★阿修羅♪ > 経世済民92 > 652.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
円安はどこまで進む? 2015年日本経済を大胆予測〈週刊朝日〉
http://www.asyura2.com/14/hasan92/msg/652.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 1 月 05 日 07:26:05: igsppGRN/E9PQ
 

円安はどこまで進む? 2015年日本経済を大胆予測〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150105-00000000-sasahi-bus_all
週刊朝日 2015年1月2−9日号より抜粋


 2015年の日本経済をファンドマネジャー、ヘッジファンド、証券会社社長、著名エコノミストなどに予測してもらった。

 まずは、日経平均株価と為替の予測。結論から言うと、「株高」と「円安」を予想する専門家がほとんどだ。

 なんと、日経平均2万円以上を8人が予想した。最も高かったのは、国際エコノミストの今井澂(きよし)氏の2万5千円だ。いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は2万4千円、BNPパリバ証券の河野龍太郎経済調査本部長、マネックス証券の松本大社長、ビスタマックス・ファンド・アドバイザーズの藤原正邦社長が2万2千円と続いた。

 どうしてここまで強気なのか。背景にあるのは、金融緩和を背景にした円安と、それによる企業業績の拡大だ。ビスタマックスの藤原氏はこう言う。

「景気の緩やかな回復と円安により、企業業績が上振れる」

 2万円を超えると、ITバブルで沸いた00年4月以来15年ぶりとなる。

 安値は、なんと1万6千〜7千円におさまった。現状とほぼ変わらない水準だ。つまり、スタート地点がいちばん安くなる可能性があるという。「政局」と「ヘッジファンド」の影響で、2月に一度下がるとの見方が出ているが、1月に上昇するため、下げたとしても、現時点から大きく下回ることはないという。

「新内閣組閣後、しばらくは人事がらみでくだらない政局があるだろうから、2月ごろに1万6500円を予想」(マネックスの松本氏)

「『3カ月間で20%以上の利益が発生した場合、いったん益出しを行う』というヘッジファンドのルールにより2月に利益確定売りが出る」(パルナッソス・インベストメント・ストラテジーズの宮島秀直チーフストラテジスト)

 円安は大幅に進みそうだ。1ドル=130円台を予想する人が9人。120円台が5人だ。

「米国の利上げは6月ごろ、日銀の第3弾の追加緩和は10月に予想されるため、年後半に再び円安に勢いがつくでしょう」(ソシエテジェネラル証券の会田卓司チーフ・エコノミスト)

 1ドル=130円の水準は、2002年以来だ。

 景気は程度の差はあるが、多くが「よくなる」と回答した。福音となりそうなのが、「原油安」だ。直近は、ルーブルの急落を招いているが、そもそも原油安は家計や企業業績にとってコストダウンにつながるため、追い風になる。

 三井住友アセットマネジメントの宅森昭吉チーフエコノミストは、

「14年10〜12月のGDPは3期ぶりにプラス成長になる可能性が高い。輸出も伸びそうです。足元の原油安のプラス効果も出てくるでしょう。能力増強や人手不足を補うための設備投資も出てくるでしょうね。円安基調が定着すれば、海外に生産拠点を移転する動きもおさまるでしょう」

 とはいえ、大企業中心に景気回復したとしても、国民に実感がなければ意味はない。そこで「賃金は上がるか」という質問も行った。「賃金上がる派」の意見はこうだ。

「労働力の枯渇は時間の問題。企業は数年後に人の採用ができなくなる可能性が高い。前倒して労働力を確保しておかなくてはいけない状況だ」(SMBC日興証券の渡辺浩志シニアエコノミスト)

 ただ、全体に波及するにはまだ時間がかかるとの意見もあった。

「賃上げは企業業績と同じく、業種・企業規模ごとにまちまち」(みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト)

「大企業中心に緩やかな上昇となるでしょう。ただ、円安がネガティブに働く産業もあり、格差は出てくるでしょう」(アリアンツ・グローバル・インベスターズ・ジャパンの寺尾和之取締役)


 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
01. 2015年1月05日 12:44:06 : jXbiWWJBCA

【第71回】 2015年1月5日 田中泰輔(ドイツ証券グローバルマクロリサーチオフィサー)
ドル円の上昇続くも波乱含みに
16年ピーク130円へ
 ドル円は、米景気拡大を主エンジン、日本銀行QQE(質的量的緩和)を副エンジンとして、上昇気流に乗っている。2015年末125円、16年末130円へと上昇トレンドは持続しよう。米経済成長率は15年3.5%、16年3.1%と堅調を保ち、FRB(米連邦準備制度理事会)は15年半ばごろから利上げを模索していく見込みだ。


 筆者は12〜14年を通じて、市場の最円安派として、ドル円ロングを愚直に保持する戦略を推奨した。ただし、15年は同戦略にも調整が必要だろう。相場には似たリズムがある。グラフは05〜07年と12〜14年の円安過程の対比だ。今回の円安は米景気拡大に沿って長引く公算だが、先行きは波乱含みかと警戒している。

 表は長期為替予想。米景気サイクルの持続性を評価し、16年に130円でピークアウトする経路を想定すれば、今後2年間で10%に満たない上昇余地にどう対処するか、思案すべきポイントをイメージしやすくなるだろう。

 米景気堅調を背景としたドル円の上昇トレンドはこれまで、日本投資家や輸入企業の旺盛な買い支えが効いた。しかし、そんな日本勢も120円超では買い増しに次第に慎重になろう。彼らは下値を買うことによってドル円を支持し続けようが、120円超での上値追いのリード役にはなるまい。

 1年以内の短期投資やヘッジなら、ドルを下値で買い、上がって売る戦術のままでよい。しかし中長期の投資・ビジネスへの参入の場合には、将来のヘッジ・退出(ドル売り)の仕方について考え始めるべきときだ。

