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診断結果は「正常」、生まれた子供は「ダウン症」で賠償金1000万円「出生前診断」で間違えた医者の責任をどう考えるか
http://www.asyura2.com/14/iryo4/msg/197.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 7 月 10 日 08:36:36: igsppGRN/E9PQ
 

診断結果は「正常」、生まれた子供は「ダウン症」で賠償金1000万円「出生前診断」で間違えた医者の責任をどう考えるか
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39666
2014年07月10日(木) 週刊現代 :現代ビジネス


「検査結果は異常なし」。医師からはそう告げられた。でも、生まれてきた我が子はダウン症を患い、3ヵ月でこの世を去った―出生前診断の告知ミスをめぐる国内初の訴訟で、ついに判決が下された。

■「息子に謝ってほしい」

「私たちは息子が受けた苦しみに対して、ミスをした遠藤先生本人から謝ってもらいたいと思って訴えを起こしたんです。

確かに、もし告知ミスがなければ、あの子は生まれてこなかったかもしれない。でも一度生まれてきた以上は、痛くて泣いている我が子に、何かしてやりたいというのが親として自然な気持ちではないでしょうか。

ですから、賠償金が全額認められた一方で、『亡くなった子供に対して慰謝料を支払う義務はない』という判決が下ったのは残念です。たとえ私たちへの賠償金が減ったとしても、遠藤先生には一言、息子に対して謝ってほしかった」

こう語るのは、北海道北斗市に住む太田紀子さん(仮名、44歳)だ。

さる6月5日、太田さん夫妻を原告とする、出生前診断における「告知ミス」をめぐる訴訟で、函館地裁が判決を下した。国内初の判例となるその内容は、医師に計1000万円の賠償金を支払うように命じる厳しいものだった。

高齢出産が増えるとともに、急速に普及しつつある出生前診断。昨年春に始まった新型出生前検査では、お腹の胎児に先天的な異常があると知った妊婦のうち、9割以上が人工妊娠中絶を選んだというショッキングなデータも発表されている。

新たな医療技術には、つねに医療ミスが付きまとう。そしてそれが妊娠・出産にかかわる場合、ときにきわめて重く、複雑な問題を引き起こすこともある。太田さん夫妻に降り掛かったのは、まさにそんな難題だった。

本誌では、昨年の8月17・24日合併号で本事件について一度紹介しているが、ここで改めてその経緯を振り返っておきたい。

夫妻に4人目の子供が授かったと分かったのは、'10年秋。翌'11年3月、隣町の函館市にある産婦人科「えんどう桔梗マタニティクリニック」で超音波検査を受けたところ、お腹の胎児に異変が見つかったと告げられた。

「赤ちゃんの首の後ろが、少しむくんでいるようです」

胎児の後頭部のむくみは、先天的な染色体異常、とくに「ダウン症」として知られる21トリソミー(21番染色体が、通常の2本ではなく3本ある)の可能性を示すものだ。すでに41歳と高齢での妊娠だった紀子さんは、万一のことを考えて、羊水検査による出生前診断を受けることに決めた。

羊水検査とは、母親のお腹に細い針を刺して子宮の中の羊水を少しだけ抜き取り、その中に含まれる赤ちゃんの細胞などを調べて、染色体異常がないかどうか確定診断するもの。検査を受けて約3週間後、その結果がえんどう桔梗マタニティクリニック院長の遠藤力医師から夫妻に告げられた。

「検査結果は陰性でした。何も心配はいりません」

そう聞いて、夫妻は安堵した。ともに40歳を過ぎてからの4人目の子供ということもあり、もし障害をもって生まれてきた場合、育てられるかどうか不安があった。すでに学校や幼稚園に通い始めた上の子たちの子育てにも、影響は避けられないだろう。夫妻も遠藤医師も口にこそ出さなかったが、検査の結果次第では、人工妊娠中絶も視野に入っていた。

しかし、ついに出産を迎えた'11年9月、事態は一変することとなる。紀子さんは、当時のことをこう述懐した。

「予定日の3週間前、胎児の状態が危ないと言われ、緊急帝王切開で出産しました。猫のようにか細い声ではありましたが、息子の産声にはホッとして涙が出ましたね」

その直後、夫妻は出産を担当した医師からこう告げられる。

「お子さんは、呼吸機能が十分に働かず、自力で排便もできません。ダウン症をはじめ、多数の合併症を起こしています」

紀子さんが続ける。

「その瞬間は、何を言われたのか理解できませんでした。羊水検査で『問題ない』と言われていましたから、いわば絶対にあり得ないはずのことが起きたわけです。担当の医師に『おそらく、遠藤先生のミスだと思います』と言われて、ようやく何があったか分かりました」

