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東京の医療が崩壊の瀬戸際 看護師不足、病院赤字で報酬カット…医療事故増加の懸念(Business Journal)
http://www.asyura2.com/14/iryo4/msg/669.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 10 月 10 日 17:17:05: igsppGRN/E9PQ
 


東京の医療が崩壊の瀬戸際 看護師不足、病院赤字で報酬カット…医療事故増加の懸念
http://biz-journal.jp/2015/10/post_11892.html
2015.10.10 文=上昌広/東京大学医科学研究所特任教授 Business Journal


 首都圏の医療が崩壊の瀬戸際にある――。


 東京には13もの大学医学部がある。人口あたりの医師数も、徳島や京都と並び全国トップレベルだ。東京の医療が崩壊の瀬戸際にあると言われても、多くの方は実感できないだろう。


 ところが、事態は深刻だ。誰も問題を認識しない間に首都圏の医療崩壊は加速しつつある。最近になって、ようやく一部のメディアが問題を報じるようになった。月刊誌「選択」(9月号/選択出版)は首都圏の私立医科大学の経営危機を報じた。
http://www.sentaku.co.jp/pick-up/post-4162.php

 同誌によれば、日本医大の場合、2014年度の赤字は158億円。約600億円の有利子負債があるという。総資本を自己資本で割った財務レバレッジは349%と大幅な借金超過で、流動比率(流動資産と流動負債の比)は70%と手元資金も少ない。普通の企業なら「倒産寸前」の状態といっていい。経営が悪化しているのは、日本医大だけではない。神奈川県の聖マリアンナ医大、北里大学も赤字だ。


 また、不祥事が続く東京女子医大は患者が激減しており、補助金も減額される。「選択」では、関係者が分院の身売りを進めていることが紹介されている。


 朝日新聞も、8月24日の朝刊で『病院経営「8%」ショック』という記事を掲載した。この記事の中で、千葉県の亀田総合病院が取り上げられ、最近の経営悪化で職員のボーナスを5-6%カットしたことが紹介されている。


■病院経営難の原因


 なぜ最近になって、東京圏の一流病院が経営難に陥ったのだろう。


 直接の原因は昨年の消費税増税だ。病院は医薬品などを仕入れる際に消費税を負担するが、患者に請求できない。つまり、損税が生じる。これは、自動車など輸出企業の置かれた状況とは対照的だ。輸出品は海外での販売時に課税されるため、消費税が免除されている。多くの企業は仕入れなどで消費税を負担しているため、その差額を政府から還付される。前出の朝日新聞記事によれば、湖東京至・元静岡大学教授(税理士)は、大手自動車メーカー5社が14年度に受け取った還付金の総額を約6000億円と推計している。


 もちろん、厚労省も損税問題を認識している。そして、損税を補填するため診療報酬を1.36%引き上げている。しかしながら、これでは足りない。前出の亀田綜合病院でボーナスがカットされたのは、14年度の消費税支払い額が前年度より約4億円増えたためだ。17年春には消費税が10%に上がる。一方、財務省は診療報酬の減額を目指している。今後、診療報酬が増額されるとも考えにくい。このままでは、首都圏の医療はジリ貧だ。


 では、なぜ全国で首都圏の医療機関が真っ先に経営危機を迎えるのだろうか。


 それは、日本の診療報酬が全国一律の公定価格だからだ。診療報酬を抑制し、利幅が薄くなれば、コストが高いところから経営難となる。それは首都圏、特に東京だ。


 病院経営の最大のコストは人件費である。全体の50-60%を占める。特に問題となるのは、看護師の人件費だ。看護師は、病院スタッフでもっとも多い職種だからだ。日本看護協会によると、東京都の看護師の平均年収は523万円。全国平均の473万円より一割ほど高い。病院経営の合理化は人件費の抑制といっても過言ではない。ところが、看護師の給与には大きな国内格差がある(図1)。関東から近畿地方にかけて高く、東北地方や九州・四国・中国地方が安い。



(図1)看護師の国内の給与格差。「日本看護協会調査研究報告No.80 2008」を元に、近藤優実氏(東京医療保健大)が作成。


 このような格差ができるのは、看護師の数が違うからだ。図2に人口当たりの看護師数と看護師の人件費の関係を示す。



(図2)都道府県別物価補正後の看護師給与と人口当たりの看護師数。07年度全国物価統計調査、08年日本看護協会調査研究報告、12年衛生行政報告例を用いて、近藤優実氏(東京医療保健大)が作成。


