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ロシアの戦略概観 ーロシアはどこへ向かって進もうとしているのかー
http://www.asyura2.com/14/warb14/msg/610.html
投稿者 DOMOTO 日時 2014 年 11 月 19 日 21:41:08: VRQtq/0DZtRLQ
 

国家安全保障会議のニコライ・パトルシェフ書記(書記局トップ)。国家安全保障会議はロシア大統領の直属機関。


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◆◆以下の記事は、10月23日に発信した記事の一部を修正したものです。

欧米の経済制裁がロシア国民に与えている心理的影響や、世論調査の結果などまで書くことができませんでしたが、それらは他稿で補足していくつもりです。

ルーブルとロシア株価が急落しているから、プーチン政権の求心力が下がっているなどということは、10月下旬時点ではほとんどないようです。

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      ロシアの戦略概観

       ―パトルシェフ書記の見解―

       ―ロシアはどこへ向かって進もうとしているのか―


DOMOTO
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735


 【目次】

 【1】 ロシアの戦略概観

     ―安全保障会議書記の見解―

 【2】 ロシアのアキレス腱(私見)


      【1】 ロシアの戦略概観

        ―安全保障会議書記の見解―


ウクライナ東部のドネツクでは、ウクライナ政府軍と親ロシア派武装勢力の戦闘によりここ数週間で数十人の民間人が死亡しているそうです。10月21日、負傷者の治療に当たっている医師らは、政府軍がクラスター爆弾を使用していると証言しました(10月22日 AFP)。

ドネツクの医師ら、ウクライナ軍がクラスター爆弾を使用と証言 (10/22-2014 AFP)
http://www.afpbb.com/articles/-/3029542


9月の記事以降お伝えしているように、ロシアのプーチンとロシア政府は、世界スケールで反米秩序の構築や西側諸国への対抗策を進めています。これらは私たち欧米など西側諸国から見ることのできる概観です。

しかし、ロシア政府(クレムリン)はいったい、いまの情勢をどのように考え、どのような戦略観をもって、どこへ向かって進もうとしているのでしょうか。

これらについて説明してくれている記事が、ジェームズタウン財団のHPにありました。それはパベル・フェルゲンハウアー氏による記事です。この人はロシア極東での大軍事演習「ボストーク2014」についての解説記事を書いた人で、それは前号で取り上げました。この人はロシアの軍事・外交に詳しい人です。

Preparing for War Against the US on All Fronts—A Net Assessment of Russia’s Defense and Foreign Policy Since the Start of 2014 (10/16-2014 ジェームズタウン財団)
http://www.jamestown.org/regions/russia/single/?tx_ttnews%5Btt_news%5D=42962&tx_ttnews%5BbackPid%5D=653&cHash=f45956f6e83db53aebfcbd29c406b25f#.VENN7PmsUxM

プーチン大統領、メドベージェフ首相、そして国家安全保障会議のニコライ・パトルシェフ書記(書記局トップ)の3人は、いずれも10月15日にマスコミのインタビューで、ウクライナ危機後の、ロシア政府の<世界戦略の構想>の概要を述べています。以下はフェルゲンハウアー氏によるそれらについての解説の一部を抄訳したものです。

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(抄訳開始)
ロシア政府の見解は不快なものである。ロシア政府はいま、西側諸国との新しい冷戦が形成されつつあると見ている。ロシアは現在、西側諸国からの攻撃を受けていると考えており(訳注:経済制裁など)、ロシア政府はその反撃のために核兵器オプションを含む、自在に使えるすべての手段を使うつもりである。

The view from Moscow is uninviting—A new cold war with the West is in the making; Russia is under attack and will use all means at its disposal to resist, including the nuclear option.

プーチンは米国を非難したが、それは米国が首都キエフで過激な国家主義者を支援することによって、意図的にウクライナ危機を引き起こし、内戦へと火をつけたからだ―とプーチンは非難している。

ロシア軍は再武装し、大規模軍事演習を実施し、起こりうる世界規模の戦争にも準備している。

The Russian military is also rearming and conducting massive exercises, preparing for a possible global war.

