした。
カタールのサダ・エネルギー・産業相は21日、アブダビで開かれた会議の際のインタビューで原油市場は日量200万バレルの供給過剰状態にあると指摘。ブルームバーグがまとめたデータによれば、OPECが2013年1月以降は日量3000万バレル程度の産油量 を維持しているのに対し、世界全体 の産油量は200万バレル余り増加し日量9360万バレルとなっている。
マズルーイ・エネルギー相は別のインタビューで、「われわれはすべての他の産油国に増産を停止するよう求める。増産が市場に打撃を与えているからだ」と述べた。
北海ブレント原油は今年に入って45%下落。OPECは先月の総会で、現行の日量3000万バレルの生産目標を維持することを決定した。財政的に困難な状況に陥っているため価格押し上げを目指すベネズエラは減産を求めていた。
マズルーイ・エネルギー相は会議で、「OPEC加盟国以外の産油国による無責任な生産が価格下落の背景だ」と指摘。その上で「時間と共に市場は改善されるだろう」と語った。
原題:Non-OPEC Producers Called on to Reduce Oil Output After Rout(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:アブダビ Mahmoud Habboush mhabboush@bloomberg.net;アブダビ Wael Mahdi wmahdi@bloomberg.net;アブダビ Anthony DiPaola adipaola@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Nayla Razzouk nrazzouk2@bloomberg.net Claudia Carpenter, Inal Ersan
更新日時: 2014/12/22 07:29 JST

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スエズ危機の教訓、ロシアがIMF支援を求めない理由

  (ブルームバーグ):軍事進攻が米国の逆鱗(げきりん)に触れ、通貨防衛で準備は枯渇し、ついに国際通貨基金(IMF)に支援を要請することになった。
21世紀の世界地図に描かれたロシアの青写真ではない。1956年に英国が残した足跡だ。衝突の地はウクライナではなく、スエズ運河だった。
IMF融資はロシアが入り込んでしまった金融海峡を抜け出すための明白な手段だが、プーチン大統領は当面これを求めない、求めたくてもできないのは歴史が物語っている。当時も今も、IMF融資には米国の拒否権という不吉な影が差しているからだ。
「IMFに関与を求めるべき状況に至っている」と指摘するのは、メリーランド大学のフィリップ・スウェイゲル教授。IMFと米財務省での勤務歴がある同教授は、「ロシアは助けを必要としているが、プーチン大統領が助けを求める図は想像しにくい。そんなことをすれば屈服したも同然と考えるだろう。それにロシアが支援を要請すれば、米国はそれをレバレッジとして利用する可能性がある」と分析した。
約60年前に当時のアイゼンハワー米大統領が取った行動が、まさにそうだった。
世界貿易のライフラインであったスエズ運河をエジプトのナセル大統領が強引に国有化し、同運河を運営していた企業連合を追い出した後、英国は1956年、フランスを引き連れてイスラエルに加勢し、エジプトに侵攻した。
スエズ危機、ポンド危機
ポンドが投機家の攻撃を受け、英国は窮地に追い込まれた。イングランド銀行(英中央銀行)は自国通貨の防衛で準備を取り崩すしかなかった。
英国にとって「スエズ危機は金融危機でもあった」と、IMFの歴史に詳しいジェイムズ・M・バウトン氏は2001年の研究で指摘した。
ポンド切り下げを回避するために最低限必要とされる20億ドルの準備の維持が困難をきたし、英国は助け舟を探し始めた。米国からの直接援助はなさそうだと判断し、創立から約10年のIMFに目を向けた。
英国の望みはかなえられなかった。ジョージ・ハンフリー米財務長官は英国に対し、IMFの枠組みの中でしか支援はしないと言い放った。当時のIMFは「米国に抵抗するどころか、米国寄りの姿勢にあった」。
エジプト撤退、ルーブル急降下
準備が20億ドルを割り込みそうになった英国はついに折れ、エジプトからの軍撤退を発表した。これによって13億ドルの融資を受けられるようになり、ポンドは救済された。
バウトン氏によれば、「英国が金融支援を必要としていた状況は、米国にこれ以上望みようのないレバレッジを与えた」。
今も同じことが言えるだろうか。
ウクライナに対するロシアの関与が国際的な制裁を招き、これに原油価格の急落が重なり、通貨ルーブルは急降下した。2013年末に4700億ドルあった外貨準備からは、約1000億ドルが消えた。
ブリュッセルの調査グループ、リスボン・カウンシルのチーフエコノミスト、アレッサンドロ・ライポルド氏は「IMFが関与する経済状況と政治的な現実の二つは、全く相いれないものだ」と指摘する。元IMF当局者でもある同氏は、「経済的ケースは昔から新興国にはよくあることで、教科書通りと言っても過言ではない。しかしこれがすぐに起きる政治的なリアリティというのは実際のところ、ゼロに等しい」と述べた。
原題:Cold War-Era Lesson of Suez Crisis as Russia Burns Through Cash(抜粋)
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更新日時: 2014/12/22 07:00 JST
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