 ここ数カ月、米経済の堅調と対照的に、世界の成長は巡航ペース未満に下方修正された。巡航ペースを多少でも上回るなら、市場はリスクオンに傾く。しかし、巡航ペース未満のままだと、資源価格は下落し、資源国通貨は弱くなりやすい。さらにドルの独歩高がドル表記の資源価格を一段と下落させ、資源国への追い打ちとなる。

 15年は、米経済の中だるみ、米利上げ前後の株価の動揺、資源価格下落と世界経済の一段の低迷、欧州・中国・一部新興国の情勢悪化、地政学的リスクなどが相場のかく乱要因となることを頭に入れておきたい。

 海外投機筋も相場変動率が高まると、わずかな日米金利差では円キャリー(円借り入れでの他通貨投資)に腰を入れにくい。ドル円は、米日マクロ経済の追い風に乗って上昇基調を続けようが、120円台では勢いが鈍り、二進一退、三進二退の乱気流にも遭遇し得ると、気を引き締め臨むつもりだ。

(ドイツ証券グローバルマクロリサーチオフィサー 田中泰輔)
http://diamond.jp/articles/print/64475


 
【第1回】 2015年1月5日 
【2015年の世界経済】緩やかな成長シナリオを脅かす“逆オイルショック”
「地域別にばらつきがあるものの、米国にけん引されて緩やかに回復する」(メリルリンチ日本証券・吉川雅幸エコノミスト)。これが2015年世界経済のメインシナリオだ。このシナリオに暗い影を投げかけているのが、原油価格の暴落=逆オイルショックである。
米国が世界経済をけん引
最初に、メインシナリオを見ておこう。15年が緩やかな成長にとどまるのは、米国の独り勝ちで、日欧の成長率が低く、新興国も成長率が伸び悩むためだ(図表)。 
まず、米国は通常の景気循環に戻り、その上昇局面に入っている。リーマンショック前に積み上がった家計の負債も減って、ショック前のトレンド線に戻ってきた。可処分所得に占めるローン返済の比率も同様だ。住宅投資、家計の耐久消費財購入、企業の設備投資も緩やかに伸びる。 
注目は、昨年10月にQE3(量的緩和第3弾)を終えたFRB(米連邦準備制度理事会)が、いつ利上げに踏み切るか。日本総研の山田久チーフエコノミストは「早ければ春、遅くとも秋ごろには利上げを始める」と見る。 
日本はアベノミクスの「第2幕」がスタート。日銀による追加緩和、財政出動(補正予算)、消費増税の先延ばしは景気にプラスに働く。企業の設備も耐用年数が伸びているため、設備の更新投資を軸に緩やかに伸びるだろう。ただ、円安になっても輸出があまり伸びないため、実質成長率の増加は緩やかなものにとどまる。 
先進国で一番の問題はユーロ圏だ。リーマンショック後の調整が、依然残っている。その象徴が労働市場に見て取れる。周知のようにユーロは共通通貨だけに、ユーロ域内の経済力(生産性)の格差を為替で調整することができない。つまり、経済力(生産性)の低い国は、自国通貨安で輸出競争力を回復することができるが、共通通貨ユーロを採用している国々間では、為替による調整ができない。したがって、経済力の劣る国は賃金コストを下げ、競争力を回復することになる。 
ユーロ圏で生産性が高いドイツと比べて、スペイン、アイルランドなどかつての問題国は調整が進んでいる一方で、実はユーロ圏の大国であるフランスとイタリアの調整が遅れており、景気が低迷している。このためユーロ圏の成長率は横ばい強含み程度と予想されている。 

新興国についても、2010年ごろから成長率が減速し始めている。最も大きな要因は、中国が輸出主導、投資主導の経済から、消費を軸とする内需主導型の経済、いわゆる「新常態」に向けて構造転換を図っていることだ。このためかつて10%台だった成長率は7%台前半まで落ちてくるだろう。中国経済の減速に伴い、資源に対する需要の伸びも緩やかなものになる。このためロシア、ブラジルを始め経済の資源依存度が高い新興国は、緩やかな成長にとどまるだろう。 
結果、「先進国と新興国の成長率格差が縮まる形で、総体としては緩やかな成長となる」(山田チーフエコノミスト)。 
ロシアは今後2年間マイナス成長へ
この緩やかな回復シナリオを脅かす最大のリスクが、原油価格の暴落である。昨年6月にはWTI(世界的な原油価格の指標)で1バレル107ドルあった原油価格は、直近では55ドル程度まで急落している。原油価格が10ドル下がると、世界経済全体では0.2%成長率を押し上げるという予測もある。前出の図表のIMFの見通しは、1バレル80ドルが前提だから、次回の見直しでは上方修正される可能性もある。 
一方、原油価格の暴落は資源国にとっては打撃となる。特にロシアの先行きに注目が集まる。1998年にロシアが国債のデフォルトを起こし、世界に金融危機が広がったことは、まだ人々の記憶に深く刻まれている。では、98年と今回ではどこが違うのだろうか。 
最初に直近の動きを整理しておこう。ロシアの経済は原油・ガスなどの資源への依存度が高い。原油・ガスなどの資源が輸出の約3分の2を占めている。昨年12月初めには原油価格の急落に歩調を合わせて、ロシアの通貨ルーブルが売られて急落した。ロシア中央銀行はルーブル防衛のために、同月16日に政策金利を10.5%から17%へ、一気に6.5%も引き上げた。ルーブルを借りて売り浴びせる投機筋の動きを防ぐためだ。 
ルーブル安による輸入物価上昇を通じてインフレが高進。加えて高金利が長引けば、国内景気を冷やす。すでにロシア中央銀行は15年、16年はマイナス成長に陥ると予測している。 
98年当時と比べた安心材料としては、外貨準備高の違いがある。ロシアの外貨準備は97年末で178億ドルしかなかったが、現在では4189億ドルを保有している。ルーブル防衛のための為替介入(外貨売り・ルーブル買い)や対外債務返済の原資は、98年当時比べれば潤沢にある。ただ、13年末の約5000億ドルに比べると急速に減っている。 
不安材料は債務者の違いだ。98年当時は国債のデフォルトでわかるように、主な債務者は政府だったが今回は企業である。世界最大の天然ガス会社であるガスプロムやロシア最大の石油会社であるロスネフチといったエネルギー企業が借入の主体になっている。原油や天然ガス価格の下落で、こういったロシアを代表するピカピカ企業の経営不安がつぶやかれている。しかも、ウクライナを巡る欧米の制裁で、ロシアの大手銀行や企業は欧米の資本市場から締め出されており、借り換えがうまくいくのかどうか不安が募る( 2014年12月12日付けDOL特別レポート参照)。
原油暴落がもたらす危機
ロシア企業の対外債務は昨年半ばで、銀行部門が2140億ドル、企業部門が4330億ドルある。ロシア中央銀行は、こうした銀行・企業の対外債務返済を支援すると表明しているが、外貨準備はこれを下回っている。もし、こうしたロシアの有力企業・銀行がデフォルト(債務不履行)したらどうなるか。第一に、打撃を受けるのがユーロ圏の金融 機関。ロシアに対する融資額はフランス241億ユーロ、イタリア181億ユーロ、オーストリア153億ユーロ(いずれも13年末)と続く。
ロシア企業がデフォルトすれば、いわゆる「伝染効果」で同じ資源国のブラジル、ベネズエラ、ナイジェリア、イランなどに危機が飛び火する可能性もある。ロシア企業のデフォルト→ユーロ圏の金融不安再燃→世界の金融市場の混乱→世界景気の後退という“エマージング危機”が発生するかもしれない。ユーロ圏では、ギリシャ問題も、再びくすぶり始めている。 

