★阿修羅♪ > 医療崩壊4 > 186.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
高齢社会の医療
http://www.asyura2.com/14/iryo4/msg/186.html
投稿者 あっしら 日時 2014 年 6 月 30 日 03:52:13: Mo7ApAlflbQ6s
 


[創論]高齢社会の医療

患者情報共有で効率化 亀田総合病院理事長 亀田隆明氏

 高齢化が進み、医療費が増え続けている。さらに団塊の世代があと10年ほどで病気や要介護状態になりやすい75歳以上となる。医療需要の急増不安を前に今、医療制度をどう変えていくべきなのか。先進的な運営で知られる亀田総合病院(千葉県鴨川市)の亀田隆明理事長と長く医療制度の研究に携わってきた日本福祉大の二木立学長に聞いた。

 ――医療を変えていくためには何が必要でしょうか。

 「情報の共有化だ。地域の医療機関が患者の情報を共有することで、効率的で安全な医療、無駄のない医療を実現できる。情報システムを整備して、患者がどの医療機関に行ったとしても、そこに自分の情報があるという環境をつくることが大切だ」
 「そうすれば、A病院でレントゲン検査を受けたら、もうB病院で同じ検査を受ける必要はなくなる。薬にしても、あちこちの医療機関で無駄な薬、余計な薬を処方されることもなくなる。医師が別の医療機関に患者を紹介する際、いちいち細かく紹介状を書くなどの手間も省ける」

 ――個人情報保護の観点から問題はありませんか。

 「私たちの病院では10年以上前から患者の診療情報を地域の医療機関や患者自身の自宅などで見ることができるシステムを構築、運用しているが、これまで問題が起こったことはない。今、さらに新たな情報基盤を構築中だ。今度は医療機関だけでなく、地域の介護・福祉施設まで含めた情報網をつくる」

 ――政府も自宅で療養する患者に医療・介護を切れ目なく提供することを目指しています。

 「できるだけ入院せず、住み慣れた地域で最期まで暮らすのが目標というなら、なおのこと情報システム整備が必要ではないか。普段から診てもらう近所のかかりつけ医と必要なときだけ受診する大病院の間の情報がつながっていることが重要。また、過疎地域で医療・介護をどうすれば効率よく提供できるかを考える際にも情報がカギとなる」

 ――政府は効率化のため、医療機関の間の役割分担も進めるとしています。

 「日本ではこの面で問題がありすぎる。そこら中の医療機関に高度な画像診断装置が設置されている一方、それらの医療機関に画像を正確に読み取ることができる専門医がいないといった状況が起こっている。こういったところは規制をかけ、役割分担を進めるべきだ」
 「ただし全国で画一的に機能分化を進めようとすると、また効率が悪い仕組みができかねない。官の規制は最低限にとどめ、柔軟に対応できるようにすべきだ」

 ――医療を産業として見ることも必要と訴えていますね。

 「日本には世界をリードするような医学の基礎研究成果があるにもかかわらず、医薬品や医療機器は輸入超過の状態。産学官が一体となって世界最先端の医療を育て、それを海外に輸出して、日本経済に貢献していく必要がある」
 「アジアの周辺国では少子高齢化が進む。特に中国は深刻だ。そこに日本の経験が生かせる。私たちの病院では中国などに対して日本の医療機器を含めて日本式の病院運営をまるごとパッケージで輸出する事業を進めている」

 ――健康保険が適用される診療と全額自費の自由診療を組み合わせる混合診療が拡大されます。

 「望ましい方向だ。すべての治療法について公的保険が適用されるにこしたことはない。しかしそれでは財政が持たない。一部の治療については保険が利かず、患者の自費になるとしても、それが払える人には払ってもらってもいいのではないか。そのお金が質の高い医療を提供するための財源となればなおのことよいのではないか」

