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「再掲」本人(プリンシパル)の意向に反した時、代理人(エージェント)は首を切られる  日米関係と安倍総理(酔生夢死日記)
http://www.asyura2.com/14/senkyo159/msg/806.html
投稿者 五月晴郎 日時 2014 年 1 月 22 日 14:40:17: ulZUCBWYQe7Lk
 

http://suinikki.blog.jp/archives/1328123.html

2014年01月10日

古村治彦です。

 今回は、2013年1月15日に発表した政治学の一つの理論である、プリンシパル―エージェント理論(Principal-Agent Theory)を使って、日米関係と安倍総理について書いた文章です。

 この文章の妥当性が一年経ってどうなのか、是非お読みください。宜しくお願い申し上げます。

 『日本政治の経済学―政権政党の合理的選択』(マーク・ラムザイヤー+フランシス・ローゼンブルース著、加藤寛監訳、川野辺裕幸+細野助博訳、弘文堂、1995年)という本があります。この本は、日本政治研究において、大変に重要な本です。政治学に、合理的選択(ラショナル・チョイス、Rational Choice)というアプローチがあります。これは、ある政治的な行動について、「個人は利益の最大化(プロフィット・マキシマイゼーションprofit maximization)のために行動する、合理的に(rational、ラショナル)行動する」と説明するアプローチであり、現在の政治学の世界では大きな勢力になっています。


日本政治は、こうした合理的な説明ではなく、文化とか伝統、慣習、もしくは、構造から説明するものというのが通念でしたが(日本政治研究が本格化したのは第二次世界大戦後、しばらく経ってからです)、欧米の合理的選択で説明できるとしたのが、『日本政治の経済学』です。


この本で使われている理論は、プリンシパル・エージェント理論(Principal-Agent Theory)と呼ばれるものです。プリンシパルを「本人」、エージェントを「代理人」と訳すこともあります。プリンシパルと呼ばれる個人や団体は、自分の利益を最大化するために、エージェント呼ばれる人を雇います。エージェントは、プリンシパルの利益を最大化するために行動し、報酬を得ます。


このように書くと、大変難しく感じますが、日本政治を使って説明すると次のようになります。有権者(私たち)は、利益を最大化するために、政治家(例えば国会議員)を使います。この場合、有権者はプリンシパルとなり、政治家はエージェントとなります。そして、政治家、特に与党の政治家の場合は、官僚を使って、利益が最大になるようにします。この場合、政治家がプリンシパルになり、官僚がエージェントになります。プリンシパルが使う人、エージェントが使われる人ということになります。


・有権者(プリンシパル)―政治家(エージェント)


・政治家(プリンシパル)―官僚(エージェント)


 『日本政治の経済学』のなかで、ラムザイヤーとローゼンブルースは、この理論を使って、日本政治を説明しています。そして、自民党の政治家たちが官僚たちを使っているというモデルを作りました。それまでの日本政治のモデルは、官僚主導モデルというもので、日本政治を本当に動かしている、力を持っているのは官僚たちなのだというものでした。


 このプリンシパル・エージェント理論で重要なのは、エージェンシー・スラック(Agency Slack)と呼ばれる問題です。これは、プリンシパルとエージェントの間で、情報の非対称性、具体的にはエージェントは情報を持っているのに、プリンシパルが情報を持っていない場合、エージェントが自分勝手に行動し、プリンシパルが求めたものと違う結果をもたらすことです。そのために、プリンシパルは、エージェントが自分の要求通りに動くように、アメと鞭、自分の期待通りに動いたら報酬、期待通りに動かなかったら罰を与える、ということになります。ラムザイヤーとローゼンブルースは、『日本政治の経済学』のなかで、自民党官僚たちの昇進をコントロールすることで、エージェンシー・スラックを避けようとしてきたと述べています。


 これを現在の日米関係に当てはめてみます。日本はアメリカの属国(トリビュータリ―・ステイト、tributary state)ですから、プリンシパルはアメリカ、エージェントは日本の安倍晋三首相ということになります。アメリカの国益を最大化するために、安倍首相は行動します。日本の国益のために行動する訳ではありません。そして、安倍首相はプリンシパルになって、側近や官僚たちがエージェントとなります。


・アメリカ―(ジャパン・ハンドラーズ)―安倍首相―側近・官僚

 ここで、アメリカと安倍首相との間にも、エージェンシー・スラック問題があります。アメリカの意向通りに安倍首相が動かない場合、エージェンシー・スラック問題が起こります。


 以下のウェブサイト「プロジェクト・シンディケート(Project-Syndicate)」に、2012年12月27日付で、安倍首相の論文「アジアの民主国家による安全保障のダイアモンドを作る(Asia’s Democratic Security Diamond)」というタイトルの論文が掲載されています。この論文の存在は、新進気鋭の政治評論家である中田安彦氏に教えていただきました。(アドレスはこちら→http://www.project-syndicate.org/commentary/a-strategic-alliance-for-japan-and-india-by-shinzo-abe


 この論文のなかで、安倍首相は、日本が主導して、韓国、インド、オーストラリア、遠くはイギリスやフランスを巻き込んで対中国包囲網を形成すること、東シナ海と南シナ海の海上航行の自由を確保するために、日本が中国と対峙することを主張しています。


