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ロシア国家主義と欧州
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投稿者 あっしら 日時 2014 年 5 月 31 日 01:13:46: Mo7ApAlflbQ6s
 


※ 日経新聞「経済教室」の連載記事

ロシア国家主義と欧州

(1)G8への参加停止 秩序形成 試み頓挫

 ウクライナ情勢をめぐってロシアと欧米の関係が冷え込んだ。武力を背景にクリミア半島を編入し、冷戦後の国際秩序を乱すロシアに、欧米は制裁圧力を強めている。

 一連の対ロ制裁で象徴的といえるのは、主要8カ国(G8)の枠組みから当面、ロシアを除外するという決定だ。3月にオランダのハーグで開いた主要7カ国(G7)の緊急首脳会議で打ちだした。ロシアが方針を変更し、意味のある議論ができるまで続ける。
 G8化はもともと、冷戦終結後の1991年にG7首脳がロンドン・サミットにソ連のゴルバチョフ大統領を招き、「G7プラス1」会合を開いたのが発端だ。ゴルバチョフ氏は「ソ連と世界経済の一体化」こそが大きな利益だったと、回想録で振り返っている。

 ソ連崩壊後もこの流れは続いた。ロシアは98年からは経済を含めたすべての会合に出席し、G8の完全な一員となった。上智大学の上野俊彦教授はG8化について「ロシアを自由、民主主義の方向に引っぱり、仲間に引き入れて冷戦後の国際秩序の形成をめざす欧米の試みだった」と評する。

 こうした試みは、ロシアの参加停止で事実上頓挫。ロシアは「G8にしがみつくことはない」(ラブロフ外相)という。「プーチン大統領はもともと、欧米の上からの目線に反発していた」(上野教授)だけに、修復は容易ではない。
 今年のG8首脳会議は本来、冬季五輪のあったロシアのソチで開く予定だった。G7は代わりにブリュッセルで来週、首脳会合を開く。焦点はロシアへの対応だ。
(編集委員 池田元博)

[日経新聞5月26日朝刊P.17]


(2)NATOの東方拡大 敵意の象徴と認識

 ロシアがウクライナに強硬姿勢を貫く主な理由の一つに、北大西洋条約機構(NATO)への加盟阻止が挙げられる。
 プーチン大統領はクリミア半島のロシア編入を表明した3月の演説で、「NATO水兵の客としてセバストポリを訪れるなど想像もできない」と語った。クリミアのロシア黒海艦隊基地を断じてNATO勢力圏に置かせないとの発言だ。

 冷戦時代、欧州ではソ連を盟主とするワルシャワ条約機構と、米国を中心としたNATOという2つの軍事機構が東西で対峙していた。冷戦の終結に伴い、東側のワルシャワ条約機構は1991年に解体した。
 一方でNATOは存続し、かつ東方へと加盟国を増やしてきた。「欧米は我々をだました」(プーチン大統領)との不満がロシアには根強い。

 米国のクリントン元大統領は、97年にヘルシンキで開いた米ロ首脳会談で当時のエリツィン大統領が、NATOの拡大対象から旧ソ連圏を外す秘密裏の約束を求めてきたと明かしている(回想録「マイライフ」)。
 この会談でロシアはポーランド、ハンガリー、チェコのNATO加盟を認め、見返りに主要8カ国(G8)の地位や世界貿易機関への加盟支援をとりつけた。
 NATOには結局、旧ソ連のバルト3国が2004年に加わった。加盟国は現在、28カ国に上る。東京財団の畔蒜泰助研究員は「ロシアはNATO拡大を、西側による敵意の象徴と受け止めている。ウクライナまで加盟すれば安全保障上の脅威にもなるので、ロシアも引かない」と指摘する。
(編集委員 池田元博)

[日経新聞5月27日朝刊P.27]


(3)プーチン大統領の変身 「欧米と対等」が軸に

 ロシアはクリミア半島の編入に続き、ウクライナ東部の国境地帯に約4万人規模とみられる兵力を結集させた。
 防衛研究所の兵頭慎治・米欧ロシア研究室長は「ロシアが欧州通常戦力(CFE)条約をいまも順守していたなら、こうした軍の展開には(欧米への)事前通告が必要だった」と指摘する。