一方、米国市場では、エネルギー関連企業のハイイールド債(ジャンクボンド)やローンが値を下げている。原油価格暴落の返り血を浴びつつある格好だ。 
もう一つ、FRBによる金利の引き上げも、エマージング危機の引き金を引くかもしれない。超金融緩和政策を続ける日銀とECB(欧州中央銀行)が、FRBに代わって世界のマネーの供給源になるとの予想もあるが、相対的に先進国の成長率が高いことを考えると、金利引き上げを予想して、世界にばらまかれたドルが新興国から先進国に還流するだろう。それが急激で大量なら、エマージング危機の発火点となりうる。「リーマンショック後初めての金融引き締めなので、何が起こるか予想し難い」(メガバンク役員)。 
内需型経済へのソフトランディングを目指す中国も、不動産バブルが崩壊すれば、7%以下まで成長率が落ちることも十分に考えられる。 
資本の出入りを自由化した世界経済では、融資や出資の形で各国は互いに相互依存関係にある。その中でマネーが瞬時に動き、ときに実体経済の振幅を大きくする。それがグローバル化だ。世界の政治指導者たちは、政治的対立が招く結果をどれほど意識しているのであろうか。2015年の世界経済は、リスクに満ちた海を航海することになる。 
原 英次郎) (ダイヤモンド社論説委員
http://diamond.jp/articles/-/64425 



02. 2015年1月05日 18:05:37 : jXbiWWJBCA

【第1回】 2015年1月5日 武田洋子 [三菱総合研究所チーフエコノミスト]
最大の注目点は原油価格急落の“光“と“影”
――三菱総合研究所チーフエコノミスト武田洋子氏
後世の日本人が振り返ると、2014年は日本の歴史の転換点だったと評されるかもしれない。7月には、安倍政権が集団的自衛権行使容認の閣議決定を行った。どのような限定をつけようとも、外国で戦争する権利を認めたことに間違いはない。経済面では順調に見えた「アベノミクス」が4月の消費増税で腰折れし、結局、15年10月からの再増税を1年半先延ばしする決断をして、12月の総選挙になだれ込んだ。結果は、与党である自民・公明両党が圧勝し、アベノミクスを信認した形となった。

さて、来る15年は戦後70年の節目でもある。増税再々延期という選択肢を断ったアベノミクスはまさに正念場を迎える。集団的自衛権ではいよいよ関連法の改正が行われ、具体的な姿が浮かび上がってくるはずだ。わが国のエネルギー構成をどうするかも決めなければならない。安倍・習会談で関係改善の糸口をつかんだ日中関係はどうなるのか。世界情勢を見れば、原油価格の暴落が暗い影を投げかけている。平和でやさしいイメージの未(羊)年とは打って変わって、課題山積。そこで著名な経営者、識者の方々にアンケートをお願いし、新年を予想する上で、キーとなる5つのポイントを挙げてもらった

(1)原油価格急落の経済面の効果とリスク


たけだ・ようこ
三菱総合研究所政策経済・研究センター・チーフエコノミスト。 ジョージタウン大学公共政策大学院修士課程修了、1994年日本銀行入行。日本銀行では海外経済調査、外国為替平衡操作、内外金融市場分析などを担当。2009年三菱総合研究所入社。専門はマクロ経済、国際金融。社会保障審議会年金部会委員、年金財政における経済前提と積立金運用に関する専門委員会委員等。
 第1に、原油価格40ドルの下落は生産国から消費国へ、年間1.3兆ドルの所得移転効果を持つ。原油輸入国の日本は利益を享受する側だ。仮に原油価格が60ドル/バレルで推移すれば、日本の実質GDP成長率は+0.1%押し上げられよう。

 もっとも、プラス効果だけとは限らない。第2の波及として、国際金融市場の不安定化がある。14年12月の原油価格急落時、市場ではリスク回避姿勢が強まった。その帰結がルーブル売りの加速だ。経済制裁と原油安によるロシア経済悪化への懸念から、金利が急騰、資本流出を招いた。

 ロシアは1998年に通貨危機に陥った経験がある。安心材料は、外貨準備が4189億ドル(2014年11月)と前回危機前(1997年末178億ドル)に比べ潤沢な点だ。だが、ロシアにおけるドル建ての海外からの借入れ主体は、その大部分が民間企業であり、通貨下落が続けばこれら民間企業のデフォルトリスクが高まる。2015年、経済危機が発生しないと断定できる根拠は十分とは言えず、目が離せない。

