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安倍内閣 お友だち・お飾り大臣を裸にする 国民の年金を危険にさらす塩崎恭久“株価維持”担当相(日刊ゲンダイ)
http://www.asyura2.com/14/senkyo171/msg/360.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 9 月 14 日 07:39:05: igsppGRN/E9PQ
 

            第1次安倍政権「官邸崩壊」の元凶/(C)日刊ゲンダイ


安倍内閣 お友だち・お飾り大臣を裸にする 国民の年金を危険にさらす塩崎恭久“株価維持”担当相
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/153295
2014年9月12日 日刊ゲンダイ


 運用規模127兆円を誇る年金基金の積極運用派の急先鋒で、別名は安倍内閣の「株価維持担当大臣」。就任直後から、ベンチャー企業や未公開株への出資、株投資の拡大など、年金運用の積極プランを次々発信して、市場を煽りまくっている。本人も全26銘柄、計5万株以上を保有する政界きっての株長者だ。

 武田薬品(3630株)、新日鉄住金(1万9747株)、鹿島(5347株)、三越伊勢丹(2268株)など業種を代表する安定銘柄を幅広く運用し、ファンドマネジャーの経験が豊富な経済評論家の山崎元氏も「賢く分散投資している」と驚いていた。

●東大一家 1950年生まれ。東大卒後、日銀に入行。日銀時代にハーバード大に留学した。93年初当選。父・潤は東大法卒の旧大蔵官僚、主税局長を経て政界に転じ、大臣になった。国際法の権威の長姉とその旦那も同じ学歴。もうひとりの姉の夫(元外交官)もそうだし、地元・松山の大学で教壇に立つ千枝子夫人も東大卒後にハーバード留学。この血筋なら「理屈っぽくて親しみにくい」との人物評も納得である。

●脱原発? 坂本龍一とは都立新宿高の同級生で今もメル友だ。野党時代は原発事故後に国会事故調の設置をいち早く提案。原子力規制委の立ち上げの際も、政府から独立した強い権限を持たせることにこだわり、実現させた。

 安倍とは当選同期の“お友だち”。第1次政権で官房長官に抜擢されるも、調整力不足で「官邸崩壊」の元凶となった。第2次政権発足で、かつての仲間は次々入閣を果たしたが、政調会長代理にとどまった。

「野党転落後に党改革委員会のトップに君臨。11年には首相経験者に公認を与えず、事実上の『引退勧告』を検討したが、長老たちの猛反発で葬られた。この一件が再起を目指していた安倍さんの不評を買って、入閣が遅れたのかもしれません」(自民党関係者)

●後継者 長男も東大出の弁護士。三菱商事に勤める次男は私学卒で、親族に大学名を告げると、「そこは専門学校?」と真顔で言われたという。だからこそか、次男は「塩崎家で唯一、他人の痛みが分かる人」と地元での評判は上々だ。


 

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コメント
 
01. 2014年9月14日 08:45:11 : Ma5RZiiuic
アメリカ財界の要求鵜呑みにする奴が「国民を守る為に戦う」ようなふりするな!
戦うふりとかもういいから

02. 2014年9月14日 10:15:24 : 5sgmoSMsQI
この人のどこが脱原発かね。自民党で大臣になるのは原発推進ゴリごりでなければ無理というもの。