 両者は高度に逆相関し、九州と関東地方の看護師給与には実に20%の差がある。多くの医療機関の利益率は数%程度だ。人件費にこれだけ差があると、競争にならない。東京の看護師の給与は、今後も上昇し続ける。看護師が足りないからだ。14年末現在、東京の人口10万人あたりの就業看護師数は727人で、埼玉・千葉・神奈川・茨城・愛知に次いで少ない。


 首都圏で看護師が不足しているのは、そもそも養成数が少ないからだ。例えば、東京の看護師養成数を西日本並にするには、看護学生の定員を一学年で5000人増員しなければならない。看護師育成のため、さまざまな試みがなされているが、看護師確保のハードルは高い。
http://medg.jp/mt/?p=6006

 首都圏の大学病院はコスト削減に懸命だ。医師にもしわ寄せがくる。私大医学部の五十代の教授は、「給料は手取りで40万円台」という。


 このようなコスト削減には限界がある。人材に投資しなければ、病院はレベルアップしない。女性医師が増えた昨今、福利厚生が貧弱で、アルバイトに依存する生活を強いれば優秀な人材は集められないし、肝心の診療が疎かになる。アルバイト三昧の無責任体制は医療事故につながる。東京女子医大がたどった道のりだ。


■対策


 では、どうすればいいのだろう。


 政府は、早急に診療報酬のあり方を見直すべきだ。全国一律の公定価格を止めなければならない。日本の財政状況を考えれば、首都圏の診療報酬を増額することは難しく、現実的には混合診療規制を緩和するしかない。


 ただ、これは多くの既得権者の反発を買うだろう。医療分野には、いまだに政府による価格統制や量的規制が強く残り、多くの利権が生まれている。先日も日本歯科医師連盟の迂回献金が問題となったが、この献金は診療報酬の優遇を求めたものだ。公定価格の弾力化などの規制緩和を、こうした既得権益層が素直に受け入れるとは考えにくい。成長戦略の第三の矢として、規制緩和を掲げている安倍政権は、果たしてどこまでやるだろうか。


 では、医療現場、特に病院経営者はどうすべきだろうか。


 私は「選択と集中」だと思う。その成功モデルが公益財団法人がん研究会である。05年の有明移転での借金、その後の赤字経営、さらに07年の粉飾決算問題で、存続が危ぶまれた。


 窮地を救ったのは、10年に顧問に就任した神奈川県土屋了介氏(現理事、神奈川県病院機構理事長)、11年から常任理事に就任した石田忠正氏(現JR貨物会長)だ。両者がタッグを組み、改革を断行した。競争優位な外科部門を強化した。手術数が増え、09年の1.4億円の赤字が、12年には32億円の黒字へと転換した。


 都内の急性期病院の多くが「総合病院」だ。競争力のない診療科が不採算部門となっている。その典型が小児科だ。少子化が進んだ都内では小児科は過剰投資になっており、縮小、統合していくしかない。生き残るには、このような診療科をリストラし、競争力がある診療科に集中するしかない。


 もう一つは、成長が期待できる地域との「交流」だ。具体的には東北地方だ。なぜ、東北地方なのか。それはコストが安いからだ。特に看護師の人件費が安い。宮城県ですら、平均年収は479万円だ。青森県にいたっては428万円である。優秀な人材が低コストで雇用できる。


■医師の逆流


すでに地盤変動は起こりつつある。内部留保を貯め込んだ東北地医療機関が存在感を示しつつある。郡山市に本拠を置く南東北病院グループは、12年4月に川崎市内に新百合ヶ丘総合病院をオープンした。東北から関東への「逆上陸」だ。


 仙台厚生病院も要注目だ。実現しなかったが、医学部新設に名乗りを挙げた。この病院の利益率は16.5%(12年度)。全国トップだ。数百億円の内部留保があり、関東の大学病院が経営難に陥れば、買収もあり得る。


 一方、東京から東北へという「医師の逆流」も起こりつつある。それは、東北の病院経営者が人材投資に熱心だからだ。


 例えば、南相馬市立総合病院の一年目の研修医の給与は、月額66万2500円だ。都内の私大医学部教授より高い。この病院は多くの優秀な若手医師が集まり、急成長している。