(2)原油を巡る三者三様の思惑

(1)は経済面での影響だが、政治的な側面も見逃せない。ロシアが苦境に立たされた一因として、原油生産原価が中東諸国に比べ高いことがある。サウジアラビアの原価は5〜10ドル/バレルと言われ、現状でも採算は確保できる模様だ。

 ロシアに加え、打撃を受けるのが米国シェールオイル業界だ。サウジアラビアとっては、米国シェールオイル業界が競争力を失うことが自らの利益にかなう。しかし、事はそう単純ではない。サウジアラビアほか一部の中東諸国は、財政収支のバランスのためには100ドル/バレル以上が必要との試算があり、いつまで辛抱できるか不透明だ。

 一方、米国はロシアへの経済制裁として原油安を利用できるとの見方もあるが、ロシア経済が深刻な事態に陥れば、世界の金融経済経由で米国へ波及する。このように、原油安の背景には少なくとも米国、中東、ロシアという三者の思惑が透けて見える。2015年、現在の流れを打破するのは、この三者のうち誰だろうか。

(3)中国経済のソフトランディングは可能か?

 中国経済の緩やかな減速は2015年中も続く見込みだ。政府も従来の7.5%前後の成長目標を7%前後へ下方修正する模様である。だが、緩やかな成長鈍化というソフトランディング・シナリオを覆しかねないリスクも高まっている。

 第1に、不動産市場では住宅価格の下落が続いている。不動産市場の調整が長引けば、歳入を不動産関連収入に依存する地方政府の財政状況も厳しさを増す。第2に、企業部門のリスク蓄積だ。中国の企業向け与信(海外金融機関からの与信含む)を確認すると、2013年末時点で対GDP比150%近傍と日本のバブル崩壊時(1990年)の水準を上回る。

 成長鈍化の中での中国企業の債務負担の増加は、不良債権の急拡大と急激な信用収縮を引き起こすリスクを内包する。13億人の市場を抱えポテンシャルは大きい中国経済だが、中長期的に成長を持続できるのか、まずは不動産市場の調整とバランスシート問題を克服できるかが試金石となろう。

(4)賃上げの本格化なるか?

 2014年、6年振りとされるベースアップ(ベア)、15年振りとされる2%超の賃金上昇がみられたことは、デフレ脱却への大きな一歩だった。ベアは定期昇給(定昇)とは違い永続的な効果を持つため、豊かさの広がりをもたらす。もっとも、ベアを実施した企業は4割程度で、引き上げ幅も十分ではなかった。15年にわたるデフレからの脱却がなるかどうか、2015年の賃上げの広がりにかかっている。この点、連合は春闘に向けて2%以上のベア要求を掲げた。また、「政労使会議」は、賃上げに向け「最大限の努力をする」と述べている。

 2015年4月には、2014年の消費税率引き上げの影響が剥落するため、2015年の賃金上昇は「実質的な」賃金の上昇となり、国民の購買力を高める。2014年の企業収益は65兆円を超える規模で改善した。かたや労働市場の需給はひっ迫している。賃金上昇の環境は十分整っている。働く世代・子育て世代を中心に、デフレ脱却の効果が感じられる新時代の到来を期待したい。

(5)「貧困」問題の本質は何か:国民的議論の深まりを

 2013年来の株高、円安が格差を広げたとの論調がある。確かにプラス効果が経済全体に波及するには、大企業による中小企業への還元や賃上げが欠かせない。だが、問題の本質は収益・所得の格差なのか。そうであれば、国民全員で貧しくなれば問題は解決する。本質を見誤ってはならない。

 優れた人材や企業は日本を豊かにする源泉だ。錦織選手や山中教授らが高報酬を得ることは賞賛されるべきことである。日本社会は、「出る杭を伸ばす」社会的寛容さを醸成する時期を迎えている。

 一方、問題は一人当たり所得3万ドルの日本で、静かに広がる「貧困」だ。子どもの貧困率は16%を超え、6人に1人が貧困水準以下の生活を送る。子どもたち・若い世代が持てる全ての才能を発揮できるために、教育の機会均等の確保と社会保障制度の見直しが急務だ。彼らの活躍が期待される東京オリンピック・パラリンピックまであと5年半。2015年は成熟した国民的議論を始める年であってほしい。
http://diamond.jp/articles/-/64424
 


03. 2015年1月05日 20:30:34 : jXbiWWJBCA

倉都康行の世界金融時評
「ドル復権時代」の死角

再び金融危機以前のような経済構造を作り出すのか

2015年1月5日(月)  倉都 康行

 2014年の資本市場は、多少の波はあったものの総じて「株高と低金利そしてドル高」という3つの言葉で形容することが出来る。2015年を展望するにあたり、株高と低金利が昨年のようなペースで続くかどうかにはやや留保条件を付けたくなる一方で、ドル高はやはり継続すると見ておくのが無難だろう。

 ドル円は昨年末にロシア不安で一時115円台まで下落する場面もあったが、円安基調は当面継続するとの見方が大勢だ。ユーロドルも、量的緩和への前傾姿勢を強めるECBのドラギ総裁を見れば、ユーロ安方向へのトレンドは変わりそうにない。資源安を背景に、豪ドルも軟調推移が予想される。

 新興国通貨も基本的に売りである。原油急落を背景にルーブルが暴落したロシア、反欧米の旗を振りまわすトルコ、構造改革への期待が薄れるブラジルなど、今年も新興国通貨はひと波乱ありそうな予感がする。

 米国同様に今年利上げが見込まれる英国のポンドや、安全資産としての人気が根強いスイスフランなども、ドルとともに強含みで推移することが予想されるが、全般的な為替市場の印象を示すのに「ドル復権時代」というフレーズは、決して誇張表現ではないだろう。

 ドルの一方的な上昇に関しては、米企業への業績やインフレ率へのマイナス材料になると懸念する声もあるが、独り勝ちの様相を強める米国経済を見れば、誰もドルを売る気にはなれないだろう。12月のFOMCで明らかになったように、FRBもあれこれ気を遣いながら第2四半期以降の利上げ時期を探る姿勢を堅持している。