03. 2014年9月14日 14:00:41 : lOr0zcg9f2
>三菱商事に勤める次男

安倍晋三の実兄・安倍寛信氏は三菱商事の執行役員ですしねぇ。。


04. 2014年9月14日 18:30:59 : jXbiWWJBCA
1
年金の財政検証:2014年検証結果と今後の課題
高山 憲之
(公財)年金シニアプラン総合研究機構研究主幹・一橋大学名誉教授
要旨
1.2014 年財政検証の主要な結果は、つぎの7つに要約される。すなわち、@公的年金の財政に
関するかぎり、その現状は「お尻に火がついた状況」ではない。Aデフレ下におけるマクロ経済ス
ライド休止条項は将来にわたる給付水準の実質カット分を大きくしてしまう。Bマクロ経済スライ
ドの発動要件が現在、ようやく整いつつあり、一旦それが発動されると、その年金財政健全化効果
は大きく、年金財政の持続可能性はかなり高くなる。Cただし、年金財政の健全化は年金水準の実
質的切り下げという犠牲なしには達成されない。とりわけ基礎年金水準の大幅な切り下げを伴う(年
金財政は破綻しないが、給付水準は大幅に下がる)。D基礎年金の大幅な切り下げには複数の要因が
作用しているものの、国民年金財政が元々脆弱であったことが、その背景にある。Eしたがって、
国民年金の財政健全化に貢献するような施策、たとえば短時間労働者の厚生年金保険への適用拡大
や保険料拠出期間の延長等を実施することが今、強く求められている。F出生率が上昇したり、女
性や高齢者の労働参加が一段と進んだりすると、年金の財政基盤はその分だけ強固になる。
2.年金に関する財政検証フレームが従来のままでよいのかについても再検討する必要性が高まっ
ている。たとえば、@標準的な世帯を今後とも想定するのか、それとも標準を個人ベースに切りか
えるのか、A最低保証の年金水準に関連して、基礎年金についても独自の水準を新たに設けるのか、
B所得代替率の分子を、分母に合わせて手取りベースに切りかえるのか、Cマクロ経済スライドに
よる報酬比例部分の水準調整が終了した後に基礎年金の水準調整が継続している場合、報酬比例部
分について新たな水準調整を追加する必要はないのか、D基礎年金拠出金に係る計算方式を頭割り
から所得比例に変更する必要性が大きい中で、その具体案を検討しないのか、等々。財政検証フレー
ムそのものについても、その見直しに関する議論が開始されることを期待したい。
3.2014 年8月時点では未公表となっている資料が少なくない。『2009 年財政検証結果レポート』
並みのデータ公開が待たれている。
1 はじめに1
厚生労働省は 2014 年6月に厚生年金・国民年金の財政検証結果を公表した。社会と経済の状況
が変化すると、年金財政の将来見通しも変わる。そのための定期的点検を日本では少なくとも5年
に1回の間隔で実施することになっている。従来、この定期的点検を「財政再計算」と呼んできた2
が、2004 年改革で将来にわたる保険料(率)が法律に明記され、固定された。2014 年改革後は保
険料(率)を計算しなおす必要が無くなったのである。年金財政に関する定期的点検作業は、その
後「財政検証」という呼称に変更されている。
2004 年改革では、さらに基礎年金国庫負担の2分の1への引き上げ、およびマクロ経済スライド
の導入、の2つが決定された。とくにマクロ経済スライドは年金財源の範囲内で給付水準を自動調
整するしくみであり、この調整は負担と給付のバランスがとれるまで行われる。すなわち、それは
年金財政の長期的な持続可能性を確保する手段であった。収支のバランスを図る期間(財政均衡期
間)は、おおむね100 年間(2014 年財政検証では2110 年度まで)とされている。
財政検証では、マクロ経済スライドによる給付水準の調整がどの時点で終了するのか、そして最
終的な給付水準がどの程度になるのか、が経済や就労等に関する将来のさまざまな状況を投影させ
ながら示される。2014 年財政検証では、さらに制度改正を仮定したオプション試算の結果も公表さ
れた。
本稿では、まず、2014 年における年金財政検証の主要内容を順次紹介する。その上で、財政検証
のあり方について、今後の議論において参考となると思われるポイントをいくつか指摘しておきた
い。
2 持続的賃金デフレ下におけるモデル年金水準の上昇
2014年の財政検証結果を2004年の財政再計算結果および2009年の財政検証結果と比較すると、
長期的な年金財政の安定やモデル年金水準の50%保証(政府約束)などに関するかぎり、主要内容
は基本的にほとんど変わっていない。出生率の上昇が年金財政の安定化に貢献することも改めて確
認されている。
ただ、2004 年の財政再計算では予想していなかったことが2009 年には1つだけ生じていた。そ
れは、それまでの5年間にモデル年金の水準が上昇してしまったことである。すなわち 2004 年の
財政再計算によると、モデル年金の水準は 2004 年度の 59.3%から 2009 年度には 57.5%へ少しず
つ低下するはずであった。ところが現実には 2009 年度段階で逆に 62.3%へ上昇してしまった(図
表1)。予想に反したモデル年金水準の上昇は 2009 年度以降も継続し、2014 年度には 64.1%に達
している。2004 年財政再計算時の試算値(54.0%)と比べると、約10 ポイントのアップとなった2。3
なぜ年金水準は、この間に上昇したのか。それはまず第1に、この間、現役男性の手取り賃金(税・
社会保険料控除後)が毎年、低下しつづけたからである。第2に、賃金や物価が低下した場合、今
のお年寄りが受給している既裁定の年金は物価スライド、年々、新たに受給者となる人が受給する
新規裁定年金は可処分所得スライド、とすることがそれぞれルールとなっているからにほかならな
い。この間、賃金や物価は低下しつづけたので、年金財政を長期的に安定させるための切り札であ
るマクロ経済スライドは1回も発動されなかった。第3に、物価の下落率よりも賃金の下落率の方
が大きい場合、新規裁定分も既裁定分と同様、物価スライドとするという特例が定められているか
らにほかならない(本来は可処分所得スライド)。既裁定年金の実質価値維持が優先され、かつ、[(既
裁定年金額)>(新規裁定年金額)] という事態を避けるための臨時特例措置である。つまり、モ
デル年金水準の指標である所得代替率(後述参照)の分子(新規裁定年金)の名目値は確かに低下
したが、分母(手取り賃金)の名目値も低下し、分母の低下幅の方が分子の低下幅より大きかった。
年金水準が予想外に上昇したのは、そのためにほかならない。
