[FT]国家主義的傾向強める安倍首相（社説）［日経新聞］
2014/2/10 15:00

　日本経済の活性化を目指す大胆な戦略である安倍晋三首相の「アベノミクス」の陰には台頭する中国の脅威がある。そもそも自民党の関心が安倍氏に向かい、国民の多くが選挙で同氏を支持したのは、拡大する中国の影響力への懸念が理由だった。安倍氏が、15年に及ぶデフレを根絶し、経済力の向上を追求するのも同じ危機感からだ。

　同氏は、歴史修正主義の立場から、日本は戦時の残虐行為を巡り不当に批判されてきたと考えているが、これまでは経済運営を優先してきた。ただ、就任後１年が過ぎ、少なくとも2016年まで政権の安定が予想される今、国家主義的な政策を前面に押し出し始めている。

　安倍氏は2013年12月、米国政府の忠告や外交上の懸念を無視して靖国神社を参拝。その結果、中国との関係改善の見通しが大きく後退、韓国とも緊張が高まっているようだ。靖国参拝の前には、過度に厳しい特定秘密保護法案を成立させている。

　この政策に対する懸念は、官邸が影響力を持つＮＨＫのトップ人事でさらに強まった。会長に指名された籾井勝人氏は12月の就任記者会見で「政府が右ということを左というわけにはいかない」と発言し、多くの関係者を驚かせた。
　また、同氏は従軍慰安婦問題を「戦場地域にはどこの国にもあった」などと発言、その後撤回したものの、大きな波紋を呼んでいる。さらに、安倍氏が任命した別の経営委員が「南京大虐殺はなかった」などと述べ、事態を悪化させた。原子力の利用が焦点となった東京都知事選を前に、ＮＨＫは原子力業界に対する批判の抑制を図ったようにもみえる。自民党は基本的に原発推進を支持する立場だが、11年に起きた東京電力福島第１原発の事故を受けて国民は警戒感を強めている。

■議論の機会を狭めようとする安倍氏

　安倍政権は公の議論の幅を狭めようとしており、中国の日本批判はそれを後押ししている。米世論調査機関ピュー・リサーチ・センターが最近行った世論調査では、中国に肯定的な印象を持つ日本人はわずか５％にすぎないことが分かった。国民の多くが受け身で、意見を主張しない日本では、世論を操作しようとする安倍氏の政策は危険だ。

　日本にとって議論すべき課題は多い。「集団的自衛権」の解釈を変更し、同盟国などが攻撃された場合、自国への攻撃と見なして反撃できるようにするのはその一つ。およそ世界に類を見ない戦争放棄を定めた憲法９条の改正も議論が必要だろう。安倍氏にとって不都合なのは、国民の大部分が戦後の平和主義を支持しており、同氏のように保守的ではないということだ。安倍氏は、議論の機会を減らすことで、自身に好ましい方向に世論を向かわせようとしているようだ。

　安倍氏は日本の近隣諸国にとって脅威だとする中国の主張はおおむねばかげているが、同氏の政策は日本自身を脅かしかねない。中国の脅威が口実にされ、日本の開かれた社会がたたかれればこれ以上の悲劇はない。

（2014年２月10日付　英フィナンシャル・タイムズ紙）

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http://www.nikkei.com/article/DGXNASGV10001_Q4A210C1000000/?dg=1

