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「適切なグローバル化」の実態:《環大西洋貿易投資パートナーシップ》TTIP の手ほどき
http://www.asyura2.com/14/kokusai8/msg/882.html
投稿者 あっしら 日時 2014 年 6 月 28 日 00:18:02: Mo7ApAlflbQ6s
 


「適切なグローバル化」の実態
《環大西洋貿易投資パートナーシップ》TTIP の手ほどき

ラウル・マルク・ジェンナー*
ルノー・ランベール**

*『環大西洋統一市場・ヨーロッパの人々に迫る脅威』(未邦訳)の著者
Raoul Marc Jennar , Le grand marché transatlantique.
La menace sur les peuples d’Europe.

** 本紙副編集長

訳:ア山章子
________________________________________
 フランスのフルール・ペルラン対外経済担当相によれば、環大西洋協定のプロジェクトをめぐる議論は「不必要な不安を引き起こす」というような紹介のされ方をしているという。それでは、実際に何が問題なのだろうか? そして、人々にとって何がリスクになるのだろうか?

 [フランス語編集部]

________________________________________
 [《環大西洋貿易投資パートナーシップ》はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の大西洋版である。フランス語でPTCIまたはTafta と呼ばれることが多いが、本記事中ではすべてTTIPと表記する――訳者]


表向きには何をさしているのか?

 TTIPは、2013年7月に協議が開始されたアメリカとEUとの間の自由貿易協定のことで、8億人の消費者を擁する世界最大の市場を創出することをめざしている。

  経済政策研究センター(CEPR)は複数の大銀行から資金を得て運営され、欧州委員会が「独立機関(原注1)」と表現している組織だが、このCEPRの調査によれば、この協定によりヨーロッパにおいて毎年1200億ユーロ、アメリカでは950億ユーロの「富の増産」効果があるとされている(原注2)。

 この自由貿易協定は世界貿易機関(WTO)の後押しを受け、関税障壁(原注3)を下げるだけではなく、いわゆる《非関税》障壁の縮小をめざしている。非関税障壁とは関税割当制・行政上の手続き・保健衛生や科学技術、社会保障に関する法規などのことである。交渉関係者の言を信じるならば、このプロセスは労働条件や法規範の全般的強化をもたらすらしい。


実際には何が問題なのか?

 WTOは、1995年の設立以来、世界経済の自由化の実現に大きな役割を果たしてきた。しかし《ドーハ・ラウンド》[訳注a]の挫折(とりわけ農産物の問題において)以来、交渉が行き詰まっている状態である。そのために、自由貿易の促進を継続する《遠回りの戦略》を重視するようになった。このことによって二カ国間や地域間で数百の協定が結ばれた。または採択の途中である。TTIPはこの作戦のもたらす結果について次のような構想を抱いている。すなわち、二大経済勢力(世界の富のほぼ半分を生産する)が手を結べば、彼らの措置を世界中が結局は受け入れざるを得ないだろうということだ。

 交渉におけるヨーロッパ側の義務やアメリカ側当局者が示す期待の範囲は広く、TTIPは「単なる」自由貿易協定の枠を超えている。具体的には、この条約には3つの主たる目標が定められている。第一に関税権を削除する。次に《非関税障壁》を減らす。そのために各国の規範を一致させる(これまでの自由貿易協定の経験により、規範の一致は「低い方に合わせて」実施されると考えられる)。三番目に投資家に法的手段を与えて、自由貿易を妨げる規則・法の障害を取り除くことを可能にすることである。要するに、《多国間投資協定》(MAI)(原注4)や《偽造品取引の防止に関する協定》(ACTA)(原注5)によって既に規定されているいくつかの措置を課すことである。しかしこの二つの協定はいずれも民意によって拒絶されている。


この計画はいつ実行されるのか?

 正式な日程どおりに進めば、交渉は2015年に成立する。このあと、EUの理事会と議会における長い承認のプロセスが続く。それから欧州連合条約が定めるとおり各国の議会の批准がおこなわれる。フランスでも同様である。


誰が交渉するのか?

 ヨーロッパ側は欧州委員会の官僚が行う。アメリカ側は財務省の役人が担当する。彼らの大半は、民間分野の利益を代表するロビー団体からかなりの圧力を受けるだろう。


各国はどんな影響を受けるのか?