 ――患者や国民に考えてほしいことはありますか。

 「一つは消費税の問題だ。今、患者が払う医療費には消費税がかからず、病院は消費税分を受け取っていない。しかし、病院が薬や医療機器を購入する際には消費税を負担しており、その分が病院の損になっている。健康保険から病院に支払われる診療報酬が消費税分だけかさ上げされているというが、正確に補てんできていない。消費税率が10%になれば、病院の存続にかかわる事態となる。医療に対する税制のあり方を考えてほしい」
 「もう一つは終末期医療の問題。今は救命救急センターに老衰で亡くなる患者が運ばれてくるような実態がある。終末期にどんな医療をすべきかを考えていかないと、患者の尊厳が保てない恐れがあるばかりか、医療費だっていくらあっても足りなくなる。医師も疲弊するばかりだ。法律で強制的に決められる問題ではないが、国民全体できちっとしたコンセンサスをつくっていく必要がある」

 かめだ・たかあき 83年順天堂大医学部大学院卒、亀田総合病院心臓血管外科などを経て08年から現職。61歳。

-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
財源の着実な確保必要 日本福祉大学長 二木立氏

 ――政府は医療の効率化のため、過度な病院頼みをやめる政策を進めています。

 「日本がまだ国として若いころにつくられた病院完結型の医療体制は患者を入院させ、治療し、社会復帰させることが前提だった。しかし今、高齢化が進み、慢性疾患を抱えながら生きていく高齢者が増えた。病院にのみ頼らず、住み慣れた場所で訪問診療や介護を受けながらできるだけ長く暮らせる地域包括ケア型の医療に変えていく必要がある」
 「ただし、病院の役割は依然として大きい。病院抜きで地域包括ケア体制はつくれない。患者を『治す』のをやめ、『支える』に変えてしまうのではなく、両方が必要。また、痛みを伴うような末期状態でも『最期まで自宅』を希望する国民は少なく、自宅で亡くなる人が急増するとは考えにくい。今後も亡くなる場所の中心は病院だろう。病院で使う医療費はなかなか減らないかもしれない」

 ――地域で医療・介護を適切に提供するには、情報化を進めることも大切ですね。

 「医療の質の向上と費用の節減に役立つという期待は大きい。ところが、必ずしもそうなるとは限らない。米国では医療機関とソフトウエア会社の共犯で医療情報を操作し、医療費が増えている実態がある。電子情報をコピーし、やってない治療をやっていることにしたり、軽い症状を重い症状に書き換えたりしていた。政府が電子医療情報の乱用に警告を出す状況だ」

 ――終末期医療に費用がかかり過ぎだとも言われます。

 「この問題は正確なデータに基づいた議論をすべきだ。人が亡くなる前1カ月間にかかった医療費は厚生労働省所管の研究機関の推計によると、年間の国民医療費の3%にすぎない。ここには様々な死因が含まれている。がんの末期や認知症の末期の人の医療費だけ取り出せばさらに少ないはずだ。これは医療費増加の主な要因とは言えない」
 「口から食事をとれなくなった高齢者に対し胃に穴を開けて直接栄養を入れる『胃ろう』という医療技術がある。こんなものは不要だという人もいれば、生きるためにつけてほしいという人もいる。終末期医療のあり方を議論するのは大賛成だが、一つの方向に国民のコンセンサスを得るのは難しいだろう。まして医療費抑制の観点でこの問題を論じるべきではない」

 ――有効な医療費抑制策はないのでしょうか。

 「医療技術の進歩とともに医療にかかる費用は今後も増えていく。無駄の排除は進めないといけないが、それで生まれる節減効果はそれほど大きくはない。国民が適切な医療を平等に受ける体制を維持するのならば、公的な医療保険制度の財源を着実に確保していくしかない」
 「財源の中心となるのは健康保険料だ。急増する非正規労働者の中には健康保険に入っていない人も多いが、それらの人がきちんと加入できる社会をつくることは本人のためにも制度の財源の観点からも大切だ。このほか、消費税やそれ以外の税財源確保も考えていかないといけない」