ドルに不可解な上昇はない

 準備通貨として国際金融のインフラ通貨となっているドルが一度上昇気流に乗れば、そのトレンドは長期化する傾向が強い。株には不思議な上昇があるが、ドルに不可解な上昇はない。

 JPモルガン・アセット・マネジメントは「不透明感の強い市場で最も透明感があるのはドル高だ」として、現在のドルの上昇率はまだ序の口に過ぎず、新たな時代の幕開けに過ぎないのではないか、と指摘している。

 その考え方の根底にあるのは、米国以外に運用市場として魅力のある対象が乏しい、ということだろう。それは、通貨価値を引き下げて何とか景気を浮揚させようとする以外に成長戦略の見当たらない日本やユーロ圏の経済政策を見れば、一目瞭然である。

 だが、人々は市場のコンセンサスが往々にして裏切られることを知っている。1年を通してみれば、ドル安転換かと思わせるような地合いも何度か起きるだろう。所謂「リスクオフ」が円の買い戻しを誘い、海外資産に比重を置く日本の投資家をヒヤリとさせる場面も何度かある筈だ。

 昨年も、中東やウクライナなどにおける地政学リスクや原油相場下落などのサプライズがドル売りを加速する場面があった。こうした事象は市場に付き物なのだ。そして今年は、先進国の金融政策に関してもサプライズが起きることも想定される。問題は、それがドル高の大きな流れを止めて反転させる力を持つかどうか、である。

 ドル安をもたらす要因としてまず考えられるのは、FRBが利上げを大幅に延期するシナリオである。FRBは6ー7月を利上げ時期として想定しているようだが、原油価格の低水準が定着してディスインフレ傾向が強まれば、まだ少数派に過ぎない「2016年への先送り説」が優勢になるかもしれない。

 12月のFOMCで示された今年のインフレ率見通しは、1.0〜1.6%とかなり幅の広いレンジとなった。これは、原油価格の影響が必ずしも一時的とは言えない、という不安感を示しているようにも見える。FRBの物価見通しに揺らぎが生じれば、ポジション調整としてのドル売りが誘発されることもあるだろう。

 昨年秋以降の原油価格下落で窮地に陥る米エネルギー企業が社債市場でデフォルトを起こし、ジャンク債の急落が株式市場にも波及したりすれば、市場に「リスクオフ」のムードが高まることになる。これもドル売りを誘うだろう。

 また日本の輸出が急回復し、貿易赤字が縮小傾向を辿って円安ムードが消えていく、という日本発のシナリオも有り得る。市場には、物価上昇率の低迷に悩む日銀がさらなる緩和政策へと追い込まれる、という見方が強いようだが、量的緩和効果の限界は流石に日銀も肌で感じている筈である。

 また追加緩和といっても、前回の5対4という薄氷を踏むような決定会合の状況を見れば、黒田総裁もそう簡単には提案を切り出せないだろう。同総裁には、増税先送りという煮え湯を飲まされた、との思いも強いかもしれない。

 さらに、共和党が上下院を握る米議会が日本の円安誘導に対して注文を付け始める可能性もある。TPPに絡んだ交渉で日本の為替政策への批判が出始めれば、政府も慎重な態度を取らざるを得ないだろう。いずれにしても、市場に燻る追加緩和への観測は、かなり甘い期待感に基づいているように思われる。

国債買い入れで迷走するECB

 一方で、ユーロ圏にもユーロ買いを引き起こす可能性が残っている。それは、市場がほぼ確信しているECBによる国債買い入れが発動できないシナリオだ。1月22日あるいは遅くとも3月5日の定例理事会でECBは量的緩和を開始する、というのがコンセンサスではあるが、内部の議論は日銀以上に迷走している感がある。

 それは、国債買い入れはユーロ圏の問題解決にはならないとの声が強まりつつあるからだ。また、一度国債購入に踏み切れば、1回で終わるとは限らない。それは、日英米の辿ったプロセスを見れば一目瞭然である。市場においても、1兆ユーロ程度のバランスシート拡大では効果は薄いとの見方が大勢だ。

 中央銀行が国債買い入れを行うのに猛反対しているのは「ECBをバッド・バンクにするな」と、ドラギ総裁の方針を厳しく批判するドイツ連銀のバイトマン総裁である。同氏は、インフレ率がマイナスになったとしても国債買い入れを許す訳にはいかない、とまで言い切っている。

 ECB内部では、同氏を支持する勢力が増えているようだ。英エコノミスト誌は、現時点では理事のうち量的緩和反対派が6〜7名おり、6名の役員会では3対3の状況だ、と報じている。仮にECBが量的緩和で立ち往生すれば、ユーロ売りのポジションは一斉に買い戻されるだろう。

 こうした円高やユーロ高への反転シナリオは、ある程度頭の隅に置いておくべきだ。但し、それがドル高の転換点になるかと言えば、米国と日欧の構造的ともいえる「経済格差」を見る限り、取り敢えず「NO」であると考えておきたい。ドル円が110円台に戻ったり、ユーロドルが1.25ドルを超えたりする場面があったとしても、それは一時的な踊り場に終わるのではないか。基調はやはり「ドル復権」であろう。

 ドル高基調は、円安神話の根強い日本株市場には順風となる。一方で、円安は輸入コストの上昇を通じて家計や内需型企業には悪影響を与え、円安倒産も増える。130円といった水準に到達すれば、内外で悪い円安論が噴出するだろう。

 ユーロ圏では高失業率や低成長に苦しむ南欧諸国にも恵みの雨となるが、弱い通貨を嫌うドイツなどでは「反ユーロ」感情が高まるかもしれない。あまりに安いユーロは、域内の南北対立をさらに強めるリスクがある。ユーロ圏の経常黒字をさらに高め、不均衡拡大という問題を再燃させる可能性もある。