 TTIPの予定では、参加諸国の現行法をこの自由貿易協定の規則に従わせることを見込んでいるが、こうした自由貿易の規則はほとんどが大企業の意向に沿うものだ。この協定を通じて各国は大幅な主権の放棄に同意することになるだろう。実際、例えば自由貿易の方針に違反すれば、数千万ドルに上るかもしれない経済的制裁を受ける可能性がある。

 EUの提起した条文によると、この取り決めは「ヨーロッパの投資家に対して、考え得る最高水準の法的保護と保証をアメリカに与え」(逆も然り)なくてはならない。具体的に言えば、私企業が公共工事受注や投資活動において、法律や規則が競争の妨げになっているとみなせば、その法律や規則に異議を申し立てることができるのである。

 条文の第4条は「当協定は統治の全レベルを拘束する」と明示している。つまり国だけではなく、地方・県・市町村などの全ての地方自治体に適用されると言ってよい。ある市町村の条例が異議を申し立てられれば、もはやフランスの地方行政裁判所ではなく、国際仲裁裁判所の扱いになる。それを可能にするためには、例えばある投資家が、ある法規によって「その人が希望する物・場所・時・方法において投資する権利、あるいは望みのままに利益を得る権利(原注6)」が侵害されていると考えるだけで十分なのである。
 TTIPの修正は全調印国の同意が不可欠なので、そのためには各国の政治の推移とは無関係にTTIPが強制される。


これはアメリカがEUに押し付けている計画なのか?

 全くそうではない。EU28カ国の政府の同意を得た欧州委員会は積極的にTTIPを推奨して自由貿易主義に賛同している。しかもこの計画は《大西洋ビジネス・ダイアログ》(TABD)のような大企業経営者の組織にも支持されている。この組織は1995年、欧州委員会とアメリカ商務省の後押しを受けて創設され、これまで《環大西洋ビジネス会議》(TABC)として知られていたが、アメリカとヨーロッパの経営者らの「実りのある対話」を奨励してきたのである。

________________________________________
原注
(1) « Transatlantic Trade and Investment Partnership. The economic analysis explained », Commission européenne, Bruxelles, septembre 2013.
(2) 同書
(3) 外国製品が通関時に課せらせる関税
(4) Christian de Brie, « Comment l’AMI fut mis en pièces », Le Monde diplomatique, décembre 1998.
(5) Philippe Rivière, « L’Accord commercial anti-contrefaçon compte ses opposants », Le Monde diplomatique, juillet 2012.
(6) アメリカン・エキスプレスのCEOが投資家の権利について与えた定義。

訳注
[a] 貿易障壁を取り除くことを目的としてWTOが関与している多角的貿易交渉。2001年カタールのドーハで開始された。
(ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版2014年6月号)
All rights reserved, 2014, Le Monde diplomatique + Emmanuel Bonavita + Sakiyama Akiko + Ishiki Takaharu

http://www.diplo.jp/articles14/1406ttip.html


 

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コメント
 
01. 2014年6月28日 12:43:40 : nJF6kGWndY

TPP同様、長い闘いだな


http://www.xinhuaxia.jp/social/38175/2

オバマ米大統領の通商政策が難航、TTIP交渉は来年に明朗化するか
2014年06月19日 09時36分
 

昨年初めに再選を果たしたオバマ大統領は鳴り物入りで環太平洋戦略的経済連携協定TPP)と欧州連合(EU)との環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)を通商戦略の2本柱に据えると発表し、「次世代と21世紀に目を向ける」通商体制をつくり、画期的な政治遺産を残すことを目指している。経済参考報が伝えた。

一年半が過ぎた。TPP交渉とTTIP交渉が難航し、オバマ政権が描いたシナリオにはるかに及ばない。

2017年初めに退任するオバマ大統領にとって、TPPはTTIPよりも優先的なものだ。TPPがオバマ政権のリバランスというアジア太平洋戦略の柱で、アジア太平洋地域で米国が経済・外交・軍事存在感を強める重要な基盤であるからだ。TPP交渉早期合意は「米国初の太平洋大統領」を気取るオバマ大統領の政治遺産形成に役立つ。