 ――政府は混合診療を拡大する方針です。

 「政府は混合診療の全面解禁にかじを切ったのではなく、あくまで例外的に混合診療を認める制度を拡大する姿勢だ。安倍晋三首相は『(公的保険が利かない自由診療部分について)安全性や有効性が確立すれば、最終的には国民皆保険の下、保険の適用を行っていく』と話している。そうすると、自由診療部分もいずれは公的保険で賄うことになり、公的医療費はさらに増加する可能性がある」
 「混合診療の解禁を巡っては長らく論争があった。解禁論者は公的保険で給付する医療の水準は最低限にとどめ、それ以上の医療は患者の負担能力に応じて受ければよいとの立場。一方、解禁反対派は公的保険で最適な医療を給付すべきだと考えてきた。2011年、最高裁は混合診療を原則禁止している今の政策の妥当性を認める判決を出しており、決着はついていると考えるべきだ」

 ――医療改革は今後どのように進むのでしょうか。

 「医療に急進的な改革はなじまない。患者に犠牲が出るからだ。それは先進各国どこも同じ。改革の歩みを止めてはならないし、将来も今のままでよいとはまったく思わないが、5〜10年単位ぐらいで徐々に徐々に変えていくしかない」

 にき・りゅう 72年東京医科歯科大医学部卒、日本福祉大教授などを経て13年から現職。66歳。

[日経新聞6月29日朝刊P.11]

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
01. 函館の犬。 2014年6月30日 09:24:26 : bhbAK3m6MJQx2 : jsW4ZwcBYA
モンサントの狂った食べ物、化学兵器のような農薬をやめる方が先だと思うが。食べ物とは思えないような食べ物まで宣伝させる電通。
こんなもの食ってりゃ病気になるだろ。トクホだって怪しいものだ。ホルモン漬けの肉を高級肉なんて売ってるデパ地下。

02. 2014年6月30日 19:51:42 : nJF6kGWndY

>将来も今のままでよいとはまったく思わないが、5〜10年単位ぐらいで徐々に徐々に変えていくしかない

つまり、これまでと同じく、先延ばしか

そんなことをしている間に破綻するのだろうな

http://jp.reuters.com/article/jp_blog/idJPKBN0F105R20140626
http://jp.reuters.com/article/jp_blog/idJPTYE94905B20130510
ブログ:日本人と死の覚悟


03. 2014年7月01日 09:29:31 : nJF6kGWndY

いずれにせよ、あまり期待するべきではないな

http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/41092
JBpress>日本再生>オピニオン [オピニオン]
あきれるほど自浄作用が欠如した東大病院
東大病院のSIGN研究ノバルティス社不正関与事件「最終報告」を読む
2014年07月01日(Tue) 関家 一樹
 6月24日、東大病院は「SIGN研究に関する調査(最終報告)について」と題して、記者会見を行った。


東大病院が開いた記者会見(筆者撮影)
 この記者会見では、表題となっているSIGN研究のほかに、ノバルティス社(以下ノバ社)が不正関与したSIGN研究以外の4臨床研究、アルツハイマーの大規模調査研究「J-ADNI」、さらにブリストル・マイヤーズ社の臨床研究不正関与についても公表がなされた。

 今回の記事では、SIGN研究に絞って「最終報告」の内容を検討していきたい。

2倍以上の期間、3分の1以下の内容

 SIGN研究は東大病院に事務局を置く研究会組織TCCが主導して行った、慢性骨髄性白血病治療薬「タシグナ」に関する医師主導臨床研究である。研究責任者は東大病院血液腫瘍内科の黒川峰夫教授であり、運営を進めたのは黒川教授の部下A医師である(最終報告書ではA医師は実名であるが、研究代表者は黒川教授であることから仮名とする。引用部分も適宜修正する)。

 今年の1月17日、この医師主導臨床研究であるSIGN研究に、当該薬の製造元であるノバ社が不正関与していたとNHKに報道される。3日後の1月20日、ノバ社は社内調査を終え、不正関与があったとする記者会見を行う。

 東大病院は報道後、長らく沈黙するが3月14日に予備調査委員会の中間報告(以下中間報告書)として記者会見を行い、不正関与があった事実を認める。

 その後、東大病院はまた長い沈黙を再開する。この間4月2日にノバ社は社外調査委員会の最終調査報告書(以下ノバ社報告書)を公表し、翌4月3日には人事処分を行った。

 そして今回、最初の報道から5カ月を経て、東大病院はSIGN研究についての最終報告(以下最終報告書)を行った。

 つまりSIGN研究の一方の当事者であるノバ社は報道から2カ月半で、社外調査委員会の最終調査報告と人事処分も終えているのに、東大病院はその2倍の5カ月以上をかけて内部調査を行ったことになる。