ドル建て債務を抱える新興国企業には重荷に

 もっとも、ドル復権時代の到来に一番眉をひそめるのは新興国だろう。過去の歴史を紐解いても、ドル高時代の新興国はインフレ率上昇や資本流出などで苦しんできた。今回はそれに加えて、ドル建て債務返済の苦しみが加わりそうだ、とBISの四半期報告書は警告している。

 先月上旬に公表されたその報告書は「ドル高と原油安が資源国を厳しい状況に追い込む可能性がある」と懸念を示したが、それはまさにルーブル暴落で現実のものとなった。ロシアに関する市場の注目点は専ら原油安に向けられているが、ドル高に意識を傾ければ、他の新興国に多大な為替リスクが生じ始めていることに気付かずにはいられない。

 今日の新興国は、外貨準備の増加や経常赤字の縮小、ソブリンにおけるドル建て債務の減少などを通じて「打たれ強さ」が増しているのは事実だが、企業部門の対外債務に関しては逆に「ドル建て債務の増加」という弱点が浮き彫りになりつつある。

 BISが公表した資料に拠れば、新興国の民間部門による国際市場での社債発行残高2.6兆ドルのうち、約2/3がドル建て債務となっている。また銀行借入残高も3.1兆ドルに上っているが、欧米銀行による融資は殆どがドル建てであると思われる。ドル高は、間違いなく債務返済義務を負う新興国企業の重荷となる。

 だが、上記の数字は過小評価されている可能性すらある、とFT紙は指摘している。2009年から5年間にわたり、新興国企業が債券や融資で調達した資金の約半分はオフショア拠点経由であったために、その金額が「民間負債」ではなく「対外直接投資」に計上されているからだ、という。

 オフショア拠点で調達されたドルは、現地通貨に交換されて本社に送金される。BISに拠れば、ブラジル・ロシア・中国の3カ国で2013年第1四半期だけでそうした取引総計は350億ドルに及ぶ、と推計しているが、現時点で世界にどの程度の為替リスクが内包されているのか、全く分からない状況だ。そんな盲目飛行の中で、ひたひたとドル高が進んでいる。もはやこれを、想定外のリスクと呼ぶ訳にはいかない。

 また昨年6月末時点でのクロス・ボーダー融資残高は3010億ドル増えて前年同期比1.2%増と、約3年ぶりに増加しているが、そこで目立つのは外銀のアジア向け、特に中国向けの融資であり、その額は2012年末からほぼ倍増して1.1兆ドルに達している。景気の失速を恐れる中国が、金融緩和策を通じて人民元安へと誘導することになれば、こうしたドル建て債務が内包する為替リスクは、ボディー・ブローのように企業経営を圧迫してくことになるだろう。日本でも今年は円安倒産の増加が懸念されているが、新興国はもっと深刻な状況にあると見てよい。

 以上は米国以外の国々におけるドル高の影響であるが、足許の米国で忘れてはならないリスクが一つある。それはドル資本の大量流入による金融市場の「慢心」と「傲慢」である。復習がてら、2007年以前の国際資本市場をざっと振り返ってみよう。

ウォール街に復活する慢心や傲慢

 思い出すのは、2004年当時、利上げを開始したFRBのグリーンスパン議長が、短期金利を引き上げても長期金利が上昇しない債券市場を指して「コナンドラム(謎)」と表現し、政策金利に連動しない長期債の動きに首を傾げた場面である。

 その頃、FRB理事であったバーナンキ前議長は、その長期金利の低水準を「グローバル・セイビング・グラット(世界的な貯蓄余剰)」に求めた。その分析の中心を占めていたのが、拡大する中国の貿易黒字であったが、欧州の資本もまた有利な商品を求めて米国市場に大量に流入したのである。

 そんな世界中の資金が米国市場に集まって低金利が継続すれば、リスク・テイク指向も強まる。FRBがドットコム・バブル崩壊の後始末で政策金利を1%にまで下げた2003年半ば以降、家計は借金を通じて過剰な消費へ向かい、機関投資家はレバレッジ利用に傾いていった。そしてウォール街は新たな不動産バブルの風に乗ってサブプライム・ローンの証券化にのめり込み、挙句の果てに政府支援なしには経営不能となる大失態を演じたのであった。

 今でも中国の余剰貯蓄の状況は変わらないし、ドイツに代表されるユーロ圏諸国の経常黒字も輸入減で拡大中である。同地域の貯蓄は、マイナス金利も手伝って米国を中心とした資本市場に流れ込んでいる。さらに日本はGPIFの運用改革を通じて、米国債や米国株に大量の資金を投じることが予想されている。

 こうして米国への投資が加速されドル高となれば、ウォール街は勢い付く。大手米銀は昨年の中間選挙で大勝した共和党に積極的に働き掛けており、昨年末には規制緩和を求める執拗なロビイングを通じてファンド保有などの規制実施時期の2年先延ばしに成功した。慢心や傲慢は、徐々に復活しつつあるのかもしれない。

 グリーンスパン時代の「コナンドラム」が、その後の金融危機への遠因となったことを考えれば、イエレン議長も気が気ではないだろう。低金利とドル高の共存は、ウォール街がバブルを醸成するのにまたとない環境なのだ。

 今日のFRBには、バランスシートに積み上げられた長期債を売却して投機的ムードを抑制する手法が残されているが、それは長期金利の予想以上の上昇を伴って巡航速度に向かい始めた経済を冷却させてしまうリスクを伴う。そう簡単にはカードは切れない。

 ドル中心の市場経済は、再び金融危機以前と似たような経済構造を作り出そうとしているようにも見える。そのリスクが今年顕在化することはないと思いたいが、学習効果が薄いという資本市場の弱点は依然として残されたままである。資産運用にしても事業経営にしても、ドル高の死角は常に心の中に留めておきたいものである。

このコラムについて
倉都康行の世界金融時評

日本、そして世界の金融を読み解くコラム。筆者はいわゆる金融商品の先駆けであるデリバティブズの日本導入と、世界での市場作りにいどんだ最初の世代の日本人。2008年7月に出版した『投資銀行バブルの終焉 サブプライム問題のメカニズム』で、サブプライムローン問題を予言した。理屈だけでない、現場を見た筆者ならではの金融時評。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20141224/275562/?ST=print


