★阿修羅♪ > 戦争b14 > 903.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
米地上部隊投入求める声=空爆で効果、壊滅には不十分―対イスラム国、長き戦い ISILをめぐる外交はどうあるべきか
http://www.asyura2.com/14/warb14/msg/903.html
投稿者 eco 日時 2015 年 2 月 07 日 18:05:45: .WIEmPirTezGQ
 

米地上部隊投入求める声=空爆で効果、壊滅には不十分―対イスラム国、長き戦い
時事通信 2月7日(土)15時4分配信

 【ワシントン時事】米軍主導の有志連合による過激組織「イスラム国」に対する半年間の空爆は、失地の一部回復に貢献するなど、一定の効果を見せ始めた。ただ、春以降にイラクで予定する本格的な反転攻勢を成功させるには、犠牲を覚悟で前線への米地上部隊投入が不可欠だと唱える声は根強い。オバマ大統領が困難な判断を迫られる可能性もある。
 有志連合は昨年8月8日以来、イラクとシリアで合わせて約2300回の空爆を実施。今年に入り、イラク政府軍は中部ディヤラ州をイスラム国から奪還し、シリア北部でもクルド人民兵組織が拠点防衛に成功した。米政府内からは「イスラム国は守勢に回っている」(ヘーゲル国防長官)との声も聞こえてくる。
 だが、イスラム国は日本人男性やヨルダン軍パイロットを拘束・殺害したと相次いで表明するなどして存在感を高め、依然多くの外国人戦闘員を引き付けているもようだ。衰えたとはいえ、資金の豊富さも他の過激組織をしのぐ。さらに、空爆で戦車などを失っても、本来はゲリラ部隊であるイスラム国は小火器さえあれば戦闘を継続可能だ。
 このため「現戦略では、イスラム国を破壊するという目的を達成するには不十分」(スティーブン・ブッチ元国防副次官補)という批判は絶えない。専門家の多くは、空爆目標の特定や戦術支援に当たる米特殊部隊をイラク政府軍に同行させ、爆撃と地上戦の連携効果を高めるべきだと指摘する。
 政府系シンクタンク、海軍分析センターのジョナサン・シュローデン氏は「オバマ政権の手法はおおむね正しい」と現路線を評価しつつも、特殊部隊投入は必要だと強調。ブッチ氏は、最大2000人の米兵を同行させるべきだと訴える。イラクに派遣済みの一部米兵の任務を変更し、前線に再配置したとしても、駐留米軍の規模は現在の約2500人から4000人近くにまで膨らむ計算だ。
 オバマ大統領は「できることは全てやっている」と主張するが、現状ではイスラム国壊滅まで「3〜5年を要する」(国防総省)。ヨルダン軍パイロット拘束を受け、アラブ首長国連邦(UAE)が捜索救助の在り方に疑義を呈するなど、有志連合の結束維持が容易でないことも明らかになってきた。作戦加速に向け、飛行禁止空域の設定を含め、米軍の関与を拡大するよう求める圧力は高まっている。 

【関連記事】
〔写真特集〕米海軍特殊部隊 Navy SEALs〜ビンラディン襲撃の実行部隊〜
〔写真特集〕軍用ロボット〜地雷処理から自動殺りく兵器まで〜
〔写真特集〕陸・海・空で活躍 世界の特殊部隊
〔写真特集〕「イスラム国」〜ヨルダン軍が報復攻撃〜
イスラム国と全面戦争に=パイロット焼殺で「容赦ない報復」−ヨルダン
最終更新:2月7日(土)17時54分時事通信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150207-00000064-jij-n_ame


『from 911/USAレポート』第683回

    「ISILをめぐる外交はどうあるべきか?」冷泉彰彦:作家(米国ニュージャージー州在住)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 『from 911/USAレポート』               第683回
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(冷泉彰彦さんからのお知らせ)

もう一つのメルマガ、「冷泉彰彦のプリンストン通信」(まぐまぐ発行)
http://www.mag2.com/m/0001628903.html
(「プリンストン通信」で検索)

直近2回の内容を簡単にご紹介しておきます。

第048号(2015/01/27)「陳舜臣氏の『ですます調』」「ISIL誕生に至った
経緯をアメリカは反省しているのか?」「フラッシュバック70(第32回)」

第049号(2015/02/03)「方向性の定まらない2月」「日本にとって有効な『テ
ロ対策』は?」「フラッシュバック70(第33回)」

JMMと併せて、この『冷泉彰彦のプリンストン通信』(毎週火曜日朝発行)も定
期的にお読みいただければ幸いに存じます。購読料は税込み月額864円で、初月
無料です。登録いただいた時点で、当月のバックナンバーは自動配信されます。

尚、このメルマガの記事の一部(部分)は、ウェブサイト『まぐまぐニュース』の
中で無料でお読みいただけます。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 日本人人質事件が最悪の展開となり、更にはヨルダン人戦闘機パイロットのムア
ーズ・カサスベ中尉が焼殺されるという映像の公開という事態に立ち至りました。
この事態へ報復措置としてのヨルダン政府によるサジダ・リシャウィ死刑囚などへ
の死刑執行も行われています。