オバマ政権は、TPP交渉がまとまる上で、大統領貿易促進権限(TPA)法案の可決を促し、自由貿易協定(FTA)の議会承認を取得するよう目指す。

ピーターソン国際経済研究所の上席研究員によると、TPA法案が可決されなければ、日本、マレーシア、オーストラリアなどの貿易相手に、オバマ政権の約束の実現を疑われるようになる。「TPA法案がなければ、どんな貿易協定を結んでも、米国国会に改正されるという不安は濃厚だ」。

TPA法案は、国会がオバマ政権に設ける貿易交渉目標で、実現させることでオバマ政権は思いのままに交渉できるようになる。

貿易議題が労働者階層の利益に触れ、さらに民主党の今年11月の議会中間選挙に悪影響を及ぼす可能性を念頭に、上院多数党(民主党)院内総務のリード氏は、中間選挙前に、TPA法案の可決を考えないと表明した。

つまり、TPA法案の可決とTPP交渉は2015年に先送りされる見込みがある。2016年の大統領選を控え、民主党のオバマ大統領は、有権者に貿易協定を売り込みにくくなる。オバマ大統領に貿易交渉妥結に至る時間は多くない。

(翻訳 金慧)


 

http://blogos.com/article/89256/ 
順調に進めばTTIP交渉は2015年に終わり、その後に各国の国内の承認プロセスが続いて、TTIPが動き出すことになります。

米国とEUの間のTTIPが無事に成立すると、8億人の人口を抱える世界最大級の市場です。

この協定によって、EUにおいて年1200億ユーロ、米国で年950億ユーロの増産効果が見込まれます。

TPPよりも経済規模は大きくなる見込みです。世界経済に与えるインパクトいう意味においても、TPP以上のものになる可能性が高いです。

米国とEUで世界の富の半分を生産しています。米国とEUという世界の二大勢力が連携すれば、中国や日本だってかなわないと言えるでしょう。

米国とEUでTTIPのスタンダードを決めると、それがそのまま世界標準になる可能性もあります。米国政府も「グローバルなルール作りを主導」とその意図を明確に説明しています。

TTIPが世界のルール作りを主導するなら、日本にとっても重大な影響を与えます。日本もその動向を注視する必要があります。

アジアの時代、太平洋の時代、と騒いでいて、大西洋を軽視することはできません。中南米やアフリカ、欧州、米国が囲む海である大西洋も成長する可能性が高い地域です。日本の国益を拡大するためにも、大西洋も忘れず、きちんと見ていかなくてはいけないと思います。


http://www.labornetjp.org/worldnews/korea/intl/1403095272133Staff
TTIP秘密交渉文書暴露…EU、「公共サービス私有化が露呈」

スペイン独立メディアが暴露...健康サービスが真っ先に私有化

チョン・ウニ記者 2014.06.17 14:33
米国とヨーロッパ間の汎大西洋貿易投資パートナー協定(TTIP)秘密交渉文書が暴露された。 公共サービスの私有化など、憂慮されている問題は現実だったことがわかった。

スペインの独立メディア3社が、EUと米国間のTTIP秘密協定文書のベールをはがすことに成功した。 スペインの独立メディアディアゴナル、エリアリオとラマレアが、 フィンランドの内部告発言論連合(AWP)が運営するサイト 「フィルトララ(filtrala.com)」からTTIP文書を受け取り、 これを公開したと6月16日、ユンゲヴェルトが報道した。 このサイトには匿名で文書を送信でき、 この文書は該当プロジェクトに参加するジャーナリストに伝えられる。 これまでにも、スペイン政府の記念碑売却の方針がこのサイトを通じて暴露され、 議論を呼んだことがある。

ズートドイチュラント
[出処:〈ズートドイチュラント〉画面キャプチャー]
5月26日付となっている約100ページのTTIP秘密協定文書は、 主にヨーロッパの公共サービスを扱っている。 文書はこのような公共サービスを「自由化」する交渉カードと明記し、 個別加入国内の法的進入障壁についても分析している。 代表的な交渉カードには健康、教育、エネルギーなどの公共分野が含まれている。 特に、健康サービスに対する公共の支援が交渉例外事項で留保され、 交渉が締結されると真っ先に私有化されるのではないかという憂慮をもたらしている。 ヨーロッパ連合が所管する遺伝、鉱山、原子力、漁業と農業の分野は例外事項にされたが、 これも米国との交渉中に調整される可能性がある。