 いわき市のときわ会は、加藤茂明・元東大分生研教授を招き、基礎研究のラボを立ち上げる予定だ。勤務する若手医師が論文を書き、実績を上げることができる。人件費も含め、その費用は数千万円に及ぶだろう。経営難に喘ぐ東京の大学病院ではあり得ない。さらにときわ会は上海の復旦大学やエジンバラ大学との草の根の交流も進んでいる。ときわ会が泌尿器・腎臓疾患に特化し、高収益だからこそできる「攻めの経営」だ。


 マスコミは「福島は風評被害で悲惨。医師不足に喘いでいる」というステレオタイプの報道をすることが多い。ところが実態は必ずしもそうではない。あまり報じられないが、福島でも、一部の病院には全国から医師が集まってきている。


 では、いつから東北の病院が元気になったのだろうか。きっかけは東日本大震災だ。この不幸な出来事を経験し、東京と東北がつながった。この結果、東北の医療は活気づいた。


 問題は東京だ。現在の政策が続く限り、崩壊は時間の問題だ。どうやって生き残るか。地に足の着いた議論が必要である。


(文=上昌広/東京大学医科学研究所特任教授)


 

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コメント
 
1. 2015年10月10日 23:49:17 : 6c8bEZtBuA
医者の収入アップの為のプロパガンダ。
東大の上昌広か。
医者はバブル景気で驕っている。
もうじき保険点数の改悪の時期だからな。
今度も歯医者の点を削ってゼニゲバ医師に回すとさ。

2. 2015年10月11日 01:10:04 : Xz4MCg18wA
医者がいなくなれば病人が減る。

3. 2015年10月11日 16:22:46 : mAKWjxKjsw
女子医大身売り話は嘘。
足立区の江北の開発区に移転する、というのがホント。
さらに大きな高機能病院になるんだとさ。
嘘でマイナスイメージを盛り上げちゃいかんよ。
理由は、今の土地には、高圧電線が近くにあって危険だから。
行ってみればわかる。

4. さっちゃん56 2015年10月11日 17:10:02 : NmV8UWdbqj6pY : GTCjqCGDK6
東京女子医大の分院では、研修医を終えて、専門医を取得していない医師が、月給20万円って言ってた。ボーナスも残業代もないけど、残業は多いと思われました。生活きついと思う。バイトはもらってたみたいだけど。

5. 2015年10月12日 01:23:01 : 6c8bEZtBuA
国立大医学部の教室員の結婚式に行ったら、祝電は製薬会社のオンパレード。
呆れて物も言えん。
医者が足りんというが、朝2〜3時間、夕方2〜3時間しか診療してない医院がほとんど。
ちゃんと8時間営業していない。
医者は働かずして高給取り。