 また内容量については、ノバ社報告書が96ページであるのに対して、東大病院の最終報告書の主要部分は28ページであり約3分の1である。もちろん報告書は長ければ良いというものではないが、この最終報告書は内容的にも問題が多い。以下内容を検討していこう。

そもそもこの最終報告書はどの程度信用できるのか?

 この最終報告書は、ノバ社報告書や実際の資料に照合すると、内容の信用性に疑いを抱かせる部分がある。それどころかこの最終報告書内だけでも、信用性を傷つける不自然な個所が存在する。

 その最大の点が黒川教授のノバ社不正関与への認識と関わりである。

 最終報告書の「SIGN研究特別調査 予備調査委員会報告書」(以下特記なきは同書)22ページでは「黒川教授は(中略)病棟にN社社員が出入りしていることやTCC の事務局機能が代行されていることを認識していなかった」(N社はノバ社)と記述されている。

 これは最終報告書の地の文の部分である。つまり予備調査委員会は以上の事実を認定した、ということになる。

 ところが黒川教授が上記のように「認識していなかった」とは到底考えられないような事実が、この最終報告書内にはたくさんある。

 一例を挙げると11ページでは「発信者TCC 事務局、黒川教授名及びA医師名のメールは、N社社員がその原案を作成し、それぞれの確認、了解のもと、N社社員が黒川教授名又は、A医師名で発信していた」との事実があったとされている。

 つまり黒川教授は、TCCで発信する自分名義のメール文面をノバ社MR(医薬情報担当者、実態は製薬企業の営業担当)に作成させ、その内容を確認し発信の許可まで与えていながら、TCCの運営にノバ社MRが関わっていたとは認識していなかった、ということになる。

 このあまりにも異常な点について記者会見で質問をしたところ、予備調査委員会の斉藤延人委員長は、黒川教授がノバ社MRの関与について知らなかったとしている部分は黒川教授がそう主張したにすぎない、との趣旨の回答をした。

 またこちらの質問終了後、門脇孝病院長が自発的に、この点については自分も不自然に思い黒川教授に問い質したが、ノバ社の関与を知らなかったとの回答しか得られなかった、との趣旨の発言をした。

 なお記者会見には黒川教授のほか、実際の事件当事者は参加しておらず、また今後も彼らが記者会見等を行う予定はない、との回答を苫米地令コンプライアンス担当理事からいただいた。

 つまり22ページの「黒川教授は(中略)病棟にN社社員が出入りしていることやTCC の事務局機能が代行されていることを認識していなかった」の部分は地の文でありながら、黒川教授がこのように主張した、という記述にすぎないらしい。

 通常、関係者から聴取した内容と、その発言が信用できるかを検討した結果認定する事実、とは厳に峻別されねばならず、こうした調査報告書ではなぜ信用できるのか否かの理由まで書く。ノバ社報告書や、他の製薬企業でも社外調査委員会作成の調査報告書はいずれもそのようになっている。

 黒川教授がこの期に及んで、このような主張をしているということには驚きを禁じ得ない。もしこれが真実でないのなら、黒川教授は今すぐ記者会見を開き自らの口で事情を説明した方がいい。

 話がそれたが以上のような事実からもこの最終報告書の信用性については、ある程度割り引いて考え読む必要がある。

何をやったのか全く不明な特別調査委員会

 先ほどから最終報告書における予備調査委員会の記述について、検討してきたが、今回の東大・東大病院の調査の構造は、

●東大病院の予備調査委員会(活動期間2月26日〜5月19日)の調査を経て、
●東大本部の特別調査委員会(活動期間4月17日〜6月12日)が調査を行い、
●東大本部がその報告を受け取り今回の記者会見を行った、

