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富士山の噴火予知は、なぜ難しいのか 富士山科学研究所・火山学者の声を聞く(後篇) JBpres
http://www.asyura2.com/14/jisin20/msg/722.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 6 月 27 日 00:49:05: igsppGRN/E9PQ
 

           御嶽山から上がる噴火の煙(2014年9月29日撮影)。(C)AFP/KAZUHIRO NOGI〔AFPBB News〕


富士山の噴火予知は、なぜ難しいのか 富士山科学研究所・火山学者の声を聞く(後篇)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44159
2015.6.27 堀川 晃菜 JBpres


前回記事
富士山、2001年に活発化するも「いまは平常」 富士山科学研究所・火山学者の声を聞く(前篇) JBpress
http://www.asyura2.com/14/jisin20/msg/695.html


 全国各地で火山が活発化し、沈黙を続ける活火山・富士山に注目が集まっている。前編に続き、富士山の麓に拠点を構える山梨県富士山科学研究所 火山防災研究部 部長の内山高主幹研究員と、常松佳恵研究員に話を聞いた。


 前篇では、富士山は2000年末〜2001年にかけて、低周波地震が月に100〜200回ほど観測されたが、ここ最近は月に多くても50回程度で、地下水の状況等を踏まえても「平常的な観測状況」と見られていることを伝えた。1707年の「宝永大噴火」から308年間、沈黙を続ける富士山は「いつ噴火してもおかしくない」と言われ続けている。2000年末〜2001年には、噴火こそ起こらなかったものの、この時にマグマの動きが活発化したのではないかと見られている。


 後篇では、富士山の噴火の予知がなぜ難しいのか、そして、火山観測とシミュレーションの重要性について紹介したい。


■特殊な山「富士山」


● 東西に引き裂かれるフィリピン海プレート


 富士山の付近には、北米プレート、ユーラシアプレート、フィリピン海プレートの3つのプレートの収束地点がある(図)。3つのプレートが重なり合う三重点は、地球上でも極めて特殊な地点と言われている。さらに、フィリピン海プレートは、ユーラシアプレート、北米プレートのそれぞれの下に沈み込むことで、東西に裂けたようになっている。そのため、地中深くで発生したマグマが、この裂け目を通ることで、上昇しやすくなると考えられている。



画像提供:山梨県富士山科学研究所


● 噴火のたびに火口を変える


 これまで富士山は「噴火のデパート」と呼ばれるほど、溶岩を流出したり、火山灰を出したり、火砕流を起こしたり、様々なタイプの噴火を起こしている。また、マグマの量が多く、1回の噴出量が多いことが知られている。さらに、火口の位置は噴火のたびに異なるため、特定が難しい。富士山の噴火警戒レベルが通常状態の1から上がる場合には、噴火警戒レベル2(火口周辺への立ち入り規制)を飛ばし、一気にレベル3(入山規制)へと引き上げられる。


 富士山は、新富士山と古富士山から成り、その下には地表から隠れた火山がある。富士山は、噴火を繰り返し、約10万年間で現在の大きさとなった。新富士と古富士の区別は、噴火様式が変わった1万年前が境で、「噴火のデパート」と呼ばれるのは新富士のことを指している。2200年前に山頂火口から大規模な噴火をして以降、山頂火口では小規模な水蒸気爆発はあったが、マグマ噴火は起こっていない。



新富士火山と古富士火山、その下には、小御岳(こみたけ)火山と先小御岳火山が隠されている。先小御岳火山は10万〜40万年前に活発化し、小御岳火山は現在の富士山が活動を開始する10万年前までに活動を終えていたと考えられている。(山梨県富士山科学研究所から提供された図を改変して使用)


内山氏: 「例えば、八ヶ岳は誕生から100万年ほど経っていますが、富士山(古富士〜新富士)の歴史は10万年ほど。まだ『若い山』なので、それほど浸食していません。削られている古い山ならば、内部の状態を調べることができ、火山がどのように形成されてきたか知ることができます。しかし、富士山は、まだ内部の方まで調べられないので、どうしても分からない部分があります」


