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中ロ印の三国によるアジアの地殻変動ー米国パワーの衰退ー
http://www.asyura2.com/14/warb14/msg/547.html
投稿者 DOMOTO 日時 2014 年 10 月 29 日 21:31:45: VRQtq/0DZtRLQ
 

※ ベトナムをめぐる中ロ印の関係、中央アジアでの中ロ関係など中ロ印の三国関係は必ずしも一枚岩ではないようです。


【◆◆以下の記事は9月25日に発信されたものです】


      中ロ印の三国によるアジアの地殻変動

         −米国パワーの衰退−


DOMOTO
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735


【目次】

【序】 マラッカ海峡と中印の協力体制

【1】 中国・インド=ロシアのエネルギー統合

【2】 中ロ印によるアジア統合

【3】 中ロ:同盟責任のない同盟パートナー


    【序】 マラッカ海峡と中印の協力体制


いま日本のマスコミや欧米のマスコミでは「イスラム国」(ISIS)の報道が半ば一色でされています。欧米で中東のイスラム国の報道が大きく取り上げられるのは、欧州圏と中東イスラム圏が隣接していること、イスラム・テロ組織と米国と欧州が敵対していること、NATO諸国と中東イスラム圏が隣接していることが背景にあります。

日本も中東には石油・ガス輸入を大きく輸入依存してるので、マスコミ報道がそこへ集中するのはそれはそれでいいのですが、欧米マスコミが追いかけている話題をさらに日本のマスコミが後追いしているだけで、アジア圏や東アジアから世界を見る視座に欠けているように思えます。

いま、アジアではこの記事の題名にあげたような「中ロ印の三国によるアジアの地殻変動」が起こっています。

オバマ大統領がイラクやシリアへの空爆を掲げ、米国の力をアピールしているのは、11月初めの中間選挙が間近に迫っているのがその半分の理由で、低迷する支持率で身内の民主党内からも圧力がかかっているのです。

そもそも専門家達も(マスコミでさえ)、米国のこの行動は戦略的に勝算がまるで立たないことを指摘しています。オバマ政権は予想を上回る大規模攻撃を開始しますが、その効果はマスコミでさえ非常に疑問視しています。中間選挙が間近に迫っているので、派手な爆竹を鳴らして米国民の気をそらしているようなものではないでしょうか。

イスラムテロ組織との戦争には、停戦合意も講和条約の締結もありません。永遠なる「モグラ叩き」ゲームのようなものです。

これは9.11テロが起こる以前からもう15年以上も前から言われている事ですが、イスラムテロ組織との非対称戦は、テロを生む政治的・社会的構造(土壌)が大きな原因となっており、そこの是正を政策的に行っていかななければ、撲滅しても撲滅してもテロ組織はゾンビのように大量発生を繰り返します。

そして、欧米の政治家と中東のその友好国が、このように中東で永遠なる「ゾンビ叩き」をしている間に、現在ユーラシア大陸のアジアでは中国、ロシアとインドの三国を中心とした協力体制が着々と築きあげられています。

中国とロシアの二国間の協力体制については6月の有料メルマガでお伝えしましたが、この中ロ勢力にインドが取り込まれる動きが出てきました。

インドと中ロの結びつきが強くなることは、私たち日本の中東石油や物資のシーレーン確保に対して安全保障上の大きな問題・支障が出てくるという事です。

「アメリカ国防総省がまとめた『2025年の世界』という予測の中では、米国軍が東シナ海、西太平洋、南シナ海、そしてインド洋から兵力を引きあげるため、大きな軍事的変動が起きると予測している。」(日高義樹著 『アメリカの大変化を知らない日本人』 2014年2月刊)

そしてこの国防総省の予測では、米国海軍の引きあげとともに、中東から東アジアへのびる「シーレーンの確保に中国とインドが重大な役割を果たす」ようになり、インドと中国の同盟体制が確立することになる」とされているそうです。