これまでのTTIP会談では公開されていなかったが、 流出した文書には金融サービスについての内容も一部含まれている。 金融サービス分野は米国の金融改革法のドッド=フランク法がヨーロッパの制度より強いという米国側の提起で交渉の対象から除外されたが、 ヨーロッパ連合の要求により含まれた。 しかしユンゲヴェルトは、米国の金融改革法はEUの水準より「自由な状況」だと指摘した。

こうした内容についてファイナンシャルタイムズは、 EU執行委員2人の言葉を引用し、文書の内容は事実だと報道した。

ヨーロッパ連合は経済成長と雇用を創出できるとしてTTIPを進めてきた。 しかしヨーロッパの社会運動と左派政党は、 非民主的な交渉推進、公共機関私有化、消費者保護弱化と大企業権限拡大などを問題視してこれに反対している。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可( 仮訳 )に従います。


 

http://www.jetro.go.jp/world/europe/eu/biznews/511c4d53e4458
環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)交渉開始へ (EU、米国)

2013年2月14日 欧州ロシアCIS課

 EUと米国は2月13日、両国・地域間の包括的な自由貿易協定(FTA)、環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)交渉の開始に向けた内部手続きを開始することを発表した。米EU間のFTAをめぐっては、「雇用と成長に関する高級作業部会」の最終報告書の完成が予定より遅れ、2月6日のカーク米国通商代表部(USTR)代表と欧州委員会のドゥ・グヒュト委員(通商担当)との会談後も特に発表はなかった。しかし、2月12日の米大統領一般教書演説を前に最終報告書が完成し、オバマ大統領は同演説でTTIP交渉を開始する予定と表明した。今後EUと米国は2013年央の交渉開始を目指し、それぞれの内部手続きを進める予定。

<オバマ大統領が一般教書演説でTTIPに言及>
 EUのファンロンパウ欧州理事会常任議長、バローゾ欧州委員会委員長、および米国のオバマ大統領は2月13日、TTIP交渉開始に必要な内部手続きを開始するとの声明を発表した。米EU間のFTAについては、2011年11月に「雇用と成長に関する高級作業部会」を立ち上げて以来、2012年末までの最終報告書完成を目指して作業が進められていた(2011年12月22日記事参照)。

 しかし、EUの衛生検疫規制への対応や、米国の国内事情などが障害となり、米国とEUは2012年中に最終報告書を完成させることはできなかった。EUは2月に入って、米国が要求していた牛肉および豚の輸入規制の緩和を決定したが(2013年2月6日記事参照)、2月6日のカークUSTR代表と欧州委のドゥ・グヒュト委員との会談でも、最終報告書に合意することはできなかった。このため、一般教書演説でEUとのFTAに言及するのかどうか、オバマ大統領の発言が注目されていた(2013年2月12日記事参照)。

 カーク代表の引退も近づき、早期交渉開始に向けての不透明感が高まっていたが、一般教書演説を前に最終報告書(PDF)が完成。できるだけ早期に包括的な貿易投資協定の交渉開始に必要な内部手続きに着手するよう勧告した。これを受け、オバマ大統領は一般教書演説で、「今夜、私はEUとの包括的なTTIPの交渉を開始する予定であることを表明する」と言及し、交渉開始への方向性を示した。

 債務危機からの立ち直りを図る欧州にとって、米国とのFTAがもたらす成長と雇用への期待は大きい。2月7〜8日の欧州理事会(EU首脳会議)でも、成長と雇用という点で最も利益をもたらす交渉を優先すべきとした上で、規制問題への取り組みを含む米EU間の包括的な協定への支持を確認している(2013年2月13日記事参照)。バローゾ委員長は会見で、「最も重要なことは、(TTIPは)納税者の税金を1セントも費やさずに経済を活性化できることだ」と述べ、財政発動の余地の少ない欧州にあって、成長政策としての米国とのFTA交渉に期待を示した。この日の発表は、債務危機が一服するも成長政策に手詰まり感をみせる欧州にとって朗報となった。

