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「当たり前」を疑う力――「伝統捕鯨神話」に反論する
http://www.asyura2.com/14/senkyo165/msg/522.html
投稿者 ダイナモ 日時 2014 年 5 月 17 日 00:08:27: mY9T/8MdR98ug
 

 こんにちは。
 3月31日に、国際司法裁判所が南極での調査捕鯨に違法判決を下してから、調査捕鯨がニュースでとりあげられることが多くなりました。
 とくに、ニュースや特集記事で、この判決によって「鯨肉が食べられなくなるのでは」とか、「日本の伝統が消えてしまう」というストーリーが繰り返し伝えられているのを見ると、「伝統捕鯨神話」がさらに広まっていくのではと危機感を感じます。
 長年、この問題に取り組んできた私としても、言いたいことがたくさんありますが、今回は「伝統捕鯨神話」について4つのポイントで論じていきたいと思います。


その1、遠洋捕鯨は伝統ですか?

 日本は西洋の捕鯨技術を輸入して、1930年代に南極海の商業捕鯨を開始しました。当時は、戦費を稼ぐための鯨油目的だったので、鯨肉をたくさん廃棄していたと言われています。敗戦後、飢えに苦しんでいた日本人のためにGHQが南極での捕鯨を許可し、南極から鯨肉を大量に持ち帰ったのが、日本人全体が鯨を食べた最初のことです。
 ですから、今回の判決で南極海の捕鯨をやめることと日本の「伝統」とは、まったく関係がないのですが、「伝統をまもれ」という感情的な議論は、読者や視聴者の受けが良いのか繰り返され続けています。


その2、鯨肉を大量輸入も伝統ですか?

 国内ではほとんど報じられていませんが、5月7日夜、大阪港に、アイスランドから絶滅危惧種であるナガスクジラの鯨肉約2000トンを積んだ貨物船が到着しました。鯨肉の輸入としては、過去最大となる規模です(注1)。鯨肉の年間の消費量が約3000トンと言われている(注2)ので、年間消費量の3分の2となります。国際司法裁判所の判決で「鯨が食べられなくなる」と報道しているメディアは、この輸入もしっかりと伝えるべきですが、「日本の捕鯨は伝統」という主張とつじつまが合わないのかほとんど報じられません。
 しかも、アイスランドの輸出統計を見ると1キロあたり700円程度と格安です(注1)。これが日本の市場で、部位にもよりますが1キロ1万円から2万円にもなります。ちなみに、アイスランドで行われているナガスクジラを対象にした捕鯨は日本への輸出用のみで、アイスランド国内では需要がありません。つまり、日本の市場向けの産業的な捕鯨で、こちらも伝統とは一切関係ありません。


その3、ワシントン条約規制対象種を食べるのも伝統ですか?

 ナガスクジラなどの鯨類はワシントン条約で規制対象種となっています。空港などでガラスケースに「輸入が禁止されている生物」としてカメとかワニとかが展示されているのを見たことがあると思いますが、クジラも同様に規制対象です。ところが、日本がこのワシントン条約の鯨類規制の部分を認めていないため、鯨肉の輸入が可能となっているのです。
 象牙などが商業目的での輸出入が禁止されていることは良く知られていますが、それと同様に世界の大多数の国々では鯨肉も規制されています。


その4、科学を偽るのも伝統ですか?

 5月12日からは、捕鯨を議論する国際捕鯨委員会の科学者会合がスロベニアではじまりました。この場所で、日本政府は判決を受けて中止、縮小した南極海、そして北西太平洋での「調査捕鯨」の科学性を説明するということです。
 しかし、「調査捕鯨」が本当に「調査」を目的として行われていると思っている人がどれぐらいいるでしょうか?
 その証拠に、ニュースでは「調査捕鯨」の話だとしても、「鯨肉が食べられなくなるかもしれない」という話ばかりでその「科学性」についてはほとんど話されません。つまり、「調査」という偽りの看板をかかげて、鯨肉を市場に出すことが主目的であるのは誰の目にも明らかなのです。
 そして、この「非科学性」こそが国際司法裁判所が厳しく批判した点です。「科学性」が議論されているのに、「これは日本の伝統だ。批判されるのはおかしい」という発言を聞くと、調査捕鯨の主目的が「科学ではない」ことがより浮き彫りになっていきます。
 偽りの科学も、日本の伝統でしょうか?