同予測では2016年以降、インドネシアのイスラム勢力が暴動を起こし、マラッカ海峡やロンボク海峡の閉鎖を行うと見ていますが、それに「中国とインドが積極的に介入し、インド海軍がマラッカ海峡までを制圧する」とされているそうです。


    【1】 中国・インド=ロシアのエネルギー統合


インドは9月12日、中国、ロシアが主導する上海協力機構への加盟を申請したと発表しました。

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上海協力機構 インド加盟申請 中ロ、欧米対抗狙う (9/13-2014 日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM1201M_S4A910C1FF2000/

インド外務省は12日、中国、ロシアが主導する上海協力機構(SCO)への加盟を正式に申請したと発表した。近く、加盟国と具体的な交渉を始める。中ロはインドを取り込むことで、地域安全保障などでのSCOの発言力を高め、欧米への対抗軸をつくることを狙っている。一方、インドは日米を含めた「全方位外交」を進めており、中ロとは思惑の違いもある。

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日経は、インドは「全方位外交」をとっていると言っています。ほかの記事でも日経は「等距離外交」の見方をしていますが、果たしてどうでしょうか。

8月12日のイタル・タス通信(ロシアの国営通信社)によれば、ロシアはウクライナ制裁のなかでインドとの貿易関係の強化と多様化を計画しており、両国は実行可能な多数の長期プロジェクトを持っているといいます。

その中でも両国関係を強化すると思われるのが、ロシアからインドへのガス・パイプラインの建設です(アルタイ・ガス・パイプラインの拡張)。これは今活発な交渉が行われていますが、6月24日のイタル・タス通信からすると、7月のBRICSサミット(ブラジル)ですでに話し合われていたようです。

このパイプラインはロシアから中国を経由してインドへ建設されますが、中国経由が可能になったのは、今年5月のロシア-中国間の30年間のガス供給の契約で、中国とロシアの協力関係が格段に高まったことが下地にあります。

またトルクメニスタンの天然ガスを、アフガニスタンを横断してパキスタンとインドへ運ぶガス・パイプライン・プロジェクトの交渉でも、ロシアとインドは関与しており話し合いが行われているそうです。

国連によればインドの人口は2028年までに中国を抜き、世界一の15億人となり、その後も増え続けると言います。インドにすれば国家の存亡に影響する、非常に魅力的なエネルギー・プロジェクトです。

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He said that the two countries were engaged in active negotiations about extending the Altai gas pipeline from Russia through China to the Indian border, and about building a pipeline to carry Turkmen natural gas across Afghanistan to Pakistan and India, known as the Turkmenistan-Afghanistan-Pakistan-India (TAPI) gas pipeline project.

Russia, India to bolster trade ties amid Western sanctions (8/12-2014 イタル・タス通信)
http://en.itar-tass.com/russia/744704
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「ロシアの欧州と西側諸国に対する相対的に経済的な優位が、石油・天然ガスの供給を第一の理由としてきたのと全く同じように、<アジアにおける戦略的統合はエネルギーによって左右されている>。」

これはロシアとユーラシアが専門のアンドリュー・クチンス氏(戦略国際問題研究所:CSIS)の見解ですが、「ロシアのアジアへの旋回」は中国に加えて核大国でもあるインドへも重心を移してきました。


    【2】 中ロ印によるアジア統合


中国という国は、世界戦略的な長期的ビジョンに基づいて、黙々とプロジェクトを推進させていく国です。反欧米的な国際秩序建設のリーダー的存在でした。
ところが、ウクライナ危機以降は、反欧米的な国際秩序の建設でプーチンの非常に精力的な行動が目立ってきています。

これについては、戦略国際問題研究所(CSIS)の「比較と関係」シリーズから「中国-ロシア関係」のレポートが9月15日に出ており、そこでまとめて述べられています。
この著者は東アジアが専門のユー・ビン氏で、6月の記事でも紹介しましたが、2013年1月のレポートで、早くから「ロシアのアジア・シフト」を指摘していた人です。

Comparative Connections v.16 n.2 - China-Russia (9/15-2014 戦略国際問題研究所 PDFファイル)
http://csis.org/publication/comparative-connections-v16-n2-china-russia

