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飛幡祐規 パリの窓から(29回) : 押しつけられた不必要な開発計画と闘う人々(レイバーネット日本)
http://www.asyura2.com/14/kokusai9/msg/698.html
投稿者 gataro 日時 2014 年 12 月 24 日 13:07:44: KbIx4LOvH6Ccw
 

http://www.labornetjp.org/news/2014/1223pari
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 12月10日が何の日かご存知だろうか? そう、1948年12月10日に国連総会で採択された「世界人権宣言」にちなむ国際人権デーである。この日に日本では人権宣言を嘲笑するかのように、2013年末に国会で強行採決された特定秘密保護法が施行された。パリでは恒例のアムネスティによる催しなどが行われたが、この日の夕方にもうひとつ、ペルーのリマで開催中だった国連気候変動会議(COP20)に関連したアクションがレピュブリック広場(写真)で行われた。


 この日リマでは、約2万人の環境派市民が街に繰り出したという。COP20は、2020年以降の温暖化対策の新たな国際枠組みをまとめる国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)を用意するためだった。しかし、これまでのCOPと同様、多くの国(政府)に具体的な対策を進めようとする意志が欠けているため、交渉は難航して、たいした成果は得られなかった。そこで、環境団体など市民がアピールを行ったわけだ。


 COP21が2015年12月にパリ郊外で開催される予定のフランスでは、2013年から各地で、気候変動対策を促進させるための市民によるネットワークがつくられている。フランスだけでなくヨーロッパ各地で広がるこの運動の名前はアルテルナティバAlternatibaといい、イル・ド・フランス(パリとその近郊)地方でも今年から、さまざまな市民団体の連携が始まった。COP21に先立つ市民のアクション(2015年9月末、パリ)に向けて、農業/食、住まい、水、エネルギー、責任ある経済、医療、教育、文化といったテーマ別の学習をつづけ、現在のグローバル経済が進める生産第一主義と自然と資源、人間の搾取に対して、環境と人間を尊重するオルターナティブを提唱し、市民の側から大きな動きをつくろうという趣旨である。リマ会議中の12月1日〜11日にはパリや近郊で講演会、討論会、展示、映画上映などさまざまな催しが行われ、グリンピースやFoEなど環境団体、ATTAC、脱・反原発団体、南米の人権・環境団体支援グループなどが参加した。


 これらの動きはまだ小規模だが、政権が交替しても生産第一主義の経済優先・ネオリベ思想から転換ができない政界(緑の党は初め左翼連合内閣に加わったが、環境政策などへの影響力が小さすぎたため、脱閣した)に対して、別の社会と民主主義のありかたを提唱し、実践している。実際、オランド政権の目玉になるはずだった「緑の成長のためのエネルギー転換法」は10月に国民議会で可決され、来年2月に元老院で可決予定だが、生産・消費のありかたの根本的な変換とはほど遠い、消極的な内容だ。2050年までにエネルギー消費量を2012年の50%に減らし(化石燃料は30%減らす)、再生エネルギーの割合を32%に上げると謳っているが、具体的な展望に欠ける。例えば、大統領の公約「2025年までに原発による電気供給率を50% に下げる」(現在は75%)はかろうじて生きているが、具体的な廃炉計画も原子炉の寿命制限も記されていない。


 また、保守政権につづいて社会党政府も、ダムや空港、レジャー用巨大設備などの開発計画(私企業、あるいは公私合同企業が行う)を「雇用をつくりだす」として歓迎しているが、それらの大多数は近年、環境と地域の人々の生活を破壊する「押しつけられた不必要な大計画」であると、地域の市民団体や環境団体から批判を受け、抗議運動が活発になっている。


http://www.labornetjp.org/news/2014/1223pari

 たとえば、ナント市近郊のノートルダム・デ・ランドに建設予定の新空港建設計画は、石油ショックで中断された1960年代の計画が2000年代に復活したもので、2008年に「公益」事業に認められた。しかし反対派は、保護種の野生生物が生息する湿地地帯が破壊されると抗議し、環境や経済への影響調査に不備があった(新空港計画に有利になるように、数字や実態が曲げられた)と訴えている。航空機運航と空港利用者の増加は、現在のナント空港の改良でまかなえるというのだ。反対派の要請で調査したオランダの専門機関の鑑定書によれば、仏交通省の奨励する基準にしたがって計算すると新空港は赤字となり、現在の空港を改築したほうが経済的にも有益だとしている。