 CFEは欧州に展開する戦車や重火器、戦闘機などの通常戦力を削減する条約で、冷戦終結後の1992年に発効した。欧州の安全保障面での信頼醸成措置だった。
 だが、加盟国ごとに上限を設定する方式にした条約修正案は未発効のままで、2007年にはロシアのプーチン政権が条約の履行を停止してしまった。米国が欧州で配備を進めるミサイル防衛計画に反発したためだ。

 兵頭室長は「ロシアが旧ソ連圏への北大西洋条約機構(NATO)拡大を軍事的な圧力でけん制するなら、今後もCFEが邪魔になる」とみる。
 プーチン大統領は当初から欧米との対決姿勢をむき出しにしてきたわけではない。カーネギー財団モスクワセンターのドミトリー・トレーニン所長は「米国との同盟化とロシアの欧州化が、00年の大統領就任直後のプーチン外交の柱だった」と分析する。
 こうした路線は米英が主導し、ロシアが反対した03年のイラク戦争などを経て修正された。いまや、欧米との対等な関係を強調する「ロシアの完全な主権化」(トレーニン所長)が基軸になっているという。「大国ロシア」の復活を掲げるプーチン外交の裏に、根深い欧米不信が横たわる。
(編集委員 池田元博)

[日経新聞5月28日朝刊P.27]


(4) エネルギーの相互依存 ドイツ、制裁に慎重

 外交や安保で冷え込むロシアと欧州の関係を経済の側面からみると、別の風景が広がる。
 プーチン政権の外交指針「ロシアの外交概念」には、欧州連合(EU)を「主要な貿易・経済相手、重要な外交パートナーとして協力の深化に関心を払う」とある。

 ロシア連邦税関庁によると、2013年の対外貿易総額のうちEUとの貿易が49%を占めた。アジア太平洋地域は25%、旧ソ連の独立国家共同体(CIS)諸国は14%だ。
 ロシアの輸出の大半は原油、天然ガスなどの燃料エネルギーで、13年はCIS向けを除く輸出の75%に上る。欧州向けが中心で、石油天然ガス・金属鉱物資源機構の本村真澄主席研究員は「とくに天然ガスは昨年、欧州の全需要の30%をロシアが供給した」という。

 ロシア国営のガスプロムによれば、欧州への国別の天然ガス供給量はドイツがトップ。続いてトルコ、イタリアの順で多い。ウクライナ危機をめぐる対ロ制裁で欧米に温度差が目立ち、なかでもドイツが制裁に慎重なゆえんでもある。
 西欧へのロシア産ガス輸出はソ連時代の1968年に開始。「欧州は成熟市場で、今後はガス輸出の増大は見込めない」(エネルギー研究所のタチヤーナ・ミトロワ部長)ものの、半世紀近くも続く経済の相互依存は容易に切れない。

 主要7カ国(G7)は今月初め、エネルギー相会合でロシア依存の低減を決めた。本村研究員は「数値目標はなく具体性もない。経済原則からみて、安いロシア産をやめる企業はいない」と合意の実効性に懐疑的だ。
(編集委員 池田元博)

[日経新聞5月29日朝刊P.26]

(5) EUか関税同盟か 複眼的視点が必要

 ウクライナ危機は、欧州連合(EU)への統合路線の是非をめぐる国内対立が発端だ。ロシアがウクライナに介入する背景には、EU接近をけん制し、自ら主導する「関税同盟」に引き寄せる狙いもあるといわれる。

 ロシアは2010年、旧ソ連のベラルーシ、カザフスタンとの間で域内関税をなくす関税同盟を発足。15年にはユーラシア経済同盟に格上げし、将来はEUのような経済圏をめざす構想を描く。
 東京外国語大学の鈴木義一教授は「モスクワを中心にした単一経済だったソ連が分断され、ロシアが受けた不利益は大きい。もともと補完関係の強かったところに共通の経済圏をつくろうとするのは当然だが、とくに相互依存が強いウクライナ抜きでは十分に機能しないだろう」と語る。
 では、ウクライナをめぐるEUとロシアの綱引きは双方の関係をどこまで悪化させるのか。
 ロシア・ユーラシア政治経済ビジネス研究所の隈部兼作所長は「ロシアには流通インフラの整備などを通じて、欧州とアジアの懸け橋を担い、経済を発展させる思惑がある。その意味でEU市場はロシアにとって今後も重要だ」と指摘する。
 ウクライナ危機のさなかの先月上旬、シュワロフ第1副首相率いるロシアの大型代表団がベルリンを訪問。リスボンからウラジオストクに至る経済空間の可能性を探る「東方フォーラム」に出席した。
 外交・安保で対立しつつも、経済でしっかりとつながる。ロシアと欧州の関係は複眼的にみていく必要があるだろう。
(編集委員 池田元博)
=この項おわり