 という建前になっている。

 本来この記事でも、特別調査委員会の報告について検討すべきなのだが、特別調査委員会の「調査結果の報告について」と題する文章は4ページしかなく、その内容もほぼ予備調査委員会の調査結果の要約にすぎない。

 実際、特別調査委員会は3回しか開かれておらず、うち1回に至ってはメールのやり取りで、残りの2回も予備調査委員会の報告を受けたのが中心であったようだ。2回目には黒川教授からの聞き取りを行った旨が記載されているが、特段聞き取り内容や聞き取りに基づく評価は記載されていない。

 それどころか、先述のような黒川教授に関する異常な記載や、その他の不自然な部分が予備調査委員会の調査結果には多々あるにもかかわらず、特別調査委員会は「本特別調査委員会は、別添医学部附属病院の予備調査委員会による『SIGN 研究特別調査予備調査委員会報告書』(中略)における種々の事実の認定に関し、研究代表者からの聞き取り調査を含め専門的かつ客観的な審議を行い、上記2つの報告書の認定に不合理な点はないと判断した」そうだ。

 特別調査委員会は松本洋一郎副学長を含め5人で構成されており、うち弁護士は三宅弘弁護士1人である。ちなみにノバ社の社外調査委員会は弁護士約30人で構成されている。

 なお、特別調査委員会の山口厚委員は法律業界では知らない人がいない日本刑事法界の第一人者であるが、証拠と事実認定の区別もできていないような調査報告書を「不合理な点はない」と言う程度の人物であることが今回明らかになった。これは特記しておく。

 さらに問題なのは、この最終報告書にはSIGN研究に関わった研究者の責任関係についての記述が一切なく、当然処分案についての記述もないということだ。

 このあたりは各委員会をどのように切り分けるかという制度設計の問題にもなるが、昨今話題になっている理研でも明らかなように、通常は調査委員会が当事者の責任関係まで明らかにし、懲戒委員会は処分の内容についてのみ決定し、非違行為の事実認定は行わない。

 東大は今後関係者を懲戒委員会に付議するということだが、東大の切り分けだと、この懲戒委員会で当事者の責任関係も明らかにしていくことになる。

 つまり世間一般の常識では今回の最終報告書は「最終」とは言えず、今後の懲戒委員会の結果まで最終的な結論は持ち越されたという状況だ。

 東大のこのような制度への認識の甘さと妙な縦割り主義が、研究不正を生み出す原因の1つになっていることは、最終報告書自身が婉曲にではあれ述べているところなのだが、パラドクスとしては興味深い。

本質に迫れていない内容

▽利益相反

 東大病院がなかなか本質に迫れていないことは利益相反に関する記述から如実に分かる。

 「本研究関係者の利益相反申告に関しては、学内や学会発表における現行の利益相反規定に基づいて申告されており、明白なルール違反はなかった。しかしながら透明性の観点から、N社からTCCへの役務提供があったことや、研究代表者がタシグナ適正使用推進アドバイザー等に就いていたこと等は、この研究自体に関する利益相反として倫理審査申請時や学会発表時に開示しておくべきであった」(4ページ)

 このように一見すると「利益相反がなかった」かのように思える書きぶりをしている。この点についても記者会見で質問をしたところ、斉藤委員長は「利益相反があった」ものと認識している、と明言した。

 そもそも東大病院は中間報告書の段階では、最大の問題であるMRの役務提供を検討せず、なぜか一番緩い学会発表時の利益相反基準に照らして利益相反がなかったと結論づけていた。その後、様々な方面からの指摘やノバ社報告書の記述により、最終報告書では以前はなかった記述が追加されている。

 「そもそも医師主導臨床研究において利益相反関係にあるN社社員による役務提供があったこと自体が不適切である。また同様に、研究代表者(黒川教授)がタシグナ適正使用推進アドバイザー等に就いていたことは、利益相反関係にあったと判断されるが、その事実が本研究の倫理委員会申請時に申告されていなかった。以上の様な利益相反関係に関しては、インフォームド・コンセントの手続に必要な事項であったが、臨床研究計画及び患者説明・同意文書に記載されていなかった」(19ページ)