■噴火の予兆は捉えられるのか


 では、噴火の予兆は捉えられるのだろうか。2014年の御嶽山の噴火を振り返ってみたい。


 2014年9月27日、11時52分頃、長野県と岐阜県の県境にそびえる御嶽山が噴火した。山体の膨張が確認されたのは、噴火のわずか7分前、「火山性微動」が観測され始めたのは、噴火の11分前だった。「火山性地震」は、同月10日から11日にかけて増加し、その後、次第に減少していた。気象庁から「火山の状況に関する解説情報」は各市町村や山小屋に通報されていたが、なぜ、警報は出されなかったのだろうか。


 その理由の1つは「過去との違い」にあった。御嶽山は、1979年、1991年、2007年に噴火しており、いずれも今回と同じ「水蒸気噴火」である。2014年の噴火でも、兆候となる山頂直下の地震活動は約2週間前から観測されていたが、その推移の仕方が過去とは異なっていた。2007年は、微動が始まってから噴火まで約50日の猶予があったが、2014年は噴火の直前で、あまりにも時間的な猶予がなかった。


 直近で噴火の前例があっても予知は難しい。ましてや、300年以上も噴火履歴のない富士山は、噴火の“クセ”が分からない。噴火の予知は、より困難を極める。桜島や浅間山、有珠山のように、事前の予知や避難に成功してきた例もあるが、富士山のようにパターンが読めない火山では、時間的な猶予のない「突発的な噴火」も念頭に置かなければならない。



(左)火山性地震と火山性微動「火山性地震」は、火山やその周辺で発生する。マグマが間接的に岩盤に影響して生じる場合や、爆発的な噴火に伴う地震などがある。火山性地震が瞬発的であるのに対し、「微動」は連続的な振動で、数秒〜数日以上続く。発生には流体であるマグマが関与すると考えられている。低周波地震も、マグマや熱水などの流体が関与していると考えられている。
(右)噴火タイプの違い「マグマ噴火」はマグマ自体が激しく噴き出す。マグマの中にある水分が水蒸気となることで噴火する。「水蒸気噴火」は、マグマの外にある水分が、マグマによって熱せられて、水蒸気となり噴火する。これらの中間にあたる「マグマ水蒸気噴火」もある。(図は『火山に強くなる本―見る見るわかる噴火と災害』(山と渓谷社)を参考に作図)


■シミュレーションで御嶽山の教訓を生かす


 2014年の御嶽山の噴火では、57名の方が亡くなられた。多くの登山客の命を奪ったのは、噴石と呼ばれる火山岩塊だった。再び噴石の被害を出さないために、何ができるのだろうか。


 まず、東京大学地震研究所は、噴火時に撮影された航空写真や映像から火口の位置や噴石の落下地点を読み取った。常松氏は、このデータをもとに「なぜそのような噴石の分布となったのか」、つまり、噴石はどのように飛んだのか、推測することを試みた。様々な条件を仮定し、噴石の飛び方のシミュレーションを重ねた。コンピューターで計算した噴石の落下地点と、実際の噴石の落下地点を比較した結果、分布が合致した秒速100〜150メートルで、噴石は火口から放出されたと考えられる。


 常松氏は、シミュレーションを行う上での規則となる「数値モデル」の研究を専門とする。噴石の動きを考える数値モデルが確立すれば、建物やシェルターに必要な強度や、火口からどの程度、遠くまで逃げれば良いのか、といった具体的な防災対策に結び付けることができる。



御嶽山における実際の噴石分布とシミュレーションによる噴石分布を比較した図。黄色の線が、実際の噴石の分布を示す。シミュレーション結果による噴石の分布は、水色:火口での放出速度が秒速50メートル、青色:秒速100メートル、紫:秒速150メートルの場合。最も外側の黄色い線が、青と紫にまたがるため、噴石は火口から秒速100〜150メートルで放出されたと考えられる(画像提供:山梨県富士山科学研究所)