[日経新聞5月30日朝刊P.31]


 

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コメント
 
01. 2014年6月02日 10:26:47 : nJF6kGWndY
欧州は分裂へ

ドイツとロシアは協調へ

かな

http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/40832
JBpress>海外>Financial Times [Financial Times]
弱体化したフランスが欧州の終わりを告げる恐れ
2014年06月02日(Mon) Financial Times
(2014年5月30日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 本当の地震はベルリンの壁の崩壊だった。あれから四半世紀経った今、欧州はまだ余震に苦しめられている。

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はソ連帝国を復活させたいと思っている。フランスは、再統一を果たしたドイツに支配されている欧州で四苦八苦している。プーチン氏は最終的には失敗する運命にあるが、その過程で大混乱を巻き起こせる。フランスは、欧州が今や他国のものだということを認めるよりも、むしろ我が身を苦しめている。

 欧州の指導者たちは、共産主義の終焉後の生活は概ね以前と同じように続くと考えた。欧州連合(EU)は東方の新たな民主主義国を受け入れる。単一通貨はドイツマルクの優位性を薄め、ドイツを既存の欧州秩序にしっかりつなぎ止める。これが当時の話だ。

有権者が抗議票に込めた怒り

 5月下旬の欧州議会選挙は、一部の興奮した見出しが語るほどのポピュリストの圧勝ではなかった。だが、反エリート、反移民、そして一部の例では反EUの抗議は確かに明白だった。フランスと英国、デンマークでは、外国人嫌いの右派政党が躍進した。その他の国では、怒りの票が左派と右派に割れた。

 ポピュリスト政党と欧州懐疑派は今、欧州議会の議席の3割を握った。プーチン大統領は、同氏に負けず劣らず不快な国家主義の仲間たちに声援を送ってきた。

 驚くべきことは、選挙結果に驚いた人が1人でもいたことだろう。欧州大陸は、生活水準の低下、失業率の上昇、政府による緊縮が続く厳しい5年間に苦しんできた。ドイツのアンゲラ・メルケル首相を別にすると、国民の自信を呼び覚ます指導者に恵まれなかった。

 別の時代のために設計された福祉制度は、グローバル化の重圧で崩れかけている。それなりの数の有権者が今回の選挙を、お金をかけずに主流派の政治家を蹴飛ばすチャンスと見なしたことは、衝撃的とは到底言えない。

 EUの指導者は油断すべきではない。EUは一般市民の日々の懸念に気を配り、国民生活の隅々への干渉に抵抗しなければならない。政治家が今、ルクセンブルクのジャン・クロード・ユンケル氏のような旧態依然とした連邦主義者を欧州委員会の新委員長に選出することでこのメッセージを否定したとしたら、非常に残念だ。

 こうした状況にもかかわらず、欧州統合の仕組みは副次的な問題だ。グローバル化から生じる不安と不平等はEUの責任ではない。重大な批判があるとすれば、それはEUが、加盟国は単独でいた場合、はるかに苦しい状況に置かれるということを立証する経済・政治戦略を見つけられなかった、ということだ。

 今回の選挙は、欧州の選挙というよりは国政選挙の色彩が濃かった。大きな衝撃に見舞われたのがフランスと英国だ。マリーヌ・ルペン氏率いるフランス国民戦線(FN)は中道右派の国民運動連合(UMP)とフランソワ・オランド大統領の社会党をそれぞれ第2党、第3党に追い落とし、ナイジェル・ファラージ氏率いる英国独立党(UKIP)は英国の選挙で首位に立った。

フランス政界に激震、欧州議会選で極右政党が首位
フランス国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首〔AFPBB News〕

 フランスの世論調査は、FNに投票した人たちはEUの様々な問題よりもずっと、エリートに平手打ちを食らわせることに熱心で移民と雇用に関心があったことを示していた。UKIPの支持者たちも同じように、移民と経済を最大の関心事に挙げていた。