2004 年改革の基本線は、保険料を 2017 年まで毎年小刻みに引き上げる一方、2009 年度までに4
基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げ、さらに給付水準を少しずつ引き下げることにより、
年金財政の長期的安定を図るということにあった。その基本シナリオのうち給付水準を少しずつ引
き下げていくということが、予想外の持続的な賃金下落により、この間、実現できなかったのである。
予想に反した給付水準の上昇は、その分だけ今後に必要となる調整を大きくしてしまう。その調
整で「しわ寄せ」を受けるのは将来世代である。すなわち、将来において政府が法律により支払い
を約束しているモデル年金の最低水準は 50%にほかならない。この 50%水準までの給付削減幅は
2004 年段階では約 9 ポイント(15%カット)であったものの、2009 年には 12 ポイント強(20%
カット)となり、さらに2014 年には14 ポイント(22%カット)にまで及んでしまった。基礎年金
のみの受給者に限定すると、将来における給付の実質削減は2004 年段階では15%と試算されてい
たが、2014 年段階では 30%程度のカットが財政安定化のために将来必要となる。その結果、基礎
年金月額(40 年加入の満額年金、65 歳受給開始の場合)は、6万4000 円程度(2014 年度)が30
年後には4万5000 円強になる見込みである(2014 年度の賃金価格表示3。図表2参照)。必要になっ
た給付水準調整幅の拡大に伴い、基礎年金水準の調整終了年度も当初予定の2023 年度から2043 年
度(ケースC)と大幅に遅れることになり、調整期間の長期化も余儀なくされている4。
給付水準を実質的に引き下げようとする場合、かつての日本では、もっぱら報酬比例部分をその
対象としてきた。基礎年金の水準を実質的に維持する。そのことを政策判断として優先してきたか
らである。ところが、2004 年改革において、この考え方は放棄され、報酬比例部分と基礎年金を同5
率で実質的に切り下げることにした。ただ、この同率切り下げは結果論であることが 2009 年段階
で判明した。その理由は同率切り下げがマクロ経済スライドの実施方法と密接に関連していたから
である。
マクロ経済スライドによる給付調整は、まず国民年金の財政が均衡するまで継続される。そして、
その調整終了時における基礎年金の給付水準が決まり、給付調整期間も決まる。その結果を踏まえ
て厚生年金保険における基礎年金拠出金の年々の金額がそれぞれ確定し、それを前提にしながら厚
生年金財政が均衡するまで報酬比例部分の給付水準をマクロ経済スライドで調整していく。
2004 年の財政再計算では、基礎年金水準の調整期間は報酬比例部分のそれと長さが一致し、同率
の給付カットとなった。それは、たまたま偶然の結果として生じた。上記のようにマクロ経済スラ
イドを実施すれば、2つの期間の長さは必ずしも同一とはならない。この点が 2009 年検証で確認
されたのである。2014 年検証の結果、上記2つの調整期間に係る長短格差はさらに拡大した。
国民年金財政を均衡させるためには基礎年金の給付水準を将来、30%も実質的に切り下げる必要
があるのだ。国民年金財政は元々、脆弱であった。その脆弱性が、2014 年検証で改めて確認された
格好である。そもそも国民年金の第1号被保険者グループは経済的に不安定の人が少なくなく、所
得水準も総じて低い人の集団であること、基礎年金拠出金の算定方法が頭割りとなっており、第1
号被保険者には総じて不利な扱いとなっていること、2004 年改革で設定された最終的な国民年金保
険料(1人月額1万6900 円:2004 年価格)が低すぎたこと等、がその脆弱性の背景にある。2004
年改革時には、その脆弱性は見えにくかったものの、2014 年にいたって再び露呈してしまった。
2004 年当時の基本線に沿って考えれば、将来に必要となる基礎年金の大幅カットは不測の事態で
ある。給付水準の保証にさいして、基礎年金独自の給付水準保証を新たに追加する必要性が今日大
きいと思われるが、いかがであろうか。
あるいは、マクロ経済スライドによる報酬比例部分の水準調整が終了した後に基礎年金の水準調
整が継続している場合、報酬比例部分について新たな水準調整を追加することを検討する必要があ
るだろう。
年金財政が長期的に持続可能であることは、きわめて重要なことである。かつて、財政の持続可
能性を確保するために日本も長年にわたって苦悩してきた。そのことに鑑みると、経済が成長しつ
づけるかぎり、その点が確保されていることを2014年財政検証で再確認することができたことは、
それなりに意味がある。ただ、それだけでは必ずしも十分ではない。老後生活費の基盤的な部分を
賄うことができるような給付水準を公的年金制度によって今後とも維持していくこと(年金制度の
政治的持続可能性)も他方で強く求められている。今後に予想されている基礎年金の甚だしい劣化
は、この第2の要請に応えているとは必ずしも言えない。6
3 給付水準の調整終了年度と最終的な給付水準
2004 年改革以降における財政検証の目的は、将来の給付水準がどこまで低下するのかを示すこと
にある。給付水準の指標として法律で定められているのは、標準的な夫婦の 65 歳受給開始時点に
おける所得代替率である。この所得代替率が50%を下回ることがなければ、公的年金として期待さ
れている機能をそれなりに果していると考えられている。
ここで「標準的な夫婦」とは、@夫婦とも同年齢であり、20 歳で結婚し、年金受給開始となるま
で離婚しない、A夫は 40 年間、平均賃金を稼ぐサラリーマンである一方、妻は 20 歳からの 40 年
間、専業主婦(より正確には第3号被保険者)のまま変わらない、という2つの要件を満たす夫婦
である。他方、所得代替率とは、上記の標準的な夫婦が 65 歳時点で受給を開始する年金給付(課
税前、夫婦合計額)を現役世代男子の平均手取り賃金(ボーナス込み)で除した値にほかならない。
2014 年の財政検証にあたり厚生労働省は人口や就労・経済等に関して、それぞれ複数の前提を置
いた。まず、将来の人口については国立社会保障・人口問題研究所『日本の将来推計人口』(2012
年1月推計)を使用し、合計特殊出生率および死亡率について中位・高位・低位の3つをそれぞれ
設定した。ちなみに中位推計では2060 年の合計特殊出生率を1.35、平均寿命を男84.19 歳、女90.93
歳としている。
つぎに、労働力率・就業率については労働政策研究・研修機構『労働力需給の推計』(2014 年2