 御嶽山の噴火を受けて、山梨県の後藤斎知事と静岡県の川勝平太知事は、富士山の山小屋にシェルター機能を備えることを検討課題の1つに位置付けている。今月、山梨県は「富士山噴火時避難ルートマップ」を発表した。富士山科学研究所の研究員も、噴火シナリオとパターンの検討に参加しており、過去に発生した噴火の代表的な4パターンで予想される火山現象の影響範囲を踏まえた「富士山噴火時避難パターン」を提示している。静岡県も「富士山火山防災対策」として、防災マップおよび広域避難計画などを公開している。


富士山噴火時避難ルートマップ
http://bosai.pref.yamanashi.jp/kanren/index.php?id=66
富士山噴火時避難パターン
http://bosai.pref.yamanashi.jp/file/5578ec5b87066.pdf
富士山火山防災対策
http://www.pref.shizuoka.jp/bousai/e-quakes/shiraberu/higai/fujisan/


■日本は「火山先進国」になれているのか


 日本は火山大国である。しかし、日本の火山研究が世界的に見て、進んでいるとは言い難いようだ。火山に対する教育や研究の普及について、2人の研究員はどのように見ているのだろうか。


 内山氏は「イギリスは、自国に火山がなくても、国外で火山の研究を積極的に進めています。火山学の教科書(専門書)も、オリジナルはイギリスやフランスで書かれていて、日本語の教科書は非常に少ないのが現状です。母国語で学べるかどうかは、学問の水準に大きく関わります」と語る。


 また、常松氏も「昨今の日本では、基礎研究の費用が削減され、大学や研究機関のポストも減っています。これでは、火山研究の後継者も育たないでしょう」と厳しい現状を打ち明けた。


 さらに、常松氏は「御嶽山の噴火で、噴石による被害が大きく注目されるようになりましたが、2000年の有珠山の噴火でも噴石は飛んでいて、山の麓の屋根も壊れていたんです。研究者や地元の連携があり、事前避難ができたので、人災を免れましたが、あまり注目もされませんでした。


 シミュレーションに使うパラメーターは、事実から設定する必要があります。起きた事象の分析を積み重ねていくことが重要です」と強調した。


 前編の記事でも、地下水のモニタリングが予算の都合で、リアルタイムにはできていないと伝えた。技術的に不可能ではないことが、できていない現状に、現場の研究者は歯がゆい思いをしている。定性的には分かっていたとしても、定量的に表せなければ、シミュレーションに繋げることはできない。


 「予知が当たるかどうか」かに囚われることよりも、まずは、着実に研究を進められる環境を整える必要がある。内山氏は「現状では、そもそも観測データを十分に取得することができていない。火山の基本的な部分が分かっていない」と話す。計測器が壊れていたなど論外で、計測データも、あらゆる視点で分析されなければ、意味がない。そこから得られた情報を随時公開し「火山の変化」を共有していくことが大切なのではないだろうか。個人としては、防災に対する知識や、防災用具の備えを持つことが重要だが、こうした風潮を高めることも、一人ひとりにできることなのかもしれない。


【参考文献】2014年御嶽山噴火(日本自然災害学会)


【取材協力】山梨県富士山科学研究所



内山高(うちやま・たかし)氏。山梨県富士山科学研究所 火山防災研究部 主幹研究員・部長。大阪市立大学大学院後期博士課程修了(理学)。専門は、第四紀地質学、火山地質学、水理地質。富士山の火山噴火災害を減ずるために第四紀火山地質的研究と、防災教育や啓発・普及活動を行っている。富士山・富士五湖の地下水流動系や山梨のジオ(地質・地盤)情報に基づいた地域環境特性を明らかにする研究も進めている。



常松佳恵(つねまつ・かえ)氏。山梨県富士山科学研究所 火山防災研究部 研究員(理学)。東京大学大学院理学系研究科修士課程修了後、ジュネーブ大学 地球・環境セクション 鉱物学科で博士号を取得。専門は噴火現象の数値モデルだが、数値計算だけでなく野外調査なども合わせて噴火のメカニズムを考え、防災に生かせる研究をめざす。


 

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コメント
 
1. 2015年6月30日 20:23:43 : ofFu2PEkLM
どの山も噴火の予知は難しいよ、というより出来ない。
今後数百年の間に起こる程度の予知しか出来ない。

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