 フランスの選挙結果の方が比べものにならないほど重要だ。それも単に、ルペン氏の笑顔をもってしてもファシストかつ反ユダヤというFNのルーツを隠せないためだけではない。

ドイツと並び欧州統合に欠かせない支柱だったフランス

 英国はかなり前から、欧州大陸と距離を置いてきた。英国が脱退するようなことがあれば、残るEU諸国は大打撃を受けるが、致命的な打撃にはならない。対照的に、フランスは欠くことのできない支柱だ。フランスなしでは、ユーロと欧州統合プロジェクト全体が瓦解するだろう。

 長期にわたる歴代フランス政府の不機嫌さのせいで、考えられない事態が考えられることのように見え始めた。欧州の未来についてドイツの政治家と話をすれば、スペインの債務やイタリアの無気力を過度に心配したりしていない。彼らが本当に心配している国はフランスだ。ドイツは大半の国よりも、強すぎるドイツの危険性をよく知っているからだ。

 EU創設時の取り決めは、ドイツの経済的な強さとフランスの政治的な指導力のバランスを取っていた。伝説的な統合の機関車には運転手が2人いたわけだ。ドイツ再統一の後でさえ、フランソワ・ミッテラン大統領(当時)はさらなる欧州統合はさらなるフランスを意味すると言うだけの自信を持っていた。

 1990年代でさえ、こうした心理は見込みよりも希望に負うところが大きかったが、20年間にわたる相対的な経済不振の後、これは全く馬鹿げた話に聞こえるようになった。

 衝動に駆られるのは、オランド大統領を責めることだ。同氏が長年低迷してきたフランス経済を活性化させる楽な方法があるというふりをして就任最初の2年間を無駄にしたと言って差し支えないだろう。今年、オランド氏は方針転換を約束したが、改革を成し遂げ、国の競争力を取り戻す気概が同氏にあるかどうかについては疑問が残る。

仏大統領、シリア政権を「罰する準備できている」
フランソワ・オランド大統領は方針転換を約束したが、実行力には疑問が残る〔AFPBB News〕

 オランド氏は長い行列の中の1人だ。前任者のニコラ・サルコジ氏は国家統制主義的な経済政策との「決別」を約束した。ところが実際は、さざ波を立てることもなかった。

 フランスが予算を均衡させたのは30年以上前のことで、失業率が10%を大幅に下回っていた時代も同じくらい昔のように思える。

 残念なことに、NF――極めて不快であるのと同じくらい解決策を持たない政党――が経済的な失敗に抗議する票の受け皿となってしまった。

大きすぎる政府、柔軟性を欠く社会福祉制度、力ある指導者の欠如

 奇妙なことは、フランスは、英語を使う多くの人が言っているような経済的にどうしようもない国ではないということだ。フランスは生産性が高く、世界に通用する企業とスキルを持った労働者を擁し、欧州に限って言えば、大半の国より有利な人口構造を持っている。

 問題は、政府が大きすぎ、社会福祉制度に柔軟性がないことだ。何にも増して、フランスには、問題を是正する政治的な強さと率直さを備えた指導者がいなかった。ルペン氏を支持する票は、何もしないことの危険性に対する強烈な警告だった。ポピュリストがEUを破滅させることはない。だが、弱ったフランスはEUを崩壊させかねないのだ。

By Philip Stephens


 
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20140529/265668/?ST=print
「ニュースを斬る」
欧州議会選挙で極右勢力が台頭した真の理由 ドイツ主導の欧州統合に不満高まる

2014年6月2日(月)  渡邊 啓貴

 EU(欧州連合)28カ国で22〜25日に行われた欧州議会選挙(定数751)の大勢が判明した。今回の選挙結果の最大の特徴は、EU・欧州統合を批判する極右勢力が伸張したことである。フランスの国民戦線(FN)をはじめ、イギリスの英国独立党(UKIP)、デンマーク人民党など極右・ポピュリズム勢力と、ギリシャの急進左翼連合がそれぞれの国で第1位となった。