 東大病院がなかなか自発的に本質的な問題点に切り込めていないことが、東大病院自身の報告書を比較することで見えてくる。

▽奨学寄付金

 奨学寄付金について最終報告書は「本研究が計画されてから今年度までの寄付額は2011 年度200万円、2012年度300万円、2013年度300万円であった。本研究に直接関する奨学寄付金はない」(11ページ)と記述しノバ社の奨学寄付金が、SIGN研究の見返りとして支払われたものではないと認定している。

 しかし寄付をした側であるノバ社報告書70ページでは様相が異なる。少し長いが研究不正が生まれる本質が表れている場所なので引用したい。

 「支出の制約がなく手続も簡易なことから、営業現場では、奨学寄附金を営業活動の手段または医療機関にMRが出入りするための前提として用いていることがうかがわれる。実際、一部の医療機関等から、露骨な奨学寄附金の要求が行われている事実がうかがわれる記載を含む資料もあった。こうしたことからも、医療機関等が製薬企業に財源的に依存している実態がうかがわれるところである。また、NPKKの医薬品を使用したIITを実施してもらうこととの見合いで寄附されることが多かった模様である」(NPKKはノバ社、IITは医師主導臨床研究)

 このように奨学寄付金が実際には製薬企業の営業ツールとして使われ、医療機関の側もそのことを認識したうえで奨学寄付金を求め、見返りとして寄付元の企業に便宜を図る、という研究不正の構図が出現する。

 このことを正面から認めず、使途が自由な奨学寄付金は中立的な資金である、という建前を唱えるだけでは、研究不正の本質から目を背けていると言わざるを得ない。

▽TCCの運営費用

 最終報告書ではTCCとSIGN研究の運営費用について、

 「研究経費は、TCCの会費から支弁されている」(7ページ)

 「会の運営資金は、TCCの開催する研究集会への参加費を持って会費とし、参加費は一人1,000円。TCC が設置された年からの各年収入は、2008年43,000円、2009年60,000円、2010年42,000円、2011年28,000円、2012年28,000円、2013年35,000円であった。その使途のほとんどがSIGN研究である」(8ページ)

 と記載し、あたかもTCCが年数万円の資金で細々と運営していたように書かれているが実態は異なる。本来TCCが支払うべきであった経費は役務提供を含めてノバ社が大幅に肩代わりしているからだ。

 このことは最終報告書自体も認めている。

N社はTCC講演会を共催し、その開催に要する会場借料、講師謝金、交通費、懇親会費として以下の額を支弁していた。

2008年1,541,152円、2009年1,953,208円、2010年1,870,148円、
2011年1,791,246円、2012年1,890,678円、2013年2,196,328円

これらはTCC収入に入らない形でN社の会計で処理されていた(11ページ)。

 この点についてノバ社報告書72ページはより直接的に書いている。

 「TCCが行う講演会は年に1回だけであり、その唯一の講演会がNPKKとの共催としてNPKKの費用負担で賄われている。また、講演会に参加した医師の負担が1人1000円にすぎないのに対し、NPKKの負担は220万円を超える。また、講演会の準備や受付・誘導等も全てNPKKの従業員が行っている実態に照らせば、このような講演会は、まさにNPKK丸抱えの講演会と評価せざるを得ない」

 TCCがノバ社の丸抱えの団体であることはSIGN研究に参加した医師たちには周知の事実であるのに、その点について東大病院の最終報告書は切り込み切れていないのである。

▽小括: 不正関与を招く本質とは

 以下は私見を述べるが、研究者の側から見たときに医師主導臨床研究への不正関与を招く原因は、

(1)「資金」として奨学寄付金・役職就任・講演料を製薬企業に依拠しており、研究室の運営・大規模研究の遂行・自身の収入のためには製薬企業の意向を無視できず、また製薬企業を利用する必要があること。