月)に準拠し、労働市場への参加が進むケース、労働市場への参加が進まないケース、の2つを使
用した。
すなわち労働市場への参加が進むケースでは、男性 60 歳代の就業率が大幅に上昇する(60〜64
歳層の就業率は2012 年の71%から2030 年には87%へ、65〜69 歳層のそれは同期間中に47%か
ら 65%へそれぞれ上昇する)一方、女性 25〜54 歳層では 2030 年段階で就業率が8割超となり、
M字カーブが消えると仮定している。ちなみに 2012 年時点における女性 30〜34 歳層の就業率は
66%であった。それが2030 年には82%まで上昇するとしており、大幅アップを見込んでいる。他
方、労働市場への参加が進まないケースでは、男女別年齢階層別の就業率が 2012 年レベルのまま
将来も変わらないと仮定しており、2030 年までに就業者総数が820 万人強も減ると想定している。
さらに、経済前提については「年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委
員会」の報告に基づき、2023 年度までの向う10 年間については内閣府の試算で示された「経済再
生ケース」(平均成長率が実質2%程度、名目3%程度)と「参考ケース」(実質1%程度、名目2%
程度)に準拠して設定した。そして 2024 年度以降の実質的成長率については 1.4%からマイナス
0.4%までの8ケースを想定している。ちなみに労働市場への参加が進むケースの一例であるケース7
Cでは、物価上昇率1.6%、賃金上昇率3.4%、運用利回り4.8%、経済成長率2.5%(いずれも名目
値、年間)とそれぞれ仮定している。他方、労働市場への参加が進まないケースの1つであるケー
スHでは、物価上昇率0.6%、賃金上昇率1.3%、運用利回り2.3%、経済成長率0.2%(実質ではマ
イナス0.4%)とそれぞれ想定している5。
そのほか、マクロ経済スライドは2015 年度から実施すること(2015 年度の調整率は1.1%)、国
民年金保険料の納付率は2018 年度以降65%で推移すること等も仮定している。さらに、共済年金
は2015 年10 月以降、厚生年金に統合一元される。この一元化も想定しており、モデル年金水準も、
この一元化モデル(2014 年度 62.7%)を使用した。一元化モデルの年金水準が旧厚生年金モデル
のそれ(64.1%)より若干低いのは、共済グループの平均手取り賃金が多少とも高いからである。
このように検証のさいに用いられた前提は数が多く、基本ケースも設定されていない。この点は
2009 年の財政検証と大きく異なっている。
検証結果を実質的に左右しているのは、女性や高齢者の労働市場への参加が進む経済再生ケース
か、それとも労働市場への参加が進まない低成長ケースか、の違いである。以下では、この違いに
着目しながら検証結果の概要を紹介しておこう。なお、本稿では簡略化のため、特に断りがないか
ぎり出生中位・死亡中位および経済変動がない場合についてのみ言及する。
まず、経済再生ケース(A〜Eの5ケース)では、実質的な経済成長率に1ポイントの幅がある
ものの、最終的な所得代替率は50.6%〜51.0%であり、ほとんど差はない。いずれも50%超となっ
ている。マクロ経済スライドによる調整が終了する年度も2043年度または2044年度となっており、
違いはほとんどない。ここでは、ケースCを一例として図示することにした(図表3)。
他方、女性や高齢者の労働市場への参加が進まない低成長ケース(F〜Hの3ケース)はどうだ
ろうか。検証結果によると、いずれのケースでも所得代替率は50%割れとなる(2036〜2040 年度
頃)。現行法では、向う5年以内に所得代替率の50%割れが予想される場合、給付と負担のあり方
について検討し、所要の措置を講じることになっている。2014 年検証では、2019 年までの向う5
年間に関するかぎり、いずれのケースでも所得代替率は50%超であることが確認された。ただし、
低成長ケースでは早晩、年金財政の持続可能性に問題が生じる。ちなみに、実質経済成長率がマイ
ナス0.4%の場合(ケースH)、国民年金は2055 年度に積立金がゼロとなると見込まれている。さ
らに、実質経済成長率が0.1%(ケースF)またはマイナス0.2%(ケースG)の場合、所得代替率
は最終的に45.7%、42.0%になるとそれぞれ試算されている(財政が均衡するまで機械的にマクロ
経済スライドを継続した場合)。8
4 オプション試算結果の主要内容
2014 年財政検証では制度改正を仮定したオプション試算の結果も示されている。その主要内容は
次のとおりである。まず、第1のオプションは 2018 年度以降、物価や賃金が4年周期でプラスマ
イナス 1.2%幅で変動し、物価や賃金の伸びが低い場合でもマクロ経済スライドをフルに実施する
というオプションである。試算結果によると、いずれのケースでも所得代替率を引き上げる効果が
ある。とくに女性や高齢者の労働参加が進まない低成長ケースにおける効果が著しい(たとえばケー
スGの場合、現行制度のままのときより所得代替率は5ポイントだけアップして44.5%となり、基
礎年金の水準調整も終了年度が22 年も前倒しとなる)。スライド調整が早く進めば進むほど、その
分だけ給付水準の低下幅を小さくすることができるのだ。
2つ目のオプションは短時間労働者の厚生年金適用を一段と拡大するオプションである。適用拡
大については 220 万人ベースと 1200 万人ベースの2つが想定されている。前者は月 5.8 万円以上
の賃金収入がある週 20 時間以上の被用者(ただし、学生や雇用期間1年未満の人、5人未満の個
人事業所の被用者を除く)への適用拡大、後者は月 5.8 万円以上の賃金収入がある被用者のすべて
に対する例外なき適用拡大をそれぞれ仮定したものである。このオプションによる適用拡大は今か
ら10 年後の2024 年度開始とした。試算結果によると、適用拡大の規模が大きいほど所得代替率の9
アップは大きく、給付水準の調整期間を短縮する効果も高くなる。ちなみに 1200 万人ベースの適
用拡大が図られる場合、ケースGでは所得代替率が5ポイント強アップして 47.1%まで改善する。
給付水準の調整終了も2046 年度となり12 年短縮される。オプション2では被保険者間の移動(第
1号から第2号へ)が部分的に発生し、残された国民年金の積立金が人数の減った第1号被保険者
によって活用される。所得代替率が上昇するのは、このためである。