6. 2015年10月12日 01:25:16 : 6c8bEZtBuA
医者の当直バイト、一晩で20万円なんてとこもある。
これが実態。

7. 2015年10月13日 13:59:43 : jXbiWWJBCA
日本の病院を補助金漬けにして経営破綻に導く厚労省 組織防衛が最優先、改革者は邪魔だ村から出て行け!
2015.10.13(火) 川嶋 諭
〔AFPBB News〕
 「あなた、その黒い顔じゃぁ、医者にかかったことはほとんどないでしょう。さては健康診断も受けていないんじゃないか」
 千葉県にある亀田総合病院の副院長だった小松秀樹医師と初めて会ったのは9月中旬だった。初対面でいきなりこう切り出されて、図星なだけにどう答えたものやら窮していると、間髪入れずに「それでいいんです」とおっしゃる。
 「健康診断を受けようが受けまいが、寿命はほとんど変わりません。医師はそれほど大きな役割を果たしているわけではないんです」
 小松さんが自らも執筆し監修役も務めた「地域包括ケアの課題と未来――看取り方と看取られ方」(ロハスメディア)が出版され、その取材の冒頭でのことだった。
 この本は、日本の医療や社会保障制度が崩壊へ向かいつつあるなか、大きな問題になっているお年寄りの介護と医療の問題、またどのような死を迎えるのかについて、様々な角度から検証し考察を加えたもの。
亀田総合病院を懲戒解雇
「地域包括ケアの課題と未来〜看取り方と看取られ方」(ロハスメディア、小松秀樹ほか著、2160円)
 1冊の本の中に日本が抱える問題点がほぼ網羅され、さらに解決のための考え方が記されている。非常に読みやすいので、ぜひご一読をお勧めしたい1冊である。
 例えば興味深い内容の1つに、貧乏な人ほど病気になりやすく、要介護になりやすいという統計がある。
 実際、お金持ちほど医療費を使わず、貧乏になればなるほど医療費をたくさん使う。それが示すものは、「日本の増え続ける医療費は社会の貧困化ともリンクしている」という事実。
 医療費抑制と言うとすぐに医療点数の切り下げに向かうが、実はそのような対処療法よりも社会の貧困対策のような根本問題を一つひとつ改善させていくことが大切だ。医療点数の削減はむしろ医療崩壊の速度を速める危険性すらある。
 このように、私のような素人だけではなく、医療従事者が読んでも目から鱗が落ちそうな内容がこの本には詰まっている。
小松秀樹医師。千葉県鴨川市で撮影。1974年東京大学医学部卒業、山梨医科大学泌尿器科学教室助教授、虎の門病院泌尿器科部長などを経て2010年5月亀田総合病院副院長。2015年9月懲戒解雇を言い渡される。著書には「慈恵医大青戸病院事件〜医療の構造と実践的倫理」【日本経済評論社)、「医療崩壊〜立ち去り型サボタージュとは何か」(朝日新聞社)などがある。
 さて、小松さんは日本が抱える医療問題の解決に自らも積極的に取り組んできた。東日本大震災の時にも機敏に動いて福島県の浜通りで水不足と設備の問題で十分な治療ができなくなっていた人工透析患者などを救い、亀田総合病院の名を高めた。
 また、メディアを通して医療現場からの貴重な情報発信を続け、行政や医師会などに歯に衣着せぬ指摘をされてきた。日本の医療を良くするために欠かせない人材と言える。機会があればぜひお会いしたいと思っていた。
 実際、この本にも書かれているが、介護の分野でファイナンスの専門知識を持ったソーシャルワーカーの必要性などユニークな発想と実行力を取材して、本物の改革者だと確信した。ただ、少し気になった点もあった。
 この先生も敵が多いに違いないと感じたのだ。メディアへの寄稿からもそれがうかがえたが、残念なことにその心配がしばらくして形となって現れてしまった。
行政への批判が原因
 9月25日、勤務先の亀田総合病院の副院長を突然、懲戒解雇されてしまったのだ。懲戒解雇というのは多くの場合、横領などの犯罪行為をした社員に適用されるものだろうが、小松さんの場合には、行政に対して"真っ当な"批判をし過ぎたために懲戒解雇されたというのである。
 真っ当な理由とは、先週、関家一樹さんに「消費増税で厚労省が省益拡大、私立病院に人事介入」の記事で解説してもらったのでお読みいただきたいが、私としても直接ご本人からお話を聞かなければと思い、予定を変更して急遽、千葉県鴨川市に出かけた。
川嶋 突然のことにびっくりしました。それにしても小松さんのこれまでの貢献を考えれば、懲戒解雇とは不自然さが否めません。個人的な恨みが表れているような気がしてなりません。前から兆候のようなものはあったのでしょうか。
小松 亀田総合病院の亀田隆明理事長とは、病院の運営方針を巡って対立したことはあります。気配はあったのですが、本当に懲戒解雇を言い渡されたのにはびっくりしました。
 9月2日にさかのぼります。この日、私は会議で外に出かけていました。夕方、病院に戻ると、職員が忠告してくれた。