赤ちゃんの障害は重かった。ダウン症、肺化膿症・無気肺、肝線維症、黄疸、肺や心臓・皮膚からの出血、腹水貯留……10以上の合併症があり、すぐに集中治療室へと運ばれてゆく。

■「選択」の機会が奪われた

生まれ落ちたその瞬間から、保育器の中でチューブにつながれ、抱き上げてやることすらできない。内出血で皮膚は紫色にうっ血し、やがて小さな口元には人工呼吸器も取り付けられた。

「やけどの水ぶくれのようになったお腹の皮がベロリと剥離してしまいました。もしあの状態で意思表示のできる大人であれば、あまりの苦痛に『殺してくれ!!』と叫んでいたでしょう」(裁判に際し、紀子さんが記した陳述書より)

懸命の治療も空しく、その年の12月、赤ちゃんは3ヵ月というあまりに短い生涯を閉じた。

太田さん夫妻が、遠藤医師に計1000万円あまりの損害賠償を求める訴訟を起こしたのは、2013年5月のことである。

夫妻の訴えは、大まかに言って2つの部分に分けることができる。1つめは、「夫妻に羊水検査の結果を誤って伝えたことについての慰謝料」だ。これに関しては、以前本誌の取材に対して、遠藤医師が自ら、

「今回の件は、私がデータを見誤ったことに起因していることで、自分の過失を認めております」

と答えている。判決でも、この訴えはほぼ全面的に認められる結果となった。東海大学法科大学院・実務法学研究科教授の服部篤美氏が解説する。

「判決文によれば、裁判所は『太田さん夫妻は、遠藤医師による説明ミスのせいで妊娠を続けるか否かを選択する機会、また、妊娠を継続した場合に、生まれてくる子供に対して心の準備や養育の準備をする機会を失った』という理由で慰謝料を認めたのだと読み取れます。

'97年には、京都府で医師が羊水検査を母親に受けさせず、ダウン症の子が生まれたことから『選択の機会が奪われた』として母親が医師を訴えたケースがありましたが、この訴えは退けられています。それに比べて、今回は医師の側に『検査結果の見落とし』という明らかな過失があるため、請求が認められ、賠償額も1000万円と大きくなったのではないでしょうか」

■生まれなければ苦痛もない

ただ、「妊娠を続けるかどうか」、すなわち「障害が分かれば中絶するかどうか」を選ぶことの重要性を裁判所が認めた今回の判決は、妊娠・出産をめぐる日本の「ダブルスタンダード」を図らずも白日の下にさらすこととなった。

日本では、人工妊娠中絶は特別な場合、つまり「暴力などによる妊娠」あるいは「身体的または経済的に子供を産み育てることが困難な場合」にだけ法律で認められており、それ以外の理由―たとえばダウン症などの先天的障害―で中絶することは、厳密には堕胎罪≠ノあたる。

それにもかかわらず実際には、この「身体的または経済的に産み育てることが困難」という部分を拡大解釈して、出生前診断で異常が見つかった場合にも、医師の判断のもとで中絶が行われている。その数は、一説に年間30万件以上と言われている。

太田さんの夫である隆弘さん(仮名)も、当事者になって初めてこうした現実を知り、違和感を抱いたという。

「テレビドラマや小説でも、望まない妊娠で中絶する、というシーンが普通に出てきます。中絶が本当は法的に厳しく制限されているなんて、ほとんど誰も知らないでしょう。もちろん、医師も本音と建て前のギャップを知った上で中絶を行っている現実があります。

裁判で遠藤医師側は、『中絶の権利は法的に認められていないのだから、中絶の機会が奪われたと主張するのはおかしい』と言っていました。それでは私たち夫婦だけに法律を厳格に適用するのか、他の患者さんはどうしているんですか、ということになる。