オプション3は老齢基礎年金の算定ベースとなる保険料納付期間の上限を現行の 40 年(20 歳か
ら 60 歳まで)から 45 年(65 歳まで)に延長するオプションである。納付期間が延びれば、基礎
年金は期間比例のため増額となる。同時に 65 歳以上の在職老齢年金(年金の減額制度)を廃止す
ると仮定し、さらに納付年数は 2018 年度から3年ごとに1年ずつ延長するとしている。このオプ
ション3の効果は大きく、所得代替率はどのケースでも約6ポイント上昇する結果となった。
いずれにせよ、女性と高齢者の労働参加を将来にわたって一層促進することが年金財政にとって
も重要であることが確認された。さらに、3つのオプションのすべてが経済低迷下でも年金財政の
持続可能性を高め、給付水準を引き上げる機能を有していることが、オプション試算によって判明
した。とくに、オプション2と3は国民年金財政の安定化に多大な貢献することを試算結果は物語っ
ている。
5 財政検証フレーム:今後の課題
2014 年財政検証には検証のあり方に関する今後の課題もいくつか残されている。以下、それらの
課題を順次とりあげ、若干の議論を試みたい。
5.1 標準的な夫婦
将来の給付水準低下をチェックするために想定しているのは、前述したように「標準的な夫婦」
である。ただ、その想定が現在および将来において政策判断の的確なベースとなるか否かについて
は疑問の余地がある。それというのも、今や共働き世帯が多数派であり、その傾向は今後さらに強
まると予想されるからである。ちなみに 1955 年に生まれた女性の第3号平均期間は第2号平均期
間より短く、2005 年生まれの場合には、後者の平均期間が現役時代の半分以上となると推計されて
いる(図表4)。20 歳からの40 年間、すべて第3号であるという女性は今日、もはや例外中の例外
だろう(出現確率は高々1%程度ではないだろうか)。くわえて、最近は離婚も少なくない(約30%)。
生涯未婚のままという人も著増している。20 歳までに結婚する女性は極端に少なく、仮に、そうし
た場合でも離婚率は相対的に高い。20 歳時に結婚した女性の同世代配偶者が生涯、男性の平均賃金
を40 年間にわたって稼ぎつづけるということもきわめて稀なことではないだろうか。10
つまり、今日においては、もはや極端かつ例外的だとしかいえない夫婦を想定して、年金水準の
低下度合を 2014 年検証では示している。それは、法律に基づいた検証という点で政府のなすべき
義務の1つではあるものの、それだけで十分だとは言えない。的確な政策判断のベースとなる人を
想定した将来の年金水準が今後、追加表示されることを期待したい。
今の時代、離婚も少なくなく、自分の財布を別々に持つ人が夫婦でも多い。世帯ベースではな
く、むしろ個人ベースの年金水準を示した方がリアリティは高いと思われる6。世帯ベースの年金水
準は今後、参考ケースとして位置づけたらどうだろうか。
5.2 モデル年金の水準
既述したように、モデル年金水準は65 歳受給開始時の年金水準であり、受給開始後は加齢に伴っ11
て年金水準は下がっていく(図表5)。ただ、その下落分は法律により65 歳時の80%レベルで最終
的には固定されている。水準 50%保証といっても最終的には 40%保証を約束しているのに過ぎな
い。
モデル年金はポーラーケースの夫婦が受給する年金受給額の平均値(観念値)を使用している。
しかし、その値は実際に受給する給付額の平均値ではない7。ちなみに、身長や体重と違い、実際に
受給する年金給付の分布は正規分布とはなっておらず、下方に偏りがある。その場合、最頻値や中
央値は平均値とは異なる(図表6)。リアリティが最も高いのは最頻値であるものの、その計算は分
布が確定しないかぎり可能ではない。他方、実際の平均値は給付総額と受給者総数が分かれば、簡
単に計算することができる。2014 年検証では同年8 月時点で年齢階層別男女別の老齢年金受給者数
が示されていない。その公表が当面、待たれている。
モデル年金水準の示し方には、もう1つ問題がある。それは、分子(年金給付額)が税や社会保
険料を控除する前の金額である一方、分母(手取り賃金)は税や社会保険料を控除した後の金額と
なっていることである。次元が異なるもの同士の金額比較は意味が乏しいので、分子も手取りの金
額に変更したらどうだろうか。年金給付からは所得税や住民税・介護保険料・国民健康保険料・後
期高齢者医療保険料等が天引きされている。天引き前の水準で50%保証と言われても、手取りベー12
スでは50%割れ(65 歳時点)が必至である。
天引きされる項目のうち介護保険料月額(第1号被保険者分)と後期高齢者医療保険料月額は
2012 年度段階でそれぞれ平均4800 円弱、5600 円弱(合計で1万円強)となっていた(2012 年度
『介護保険事業状況報告年報』『後期高齢者医療事業状況報告年報』による。いずれも調定額ベース)。
この2つの保険料は将来、急激に上昇する見込みとなっている。ちなみに厚生労働省「社会保障に
係る費用の将来推計」(2012 年3月)によると、両者の合計額は2025 年度には月額で1万5000 円
弱になる(2012 年賃金価格表示)。モデル年金水準が 50%程度となる 2043 年度(ケースC)まで
には、両者の合計額は一段と上昇し、月額2万円前後(2014 年度の賃金価格換算)になっている可
能性さえある。
このとき基礎年金のみの受給者にとっては、保険料負担の軽減措置が適用されても、保険料天引
き後の給付月額は3万円台(1人分、2014 年度の賃金価格換算)となるおそれがある。モデル年金
水準も 65 歳時点で 40%前後となるだろう。天引きされる保険料を考慮するだけで、このようにモ
デル年金の水準は大幅に下がってしまうのである。
「現役手取り収入の50%を公的年金給付として支払い約束する」というのは、それなりに分かり
やすい。ただ、年功型賃金制度の下で退職直前の賃金は生涯平均賃金より高めになるのが一般であ13
る。むしろ退職時に従前の生活水準を維持することができるか否か。この方に人びとの関心はある。
モデル年金水準がたとえ50%であったとしても、退職直前手取り賃金とくらべると、50%割れ(25
〜40%)となっている人が少なくないだろう。
既述したように、50%はポーラーケースの夫婦に対する 65 歳時限定の保証にほかならない。専
業主婦世帯以外の夫婦共働き組や単身者を想定すると、給付水準は 65 歳時点でも多かれ少なかれ
50%割れになるだろう(ただ、2014 年検証では夫婦共働き組や単身者を想定した年金水準は同年