04. 2015年1月05日 20:32:44 : jXbiWWJBCA

エコノミストの眼 [エコノミストの眼]
2015年の2大投資対象、日本と米国
2015年01月05日(Mon) 武者 陵司
本記事は、武者リサーチのレポート「ストラテジーブレティン」より「第132号(2015年1月1日)」を転載したものです。
謹賀新年  2015年  From 武者リサーチ
素晴らしき2015年、日本本格復活を確信する年が到来しました
 かつてない、おそらく二度とない好環境です。(1) 力強い米国経済の回復、(2) 成長を全面的に支援する政策、(3) 円安、(4) 原油安などが揃うことは日本の最盛期にもなかったことです。そして、この好環境も、日本企業のビジネスモデル転換があったからこそ、生かすことができるのです。「失われた20年」の困難な時期に、日本人と日本企業が歯を食いしばって成し遂げた「価格競争から技術品質特化へ」のモデル転換の成果が今花開こうとしているのです。2015年は天の時、地の利、人の和がすべて満たされた素晴らしい年になると思います。
 投資という観点では、上述の好要素がほとんど織り込まれていず、株価が超割安であることも重要です。われわれの人生にめったにない株式投資チャンスが訪れていると考えます。
 皆様のご清栄をお祈り申し上げます。
  2015年 元旦    武者 陵司
2015年 日米に注目を
 金融市場、実体経済、政治社会体制の順番に変化が起こる。金融は先行指標であり、政治社会の常識は半歩遅れる。金融から見た2014年の特徴は米国の独り勝ちに尽きる。そして大きく離されて日本が緩慢ながら離陸した。2015年はこの2カ国が世界をリードするだろう。2014年のドルベースでみた株価パフォーマンスは世界平均△2%、米国のみ+9%、次いで日本△5%、新興国△6%、イギリス△8%、EU△9%となっている。以下では2015年の2大投資対象米国と日本について注目点を概観する。