 「幹部がただならぬ気配で集まった。9月中に小松先生を解雇すると理事長が息巻いている」
 私が厚生労働大臣宛に厚労官僚の不当な圧力・行為に対して申入書を提出していたのですが、それのコピーがどういうわけか、この日、千葉県の職員を通じて亀田隆明理事長にメールで送られました。実は後日、これが回り回って私の手もとにも届いたのです。
 この申入書というのは、お読みいただいた「地域包括ケアの課題と未来――看取り方と看取られ方」の本に直接関わる問題です。この本は、亀田総合病院地域医療学講座という学術研究の成果物です。
小松 2013年度から3年間、地域医療再生臨時特例交付金という補助金をいただいて始まった講座で、地域の医療人材確保が目的です。
 高齢化時代が本格化する中で、期待が高まっている地域包括ケアについて、例えば高齢者の財産管理などこれまでほとんど研究されてこなかった分野なども含め実践的に研究を進めることにしました。
 地域で先進的な取り組みをしていることを全国に発信することで、医療人材を確保しようと考えました。被災地である福島県の南相馬市立総合病院で医師集めに成功した方法です。
 実はこの補助金を巡って、既に決まったことなのに千葉県の担当者から今年5月、2014年度は1800万円を1500万円に減額、2015年は打ち切るとの通告を受けました。
 予算がなくなったという説明でしたが、どう考えても法律に違反している。厳重に抗議し、千葉県に改めて説明を求めました。するとその担当者の上司から、減額・打ち切りは誤りであったとの謝罪を受けました。
 これは予算の恣意的流用と見られても仕方がないと思います。そこで、この経緯を記し、担当者の処分を求めた文書「千葉県行政における虚偽の役割」を発表しました。
 すると、亀田の経営者兄弟から内密の話があると呼び出されました。何と、厚労省関係者から記事を書くのをやめさせろ、今後、行政の批判を書かせるようなことがあれば亀田の責任とみなす、そうなれば補助金が配分されなくなる、とほのめかされたと言うのです。
 後から考えれば、厚生行政を批判し続けてきた私への当てつけだったと思われます。この厚労省関係者の名前を理事長の周辺の人物が人を介して私に教えてくれました。
 そこで、厚労大臣への申入書の原案を作成し、厚労省の高官である知人に、どの部署に提出したらいいのか相談しました。その知人は、内容が内容だけに放置できず、しかるべき担当部署に文書を渡して対応を頼んだのだと想像します。これが千葉県に送られ、9月2日、亀田隆明理事長に届けられたのです。
役所への批判をやめさせろ!
川嶋 つまり、補助金は国や自治体が出しているものなのに、裁量権をちらつかせて「私たちの言うことを聞かなければ補助金はどうなっても知らないぞ」という一種の脅しだったのですね。
小松 ええ。私が厚生労働大臣宛に送った申入書のPDFがメールで亀田隆明理事長に送られてきて、そのメールには「別添情報提供させていただきます。補足の説明でお電話いたします」とありました。このPDFには、「千葉県行政における虚偽の役割」も入っていたので、よほど批判が効いたものと思います。
 電話の内容については知る由もありませんが、その後、私が懲戒解雇を申し渡されるまでの経緯から、これ以上小松秀樹に役所の批判を続けさせるのなら、補助金の類は今後一切出せないというような内容だったと推察されます。
川嶋 言論を弾圧しようとした官僚を実名で厚生労働大臣宛に告発したことで、役所としてはもう堪忍袋の緒が切れたということでしょうか。
 関家一樹さんが今回の問題は消費増税を利用して権益拡大を図った厚労省のやり過ぎを指摘していますが、民間の病院の人事まで介入していたとすれば、これはもう常軌を逸していますね。もっとも、処分したのは亀田総合病院を運営する医療法人鉄蕉会であって、自分たちは何の関係もないと言うのでしょうが・・・。
 しかし、不思議なのは亀田さんです。独立した民間の病院として経営に自信があればお役所の"指導"に対して毅然とした態度を取っていればいいわけでしょう。
 千葉県に亀田総合病院ありと言われるわけですから。房総半島のリゾートマンションは建設時に比べてみな大きく値を下げているそうですが、例外は鴨川だと聞いたことがあります。亀田総合病院があるのがその理由だと。
 でも、その病院も実態は補助金漬けになっていたということですか。
小松 補助金漬けというほどもらえるとは思いませんが、裁量幅があるので苦し紛れにもそれを期待していたのでしょうね。もともと水面上にやっと顔を出している程度の収益力でしたが、2014年に消費税が引き上げられてからいよいよ苦しくなり、職員のボーナスも引き下げられました。
川嶋 診療費には消費税のアップ分を加えられないのに仕入れには3%分の消費税が上乗せされてしまうので、仕入れ価格が上がった分、病院経営が悪化してしまうという問題ですね。