 欧州議会選挙は国ごとに比例代表制の選挙を実施する。人口比によって国別に議員数が割り当てられている。ストラスブール欧州議会では政治的主張に応じて各勢力が国を超えた会派を形成する。欧州議会全体としては、中道右派の欧州人民党(EPP)が最大会派として212議席を獲得。これに中道左派の「社会民主進歩同盟」(S&D)が185議席で次いだ。これまでどおり、2大会派が併せて過半数を占める見通しだが、極右政党などの議席はこれまでの2倍を超える140議席台に拡大した。

英仏では極右が国内与党を凌駕

 極右勢力の中でEU最大の影響力を持つFNは、フランスに割り当てられた議席の約25%を獲得し24議席を得た。保守派である民衆運動連合(UMP)の21%、オランド大統領率いる与党・社会党の14%を大きく引き離した。

 FNのマリーヌ・ルペン党首は、「この結果は明日の勝利を構築するものです。(中略)新しい2大政党制が現れたのです。FN対UMP、これこそ政治の再編を意味します」と高らかに勝利宣言した。

 FNは3月の市町村議会議員選挙でも2ケタの市長の誕生させている。今回の欧州議会選挙で、復活と上昇の機運をさらに増幅させた結果であった。

 英国国民党も29%の票を獲得。保守党(24%)と労働党(24%)を凌駕した。ファラージュ党首が事前に予告していた「政治の地震」を文字通り現実のものとした。デンマーク人民党は27%と、前回の2倍の得票率を得た。ギリシャ急進左翼連合は得票総数の26.5%を占めた。

 このほかにも、それぞれの国で第1党とはならなかったが、オーストリア、ハンガリー、スウェーデンで極右勢力が高い得票率を示した。意外であったのは、イタリアの結果であった。反ユーロを掲げる「五つ星運動」の得票は22%にとどまり、与党民主党(41%)に大敗した。選挙前は、五つ星運動が勝利することが予想されていた。

 勢力を伸ばした極右勢力はいずれも、経済・社会が苦境にあるのは欧州統合のせいであると主張し、反EUを唱える勢力である。国内の不安・不満を外に向けるこの論法は、外国人をスケープゴートにする排外主義に繋がる。社会的弱者のコンプレックスの表れでもある。

東方への拡大とユーロ危機が極右への支持の引き金に

 今回の選挙のもう一つの特徴は、低い投票率だ。棄権率は60%近くに達したと見られている。投票率を上げたドイツなどを別にすると、全体に欧州統合に対する関心が下がっているのが現状である。

 この傾向は、2005年にフランスが国民投票で欧州憲法条約の批准を拒否した時から顕著となっている。大きな要因はEUが東欧諸国へと拡大したことにあった。経済水準の低い東欧諸国の加盟は、従来からの加盟国の人々に、統合の将来に対する不安を抱かせた。と同時に、統合をそれ以上進めることへの抵抗感を生んだ。

 これに、ユーロ通貨・財政危機が続いた。危機から脱出するために示された手段は国民に耐乏を強いる緊縮財政政策であった。

 EU全体の失業率は10.5%、ユーロ圏だけでは11.8%。若年層の失業率が3割を超える国もある。フランスで行われた最近の世論調査では、35歳以下の若年層におけるFNへの支持率は30%で、ほかの世代における支持率の平均より5ポイント高かった。他方で、60歳以上の年齢層における支持率は21%で、他の年齢層の平均より低い。将来に対する若年層の不安を極右政党が吸収する形となった。

 フランスにおける今回の選挙結果を分析すると、FNに対する支持は、一般従業員(幹部社員ではない)で38%、労働者で43%であった。社会党に対する支持は一般従業員で8%、労働者で16%、「左翼戦線」は同じく5%、8%であった。本来なら社会の低所得層の支持を獲得すべき左派政党よりも極右政党がこうした社会層を票田としていることが分かる。

 極右政党が勢力を拡大した最大の理由は、経済危機と失業や貧困という社会不安の中で不満が増大したことにあった。フランスでは、FNのマリーヌ・ルペン――創立者であるジャン・マリ・ルペンの三女で2011年に父の跡を継いだ――が共産党張りの社会保障重視対策を強く主張する。かつて栄えたものの現在は貧困化した工業地区などで、不満層からの支持を次第に拡大したのである。選挙直後に保守派との対決姿勢を強調した彼女の発言には、自分たちこそ「弱者」の味方であるという気負いが感じられた。