モスクワの政界、軍、諜報機関の大多数の一致した見解は、米国との関係は修復不可能であり、メドヴェージェフ首相の言葉を引用すれば、「米ロ関係にはどのような新しい『リセット』の可能性もない」というのが一致した考えだ。

クレムリンは、米国との本物のデタント(緊張緩和)の可能性は、早くても2020年まではないと考えるようになっている。
(抄訳終了)
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この記事では、このあと紹介する国家安全保障会議のニコライ・パトルシェフ書記の意見や説明を、ロシア政府の公式な政策意見のように思われると述べています。
国家安全保障会議はロシア大統領の直属機関であり、ロシア大統領府の構成下に入るからです。

下記のリンクにはパトルシェフ書記の最近の写真があります。
http://www.rg.ru/2014/10/15/patrushev.html

パトルシェフ書記へのインタビューを載せた公式な政府機関紙の記事には、『第二次冷戦』(“Second Cold War”)と題名が付けられていますが、パトルシェフ書記の米国に対する考え方は次のようです。

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米国は今日も、ロシアを世界の中心から排斥し、破壊するような戦略的意図(計画)を実行している。これは1970年代にズビグネフ・ブレジンスキー(カーター米大統領の国家安全保障担当補佐官)により開始された戦略である。

ソ連崩壊後、それまで支配していた旧共和国で、米国はロシアからいかなる影響力をも奪い、ロシア政府をそれらの旧共和国から完全に孤立させようとしてきた。その数十年に及ぶ計画は非難すべきもので、米国は永遠の敵である。

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      ◆    ◆

パトルシェフ書記はインタビューの中で、ロシアの戦略立案者たちが、「ますます天然資源(石油、ガス、食糧、水)が貴重になっていく『分割された多極化世界』のなかで、ロシアは資源の貧しい欧州を支配できるだろう」と考えていると述べています(10月9日)。

この天然ガスと石油による支配の考え方は、すでにユーラシア大陸のあちこちで明らかになりつつあるように、欧州以外でも中国、インド、北朝鮮、日本、韓国、パキスタンなどアジア圏で、ロシアの戦略の基本的ラインとなっています。

『プーチンのアジア-太平洋への「旋回」はロシアの壮大な戦略の一環であり、その大戦略は、ロシアをユーラシア大陸(アジア+欧州)での強大なパワー(支配力)にするための、経済と軍事戦略の領域から構成される』

これは中国人の研究者などとのパイプを持つ、ヴィッテンベルク大学(オハイオ州)のユー・ビン教授が、2013年1月に戦略国際問題研究所のレポートで指摘したことですが、このことは6月のメルマガでお知らせしました。

Tales of Different “Pivots” (2013-1/14 戦略国際問題研究所 )
http://csis.org/publication/comparative-connections-v14-n3-china-russia

パトルシェフ書記は、ロシアの外交世界戦略として次のような主張をします。

『欧州を米国の支配から切り離すために、大西洋を挟んだ米欧の協力関係を弱体化させながら、欧州以外の中国のような新興国の国々(“emerging powers”)と同盟を次々と結んでいかなければいけない。』

As Patrushev argues, Russia, in turn, must build alliances with non-European emerging powers like China, while working to undermine the Transatlantic link to liberate Europeans from US domination.

ここで興味深いのは、ロシアは欧州と米国の分離を狙っており、欧州を支配・統合しようとしているのですが、そのためのプロセスでの選択肢としてNATOに対する核兵器の使用も考え、かつ準備も進めている事です。


    【2】 ロシアのアキレス腱 (私見)  


米国のオバマ政権は、11月の米中間選挙の選挙対策として「イスラム国」に大掛かりな空爆を行ったようです。「イスラム国」対策では、敵対しているはずのロシアやイランと協力関係を模索しており、外交的にも軍事的にも「戦略」に全体としての統一性がなくバラバラとなっている状態です。

これでは米国の持っている軍事的抑止力の効果は減殺されてしまうばかりです。しかも「イスラム国」の封じ込めに何の成果も上がっていません。

米国の外交政策が複雑化しているなどという説明をする人がいますが、私には米国の外交政策は「8の字」に蛇行飛行するダッチロール状態にしか見えません。

9月9日に日本で講演した元国防次官補のジム・ウェッブ氏が、オバマ政権の国家戦略について「今の米国は構造的な戦略がない。その場、その場での場当たり的な対応をしている」と言ったそうです。まさにその通りだと思います。

ジェームズタウン財団のフェルゲンハウアー氏の記事、そしてその中に書かれている国家安全保障会議のパトルシェフ書記の考え方、それらを読むとロシアの国家戦略には大きなアキレス腱があることが見えてきます。

それは今まで欧州に相互依存していたものを、いまロシアは中国に大きく依存しているという事です。ロシアの戦略のアキレス腱は中国です。つまりロシアの動きを封じ込めることができるのは米中関係次第であり、それには中国とロシアを切り離すという難易度の高い戦略が必要であるということです。

それなのにオバマ政権は今述べたようなあり様です。
次の米国の大統領選挙に果たして期待ができるのかわかりませんが、まだあと2年もあり、国際情勢は悪化すると思います。


■ 関連リンク

ロシアの核兵器戦力の準備とウクライナ―NATOを背後に― (9/11-2014 拙稿 )
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/39024587.html

ロシア・中ロ関係・中央アジア (拙稿集)
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/folder/1119307.html


.  