このレポートによると、5月以降からのウクライナ騒乱とは別に、中国とロシアの関係はこの4か月間で急速な動きで進んでおり、5月下旬の30年間のガス契約に署名する一方で、5月20-26日の東シナ海での中ロ共同軍事演習、上海ではアジア相互協力信頼醸成措置会議(CICA)が開催されました。

さらにロシアと中国は、500億ドル(自己資本)のBRICSの開発銀行と1000億ドルの準備基金の設立を中心になって進めてきました。この設立の発表は7月のBRICSサミットでした。これはIMFと世界銀行が資金不足で融資を受けられない途上国の、不満や苛立ちを吸収する狙いもあります(ユー・ビン氏)。

前述の8月12日のイタル・タス通信の記事の中で、ロシア科学アカデミーのインド研究センター所長のタチアナ・シャウミャーン氏はこう言っています。

「欧州と米国が経済的圧力をロシアにかけてくる時に、BRICSを構成するブラジル、ロシア、インド、中国などの国の集まりのなかで、ロシアが協力協働することは著しく重要である」

またウクライナ騒乱後のロシアにとってみると、上海協力機構(SCO)の存在も今まで以上に重要になってきています。この数年SCOの軍事演習の規模は縮小傾向にありましたが、8月24-29日の共同軍事演習は過去最大規模で行われました。

8月28日の『ディプロマット』誌によれば、ロシアのマスコミは最近、上海協力機構への関心のなかにロシアの復活・再起を見い出すようになっており、国営通信社RIAノーボスチの8月の論説では、上海協力機構のことを「新しく西側(欧米)に代わるもの」(“A New Alternative To The West”)と呼んでいるそうです。

Russia and the SCO Military Exercises (8/28-2014 ディプロマット)
http://thediplomat.com/2014/08/russia-and-the-sco-military-exercises/

前述のユー・ビン氏のCSISのレポートを読むと、プーチンは私たちが想像する以上にロシアの現在と今後の経済的基盤の構築に力を入れ、経済戦略をめぐらしていることがわかります。

プーチンが5月下旬に上海で習近平と首脳会談した際には、上海協力機構の議題のほかにユーラシアの統合、ロシア-中国-インドの三者間対話、「新シルクロード経済ベルト」の構想なども話し合われました。

二人はこのほかに、東アジア共同体の創設を視野に入れた「東アジアサミットやASEAN地域フォーラム、APEC,CICAなどの多国間フォーラムでも協力し合うだろう」とユー・ビン氏は述べています。

Other projects either jointly or singly managed by Moscow and Beijing – such as the Shanghai Cooperation Organization (SCO), Eurasian integration, Russian-China-Indian trilateral dialogue, New Silk Road Economic Belt – were also discussed. The two also would work together in other multilateral forums such as the East Asian Summit, ASEAN Regional Forum, APEC, and CICA.

日本も、当てにもならないような米国のオバマ政権にぶらさがり、円安による輸出成長モデルが壊れた「アワ(泡)ノミクス」などをいつまでも頼りにしていると、いつのまにか東アジアのなかで、中国とロシアの属国になりかねないと私は危惧しています。

下記にウィキペディアからSCOとCICAのリンクを張っておきました。加盟国を色分けした勢力分布図(地図)が掲載されているので参考にしてください。

上海協力機構(SCO)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8A%E6%B5%B7%E5%8D%94%E5%8A%9B%E6%A9%9F%E6%A7%8B

アジア相互協力信頼醸成措置会議(CICA)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%A2%E7%9B%B8%E4%BA%92%E5%8D%94%E5%8A%9B%E4%BF%A1%E9%A0%BC%E9%86%B8%E6%88%90%E6%8E%AA%E7%BD%AE%E4%BC%9A%E8%AD%B0


    【3】 中ロ:同盟責任のない同盟パートナー


このほかにユー・ビン氏のレポートでは、プーチンが4月と7月に、中国との関係について「軍事的にも政治的にもいかなるタイプの同盟も築く計画はない」と発言していることを挙げ、これはプーチンが、「そのような同盟(という概念)は時代遅れになった」と考えているからだと説明しています。