8月時点では示されていない)。
総じて50%保証は、いわば「獏を追う」ような話に近いのではないだろうか。
5.3 超長期における年金財政の持続可能性
従来、政府は無限の将来を想定して、年金の給付と負担をバランスさせるという考え方(永久均
衡方式)を採用してきた。しかし 2004 年以降、この考え方を変更し、給付と負担のバランスを考
えるのは向う 100 年程度までにとどめることにした(有限均衡方式)。すなわち、おおむね 100 年
後における積立金の水準が給付総額の1年分程度(積立度合が 1.0)あれば、年金の持続可能性は
確保されている、と考えるにいたったのである。
2014 年検証結果によると、経済再生が進むケースA〜Eにおいても収支バランスは2080〜2100
年度までにマイナスに転じ、2110 年度を越えると積立度合はいずれも1.0 未満となり、積立金は早
晩、枯渇してしまう。この意味において超長期にわたる年金財政の持続可能性は依然として確保さ
れていない。
5.4 受給開始年齢の引き上げ
オプション3は、基礎年金水準の低下を小幅にくいとめるための手段としてきわめて有力である。
ただ、このオプションは社会保障制度改革国民会議報告書(2013 年8月)が問題提起した高齢期の
就労と年金受給のあり方とは微妙に異なっている。同報告書が問題提起したのは、受給開始年齢の
引き上げではないだろうか。2014 年検証では受給開始年齢の引き上げを等閑に付した。
受給開始年齢の引き上げで年金財政の持続可能性が変わるわけではない。その主張は、まったく
そのとおりである。ただし、受給開始年齢を引き上げれば、年金水準の低下を小幅に抑えることが
できる。世界の主要な先進工業国がいずれも受給開始年齢の65 歳超への引き上げ(あるいは自動調
整)に動いている中で8、最長寿国の日本だけが受給開始年齢を 65 歳超に引き上げなくても、年金
財政は持続可能だ、と言いつづけている。財政の持続可能性確保の裏側で、いったい何が生じるの
か。その点への言及が足りない。14
政府は 2004 年の財政再計算、2009 年の財政検証および 2014 年の財政検証において3回にわた
り連続して、年金財政の健全性を確保するための手段として受給開始年齢の引き上げを採用する必
要は必ずしもないと述べてきた。引き上げ不要説を10 年あまりにわたって展開してきたのである。
その分だけ、将来の日本では受給開始年齢の引き上げが政治的に厳しくなったと思われる。
受給開始年齢の引き上げは政治的にはきわめて不人気のオプションである。それだからといって、
その議論を 10 年以上にわたり本格的にしないというのは、いかがなものか。仮に年金数理担当部
局が厚生労働省と切りはなされ、中立性と独立性が保証された公正取引委員会のような機関であれ
ば、オプション試算の選択肢は内容が変わっていた可能性がある。
5.5 70 歳までの受給繰り下げ
オプション3(保険料納付期間を 45 年に延ばすオプション)では、さらに受給開始年齢を最大
で70 歳まで繰り下げた場合の給付水準アップを試算している。この繰り下げ効果も実に大きい。
ちなみに、現行制度では1941 年4月2日以降に生まれた人の場合、70 歳まで受給開始を繰り下
げると、給付額は42%アップとなっている(65 歳受給開始ケースとの比較)。
この増額率は2000年6月の政令公布で定められた。その公布以降、すでに10余年の年月が過ぎ、
65 歳時の平均余命も一段と伸長してきた。日本では今後とも、その傾向は変わらない(図表7)。
65 歳時の平均余命は 2060 年頃までに男女とも、さらに4年程度長くなり、人生 90 年時代が到来
すると見込まれている。15
仮に直近の生命表を使って年金の繰り下げ受給に伴う年金数理的に中立な増額率を計算した場合、
上記の42%(70 歳繰り下げ)という値はもっと小さくなっていたはずである。あるいは今から30
年後や、さらにその先を想定すると、上記の増額率はいっそう小さくなる9。
そもそも、繰り上げ・繰り下げに伴う減額率・増額率は平均余命の伸長に合わせて自動的に改定
するのが筋である。この点の理解が今後、深まることを期待したい。
年金受給開始年齢を繰り下げる人は日本では今のところ、きわめて少ない。ちなみに 2012 年度
の国民年金事業年報によると、基礎年金のみ、あるいは旧国民年金の老齢年金受給権者総数に占め
る繰り下げ受給者の割合は1.3%にとどまっている。
繰り下げ受給者の割合を今後、高めていくためには 65 歳を超えて働き続けることができる環境
を周到に整えていく必要がある。他方、増額率を数理的に中立的なレベルよりも高くするのはイン
センティブに働きかける1つの方法である。ただし、そのような政治的加算は年金財政を全体とし
て多少とも悪化させてしまうおそれがある。
5.6 高在老を廃止した場合の被保険者数
オプション3では、65 歳以上の人が賃金を稼ぐと年金受給が減額される制度(在職老齢年金制度、
いわゆる高在老)を廃止すると仮定し、保険料納付期間の延長効果を試算している。ちなみに日本
では、高在老は高齢者の就労インセンティブを阻害する要因であると一部の経済学者が主張してき
た10。
この場合、65 歳以上の就労者数は増加するはずである。ところが、公表された資料(2014 年6
月3日の年金部会提出資料1−2(112〜113 頁)および資料2−2(56〜57 頁))をみるかぎり、被
用者年金被保険者数は高在老を廃止しても廃止しなくても計数が同一であり、まったく変わらない。
これでは就労インセンティブを高めることにならないのではないか11。
5.7 非正規化の拡大と第2 号被保険者適用期間の伸長
昨今の日本では、給与所得者の非正規化が進行している。とくに女性や高齢者の非正規化が顕著
である。ちなみに総務省『労働力調査年報』によると、役員を除く雇用者に占める非正規雇用者の
割合は女性の場合、2003 年の50.5%が2013 年には55.8%に上昇した。また、男性で55〜64 歳層
の場合、その割合は同じ期間に24.1%から32.5%にアップしている。
ところが 2014 年検証では、現行制度を維持した場合でも男女を問わず若い世代ほど第2号被保
険者期間の平均年数がわずかといえ長くなると見込まれている(6月3日年金部会提出資料 2−1、16
10 頁)。たとえば男性の場合、1975 年生まれの人のそれは31.6 年であるものの、2005 年生まれの
人のそれは33.2 年になる(女性の場合、それぞれ19.4 年から22.2 年になる)。週30 時間以上勤務