(2)「人員」として書類作成等の単純作業・統計解析等の高度作業・研究参加依頼や進捗管理に必要な営業担当が研究室におらず、MRがそれを補う慣習が存在していたこと。

(3)「ノウハウ」として研究で使用する各種書式・実施計画書の策定・研究事務局の運営を、海外などを含め当該薬の研究に関わっている製薬企業の方が保有していること。

 ではないかと考えられる。

 そして本来「医師主導臨床研究」でなければ許容される行為が多い中、それでも「医師主導臨床研究」を選択していた理由は、倫理委員会や製薬企業内での承認に手間がかかることと、製薬企業が営業に利用し研究者が業績として発表する際に「医師主導臨床研究」の方が聞こえがいいからであろう。

 このあたりの原因を認識しなければ、対策を立案し研究不正の事前抑制を行うことは難しいように思えるが、この最終報告書では既に見たようにいま一つの状況である。当然次に見ていく改善案も、どこか上滑りした内容になっている。

上滑りする改善案

 特別調査委員会が示した改善案は大きく分けて3系統である。

(1)倫理教育
(2)倫理申請・監査の改善
(3)MRの入館制限

 それぞれ問題点が多いので見ていこう。

▽倫理教育について

 特別調査委員会は「医学部附属病院では研究倫理教育を行っていたにもかかわらずこのような問題が発生した背景には、臨床研究、特に研究者(医師)主導の臨床研究に関する知識の不足と心構えの甘さが根底にあり、また、利益相反に関する自己申告に具体的な例示が乏しく、自主的に判断して行わなければならないところにある。より具体的な事例に基づいた教育が必要と考えられた」と述べ、最終報告書の5ページでは「再発防止のために、利益相反の管理と臨床研究の信頼性確保に関する教育を職員に徹底する。『東大研究倫理セミナー』を改善し、e-learningも併用して臨床研究者の教育を行う」としている。

 既に再三指摘しているが黒川教授はこの倫理セミナーの講師を務めていた。

 3月14日の中間報告書の段階でも、倫理セミナーの活用が掲げられていたが、当時の記者会見で質問した際に門脇病院長は黒川教授が講師を務めていた事実を認識していなかった。

 今回の最終報告書ではさすがに以下の記載が加えられている。

 「特に黒川教授は臨床試験審査委員会委員長や東大研究倫理セミナーの講師を歴任し、十分に知識や情報を持ち他に範を示す立場にありながらこのような事態が生じたことは誠に遺憾である」(22ページ)

 またA医師は本来SIGN研究の倫理申請をすべきIRBという審査の厳しい委員会を意図的に回避し、別の倫理委員会に申請を行った可能性が疑われる。

 さらにA医師は最終報告書記載のメールのやり取りからも、ディオバン(バルサルタン)に関する不正関与事件のニュースを見て、SIGN研究が問題にされる可能性があることを認識していた。

 つまりSIGN研究事件は十分に知識のあった人たちが引き起こしている。したがって同様の事例は教育により回避できるものではない。

▽倫理申請・監査の改善

 倫理申請の改善については以下のような記述がなされている。

 「利益相反申告書作成時に、詳細な自己点検チェックリストを利用することにより、不適切な利益相反関係の存在を申請者自身が自己点検できるようにする。またこのチェックリストを申請書に添付するようにして、倫理審査時や利益相反管理で適切な対応をするために活用することとした」(24ページ)

 「利益相反アドバイザリー機関は利益相反自己申告の内容によっては、利益相反の観点から研究計画自体を不承認とする助言を与えたり(後略)」(24ページ)

 「倫理審査申請時に個人情報の扱いに関するチェックリストを記載するようにして、個人情報の問題を研究者が自ら認識する様にし、また、その適正性を倫理審査委員がチェックし、審査の過程で直接研究担当者に確認できるように改定する」(25ページ)

 そもそも各種書類作成の手間をMRに代行させていたことが、今回の不正関与の一形態である。にもかかわらず改善案でさらに手間を増やすというのはどういうことなのだろうか?

 また誰が「不承認」とされるようなチェックリストを提出するのだろうか?