 そして、病院経営を圧迫した分の消費税相当額を厚労省がプールして補助金として還付する。言うことを聞く病院とそうでない病院に差をつけることが可能になるわけだ。
小松 はい。でもそれだけではないんです。亀田総合病院側にも問題がある。環境が厳しいなら厳しいなりに経営力を発揮すべきでしょう。実際、私は2010年に亀田に来てからかなり経費削減の努力をしてきました。
 例えば、診療材料や薬の種類ですね。医者というのは自分の気に入った診療材料や薬があって、黙っているとそれを使いたがるものです。亀田のような大きな病院になると、医者がちょっとした我がままを言っただけで経費がかさんでしまう。
 薬も同じで、似たような薬効なのに医者がそれぞれ自分の使い慣れている薬を使っていたら、在庫がいくらあっても足りなくなってしまいます。私はそれらをかなりバッサリやりました。
川嶋 医師仲間から反発が強かったでしょう。それでもやり切るのはすごい。経営にこういう努力は絶対に必要です。日本の製造業はその力が強いから国際競争力があるとも言えます。
 日本の病院がこういう原価低減にこれまで本気でなかったとすれば、これは効果が上がりますよ。私もこれまでの取材を通して、例えばキヤノンなど、数え切れないほど成果を上げたケースを見てきました。
小松 でもねぇ、こういう細かい努力を続けても、節約するそばから使ってしまっては何もならない。例えば、亀田総合病院は中国での事業を始めようと、調査や準備を続けてきました。
 日本は人口が少なくなるから海外に活路を見出そうというのは分からなくもない。しかし、あまりに時期が悪すぎました。
 しかも、中国人相手の診療で収益を上げようというのか、中国人の患者を房総半島まで連れて来ようというのか、あるいは中国で日本人を診療しようというのか目的がはっきりしませんでした。事業の場所も変遷しました。
 最終的に現地調査の結果が悪く、支援してきた経済産業省も政府系金融機関も手を引いてしまいました。それでも中国の事業を継続すると言う。
 そうかと思えば、陽子線治療という先端的な手法を導入すると言う。確かに先端ではあるのですが、最近言われているところでは効果がそれほど高くない。
 前立腺がんなど患者数の多い疾患で、従来の放射線治療を上回る治療効果が証明できなかったのです。建設費用は機器を製造している会社が出すと言うのですが、相当数の患者を集めないと違約金を取られる。小さくコストを削っても、こういうところで湯水のようにお金を使われては赤字になるのは目に見えています。
川嶋 それはまさに経営の問題ですね。病院に限らず、一般企業でも似たようなことは起きるんだと思います。
 利益率はわずかでも会社の規模が大きいと、経営者の手もとにはそれなりに大きな額のお金がありますから、新しい技術やら海外投資の誘惑にかられてしまう。でもそれは悪魔のささやきなんです。
 これは東南アジアのタイで取材したことなんですけれども、日本が少子化で経済が縮小していくのは目に見えているから、成長力のある東南アジア、中でも親日国で最も日本との経済的結びつきが強いタイに進出しようと、ここ数年で日本の地銀や信用金庫がこぞって進出したそうです。
 ところが、海外はそんなに甘くない。全くと言っていいほどビジネスになっていないようです。
 それはともかく、経営がしっかりしていたはずの亀田総合病院がそういう罠にはまるとは・・・。どうしてなんでしょう。
小松 経営トップの問題が大きいと思います。中国や陽子線治療などはみなトップの判断です。コスト意識より世間体が気になってしまう。海外や先端治療は格好いいですからね。世間から亀田はすごいぞという目が向けられる。
 コストのことは二の次なんです。経営トップに長く座っていて今までうまくやって来られたからこれからもそれが続くと思っている節があります。長い間、権力の座にあると環境の変化が見えなくなる典型例のようなものでしょう。
 海外、特に欧米では権力を持ち続けて周りが何でも言うことを聞いてくれる環境が続くと、傲慢になっていき、これが企業経営の大きなリスク要因になるという研究が盛んだそうです。一種の人格障害で、周囲の声に耳を貸さなくなり冷静な判断ができなくなってしまう。
 2008年のリーマンショックでは巨額の損失を被った大企業が世界で続出しましたが、その多くの企業で傲慢経営が見られたようです。
 今回の私に対する処分はあまりに稚拙で乱暴です。冷静で緻密な判断があるようには思えない。権力者を誰も止められなくなっている。
川嶋 欧米でガバナンスの問題が強く叫ばれるようになったのはリーマンショックより前のエンロン事件が契機だったと思います。経営をチェックする様々な取り組みがされてきましたが、権力者の暴走はなかなか止められないということなのでしょう。
 日本の病院経営の場合には、また別の問題もありますね。