する高齢者や女性の割合はこの間、トレンドとして低下してきたが、2014 年検証では、この傾向が
近い将来、一転すると仮定している。この一転は、どのようなメカニズムで生じるのだろうか。
いずれにせよ、ライフステージでみた男女別世代別の年金適用状況(正規・非正規・非就労の変
化)に関する詳細な情報の追加公開が待たれている。
5.8 運用利回り
2014 年検証では賃金と年金保険料および年金給付の連動性に着目し、名目の運用利回りよりも実
質利回り(名目の運用利回りが賃金上昇率を上回る部分)、いわゆるスプレッドを重視した結果を示
している。ただし、マクロ経済スライド実施予定期間は一段と長くなり、その期間中に限定すると、
年金給付は賃金とは必ずしも1対1で連動しない。さらに、A〜Hの8ケースのいずれにおいても
名目の運用利回りは名目の経済成長率を上回っている。ちなみにケースCでは名目運用利回り4.8%
に対して名目の経済成長率は2.5%である(いずれも年率)。巨額の公債残高を抱える日本において
は、財政赤字を適切に制御していくことが今後も求められている。しかるに、[運用利回り > 経済
成長率]という基本的前提の下では、日本の財政赤字は発散型となり、長期的には財政破綻を招来
するおそれが強い。いったん日本全体の財政が破綻状態に陥ると、その部分にすぎない年金財政も
多大な影響を被るはずである。上記の運用利回りに関する基本的前提が日本経済全体における財政
の健全性と両立可能か否か、再検討することが必要だろう12。
5.9 年々の収支および年金財源と給付の内訳
次に年々の収支を調べてみよう。ここでは厚生年金のみに着目し、2009 年の財政検証結果と2014
年の財政検証結果を比較することにする。
厚生年金における年々の収支は 2002 年度以降、実質的に赤字に転落し、その後も実質的に赤字
基調となっている。2004 年の財政再計算では2010 年度から黒字に転換すると見込んでいた。しか
し、現実は予想以上に厳しかった。そこで、2009 年財政検証では赤字基調がさらにつづき、黒字転
換は2014 年度にずれこむという見通しに変わった(基本ケース)。
2009 年財政検証(基本ケース)では厚生年金の保険料収入が 2009 年度の 23.8 兆円から 2014
年度には30.3 兆円に増大すると推計していた。年平均1兆4000 億円の保険料収入増(負担増)に
相当している。2014 年検証結果によると、2014 年度における厚生年金の保険料収入(共済年金の
厚生年金相当分を除く)は25.9 兆円にとどまる。2009 年検証の推計額より4.4 兆円も低い。厚生17
年金の黒字転換時期も2014 年度から2018 年度に変更された(経済再生ケース)。
財政検証は将来予測というよりも将来への投影図であるというのが当局の公式見解である。年々
の収支は人口や経済の動向に左右されるので、前提の置き方により、その結果は異なる。財政検証
結果も、様ざまな前提を置きつつ、直近のデータを将来に投影したものにほかならないというので
ある。
問題は、置かれた前提が現実的か否かにある。現実的な前提であれば、投影図と実現値のズレは
結果的に小さくなるだろう。そのズレが大きくなると、財政検証結果に対する信頼が揺らぐことに
なる。
年々の収支と並んで重要なのは、年金財源と給付の内訳である。ただし、2014 年8月時点にお
いて厚生年金等の「財源と給付の内訳」は公表されていない。2009 年検証では同年5月26 日に公
開された資料である。その早期公表を期待したい。
6 結びに代えて
年金数理は素人には総じて複雑かつ難解なものにみえる。それを正確に理解することは容易では
なく、時間もかかる。とくに 2014 年の財政検証では基本ケースが想定されなかったので、8ケー
スについて1つずつ読みとく必要があった。
2014 年の財政検証が端的に物語っていることを列挙すると、つぎの7つになる。すなわち、@公
的年金の財政に関するかぎり、その現状は「お尻に火がついた状況」ではない。Aデフレ下におけ
るマクロ経済スライド休止条項は将来にわたる給付水準の実質カット分を大きくしてしまう。Bマ
クロ経済スライドの発動要件がようやく整いつつあり、一旦それが発動されると、その年金財政健
全化効果は大きく、年金財政の持続可能性はかなり高くなる。Cただし、年金財政の健全化は年金
水準の実質的切り下げという犠牲なしには達成されない。とりわけ基礎年金水準の大幅な切り下げ
を伴う(年金財政は破綻しないが、給付水準は大幅に下がる)。D基礎年金の大幅な切り下げには複
数の要因が作用しているものの、国民年金財政が元々脆弱であったことが、その背景にある。Eし
たがって、国民年金の財政健全化に貢献するような施策、たとえば短時間労働者の厚生年金保険へ
の適用拡大や保険料拠出期間の延長等を実施することが今、強く求められている 13。F出生率が上
昇したり、女性や高齢者の労働参加が一段と進んだりすると、年金の財政基盤はその分だけ強固に
なる。
年金財政健全化手段としてマクロ経済スライドは、いわば強力な大型のマサカリないし劇薬に近
い機能を有している。その副作用も小さくない。多数の国民は持続可能な年金財政だけではなく、
老後の安心を支える基盤的な生活費を賄うのに足りる公的年金給付額が将来においても受給できる18
こと、も同時に求めており、2014 年検証は、この後者に早晩、赤信号が点滅することを示した。年
金制度は将来、政治的に持続不可能なるおそれがある。
ただ、後者への対応策は複数ある。今後、その具体化に関する議論が展開されるだろう。
他方、年金に関する財政検証フレームが従来のままでよいのかについても再検討する必要性が高
まっている。たとえば、@標準的な世帯を今後とも想定するのか、それとも標準を個人ベースに切
りかえるのか、A最低保証の年金水準に関連して、基礎年金についても独自の水準を新たに設ける
のか、B所得代替率の分子を、分母に合わせて手取りベースに切りかえるのか、Cマクロ経済スラ
イドによる報酬比例部分の水準調整が終了した後に基礎年金の水準調整が継続している場合、報酬
比例部分について新たな水準調整を追加する必要はないのか、D基礎年金拠出金に係る計算方式を
頭割りから所得比例に変更する必要性が大きい中で、その具体案を検討しないのか、等々。財政検
証フレームそのものについても、その見直しに関する議論が開始されることを期待したい。
最後に、2014 年8月時点では未公表となっている資料がある。少なくとも『2009 年財政検証結
果レポート』に掲載されている資料に相当するデータが今後、すべてにわたって公表されることを
願っている。