今回の判決文に、これまで認められていなかった『中絶の選択肢』が明確に盛り込まれたことは、一定の成果かもしれません」

一方で、太田さん夫妻が起こした2つめの訴えは、かなり特殊といえる。分かりやすく言うと、その内容は次のようなものだ。

「遠藤医師が検査結果を正しく伝え、人工妊娠中絶を選んでいれば、赤ちゃんは生まれず、苦痛を味わうこともなかった。したがって、『生まれたことによって赤ちゃん自身が被った苦痛』に対しても、慰謝料が支払われるべきである」

冒頭にも述べた通り、日本でこのような訴えを起こしたのは太田さん夫妻が初めてだ。ただ、海外に目を転じれば前例がないわけではない。出生前診断が日本よりもはるかに普及しているフランスやアメリカでは、賠償が認められた例がいくつか存在する。

アメリカで出生前診断に関する訴訟を多く手がけてきた、弁護士のデイヴィッド・ミラー氏が言う。

「太田さん夫妻のような訴えは、専門的には『ロングフル・ライフ(不当な人生)訴訟』と名付けられていて、フランスでは以前、障害をもつ子供本人に対する賠償金支払いの訴えが認められるケースもありました。

しかし、こうした主張はやはり倫理的におかしいと考える人が多く、アメリカの裁判所でも州によって判断が割れている。近年では一部の州で、訴訟を起こすことそのものが禁じられるようになっています」

欧米と違って、出生前診断を受ける妊婦が全体の1割にも満たない日本では、そもそも生まれる前から赤ちゃんの人生を決めてしまうこと自体に、強い違和感を抱く人が多い。まして「生まれて来なかったほうがマシな子もいる」と言わんばかりの主張は、たとえそれがいくら苦痛に満ちた人生だったとしても、直感的には受け入れがたいと映るだろう。

信州大学医学部准教授で、自らもダウン症の長男をもつ玉井真理子氏は、「ロングフル・ライフ訴訟」の危険性についてこう語った。

「今回の判決の是非はともかくとしても、訴訟が起きたことそれ自体が、ダウン症をもつ人々に対する眼差しを、いっそう厳しいものにしてゆく可能性があるのではないでしょうか。

ダウン症の子イコール、親にとっては負担そのもの、という考え方に陥らないようにしなければなりません」

■倫理が追いつかない

今回函館地裁が下した判決も、こうした感覚に沿った「亡くなった赤ちゃんに対する賠償は一切認めない」というものだった。しかし、太田さん夫妻は、冒頭でも紀子さんが述べているように「真意は別のところにある」と主張する。夫の隆弘さんがこう語る。

「新聞報道を見て、『自分たちの息子の命を否定するなんて、薄情な親だ』と思う方もいらっしゃるでしょう。むしろ、診断ミスのおかげで子供に一目会えたならそれでいいじゃないか、と考える人もいるかもしれません。

しかし、苦しみ抜いて亡くなった息子本人に、先生から謝罪してもらうには、息子にも何らかの損害があることにしない限り、訴えることさえできないんです」

太田夫妻は当初、自分たちの訴えが先述の「ロングフル・ライフ訴訟」にあたるとはまったく知らなかったという。

自分たち夫婦だけでなく、亡くなった息子に対しても頭を下げて欲しい―それを親心ととるか、それとも身勝手ととるかについては、意見が分かれるところだろう。

遠藤医師は、今回改めて取材を申し込んだ本誌に対し、「この件に関しては一切お話しできない」と沈黙を守っている。太田さん夫妻によれば、遠藤医師は赤ちゃんのダウン症が分かった直後は「私の責任です」「一緒に育てさせてくれ」と親身になって相談に乗っていたが、ある時点からパッタリ連絡がつかなくなり、裁判が始まってからは言葉を交わすことさえなくなったという。

あるベテラン産婦人科医は、遠藤医師の立場をこう慮った。

「こうした訴訟の当事者となると、医師会と患者さんの板挟みになり、難しい立場に置かれてしまうのが医者というものです。1000万円という賠償金額も、少し高いと感じます。

私も、一日に何人もの妊婦を診て疲れているときに、同じような見落としやミスをするかもしれない。出生前診断を受ける人が今以上に増えれば、産婦人科医はこうした訴訟に常に悩まされるようになるでしょう」

いくら技術が進んでも、ヒューマンエラーはなくならず、倫理は追いつかない。医療の発展は、本当に人を幸せにするのか―たった3ヵ月でこの世を去った赤ちゃんは、大きすぎる問いを遺して逝った。


「週刊現代」2014年6月24日号より


 

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