これと同じ意味を表わすものとして、ロシア大統領府長官のセルゲイ・イワノフが7月に北京で発言した言葉をあげ、「多大な中国との協力にもかかわらず、ロシアと中国は<同盟責任のない同盟パートナー>である」と取材記者に答えたことをあげています(PDF8〜9ページ:下記に引用)。

これは軍事的・政治的な同盟責任がない同盟パートナーであることを示し、ある意味、状況次第では非常に柔軟で自由、かつ強力な同盟関係になります。

In a press interview in late April, Putin said that Russia and China had no plan whatsoever to build any type of military and political alliance. This was because such an alliance had become outdated. He reiterated this in his talk to Russian diplomats at the seventh conference of Russian ambassadors on July 1. Ten days later, Ivanov told reporters in Beijing that despite fruitful cooperation with China, “I do not see any significance for a new military alliance with China, and China, too, also does not see any significance,” and “Russia and China “are alliance partners without alliance responsibilities.”


      (了)


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コメント
 
01. 2014年10月29日 22:52:04 : PGjQuwhuls
上海協力機講は本当に日本では取り上げられていない。
ユーラシア集団安全保障(集団的自衛権とは目的が違う)の雛形なのに。

02. 2014年10月29日 23:36:13 : DKhwYBOUus
一週間後の米国中間選挙の結果次第ではオバマは無力になるので隙を狙う勢力は攻めてきますね。
次の大統領選挙までの2年間は世界が荒れるかもしれないですね。

03. 2014年10月30日 03:49:00 : YxpFguEt7k
浅井久仁臣氏
「集団的自衛権の流れが米提言と符合とメディアは報じるが、今さら何を言っているのか。
私は最初から主張し続けているが、米側の動きを見ていれば容易に分かっていたこと。自分達の甘い分析が国の流れにどの様な影響を与えているか、記者諸君は自らを検証するべきだ。」
https://twitter.com/asaikuniomi/status/527267812834693120

マスゴミからジャーナリストになるべきだ。


04. 2014年10月30日 04:04:26 : 9xI6Fa4ZuE
GDPベースで、世界一位 中国 世界二位 インド になるまであとわずか数十年。

アメリカが世界一位の座にあるのもしょせんあとほんの一時、世界断トツの軍事予算はアメリカ経済の強さを弱さに変えるもととなる。旧ソ連と同じことになる。


05. 2014年10月30日 06:53:17 : Qk0z0gVGLY
米国の軍事費は少なくとも3分の一に削らないといけないと思う。
今60兆円ぐらいで、少なくとも20兆円レベルに削減。

そうなると、当然人も削らないといけない。兵士や兵器の開発者も含めると、
百万人以上が職を失うと思われる。そうすると何が起きるか。

歴史を眺めれば、たいてい反乱が起きてる。

製造業でクビ切るのとはわけが違うからね。武器使える危ないひとたち。
世界が平和になると困るひとたち。

そういうことにならないように、うまくコントロールしながら進めないとね。


06. 2014年10月30日 07:37:32 : jXbiWWJBCA

米軍も取らざるを得ない「弱者の戦略」、
早急に必要な中国のA2/AD戦略への対抗策
2014年10月30日(Thu) 北村 淳
 中国人民解放軍が推し進めている海洋戦略は、アメリカをはじめとする西側諸国では「A2/AD戦略」(接近阻止・領域拒否戦略)と呼称されている。

 以前よりアメリカ軍関係者たちの中からは、「アメリカは中国のA2/AD戦略に有効な戦略を打ち立てていない」といった声が挙がっていた。さらに昨今は、アメリカ連邦議会の軍事委員会などを中心とする国防関係議員などの間でも、「中国のA2/AD戦略に対抗する戦略やそれを実施するための戦術や施策を打ち立てなければならない」といった認識が広まりつつある。

