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衆院選後の課題は:次は所得税改革を:40年の住宅地価格は10年よりおおむね60%前後下落
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投稿者 あっしら 日時 2014 年 12 月 23 日 04:02:03: Mo7ApAlflbQ6s
 


[経済論壇から]衆院選後の課題は
次は所得税改革を 慶応義塾大学教授 土居丈朗

 衆議院選挙が終わった。与党は圧倒的多数の議席を維持した。この総選挙は、結論を得るための選挙というより、現状維持を是認する選挙といってよい。「アベノミクス」は継続することになるが、解決しなければならない諸課題は多く残されている。
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 安倍晋三首相は来夏までに2020年度の財政健全化目標を達成するための具体的計画を策定すると明言。自民党の政権公約にも明記している。これから逃げることはできない。
 財政再建のためには、歳出の徹底した見直し、デフレ脱却と成長による安定的な税収拡大、そして増税による税収の確保のどれも欠かせない、との東京大学教授の伊藤元重氏(12月4日付経済教室)の指摘は的確である。安倍内閣は、成長による税収増ばかりに頼らず、歳出の徹底した見直しと、消費税率を10%にしてもなお足らない財源は増税とを、正直に予告して具体的計画を来夏までに作成すべきである。

 財政健全化には歳出削減が必要だが、露骨に無駄な支出は減っており、それでも支出を削るとなると、利害対立を克服しなければならない。
 歳出の効率化については、慶応義塾大学特任助教の伊藤健氏(週刊ダイヤモンド12月20日号)が提示する、社会的インパクト債券の考え方が興味深い。社会的インパクト債券の仕組みとは、(1)民間の投資家が社会課題を解決する事業に対して資金を投資する(2)その資金を受けて、企業やNPOなどの民間事業者が、社会課題を解決するための事業を実施する(3)その事業による社会的成果が事前に合意した水準を超えた場合には、元本とリターンが政府から民間投資家に支払われる。いわば、事業成果連動型の仕組み債といえる。

 政府が、直営で社会課題を解決する事業を実施するより、民間事業者が効率よく行うことで費用が節約できる。成果が上がれば政府の負担で投資家に元利償還するが、負担は直営よりも割安となり、成果が上がらなければ政府に負担はない。投資家には投資リスクが生じるが、社会課題の解決に貢献できる。欧米諸国でも、若年の就労支援や児童養護支援などで社会的インパクト債券を活用した事業が既に実施されている。事業は実施しつつも、財政負担を抑制できるのが利点といえよう。

 財政健全化目標の達成には、高齢化による社会保障給付の増加にどう対応するかも重要だ。国立社会保障・人口問題研究所部長の阿部彩氏(週刊東洋経済12月20日号)は、政治家は負担増の政策論議から逃げるなと警鐘を鳴らす。日本の財政事情を考えると、今後、すべての国民に「プラス」となるような政策は、選挙権もない次世代につけを回さない限り不可能と指摘。今必要なのは、国民への「プラス」の配分ではなく、負担増などの「マイナス」の配分と説く。「私も苦しい。でもあなたも苦しいというのもわかる。私はこれを我慢するから、あなたはこれをあきらめてくれ」という政策論議こそ、政治の役割という指摘は、的を射ている。

 我が国における今後の人口減少の行く末を見据えたとき、住宅問題も今から備えておくべき課題である。空き家に象徴される人口減少がもたらす衝撃的な予測を示すのは、麗澤大学教授の清水千弘氏(週刊エコノミスト12月16日号)。分析によると、地域経済が成長すると住宅地価格は上がるが、老齢人口依存比率が上がったり、総人口が減ったりすると、住宅地価格が下がるという。これに基づくと、2040年の住宅地価格を都道府県別にみれば、2010年よりおおむね60%前後下落すると予測する。この背景には固定資産税と相続税の軽減措置があるとみる。小規模住宅の固定資産税が軽いため、住宅の過大供給と空き家の放置を生んでいる。

 我が国の税制は、今年、先送りを決めた消費税、実効税率を引き下げる法人税について、議論が一段落する。残された基幹税の所得税こそ、来年の議論が待たれる。京都女子大学客員教授の橘木俊詔氏(12月12日付経済教室)は、今月邦訳が刊行されたトマ・ピケティ氏の著書『21世紀の資本』での議論を紹介。日本でも、低成長が続く中で資本収益率が高いことから格差拡大の原因となったと指摘する。今後、我が国でも格差是正に注目が集まりそうだ。所得税でどう是正するかが、問われよう。
 課題山積の日本経済は、安倍内閣の政策で低迷から脱せられるだろうか。青山学院大学特任教授の猪木武徳氏(中央公論1月号)は「人材を育てて、活かす」というシステムが日本経済の現場で崩れつつあることが低迷の原因と主張。安倍内閣は、経済政策を前面に押し出して日本経済の「復活」を推し進めようと悪戦苦闘し、景気対策は次から次へと打ち出されるが、良い兆候は表れないと評する。
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 そこに欠けている視点は、「人を育てる」という長期的な視点で、短期的な損得勘定に基づく報酬システムでは、経済の根幹である人材を劣化させ、日本経済を衰退へと誘い込むとみる。これまでは、日本経済を現場で支えてきた国際競争力の源泉とも言える労働者の技能形成・人材育成のシステムを持っていた。その強みが、今の日本から失われようとしている点を危惧している。来年の消費再増税が延期されたからといって問題が解決したわけではない。今こそ諸課題の解決に向けた取り組みを始める時だ。

[日経新聞12月21日朝刊P.21]

 

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