 欧州議会はかつて、国内政治の外にある、日の当たらない場所であったが、今日では国内政治にも大きな影響を持つ存在になっている。フランスでは今回のFNの大躍進が、政界の再編の脅威にまで繋がっている。英国でも、UKIPがEUからの脱退を巡る国民投票を実施するよう主張するため、キャメロン首相は「2017年までに国民投票を実施する」と約束せざるを得なかった。

ドイツ中心の欧州統合

 EUが取る諸政策が加盟各国の経済社会の浮沈に強い影響を与えている事態を、今回の欧州議会選挙は大いに反映している。政策決定の中心となっているのが、ドイツである。したがって、今回の欧州議会選挙のドイツにおける投票結果は、極右が勢力拡大した諸国とは異なる趣であった。

 通貨危機の時に債務国から融資を強く要望された時、ドイツ国内ではユーロ圏からの離脱に関する議論が過熱した。だが最近では国民の70%がEU支持派であると伝えられる。今回の選挙でも極右の票は伸びず、政権連立与党が前回の欧州議会選挙よりも得票率を高めた。キリスト教民主・社会同盟は得票率を少し落としたが、社会民主党の伸長がこれを補った。ほかの多くのEU加盟国とは異なって、選挙が国内政治の不安定化の懸念材料とはならなかった。

 ドイツでは昨年4月に、右派政党「ドイツのための選択肢(AfD) 」が設立された。同党はドイツのユーロ圏離脱を掲げるインテリによって構成されている。昨年9月の連邦議会選挙では議席を獲得できなかったものの、議席獲得に必要な5%に近い4.7%の票を得ていた。今回の欧州議会選では7%を得て、順調に党勢を拡大した。ただし、欧州議会選挙では統合支持の強い気運を受けて、ドイツのユーロ離脱を主張することができず、トーンを下げ、欧州委員会の権限を制限することを主張するにとどまった。

 今日、各国の国内政治・経済政策はEUの影響を強く受けるようになっている。通貨統合に見られるように、各国の主権、自由裁量は次第にせばめられている。そして、通貨危機克服や銀行同盟を巡るEUの議論においてドイツのイニシアティブが顕著に拡大している。

 このことは、南欧諸国が金融・通貨財政危機に直面して、ドイツの主張する緊縮財政政策を受け入れなければならなかったことに顕著に表われている。しかし国民に高い負担を強いて緊縮政策を取っても生活は改善されず、高い失業率と物価高が続いている。これに苦しむ国民が、欧州統合に反発を感じるのは避けられなかった。

 今回の欧州議会選挙の結果に示された統合への不満は、ドイツが主導する今日の欧州統合と決して無縁ではない。

渡邊 啓貴(わたなべ・ひろたか)
東京外国語大学教授。国際関係研究所所長
1954年生まれ。同大学外国語学部フランス語学科卒業。同大学院地域研究科修士課程および慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程修了。
パリ第1大学大学院博士課程修了。パリ高等研究院・リヨン高等師範大学院客員教授、ジョージ・ワシントン大学シグールセンター客員教授などを歴任。
近著に『シャルル・ドゴール 民主主義の中のリーダーシップへの苦闘』


このコラムについて
ニュースを斬る

日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。



02. 2014年6月02日 11:52:47 : nJF6kGWndY
>欧州は分裂へ

おまけ

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0ED02J20140602
ユンケル氏が欧州委員長就任なら、EU残留保証できない=英首相
2014年 06月 2日 11:16 JST
[ベルリン 5月31日 ロイター] - 英国のキャメロン首相は、ルクセンブルクのユンケル前首相が次期欧州委員長に選出された場合は、英国の欧州連合(EU)残留を保証できないと警告した。独誌シュピーゲルによると、ブリュッセルで27日に開かれたEU非公式首脳会議の合間の発言だという。

欧州委員長は、同議会の承認を得てEU加盟国の首脳から選ばれる。前週に投票が行われた同議会選では、ユンケル氏が所属する中道右派の欧州人民党(EPP)が最大会派の座を維持。EPPは同氏を次期欧州委員長候補に選出している。

シュピーゲル誌は、EPPが最大会派となったことで、ユンケル氏により英国の政局が不安定となることをキャメロン首相が懸念していると分析。英国での、EUに残留するか離脱するかを問う国民投票では、離脱という判断が下されるとの見方が多いと報じた。


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