 混合診療などやれば効果が期待できる改革も進めずに、消費増税で病院の経営を圧迫しつつ一方でその消費税分を補助金という形にして官僚支配を強める。これでは経営者のやる気を完全に削いでしまいます。
 共産国家の国営企業と同じ。競争力が高まるはずがありません。私立の亀田総合病院の場合もそういう面はあったのでしょうか。
小松 これは病院外のある人から聞かされた話なんですが、亀田隆明理事長の補助金ねだりが目立って問題になっているということでした。亀田さんにそのことをただすと、政治的反対勢力が意図的に流している風説に過ぎないと一蹴されました。
 しかし、病院の経営が苦しくなると補助金がもらえないか検討するようなことを何度も言っていたこともあり、根も葉もない噂とは言えないようです。
川嶋 経営努力より補助金ですか。そうなると、コストを削減しようとする小松先生のような人は逆に邪魔になるかもしれませんね。
 それで最初の話に戻りますが、「官僚批判をするなら補助金を減らすぞ」という文句が経営トップにとって殺し文句になるわけですね。小松先生の懲戒解雇はそういうストーリーでしたか。
小松 補助金が入っていると、官僚の立場はぐんと強くなります。
 亀田総合病院地域医療学講座という補助金の入った講座で、私が補助金の削減はおかしいと食ってかかった時、彼らがターゲットに設定したのは、NPO法人のソシノフでした。
 「得体の知れないソシノフに補助金が無断で転用されている恐れがある」と言うのです。噂まで流されました。もちろん、一切そんなことはしていません。こういうこともあろうかと、予算制にして、部署の異なる3人の承諾がなければ支出できない仕組みにしておいたのです。
 このソシノフのことを説明しておきますと、まちづくりのために今年2月に設立した団体で、社会課題解決が目的です。具体的には、地域包括ケアに関する業務の約束事(規格)を作成し、認証制度などを考案します。これを継続的に議論し、発展させていきます。純粋な学術研究である亀田総合病院地域医療学講座の活動内容は、ソシノフとの連携が前提でした。
 高齢化が進む日本で、医療の問題、介護の問題に真正面から取り組み、その問題解決と地域活性化を両立させる方法を考えていこうという非営利団体です。
 亀田総合病院のある千葉県の南房総地域(安房地域)には温暖な気候と豊かな自然があります。また人件費も比較的安い。一方で目立った産業がない。
小松 これに対して東京は何でも揃っているようで実は看護師が足りない、介護施設が足りない・・・と高齢化対策が実は大変遅れている。しかも、今後、高齢者が急増します。
 そこで、安房地域に日本一高齢者が生活しやすい環境を整えて、東京からお年寄りに移住してもらおう。そして全く新しい高齢者支援サービスなどを提案して、安全で豊かな老後を送り、安心して死を迎えられるようにしようと考えました。
 新しいサービスは福祉や介護に関わる現場の人たちがアイデアを出し合って少しずつ進歩させていく。お役所の指導ではなくて、民間の創意と工夫を集めることで新しいビジネスが育つ可能性がある。
 そういう活動を支援していこうというのがソシノフの役割です。
 ところが、亀田総合病院地域医療学講座につけられた補助金がソシノフに流用されているのではないか、そうだとすればけしからん、という"指導"があったようです。
 実際、ソシノフの代表理事が亀田さんに呼ばれ、行政に嫌われているだけでも問題だ、もう亀田総合病院はソシノフと関われないときっぱり宣言されてしまいました。私益のためには公益は吹っ飛ぶということです。
川嶋 お話をうかがうと、このソシノフの取り組みは、日本の高齢化対策の先端的取り組みの1つじゃないですか。
 医療に限らず、国が主導してトップダウンで全国一律の対策を講じる時代ではなくなったと思います。地域が地域らしさを生かしながら、みんなでアイデアを出し一歩進み半歩後退しながらも、全体としては着実に進んで行く。
 そんな取り組みこそ必要だと思います。そういうものを標的にするとは、しかも権益拡大が理由とすれば、大きな問題ですね。
 ところで、小松先生はこのあと、どうされるおつもりですか。
小松 私の処分は明らかにおかしいので、戦っていくつもりです。一方で、時間ができた分、高齢者の訪問医療を研究したいと思います。
 これまで手術ばかりやってきたので、私がすぐにやるのは難しい。誰かにかばん持ちをやらせてもらえればと思っています。どんな問題があり、どのように解決すべきなのか考えてみるつもりです。
川嶋 それは素晴らしいですね。どうもありがとうございました。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44958 


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