そうなのか

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「ニチイ式」介護現場で重要書類偽造が常態化
　 〈いただきましたご質問の件でございますが、サービス提供及び個別の拠点運営にかかわるお問い合わせにつきましてはご回答いたしかねます〉
　前号の締め切りを超過してから本誌に届いた電子メールの文面。達意の文章ゆえか読みづらい。どうやら取材拒否を伝えているらしい。
　不祥事で介護事業から撤退を余儀なくされたコムスンから事業を受け継いだニチイ学館。その拝金体質と面妖な社風については前号で詳報した。今月はさらに決定的な事実をお伝えしたい。〈サービス提供及び個別の拠点運営にかかわる〉内容とあって、ニチイ側への取材は不可能。残念だが、仕方あるまい。
サービス残業強制は日常
　「ニチイの勤務時間の管理はとにかくひどい」
　そう口を開いたのは千葉県内の拠点に勤務するＦさん。ニチイでは常勤職員の勤務時間は1カ月ごとに決められている。Ｆさんの場合、ある月は168時間。週40時間労働制に合わせて、拠点の管理者は実際の勤務時間を日常的に改竄している。
　手口は次のようなものだ。常勤職員は「出勤簿」に相当する書類を鉛筆書きで提出する。提出は基本的に10日おき。書類には当然、残業時間も記入してある。管理者はそれを「チェック」。胸先三寸で「許可」「不許可」を判断する。問題は職員が超過勤務をしているかどうかにはない。管理者がどう判断するかだ。
　常勤職員は毎月提出を義務付けられている「届出書」や「残業早出申請書」も鉛筆書きで印鑑を押して出す。こちらも管理職の手が入る。見る人が見れば、どの書類も同じ字で書かれているから、偽造は一目瞭然だ。ニチイ学館の労務管理はいったいどこまでずさんなのだろうか。
　「常勤の中でも、この改ざんに対する不満は非常に強い。結局、サービス残業を押し付けられているだけですから」（前出のＦさん）
　こうした体質はもちろん論外。だが、ニチイの場合、通常の「人使い」も常軌を逸している。
　「ある日、朝8時半から働いて、長時間の移動がありました。初めてトイレに行けたのが午後3時。ぼうこう炎になりました」（同前）
　ニチイは法律で定められた休憩時間を職員に取らせない。「移動時間で休憩しろ」と命じる。管理職の頭には「移動時間は仕事に入らない」という意識が染み込んでいる。
　「1日100km移動する職員も結構います」（首都圏在勤のＧさん）
　非常勤職員にはガソリン代の補助などまったく出ない。ニチイ式だ。
　こんな不合理なルールもある。一つの訪問先での仕事が終わり、1時間以上の間隔が空いていると、事務所に必ず帰らなければならない。
　1年半ほど前に労働基準局に訴えた上で辞表をたたきつけた男性職員がいた。その直後は一時的に管理者による「配慮」がうかがえた。だが、現在はもはや元のもくあみだ。
　「管理者はタイムカードの打刻まで『強制』しています。午後6時を過ぎても、事務所に常勤職員がいるとします。その人はまだ仕事があろうとなかろうと、必ずタイムカードを押す。管理者の無言の圧力があるからです。タイムカードは6時に押されていても、現実の勤務時間は午後9時まで。そんなことは日常茶飯事といっていい」（同前）
　ニチイ学館の各拠点は要するに残業代を払いたくないのだ。なぜか。
　「残業代を払うと、拠点の経費が減る。そうすると、売り上げに響きます。だから、1円でも多く払うのは嫌なんでしょう」（同前）
　首都圏のある拠点では職員1人当たりの残業時間はほぼ10時間前後で収める「慣行」が定着している。「20時間はつけるな」との「指導」もある。初めに売り上げありき、だ。
　ある拠点管理者は新しい利用者が入ってくると「〇万円増えた」、亡くなると「〇万円減った」と口癖のように言う。利用者には「￥」マークでも付いているのだろうか。
作成されない訪問介護計画書
　健康診断でどこの病院に行くかまで「指導」が入る。職員も人の子、少しでも近い所、評判のいい所に行きたい。だが、ある管理者は一番安い病院を探し出した。
　「今度からはここに行け」
　強制的に行き先を決められた。
　月に一度、ミーティングが行われる。そこであるカタログが配布される。拠点ごとにノルマがあり、販売協力を半ば強制的に求めてくる。
　「盆暮れだけじゃありません。バレンタインデー、ホワイトデー、父の日、母の日、敬老の日。その都度、ニチイと提携している会社の商品を買わなければならない」（同前）
　毎年10月には「恒例行事」が控えている。拠点ごとに靴下やせっけんなど、商品を一つ選ぶ。送料を節約するために箱買い。その商品を職員は利用者の所に持っていって、「使ってみませんか」と勧める。最終的には定価で売りつけている。
　「中には買ってくれる人もいます。高齢者が2500円もするようなオイルを塗ってどうするのか。管理者は何も感じていないようですが、明らかにおかしい」（同前）
　独居の認知症患者も対象にしてこうした商売がまかり通っている。
　最後に最大の問題点を指摘する。利用者が訪問介護サービスを受けるための流れを簡単に振り返る。まず、サービスの利用を希望する人が介護申請。ケアマネジャーが希望者宅を訪問する。利用者の状態を見た上で介護プランを立てる。それを介護事業者に落とす。この時点で事業者側には訪問介護計画書を作成する義務が生じる。本人や家族の希望を確認した上でアセスメントシートや毎月の訪問チェックリスト、モニタリングなどの書類を用意しなければならない。利用者ごとに必ず踏まなければならない過程だ。ニチイの場合、これは「サービス提供責任者」の仕事とされている。
　「訪問介護計画書を作らない限り、サービスの提供はできません。ところが、ニチイのある拠点ではこれをやっていない」（同前）
　問題の拠点は最近、東京近郊のある拠点から分割されて発足。それ以前から担当者が計画書作成業務を手付かずのままため込んでいた。
　「監査が入るので、今、必死でやっていますが、明らかに適当に書いているだけ。すでに訪問介護をやめてしまったり、亡くなったりした利用者の分も含まれています。利用者の状態も時間がたてば、変わっていく。当たり前のことです」（同前）
　売り上げ至上主義と利用者無視。ニチイに介護事業を担う資格はない。
　「会社の上層部は相当儲かっているはず。これほど営利が好きなら、何も介護業界じゃなくてもいいんじゃないでしょうか。介護保険をはじめ、現行の制度が完全とはいわない。ただ、目先の利益だけを追求する輩が利用者を食い物にするのは許せない。それだけです」（同前）
2013年4月 8日 18:00 ｜ ニチイ学館・社会・経済
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供給制約の結果として、サービス不足になるか、介護コストと国民負担は上昇することになる

これもまた生産性が上がらない限り、解決できないジレンマではある