「伝統捕鯨神話」を疑う必要性

 「文化だ」「伝統だ」という言葉は、反論することを許さない雰囲気を作る効果があります。だからこそ、その言葉が本当に事実を反映しているのかを疑う目が必要です。
 今月号(2014年6月号)の月刊誌『世界』にノンフィクションライターの古木杜恵氏が「“調査”捕鯨は誰のものか」という記事を書いています。その中で古木氏は「“捕鯨サークル”あるいは“捕鯨トライアングル”と呼ばれる利権集団『捕鯨ムラ』がうごめき、『原子力ムラ』がつくり上げた『原発安全神話』と同様の『伝統捕鯨神話』が見え隠れする」と表現しています。
 こうした「伝統捕鯨神話」の中で、調査捕鯨は伝統だというプロパガンダが浸透し、過去には復興予算23億円が調査捕鯨の実施団体の借金返済に使われたり、近年では、毎年約50億円の費用のほとんどが税金でまかなわれていたりという状況になっています。
 そして、私が日本人としてしっかりと考えなければいけないと思うのは、すでに南極海で商業捕鯨を行いたいという企業が存在しないという点です。商業捕鯨の再開を目的として続けてきた調査捕鯨はすでにその目的を失っているのです。目的を失っているのにもかかわらず、「国際的な批判に屈してはいけない」という感情論で税金を投入して続けているのが「調査捕鯨」です。利権が絡んだ無駄な公共事業の典型でしょう。
 捕鯨問題だけではないですが、あらゆる社会問題の常識を疑うことも必要だと思います。

(注1) アイスランド貿易統計より
(注2) 「土俵際の調査捕鯨 国際司法裁、31日判決」2014年3月26日 朝日新聞


http://www.magazine9.jp/article/kaeru/12551/  

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コメント
 
01. ヒゲ-戸田 2014年5月17日 00:21:03 : Nk87MbMkz45iQ : 0NHSFs5Pzi
ダイナモ氏の「戦争」「国際」面での投稿姿勢は全く賛同できないが、この投稿には賛同します。・・・だけど、そうだけど、私は鯨肉が食べたい!1956年生まれの私は、子供時代に家でも学校給食でも食べた鯨肉がおいしくて大好きで、大人になってからも大好きでたまらない。
・・・・・アイスランドからの輸入物の「1キロあたり700円程度」が日本の市場では「1キロ1万円から2万円」という話には驚いた。もっと安く食わせろ!と思います。

02. 2014年5月17日 01:11:48 : ZpxShrXgV2
冷蔵冷凍庫がないとありえないだろうと思う。捕る方も喰う方も。
伝統を大事にする国民が、米を余らせてパンやパスタを食う?
説得力ないよね。
クジラを食ってた時代の食生活に戻すなら、クジラを食ってもいいことにしてやるって言われたら、私は断る。
私は給食で出たカチカチシガシガのタツタ揚げしか知らない世代。
クジラ食べてた当時の動物性たんぱく質の摂取量って今の半分くらい?

ところで、政府が正しい日本食を広めるとか言ってたけど、フランスで大統領にステーキ出してたように見えたのは、見間違い?
ソコはやっぱ、鰆とか豆ご飯とかじゃないか?
和食って季節感が大事なんでしょ?
ステーキって正しい日本食?テリヤキハンバーグは?
ナポリタンなんか認めないってイタリア人に言われたり,天津飯なんか中華料理屋に置いちゃいけないって言われても困るから、正しい日本食、なんてやめとけ


03. ダイナモ 2014年5月17日 01:12:59 : mY9T/8MdR98ug : Kr2S1L17Og
私も鯨肉は好きです。子供の頃良く食べました。

だけど今は食べたいとは思いません。

アイスランドから大量に輸入していたという話しには私も驚きました。こういうことこそマスメディアは報道すべきだと思うのですが・・・。


04. 2014年5月17日 02:46:58 : yZQdgZg1DH
調査捕鯨は伝統ですか?

ハイ、既得権益を守る官僚と特殊法人の利権が絡んだ無駄な公共事業の「伝統芸」です。


05. 2014年5月17日 08:41:40 : V58Y6IPuRY
04さん

素晴らしい回答です!