中国の「A2/AD戦略」とアメリカの「ASB構想」

 中国海洋戦略の目的は、以下の3段階を着実に行っていくことにある。

(1)第1列島線までの海域は中国人民解放軍が完全にコントロールして、アメリカ海軍をはじめとする他国軍事力を侵入させないようにする。

(2)第1列島線と第2列島線で囲まれる海域での軍事的優勢を人民解放軍が手にして、アメリカ軍には自由な作戦行動をさせないようにする。

(3)第2列島線外部の西太平洋やインド洋でも、できるだけ遠方海域まで人民解放軍がアメリカ海軍を牽制できるようにする。


第1列島線(左の赤い線)と第2列島線(右の線)。星印は米軍拠点
 このように中国のA2/AD戦略は明確な戦略目標を掲げた海軍戦略であり、中国政府はこの戦略を推進するために様々な外交的・軍事的戦術を繰り広げている。

 一方、A2/AD戦略の主たる対象(つまり「仮想敵」)となっているアメリカといえば、確固たる海軍戦略をもって対抗している状況ではない。

 確かにA2/AD戦略の脅威を念頭において、「ASB」(エアシーバトル)という作戦概念を海軍を中心とするアメリカ軍が打ち出して、それに則った組織や装備の見直しが推進されている。しかしながら、ASBは海軍戦略ではなく、戦略より下位に位置する作戦や戦術の構想である。ASBをもって中国のA2/AD戦略に対抗することはできない。

 (アメリカ海軍や国防総省高官などの公式声明では、「ASBは特定の国家や地域を念頭においたものではなく、世界中の公海での自由航行の原則を維持するためのものである」と言われている。だが、実際には中国をターゲットにした作戦概念である)

 ASBが対抗できるのは、A2/AD戦略を推し進めつつ強力化している人民解放軍が本格的な戦闘を伴う大規模軍事行動に踏み切った状況に対してである。すなわち、人民解放軍による南西諸島への軍事侵攻や台湾への軍事侵攻といった、現時点では勃発可能性は決して高くはないものの、万一勃発した場合には極めて深刻な軍事衝突となるケースを、ASBは主眼においた作戦構想なのである。

「サラミ戦術」でA2/AD戦略を地道に推進

 ASBを熟知する中国の海軍戦略家たちは馬鹿ではない。アメリカ側がASBに則った大規模軍事作戦を発動するような軍事攻撃を、人民解放軍が日本や台湾に対して実施することは、ほとんど考えられない。計画的にはもちろんのこと偶発的にもその可能性はあり得ないと言ってよい。

 (ただし、日本や台湾を極めて短時間で抵抗能力を麻痺させてしまう「短期激烈戦争の可能性」をちらつかせて、本格的軍事侵攻を実施する以前に、かつアメリカが軍事支援に踏み切る以前に、日本や台湾を屈服させてしまうシナリオは否定できない状況になってきた)

 アメリカのASB構想が想定している最先端テクノロジーを駆使した新鋭兵器を大量に取り揃えた強力な戦力は、中国が東シナ海や南シナ海で推し進めている外交的・軍事的攻勢に対して実際には抑止効果を発揮していない。このような状況は、1996年の台湾総統選挙に際して人民解放軍が台湾基隆沖にミサイルを打ち込んだのに対抗してアメリカが空母戦闘群を台湾海峡に展開して中国側を恫喝した時代と隔絶の感がある。

 96年当時、人民解放軍の対米強硬派はアメリカ側に対して「台湾よりもロサンゼルスの心配をしたほうが良い」といった強弁を弄したが、それはただの虚仮威(こけおど)しに過ぎず、米海軍空母2隻の前に人民解放軍は引き下がらざるを得なかった。しかし、それから18年経った現在、人民解放軍は着実に実力を付け、A2/AD戦略を推進するために南シナ海や東シナ海で「サラミ戦術」と呼ばれる小刻みな挑発的行動を断続的に実施している。しかし、アメリカはかつてのように本腰を入れて中国側を制圧しようとするには至っていない。

 その最大の理由は、あくまでASB構想は「南西諸島制圧」や「台湾侵攻」といった、「勃発可能性は極めて低いが、勃発した場合は極めて深刻な本格的軍事衝突」を主眼においた作戦概念だからだ。ASB構想は、そのような“極めて深刻”な軍事紛争に比べれば“些細”と言えるサラミ戦術による軍事行動を抑止するための構想ではないのである。

人民解放軍に対するA2/AD戦略が必要

 それでは、A2/AD戦略に基づく中国人民解放軍の東シナ海や南シナ海への侵攻を抑止するにはどうすべきなのか?