コメント
01. 五月晴郎 2014年2月10日 18:04:27 : ulZUCBWYQe7Lk : aeZXwWpQQ6 あっしらさん、安部周辺（安部じゃなく）を買いかぶり過ぎじゃないかな。 俺の頭が足りなくて言ってることが理解できてないだけかも知れないけど。
02. 日高見連邦共和国 2014年2月10日 18:07:50 : ZtjAE5Qu8buIw : mFuG9qQlTk アヘアヘ自己陶酔のアヘ総理は、早速国会で“原発推進・再稼働”を高らかに宣言していた。 都知事選挙中は“ダンマリ”だったくせに・・・（笑） んで、この都知事選で安倍政権と自民党の施策は民意の負託を受けた、って例の“ドヤ顔”で繰り返すんだろう。 名護市長選挙の結果は『只の一地方選挙』だっていって無視決め込んでたクセに！！ あ〜、やだやだっ！！ ぺっぺっ！！！（唾を吐く） あへ、あへ、あへ〜〜〜 かい〜の〜〜〜 （アベノジンマシン）
03. 2014年2月10日 19:25:13 : sWfCERHcuQ 今日出た週刊ポストの村上正邦インタビューの安倍批判を読むといい。 生長の家から自民党候補として政界に出た村上正邦はまごうことなき保守反動派であるが、その村上をして安倍の保守ごっこの危なっかしさは目に余るようだ。 村上が安倍の言動として許せないのは「責任ある野党」という言葉だそうで、村上は「野党に責任なんかあるか！」と与党の責任を放棄したかのような世迷言をくっちゃべる安倍の口の軽さをペラペラと痛烈に批判する。 それだけではない。中韓との外交にしてもチキンレースに興じるかのごとき、中国との軍拡競争で日本が中国を凌駕できるはずがないのにバカ正直に挑発に乗る愚をも批判する。話し合いに応じる努力調整もせずにドアは開いているといったって明けはしないよということだろう。 繰り返すが村上正邦は保守反動派である。されども政党人として政治家として野党との調整や外交の肝を心得た保守反動なのである。政治家は嫌いだといって相手と話もしたくないと駄々をこねていてはできはしない、打算と妥協が肝要であり最後にモノを言うのは気遣いだ。 福田派所属の村上が政敵田中角栄の気遣いと読みの深さの凄さをエピソードとして披露してくれているが、政敵の派閥であろうが隔てなく気遣ってくれる度量の広さに人がついていったのだと述懐し返す刀でそういうものが安倍晋三には欠片もないと手厳しい批判を加えている。 村上の言によればペラペラの言葉ということでは大勲位中曽根康弘と安倍晋三は双璧ということだが、この厳しい批判はOBの繰り言と取るか諫言ととるかで安倍の真価は決まるようなものだがどうにも繰り言だとしか捉えていないようだからどうしようもない。 村上の嘆きを総括すれば自民党にはもう人材はいないということなのだろう。
04. パラノイア 2014年2月10日 19:33:01 : 5cZmKXh9BZOYo : ozyfbOTpYE 投稿者殿、これ安倍氏が首相就任前にBSフジで林農林水産大臣が言ってました。 外交だけならまだ良いが国内政策でもやってるのが大問題だ。
05. おみや 2014年2月10日 20:27:22 : 5avMm4ZgNSSko : eol4nrGx1U 林農林水産大臣に限らず、党内にも不満が膨らんでいる。 まるで超新星爆発前の膨らんだ状態の巨星のような自民党、 つねに爆発の危険性をはらんでいる。 おれが、おれがの世界だから、みんなにかっこつける機会を与えないと それだけで不満爆発、猪瀬の次は安陪晋三がつるし上げの目標。 それがわからない安陪晋三、だれか忠告するやついないのか？ 元満州であこぎに儲けた、隠れ財閥の坊っちゃんてだめね、 ついでに言うと正妻の子ではない。
06. 2014年2月11日 01:53:14 : FbrubcrwN2 おれの見解ｗ 安倍政権の次の日本の権力は国家主義的な主張がやりづらくなる。 いづれ安倍政権と国家主義的なものがセットで批判されるようになるから。 安倍政権の存在の意味、というか“役割”はそういうことなんだと思う。 そして、安倍政権が同時進行でやっているグローバル的なものだけが残される。 こういうのは海外でも同じような“傾向”だと思う。 国家主義的なものがマッチでグローバル的なものがポンプ。みたいな。 これ、前にもやったか。　1qmOy4Hy0U
07. 五月晴郎 2014年2月11日 02:28:10 : ulZUCBWYQe7Lk : aeZXwWpQQ6 >>6 いや、成る程!　有り難うございます。

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