06. ピッコ 2014年5月17日 09:11:35 : ldyqn.PAmBFfI : eAXHpA6UM6
>この判決によって「鯨肉が食べられなくなるのでは」とか、「日本の伝統が消えてしまう」というストーリーが…

これは、もはや「ストーリー」ではなく、現実に起きていることですよね。 たまに専門店で振る舞われているシーンをテレビで見るだけで、本物の鯨肉を見ること触ること、もう何十年もありません。 その味も、子供だったころのかすかな記憶に残っているだけです。 鯨肉は庶民にとっては、もはや希少高級食材なのですよね。 日本の伝統文化を捨て去り、すべて西洋化しようという動き、例えば「米を食うと頭が悪くなる」とか言ってパン食を勧め、伝統的な日本人のコメを主食とした和食文化を変えようとする試みも過去にありましたが、これはアメリカの日本への小麦輸出を促進するためのプロパガンダだったという人たちもいます。 その功が奏してか、日本の社会は十分に西洋化しました。 牛肉食や豚肉食など、昔は宗教上においても忌み嫌われていたものを、今日では、お寺の和尚さんでもするようになりましたからね。 その分、人間に食べられるためだけに生まれ育てられる牛や豚は哀れですけれどね。(^_^;) 何事においても、バラエティーが豊かであることこそが文化なのだと思います。 ですから、いつの日か、また再び鯨肉が私たちの食生活のメニューの一つとして復活すれば、それはそれで素晴らしいことだと思います。 私は、アメリカやヨーロッパなどの先進国の人々がクジラの肉を食べる習慣がないことはいいことだと思っています。 もし彼らが、クジラの肉を「脂分が少なく高タンパク質で美味でヘルシーな食べ物」だと捉える時が来たら、それこそ世界の海でクジラの乱獲が始まるでしょう。

>鯨肉を大量輸入も伝統ですか? アイスランドの輸出統計を見ると1キロあたり700円程度と格安です(注1)。これが日本の市場で、部位にもよりますが1キロ1万円から2万円にもなります。

現在、日本の市場に出回っている鯨肉は、アイスランドやノルウェーなどの捕鯨国からのものと聞いていますが、いずれにしても、需要を満たすような量ではないので、国内市場で高く取引されるのは当たり前な話だと思いますが…。


07. 2014年5月17日 09:30:10 : FLroeApmNE
この論理でいったら食人は伝統ですって居直られて、
中国人にみんな食べられちゃって、人間が絶滅危惧種になったりして。

08. 2014年5月17日 11:42:55 : LvhRdtdLIg
これらの事は今までも言われていましたよ。でもなぜこれで、だから鯨を食べてはいけない、ということになるのでしょうか?

09. ダイナモ 2014年5月17日 12:31:29 : mY9T/8MdR98ug : Kr2S1L17Og
>>08

日本は「調査捕鯨」だけ認められているのであって、「商業捕鯨」は認められていない。「調査捕鯨」で捕獲した鯨の肉が市場に流通していたことで、「調査捕鯨」が実は「商業捕鯨」だったことがバレて、国際司法裁判所が南極での調査捕鯨に違法判決を下したというわけ。

それにこの記事は、日本の伝統文化だから捕鯨は認められるべきだという主張に対して、日本の鯨肉食肉が伝統文化などではないということを暴露したもの。国際社会のほとんどは捕鯨禁止。そこに日本の鯨肉食肉が伝統文化ではないということになれば、おのずと捕鯨禁止の流れになる。


10. 2014年5月18日 14:24:18 : brZ5KLn68M
南氷洋捕鯨は年金とかと同じ戦中または戦後レジームだということ?

11. ピッコ 2014年5月19日 00:06:56 : ldyqn.PAmBFfI : PTMJq2SWNY
>(この記事は)日本の伝統文化だから捕鯨は認められるべきだという主張に対して、日本の鯨肉食肉が伝統文化などではないということを暴露したもの

鯨肉食は日本の伝統的食文化です。 この投稿文の著者はグリーンピース・ジャパン事務局長という肩書の佐藤潤一:1977年生まれ。アメリカのコロラド州フォート・ルイス大学留学という方ですね。 肩書から、どういう考えの持ち主なのかが分かります。 「グリーンピース」という、ある種の暴力団体を、私は支持しません。


12. 2014年5月19日 00:13:28 : rUvc0lWt0Y
犯罪集団の合法面キャンペーンというわけか

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