 この安倍氏の、対中国強硬姿勢、ジンゴイズム(Jingoism)をアメリカはどれだけ望んでいるのか疑問です。アメリカは中国から国債も買ってもらっているし、経済関係も緊密です。世界覇権国の地位を脅かされるという不安はありながら、ソ連のように、ただ敵対すればよいというものでもありません。安倍氏については、太平洋戦争中の日本軍の行動に関して、歴史を書き変えようとする歴史修正主義(リヴィジョニズム、revisionism)があり、アメリカとしては、決して、「優秀な」エージェントという訳でありません。


 安倍氏個人が「優秀な」エージェントであっても、今度は彼がプリンシパルになって使う側近や官僚たちが「優秀な」エージェントでなく、安倍氏に彼らを抑える力がなければ、安倍氏の期待通りに動かないどころか、暴走することもあります。そうすると、アメリカから見れば、安倍氏が失敗した、エージェンシー・スラックが起きたと見なされるのです。そうなると、安倍氏には罰が与えられます。それは恐らく「辞任」ということでしょう。


 このように見ていくと、安倍氏が「低姿勢(ロー・ポスチュア、low posture)」でスタートしたのは彼にとって良かったと言えますが、いつアメリカから、「暴走した、期待外れだった」ということで首を切られるか分かりません。そう考えると、日本の首相の座というのも安泰ではないし、苦しい仕事なのだろうということが分かります。


(終わり)  

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コメント
 
01. 2014年1月22日 15:01:43 : zR8XMRTwDk
>安倍氏に彼らを抑える力がなければ、安倍氏の期待通りに動かないどころか、暴走することもあります。

萩生田光一総裁特別補佐発言諸々は分かるけど

それ以外で

安部氏に頼まれてもないし期待されてもないのに動いちゃうお笑い「我々は安倍首相の嫡流だ」集団
ありゃ何なの?


02. 2014年1月22日 15:12:59 : 6fBmHYGVdE
昔読んだカエサルの「ガリア戦記」に出てくるパトローネスとクリエンテスの英語版ですね。 カエサルのローマ軍に帰属したガリア部族長の跡継ぎをローマに送り、教育を受けさせたとありますから、日本敗戦後のアメリカ留学制度が同じ趣旨だったわけ。 この辺の話は塩野七生さんの「ローマ人の物語」に、詳しく出ていますね。 ただし安倍ちゃんは、学校の成績があまり良くなかったので、ハーバートやスタンフォード・コロンビアには行かれなかったのでしょう。 財務省や法務省ででかい面をしている人たちが、クリエンテス代表になるのですかね。 お祖父様は戦犯から釈放されたとき、エージェントになる契約だったようですが、お上手に立ち回ってパリッシュメントにあわないで済んだのでしょう。 もっとも一度右翼に刺されたから、全くの無傷で済んだわけではない。 パトロン・プリンシパルに逆らって罰を受けた人は、角栄・竹下・金丸・小渕・小澤などの旧田中派の面々がいましたね。 作家の江藤淳さんもその口で、今では一冊の本も本屋の棚に見ることができない。 

03. 2014年1月23日 14:22:12 : nmStH96wuA
本文>「このプリンシパル・エージェント理論で重要なのは、エージェンシー・スラック(Agency Slack)と呼ばれる問題です。プリンシパルは、エージェントが自分の要求通りに動くように、アメと鞭、自分の期待通りに動いたら報酬、期待通りに動かなかったら罰を与える」


「小沢・細川の時代近づく」


本文章は浅薄なものになっているのは、日米安保体制への言及がないからである。何故エージェントは、裏切ろうとしないか、裏切れば罰が与えられるか、自己抑制するか、それは皆日米安保体制の存在、首都周辺にさえ強大な外国軍隊の存在、首都上空さえ外国空軍に管理されている実態、があるからだ。この意味で、田中角栄の存在は特筆すべきだ。角さんは、最終的には安保体制からの離脱、日本独立を考えていたと思う。でなければ、ああした行動はとれない。では、仮に日米安保体制が存在しないとしたら、エージェントはどういう行動とるか。裏切りの損得を秤にかけ、純粋に自分の損得だけで行動するか。真に代理人の行動を律するものは、何か。ここからは、政治学の領域から、他へ広がるだろう。丁度経済学では、伝統的制度学派に対し、A・グライフがマグリフ商人分析で提起した領域の問題だ。中世イスラム商人は、遠隔地取引きで、現地エージェントを雇った。代理人は、預かった商品を持ち逃げしたり誤魔化すことは可能であった。しかし、遺された古文書分析では、殆ど裏切った証跡はない。グライフは、プリンシパル(イスラム商人)とエージェント(現地代理人)の関係を、ゲーム理論の多数回取引理論を使って、数式化し検討した。
いずれにしても、エージェンシー・スラック理論だけでは、深い分析はできない。それより、田中角栄分析をした方が生産的だ。角さんを受け継ぐ小沢さんも、これからもっと検討さるべきだろう。安倍が、またまた世界で我が国の恥をさらしている。国際の場で、国民から増税で毟りとってその分企業の税金まけますから、なんて国内問題をわざわざ言う阿呆がいるだろうか。エージェントかピエロか知らないが、主人の関心引こうと、手振り足振り見苦しい限りだ。が、そろそろの気がする。小泉は困ったもんだが、しかし原発ゼロで汗流してくれるなら今までは今までとしたいが、小沢・細川の時代となれば、日本も多少見直されそうだ。 


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