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コメント
 
01. 2014年11月19日 23:44:45 : SQmfVs9Aig
>それは今まで欧州に相互依存していたものを、いまロシアは中国に大きく依存しているという事です。ロシアの戦略のアキレス腱は中国です。つまりロシアの動きを封じ込めることができるのは米中関係次第であり、それには中国とロシアを切り離すという難易度の高い戦略が必要であるということです。


経済的依存ということもあるが、もっと多角的で重層的な安全保障体制(NATOのような冷戦型集団的自衛権ではない)を目指しているように思う。
BRICSとしての露中と隣国同士としての露中、それぞれにいろいろなファクターが重なり合い思惑が弾けあう中で決定的なことはロシアにとって中国との軍事的均衡は別にして人口の割合から比較しうる市場規模の差はいかんともしがたく、その中国を繋ぎとめておくにはどうするかと考えた場合、上海協力機構を軸にBRICSや欧州、中央アジア、南アジアといった内陸から海洋への経済とエネルギーの流通路を構築すると共に同時に軍事的対立を避けるべ回路を設けておくことは、個々の国が独自外交を志向する自由を制限することを意味しない。
中国がロシアと近づいても、同時にアメリカが中国に接近することをロシアが不快感を示すというような冷戦型外交ではないということだ。
米国はあいも変わらずこの冷戦型外交を軸にしており相互の権益を尊重するのではなく、米国の権益に支障が出るとわかったとたん手のひらを返す二重基準を平気でやるが、ロシアや中国は二重基準こそが世界を混沌と矛盾に落とし込むとしてそういう政策は採っていない。

ところでG20でのプーチンは欧米マスコミの決まりきった視線とは異なり、とても経済制裁で締め出しを食らっている国の大統領とは思えぬほど各国首脳と活発な話し合いに興じていたようだ。
オバマは相変わらず演説で露骨なロシア批判を持ち出したが、それにプーチンがお冠という西側の情報もあってプーチンは臍を曲げて帰ったとのネガキャンが成されたが、プーチンはオーストラリアのもてなしに満足しているとインタビューで答えたようにG20はロシアにとって有益だったという結論に達したようだ。
本投稿記事の「ロシアはどこへ向かおうとしているのか」というタイトルと論考は、そこからすればロシアが向かう未来への危惧といったような感じにも見受けられるが、ロシアからすれば「アメリカこそどこへ向かおうとしているのか」と言いたいところだろう。


02. 2014年11月20日 10:43:54 : YylixLkL5Y
ロシアはずっと西欧より後進国だったし今もそうである。
しかしロシアに攻め込んだ者は、すべて最後はみじめな敗北を喫している。

ナポレオンもヒトラーもそうだった。今同じことをアメリカがやってもまた同じことになる。冷戦の勝利は、相手陣営のソ連圏が崩壊したと同時に西欧圏も敵を失い事実上崩壊したのだ。アメリカとEUの利害は決して一致しない。
日米の利害関係も一致しないが、今なお日本の支配者はアメリカに従うことしか出来ない。


03. 2014年11月20日 13:01:03 : OIxNYWfJog
アメリカが世界覇権を目指し連衡グループを形成すれば、
中国、ロシア、BRICsを中心とする合従グループが強化されるのは当然のこと。

世界覇権を目指しながら中国との友好など、取らぬ狸の皮算用でしか無い。
合従連衡の元祖なんだから、そのくらいのことは理解して居るでしょう。


04. 2014年11月20日 15:14:48 : 5DHwIy893E
アメリカ国内が一つに纏まっていないのですから、今現在、ロシアが積極的に動くとは思えないが。
むしろ、アメリカの軍産イスラエルとオバマの戦いの行方次第のように思うが、安倍が狂気に動ける
のを狙って解散をすることの隠れた意味が世界の動きを決定しそうだ。
日本人は、心して選挙に臨むべしだ。

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