 この問題は、現在、アメリカの海軍戦略家たちの間で論議の中心テーマの1つとなっている。海軍戦略家たちのほぼ統一した見解は、「アメリカとその同盟国により、人民解放軍に対するA2/AD戦略を実施するしかない」というものだ。そして、米連邦議会や安全保障政策決定者の間でも取りざたされるに至っている。

 そもそもA2/AD戦略という考え方自体は「弱者が強者に対抗するため」に誕生したものである。すなわち、強大なアメリカ海軍力に全く太刀打ちできなかった中国人民解放軍が、米軍とその仲間による軍事的圧力を撥ね返して中国の海洋権益を拡大するにはどうすべきか? という命題を解決するために生み出された戦略なのである。

 このような“弱者の戦略”であった戦略を、かつては圧倒的な強者であったアメリカ自身が採用しようというのであるから、戦略環境の激変には目を見張るものがある。

 アメリカにとっての対中国A2/AD戦略は、中国の対米A2/AD戦略の裏返しであれば良いことになる。その内容を単純にまとめると以下のようになる。

(1)第2列島線外部の西太平洋やインド洋は、アメリカ海軍やその同盟国海軍によって完全にコントロールして、中国人民解放軍が勝手気ままに行動できないようにする。

(2)第1列島線と第2列島線で囲まれる海域での軍事的優勢をアメリカ海軍や同盟国海軍が手にして、人民解放軍には自由な作戦行動をさせないようにする。

(3)中国沿岸から第1列島線までの海域においてもアメリカ海軍・空軍や同盟国海軍・空軍によって人民解放軍を牽制できるようにする。

(もちろん、これはアメリカの対中国A2/AD戦略であって、日本や台湾の対中国A2/AD戦略はそれぞれアメリカのものとは異なる内容になる。)

中心的役割を期待される日本

 対中国A2/AD戦略を実施するための具体的内容は、本コラムでこれから折に触れて紹介することとなるが、それらの具体的施策や戦術にとってアメリカと東アジア諸国による集団的自衛権の行使は不可欠となる。

 そして、その際に中心的役割を演じてくれるものとアメリカが期待しているのは、第1列島線の半分近くの島嶼を領土とし、第2列島線の起点にもなっているという地勢的理由と、アメリカ海軍・空軍と相互運用能力が高い軍事力を保有しているという技術的理由からも、日本ということになる。

 安倍首相は集団的自衛権の行使を国際社会に向けて公約した(少なくともアメリカではそのように理解されている)。そのためアメリカが対中国A2/AD戦略を実施する場合は、対中抑止措置における様々な戦術や作戦面で、自衛隊の配置転換や出動が日本に対して要請されることになるであろう。

 東アジア諸国を圧迫しつつある中国の海洋侵攻戦略を抑止する鍵は、まさに日本が握っているのである。


【こちらもあわせてお読みください】
・「中国の侵攻を撥ねつけてきた台湾の小さな島」
( 2014.07.25、福田 潤一 )
・「米陸軍が国防費枯渇で存亡の危機に、立ちはだかる中国の『A2/AD戦略』」
( 2013.09.05、北村 淳 )
・「中国の接近・地域拒否(A2/AD)戦略への我が国の対応」
( 2011.08.08、 河村 雅美 )
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42075


07. 2014年11月01日 13:30:14 : nJF6kGWndY

>ある意味、状況次第では非常に柔軟で自由、かつ強力な同盟関係

そして、いつでも裏切れるというわけだw


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