<グローバルなルール作りを主導>
 高級作業部会の最終報告書では、規制問題を含む広範な2国・地域間の貿易投資問題に対処し、グローバルなルールの発展に寄与する包括的な協定こそが、検討したさまざまな選択肢のうち最も重要な相互利益をもたらすものだと結論付けた。2012年6月の中間報告書(PDF)では、「妥結できるのであれば(if achievable)」との留保を付した上で包括的な協定への支持を表明していた(2012年7月12日記事参照)。しかし、最終報告書ではそのような留保は付されず、FTA交渉への方向性が固まった。

 また最終報告書では、規制問題および非関税障壁への取り組みの重要性が中間報告書より強調されている。実際、欧州委の発表によると、規制の相違から生じる追加的な費用負担は、関税の10%以上あるいは分野によっては20%にも相当する。両国の関税率の平均は4%程度とされており、規制問題、非関税障壁に取り組んでこそ、協定の利益がもたらされるといえる。ドゥ・グヒュト委員は会見で、自動車の安全基準を例に挙げ、EUと米国は同程度に厳格な安全性を目指していることから、相互承認制度を採用するのが合理的と指摘している。

 このほか、最終報告書と中間報告書を比較すると、それほど触れられていなかったグローバルな貿易ルール作りへの寄与を強調しているのが特徴的だ。EUは、米国とともに日本とも並行してFTA交渉を進める。両先進国とのFTAを通じて、グローバルなルール作りを主導していこうという意図が透けてみえる。

<2013年夏前の交渉開始を目指す>
 今後、両国・地域はTTIP交渉開始に向けた内部手続きを正式に開始する予定。EUでは、欧州委が交渉マンデート案を加盟国に提示し、理事会で欧州委への交渉権限の付与を決定する必要がある。欧州委の提案は、3月後半になる見込み。既に首脳レベルでは何度か支持が表明されており、加盟国からの反対もない。少なくともEU側の交渉開始に向けた手続きはスムーズに進むとみられる。米国は交渉開始90日前までに議会に通知し、協議を進めることになる。

 ドゥ・グヒュト委員は交渉の開始時期について、アイルランド議長国の間、つまり2013年夏までの交渉開始を目指すと言及。さらに、スピードより野心的な合意を達成することが重要としつつ、今から2年で交渉を終えることが理想と述べている。

 とはいえ、高水準の協定締結へ向けての両者の隔たりは大きい。バローゾ委員長は会見での質問に対する回答で、米国が長年問題視してきた遺伝子組み換え作物(GMO)の基本法制は、運用は別として交渉の議題とならないと明言した。米国側はGMOや個人情報保護法制も交渉の議題となるとしており(「インサイドUSトレード」誌2月13日)、この点で両者は真っ向から対立している。米国が要求してきた事項のうち、獣脂を使用したバイオ燃料の輸入許可の問題も解決していない。EUがどこまで米国の要望に応えることができるのか、いまだ懐疑的な見方が米国内では根強い。

 またEUにとっても、FTAの重要課題の1つである地理的表示(GI)に、最終報告書ではなんら言及することができなかった。公共調達については、「あらゆるレベルの政府」での調達市場アクセスの改善を勧告し、米国の州政府の調達の開放も交渉の議題となり得る可能性を残した。しかし、2011年12月に妥結したWTO政府調達協定改正交渉では、現行の37州に加え、ジョージア、ウェストバージニア、ニュージャージー、ノースカロライナの4州の調達を加えることをぎりぎりまで目指したが、最終的には対象州の拡大はなかった(2012年1月18日記事参照)。実際に州政府の調達市場開放にまで切り込むためには、相当困難な交渉が予想される。

 何より、交渉の最も大きな課題となる規制問題については、そもそものアプローチが異なる場面の多いEUと米国が高い水準で妥協点を見いだすことができるのか、疑問視する声も多い。EUと米国は、予定より遅れたものの、交渉開始に向けたハードルはクリアした。しかし、仮に交渉を開始しても、交渉妥結へ向けた道のりはいまだ遠い。

(牧野直史)

(EU・米国)

通商弘報  511c4d53e4458


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