1.本稿は高山(2014)の内容を深化・拡大させたものである。本稿作成にあたって日本学術振
興会科学研究費補助金・特別推進研究「世代間問題の経済分析:その深化と飛躍」(研究代表者:
高山憲之、研究課題番号22000001)から研究費の助成を得た。記して謝意を表したい。
2.2009 年以降におけるモデル年金水準の一層の上昇は、制度を変えないかぎり継続することが
見込まれていた(高山(2009)参照)。
3. 日本の財政検証では割引率として賃金上昇率を用いるケースが一般的である。ただし、公表資
料では将来のモデル年金を2014 年度の物価で表示している(賃金価格表示とはなっていない)。
4.2004 年改革時の与党・政府関係者は賃金デフレがあくまでも一時的現象であると想定してい
たと思われる。ちなみにマクロ経済スライドは当初、2005 年度から発動すると仮定されていた。「自
動安定装置」は社会経済の変動に即応して年金給付に係る制度内容を弾力的に変えていくためのも
のである。賃金デフレ下での作動停止条項は自動安定の本旨に反しており、弾力的な対応を遅らせ
た分だけ余分な調整コストを発生させてしまった。
5. 経済成長が実質でマイナスになるケースも想定したこと、男女の賃金格差が2030年度までに
15%ほど縮小すると仮定したこと等は、これまでの財政再計算や財政検証ではなかった新しい試み19
である。
6. 財政検証で最低限示してほしいと多くの国民が思っているのは、つぎの3つではないだろうか。
すなわち、@自分が老齢になったとき、年金の収支状況はどうなっており、その先の収支見通しは
どう変わっていくのか、A自分が受給する見込みの老齢年金月額は現時点の価格でどの程度になる
のか、そして、その月額は受給後、加齢に伴って実質的に減価していくことはないのか、B仮に67
歳〜70 歳まで働き続けるとした場合(あるいは老親の介護等のために60 歳前に働くのを止めた場
合)、自分が受給する年金はどれだけ増える(減る)のか、の3つである。このうち@は現行の財
政検証によって、それなりに確認することができるものの、ABについては、ほとんど分からない。
ABは、むしろ年金ネットの方で対応する話であるかもしれない。1人ひとり違う個別の状況に応
じた情報を提供することは、財政検証の枠を越えているからである。財政検証で可能なことは、典
型的だと思われる個人のイベントヒストリーを複数設定し、老齢年金月額の個人別典型例を示すこ
とにとどまるだろう。生涯正規の人、生涯非正規のままの人、パート経験のある人、給与を稼ぐこ
とが生涯で1回もない人、就業に空白期間がある人等、典型例を男女別に複数設定すると、それだ
け有用性が高まる。結婚経験・離婚経験の有無別に個人ベースの老齢年金月額を示すことも有用か
もしれない。
7.2012 年度を例にとると、男性の場合、老齢年金の平均受給月額は17 万円弱(基礎年金1人分
を含む個人ベース)であった。
8.直近の文献として岩田(2014)、高山(2013)が参考になる。
9.厚生労働省はさらに、何歳まで働き、何歳から年金を受給するかについて今後は弾力的かつ
柔軟なしくみが求められているとして、繰り下げの範囲を拡大する方向で検討に入った(2014 年5
月)。現行制度(1ヶ月繰り下げるごとに年金受給額は0.7%増額)を前提にして機械的に計算す
ると、たとえば75 歳まで繰り下げた場合、それに伴う増額率は84%に達する(長生きして87 歳
以上になれば、75 歳まで繰り下げて受給を開始した方が得になる勘定である)。
10.他方、「在職老齢年金制度は、減額されるとはいえ、年金給付が補助金として機能しており、
結果として補助金つき雇用(年金給付分だけ賃金を低くした雇用)を創出している」という経済学
者の見解もある。在職老齢年金における減額制度の廃止は、実質的に補助金部分を大きくするので、
高齢者に対する労働需要を一層増大させるだろう。
11.2014 年財政検証では、オプション試算の部分と、オプション試算を除いた部分(いわゆる
本体部分)とで推計の精度が大きく違っているように思われる。オプション試算は結果をみるかぎ
り、きわめて大雑把な機械的推計にとどまっている感じが強い。20
12.日本の公的年金は基本線として賦課方式で財政運営されている。賦課方式下では、運用利回
り問題の占めるウェートは相対的に小さい。
13.第3号被保険者制度を見直すさい、第3号被保険者の廃止と、その第1号への切りかえは、
政府案の中には含まれないだろう。その切りかえは第2号被保険者が全体として負担する基礎年金
拠出金を減らして厚生年金財政の安定化に寄与する一方、国民年金財政をさらに窮迫させてしまう
からである。むしろ夫婦における所得分割(第3号の第2号への切りかえ)案の方が実現可能性は
高いだろう。
参考文献
岩田克彦(2014)「年金支給開始年齢と高齢者雇用就業問題」『年金と経済』32(4)、pp. 22-25。
高山憲之(2009)「年金の2009 年財政検証と民主党の年金マニフェストをめぐって」『年金と
経済』28(3)。
高山憲之(2013)「年金は持続可能か:受給開始年齢、自動調整を」日本経済新聞・経済教室欄、
12 月10 日。
高山憲之(2014)「年金の2014 年財政検証をめぐって」『共済新報』9月号。
http://takayama-online.net/pie/stage3/Japanese/d_p/dp2014/dp632/text.pdf

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