 「公益」のお墨付きを得て始まった土地整備工事に対抗し、反対派の人々は2008年頃から空港建設予定地(湿地地帯)の古い農家や簡易小屋などに住みつき始めた。しだいにフランス各地や外国から、若者などがそこへ集まってきた。彼らはほとんど自給自足で共同生活を送り、文化活動も行い、直接民主主義・自主管理の共同体を模索している。他の「押しつけられた不必要な大計画」に反対する地域にも同様の形態で共同生活の場が生まれ、それらは「ZADザッド」、その住民はザディストと呼ばれる(ZADはもともと「開発整備予定地域」の略称だが、同じ略称の「守るべき地域」という意味に使われるようになった)。ノートルダム・デ・ランドでは地域の農民たちとの連帯も深まり、2012年〜13年には大きな抗議運動に発展して注目されたが、行政側は整備を進めるために2012年10〜11月、「不法占拠」のザディストたちを力づくで排除した。ナント市をはじめ各地でそれに抗議するデモが行われたが、一部の参加者の暴力的行為を理由にした警察・憲兵隊による鎮圧により、多くの負傷者が出た。


http://www.labornetjp.org/news/2014/1223pari

 政府は「対話委員会」を設け、反対派による複数の法的訴えの審判が終わるまで、工事は中断された。ちなみに2014年4月、欧州委員会はフランス政府に、この計画がEUの環境基準に反する(生物種や環境への影響調査が不完全だった)と指摘し、その点について回答を求めた。


 2014年の秋には、南西地方タルヌ県のシヴァンス・ダム建設計画の反対運動がニュースになった。この場合もまた、少数の生産主義農家の利益のために湿地地帯の野生種と環境が破壊される「押しつけられた不必要な大計画」であると反対が高まり、ZADができた。反対派は、現在ある複数の「私有」貯水池を共有すれば建設予定ダム以上の水が確保できること、多量の水を必要とするトウモロコシの大量生産ではなくて、環境を損なわない別のかたちの農業が可能であると主張する。環境省に属する国立環境保護評議会もこの計画に否定的な意見を出したが、県議会の多数決で決められたダム計画は、県知事によって「公益」事業の認定を受け、2014年9月から整備工事(湿地帯の破壊)が始まった。反対派は計画と公益認定に対し、いくつも法的な訴えを起こしている。


 2013年10月からつくられたZADに対して、憲兵隊は今年に入って強制排除を進めていたが、9月以降は嫌がらせ(威嚇、挑発、所持品の焼却など)が顕著になったという。反対派は10月25〜26日の週末に集会をもち、各地から5000人以上が集まった。しかし、平和的な集会の周辺で夜間に警察・憲兵隊による激しい弾圧(催涙弾だけでなく、より有害なflashbangなど手榴弾まで使用)が行われ、21歳の青年が手榴弾を受けて死亡した。「フランス・自然・環境」という環境保護団体の会員だった青年はいわゆる「活動家」ではなく、環境と植物の保護を研究する非暴力主義の学生だった。内務省は、反対派の激しい暴力行為に対して警察・憲兵隊が防衛した際の事故だと説明したが、反対派は度を超えた弾圧に抗議し、遺族は訴訟を起こした。デモの際に死者が出たのは1986年以来のことで、社会党政府のもとでは初めてである。また、手榴弾による死亡事件は、1977年夏の高速増殖炉スーパーフェニックス建設反対デモ以来だ。内務大臣は11月、デモ「治安」における手榴弾の使用を禁止した。


 この二つの例は、生産第一主義の土地整備計画が地方自治体とプロモーター主導のもとで、いかに強引に進められるかを示している。地域の市民は、プロモーターと一部の住民だけが潤い、環境を損なう大事業の不条理で有害な点を指摘する。しかし推進派(行政)は、議会の可決をへて、しばしば「公益事業」に認可される計画の「正当性」を楯に、反論をいっさい受けつけず、反対派を過激で危険な「環境原理主義者」だと退ける。デモなどの際に警察とやりあう目的で集まる人々の暴力的な行為が、反対派はすべてそうであるかのように喧伝される。


 原発の建設がそうであったように、市民は計画の内容を知らされず、意見を言う機会も与えられず、しばしば公平と独立性に欠けた見せかけの調査にもとづいて「公益事業」が始まる。土地整備において、民主主義はほとんど機能しないことが多い。そこで、守るべき土地を占拠するZADという形態の闘いが生まれ、今ではフランス各地や他の国の土地整備計画地にも広がっている。


 ザディストやその支持者たちは、自然環境と人間的な生活を思いやり、他の人々との共同と協力にもとづく別の生き方、新しい民主主義のあり方を模索している。彼らはおそらく、2013年9月の国連総会でウルグアイのホセ・ムヒカ前大統領が語った世界観を共有しているのだろう。「もっと消費する(売る)ためにもっと働くという悪循環は、自然を破壊するだけでなく、他の人々と愛情や友情を育む時間を奪い、気がついたときには幸福は過ぎ去っている」。


 この世界観は前述したようにまだ少数派であり、政治面には反映されないが、少しずつ浸透しているのが感じられる。フランスではいま、グルノーブル
近郊に建設予定の巨大レジャー設備や巨大乳牛農場など20以上の「押しつけられた不必要な大計画」に対する抗議運動があり、国内さらには世界各地のオルターナティヴ運動との連帯が始まっている。ダンケルクの大競技場やパリ近郊の屋内スキー場など、地域住民の反対で計画が取り消される例も出てきた。


*「不必要な大計画」を示した地図、環境問題専門のニュースサイト「ルポルテール」

http://www.reporterre.net/spip.php?article6215


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2014年12月23日  飛幡祐規(たかはたゆうき)
 

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