 既に倫理教育の部分で検討したが、SIGN研究ではそもそも意図的に虚偽の申請書が提出されているのである。いくらチェックリストを増やしたところで歯止めにはならない。

 次に監査機能の強化は、ぜひ行われるべきだろう。しかしこちらも注意が必要である。

 対策案を見ると、利益相反アドバイザリー機関に「専任の職員」を配置したり「平成26年度中に監査・信頼性保証室を新設」するなど、予算と人員のかかりそうなことばかりが書かれている。

 文科省から予算がついたのか、もしや天下りのポストになるのではないかと勘繰りたくなる。

 実効性のある機関になるのか、十分に監視していく必要があるだろう。

▽MRの入館制限

 東大病院では4月から、アポなしのMRの病院内への入館を禁止し、面会する場合も区域を制限しているとのことだ。

 しかしそもそも先に見たように、研究責任者である黒川教授は「病棟にN社社員が出入りしていること」を認識していなかった、と主張しているのである。

 また東大病院の最終報告書ではなぜか記載されていないが、ノバ社報告書によると、SIGN研究の実施計画書の検討会議はノバ社の会議室でA医師を交えて行われており、実施計画書の発表はノバ社のイベントで黒川教授とA医師が行っている。

 MRの入館制限がどの程度研究不正の抑止に役立つのか疑問である。

▽小括: 結局どうすべきなのか

 こうした研究不正は既に検討した本質からして、事前抑制で完全になくすことが難しい。事後抑制となる処分を粛々と進めていくことが肝要である。

 既に東大病院と東京大学にはちゃんとした内規があるのだから、それに従って運用を進めていけばよいだけである。「e-learning」よりも「○○教授はこれをやって処分されました」の方が具体的であり、身につまされるだろう。

 また最終報告書に記載されているように「東大病院においては以前より、臨床研究に対し企業から直接研究資金や試験薬の提供がある場合には、寄付ではなく受託研究契約により受領し、当該企業から独立して計画・実施・解析することを、契約書中に明記するように対応してきた」(25ページ)という、契約型研究への交通整理を進めていくことも、現状の研究が製薬企業への依存体質から脱せない中で、不正関与が起きないようにするための策ではないだろうか。

東大病院の考える患者さんへの「適切な対応」とは

 最終報告書は冒頭で「臨床研究の信頼性を損ねる事態を起こしたことは遺憾である。患者の個人情報の流出に関して、患者保護の観点から説明と謝罪を含めた適切な対応を行っている」(5ページ)と述べている。

 また患者さんの臨床研究参加の同意について瑕疵があったことも、先だって倫理教育の箇所で引用した部分で認めている。

 そして最終報告書は後半部分で「当院から患者個人データが流出したことは極めて遺憾である。まず患者へ状況の説明と謝罪を早急に完了する必要がある。(中略)当院の患者に関しても報告と謝罪を4 月中に行なっている」(20ページ)と述べている。

 SIGN研究の研究不正が一般に報道されたのが1月17日であることからすると、東大病院は患者への報告と謝罪に3カ月かかったということになる。

 これが東大病院の考える「適切な対応」である。

まだまだ研究不正が出てきそうな東大病院

 この記事では扱わなかったが、東大病院では1月25日と3月23日に任意でアンケートを研究者に対して行い、ノバ社関係でSIGN研究のほかに4件の不正関与事件があること、新たにブリストル・マイヤーズ社関係で1件の不正関与事件があることを明らかにした。これらはいずれも黒川教授が率いる血液腫瘍内科で行われていた研究である。

 また血液腫瘍内科以外のものとして、今回の記者会見では急遽認知症研究の「J-ADNI」についての報告もなされた。

 門脇病院長は記者からの質問に「これ以外に不正事件はない」と答えていたが、武田薬品工業の降圧剤を扱った「CASE-J」や、エーザイが関わる「J-ADNI」を見るにそれぞれの診療科のヒット薬剤に関わる研究では、ことごとく同様の不正関与が行われていた可能性が高い。

 今後も上市薬に関する主要研究を、再確認していく必要がある。

 「医師主導臨床研究」が、真に「医師主導」の臨床研究になるよう、この記事が資すれば幸いである。


  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)  recommend
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
  削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告する?」をクリックお願いします。24時間程度で確認し違反が確認できたものは全て削除します。 最新投稿・コメント全文リスト

▲上へ      ★阿修羅♪ > 医療崩壊4掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
この板投稿一覧