(1)フルスロットルの米国経済、輪郭あらわす米国の圧倒的プレゼンス
群を抜く米国のコア・コンピタンス(圧倒的能力)
 オバマ政権に対する不人気や米国プレゼンス低下論がメディアなどで喧伝されていることとは裏腹に、2015年は米国の圧倒的強さが見せつけられる年となるだろう。(1) 政治軍事面での圧倒的指導力に加えて、(2) ICT革命をリード、サイバー空間を支配、(3) 金融で圧倒的強さ、(4) シェールガス革命でエネルギーでも世界をリード、(5) 政策で世界をリード(先進国で唯一金融市場が機能=信用創造が健在)、など各面での優位性はますます強まっている。米国経済の強さが、2015年の重要なモチーフになっていくことに注目したい。執拗な量的金融緩和の結果、米国経済は拡大の加速局面に入り、ドルも本格的な強さを見せ始めている。
拡大画像表示
 米国経済を循環的に押し上げる第1の理由は、耐久消費財や住宅投資、設備投資などの裁量支出が、現在まだ十分に満たされていない水準にあることである(図表3)。今後2〜3年はペントアップ需要の顕在化(特に住宅需要、設備投資)によりさらなる需要のかさ上げが期待できる。
拡大画像表示
循環回復はまだ5〜6合目
 第2の景気循環要因として、労働賃金の伸びが高まり、消費が本格的に増える局面に入ったかどうか、が重要である。これまでの景気循環を振り返ると、景気拡大の前半において労働賃金が抑制されて労働分配率が低下し、景気拡大の後半になると、賃金の伸びが高まり(=労働分配率が上昇し)消費が大幅に増えて景気拡大加速局面へ入るというパターンが定着している(図表3)。そのような観点で現在の米国経済の状況をみると、労働分配率が底入れをして上昇に転ずる転換点にあるとみられ、今後、賃金上昇によって消費の加速が期待できる。
 第3は、米国の信用循環の拡大期入りである。信用拡大と景気サイクルはほぼ連動して10年の循環を描いてきた。その信用循環をみると、2011年に信用循環の底入れをした後、まだ3年程度しか経っていないことがわかる(図表4、5)。現在の信用循環はまだ若く、これからさらに信用を増やし、それによって経済が拡大できる余地が大きいということである。景気がピークアウトする前に株価がピークアウトすることは考えにくい。米国の株高と強いドルは、2015年の世界的リスクテイクを推し進めるエンジンとなるだろう。
拡大画像表示
拡大画像表示
(2)日本の努力が報われる年に
因果応報、長年の労働者、貯蓄者の犠牲が報われる時代に
 2015年は日本経済の本格復活を見せつける年となるだろう。因果応報、僥倖も不遇も永遠には続かない。中身(competence、eligibility)のない成功は綻び、中身のある失敗は報われる。2015年の戦略を考えるにあたって、中身が伴っていない成功がどこにあり、中身があるのに報われていないケースがどこにあるのかを探すこと、がヒントになる。これまで、世界で最も中身があるのに報われてこなかったのが日本であったが、2015年はその報いが大きく顕在化するだろう。報いとは賃金上昇とリスクプレミアムの低下である。
高生産性と低賃金(低ユニットレーバーコスト)→ 賃上げの余地大
 中身と成果のバランスを診るには、経済の2大投入要素である労働の提供者および資本の提供者がそれぞれに、成果にふさわしい対価を得ているかどうかで観測できる。労働者が貢献にふさわしい処遇を得ているか、は、労働の成果が適切に賃金に反映されているかに外ならず、それはユニットレーバーコスト(労働賃金/生産性)によって観察できる。そして図表6に見るように、ユニットレーバーコストの推移を国際比較すると、日本の突出した優位が鮮明である。日本の労働者ほど成果に対する報酬が乏しかった労働者はなかったのである。それは因果応報の見地から、大きな賃金引き上げの余地を持っていることを示唆している。
拡大画像表示
企業収益回復と低株価(高リスクプレミアム)→ 株価上昇の余地大
 資本の提供者が資本のリターンにふさわしい処遇を得ているか、を診る上での最適な指標は株式リスクプレミアムであろう。リスクプレミアムは資本提供者の要求リターン(a)と資本のコスト(b)との差(a−b)として把握できる。そして簡便法として、(a)を株式の益回り(earnings yield )、(b)を実質長期国債利回りとして捉えることができる。この簡便法のリスクプレミアムを米国と比較すると日本は著しく高水準である(図表7参照)。また過去との比較でみても、現在の日本の高リスクプレミアムは空前である(リーマンショック後の乱高下の局面を除き)。リスクプレミアムが高いということは、企業に投下された資本が十分な収益を上げているのに、株価に体現される株主の価値が低く、株主に資本の高リターンがきちんと配達されていないことを示す。そして株価が割安であり、上昇の大きな余地を持っていることを意味する。また企業にとっては収益力に比し資本の調達コストが著しく低いことを意味する。
拡大画像表示
拡大画像表示
超過利潤はどこに消えたのか=モデル転換投資の原資に
 このように日本では労働と資本が十分効率的に稼働していたのに、その成果を日本人(労働者と貯蓄者)が享受することはなかった。それは日本の資源提供者(=労働者と貯蓄者)にとっては極めて不公平(unfair)であったが、そこでは明らかに超過利潤が発生していたはずである。問題は、安価な労働と資本を手にして超過利潤を謳歌したはずの日本企業の収益が、2012年まで低迷していたことである。その理由は、(1)デフレ(CPI下落と資産価格下落)と円高による売価、輸出価格の低下により企業の超過利潤が買い手に奪われたこと(図表11)、(2)日本企業のビジネスモデル転換投資(技術開発投資、グローバル投資)の原資として超過利潤が費消されたこと(図表9、10)、の2要因のためであった。
拡大画像表示
拡大画像表示
 しかし既に議論しているように、そうした時代はほぼ終わった。第1に円高デフレ終焉により超過利潤が買い手に奪われることはなくなった。第2に日本企業のビジネスモデル転換(高技術・品質製品への特化とグローバルサプライチェーンの建設)はほぼ完了し、コストの重圧は軽減している。つまり、安価な労働と資本を活用できる日本企業の超過利潤は、企業収益急伸へと顕在化する場面に至ったのである。日本企業の損益分岐点比率の急激な低下はそれを如実に示している。
 2015年は、過去最高の企業収益の分配から日本経済の好循環が起きるだろう。つまり賃金が大きく上昇をはじめ、株価上昇と金利の上昇によりリスクプレミアムの急激な低下が始まると予想される。
拡大画像表示
拡大画像表示
日本企業が獲得した成長のばね
 よく考えれば、失われた20年とは発展の条件を蓄積した20年とも言える。日本企業は逆風の中で、
(1) 世界最高のスリム化・コスト削減、
(2) 先端技術開発とソリューション提供型(サービス一体型)ビジネスモデルの開発、
(3) グローバルネットワークの確立、世界市民化、
(4) 潤沢な資本の蓄積(空前の投資余力=富士フィルムの成功体験を見るまでもなく潤沢な資本蓄積は、飛躍の決定的条件)を成し遂げた。
 それは上述の労働者と貯蓄者の犠牲によって実現したものである。そしてその成果が円高・デフレ脱却の環境下で、大きな収益増加となって顕在化している。2015年はその高収益の分配から経済の好循環が始まる年となるだろう。ようやく労働者に賃金上昇、貯蓄者に株価上昇(いずれ預金金利も)という形で成果が配分されるだろう。
貿易構造変化に見られる日本企業のビジネスモデル転換
 企業のビジネスモデルの転換は、日本企業の貿易構造の変化に如実に現れている。かつての円安の景気浮揚効果は、円安によるドル建て輸出価格の値下げ→海外シェア上昇・輸出数量増加→国内生産増加、という連鎖であった。しかし今回の円安局面では図表13に見るように、輸出価格が大幅に上昇している一方、輸出数量が低迷を続けている。もはや日本の企業は価格競争をしていないので、円安になってもドル建ての値下げをする必要がなく、円ベースでの輸出単価が大幅に上昇している。
 しかし円安になっても値下げにより価格競争を挑まないのであるから、輸出数量は増えず生産増加という好循環がこれまでのところ起きていない。「価格競争によりシェアを拡大し、近隣窮乏化をもたらすビジネスモデル」から、「技術品質優位品に特化し、競争を回避するモデル」に完全にシフトしたのである。それは貿易摩擦どころか、海外諸国が自国の発展に不可欠の日本の技術・品質を求めて日本製品を渇望するという状況をもたらす。また、日本企業には値上げによる収益押し上げをもたらす。
拡大画像表示
2015年は価格数量の相乗効果で収益大幅増加、ROE急伸へ
 もっとも2015年に生産数量は大幅に増加しそうである。第1に、2014年夏場以降、対中輸入数量が年率5%を超える減少に転じており、国内生産代替の進行がうかがわれる。実際、中国と競合してきた中小企業向けの設備資金貸し出しが増勢を強め、工作機械受注も過去ピークに迫っている。第2に、東芝、マイクロンテクノロジー(エルピーダメモリー)の国内拠点拡充などの工場の国内回帰もあり、貿易数量も今後大きく改善しよう。第3に2014年の内需を押し下げた消費税増税効果が一巡し、内需が高まる。生産数量と単価上昇の相乗効果の発現は日本の高度成長期を彷彿とさせるものとなろう。
 そうしたファンダメンタルズに支えられ、2015年の日本株式は、2012年11月から始まった(当社が想定する)世紀の上昇相場の、第2波の“sweet spot”に入っていくと思われる。
(*)本記事の情報に基づく損害について株式会社日本ビジネスプレスは一切の責任を負いません。投資対象および銘柄の選択、売買価格などの投資にかかる最終決定は、必ずご自身の判断でなさるようにお願いします。


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42587


  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法

▲上へ      ★阿修羅♪ > 経世済民92掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
経世済民92掲示板  
次へ