 ISILに関する動きは、しかしこの一連の動きでは止まっていません。ヨルダ
ンのアブドラ国王とラニア王妃は、殺されたパイロットの出身地であるカラカ地方
を訪れ、パイロットの父親に対して自ら弔意を示しています。この訪問には、首相
や統合参謀長も随行し、ヨルダン国内では大きく報道されているようです。

 この弔問と前後して、ヨルダン空軍はISIL支配地域に対する空爆を実施して
います。ちなみに、カサスベ中尉の殺害が明らかになった時点では、アブドラ国王
はちょうどワシントンを訪問中で、オバマ大統領との首脳会談に臨んでいたところ
でしたが、予定を切り上げて急遽帰国して、このような攻撃命令を発しつつ弔問を
行ったようです。

 更にこれと前後して、国連はISILが捕虜としたイラク人の子供たちを奴隷と
して売買している、その際に子供たちは首から「値札」を下げさせられているとい
う調査報告を公開して衝撃が広がっています。

 これに対してISILは、今回のヨルダン空軍による爆撃で、かねてよりアメリ
カが人質とされているのではと懸念していたアメリカ人の女性、カイラ・ジーン・
ミュラーさんが「この空爆で死亡した。尚、ISILメンバーの被害はなかった」
という発表を行っています。

 ミュラーさんは、シリア領内での難民に対する支援活動をしていたところを誘拐
されており、若い女性のボランティア・ワーカーということで、アメリカ社会では
その安否に関してかなり懸念が出ていたのです。今回の空爆で亡くなったという点
については、真偽のほどは例によって相当怪しいものの、今回のヨルダン空軍の攻
勢をタイミングとして、その死亡情報を出してきたわけです。

 では、アメリカは一連の事態に激怒しているのでしょうか? あるいは深刻な事
態に対して国際社会での影響力を維持するため、またはイラク戦争以来の経緯への
責任から、今回の事態に対して軍事的関与を強めようとしているのでしょうか?

 必ずしもそうではありません。関心は大変に高いのですが、姿勢は依然として冷
静であり、ISILが作り出そうとしている「危機」に対して「距離を置いて見て
いるという心理」には変わりはありません。

 というのは、アメリカは今でも、アフガン戦争とイラク戦争の「傷」との対決を
続けており、改めて多くの兵力を地上戦闘に投入するような状況にはないからです。

 例えば、ISILの情報戦がエスカレートして、国際社会にイヤな雰囲気が拡大
していた先週末、アメリカはプロ・フットボール(NFL)の決勝戦「スーパーボ
ウル」に熱狂していました。

 名勝負であったはずが、終了直前にシーホークスが監督の攻撃作戦ミスにより自
滅して、ペイトリオッツが勝ったことは大きく話題になり、特にシーホークスのパ
ット・キャロル監督の「ミスを認めた正直な告白」は数日間トップ扱いでした。

 また、このスーパーボウルでは、国歌独唱を『アナ雪』でスターダムにのし上が
ったイディナ・メンゼルが担当したとか、ハーフタイムのショーを担当したポップ
歌手のケリー・ペリーの横で踊っていた「ゆるキャラ」の「シャーク」が話題にな
るなど、極めて「のんき」な世相が反映していました。

 この「ゆるキャラのシャーク」に関して言えば、ペリーの両側で2匹の「シャー
ク」が踊っていたのですが、そのうちの「レフト・シャーク」つまり左側の踊りが
いい加減で「ゆるかった」ということで、その「レフト・シャーク」が面白いと話
題になるなど、全体が「ゆるい」話になっているのです。

 その「ゆるさ」というのは、好景気の末に文化が爛熟し退廃しているというより
も、長い間の「暗さ、先の見えなさ」からようやく開放された感覚だと思います。
1月に行われたオバマ大統領の「年頭一般教書」にあった「恐怖の影は去った」と
いう感覚が世論の深層には流れており、ここで「敢えて新しい危険にチャレンジす
る」ということは難しいと言えます。

 一方で、イラク戦争の影ということは今でも続いています。例えば、クリント・
イーストウッド監督の最新映画『アメリカン・スナイパー』では、イラク戦争に参
戦して多くの敵兵を射殺したスナイパー(狙撃兵)を取り上げています。興行的に
は大成功となり、映画の専門家の評価も極めて高いのですが、イラク兵に対する狙
撃の描写が一方的だということで激しい批判も浴びており、大きな論争になってい
ます。

 また、今週はNBCの『ナイトリー・ニュース』という夕方の看板ニュース番組
のアンカーを長年務めてきたブライアン・ウィリアムスが、2003年にイラク戦
争に従軍取材した際の「経験談ねつ造」スキャンダルで窮地に追い込まれています。

 つまりイラクへ取材に行った際に、事実関係としては「ウィリアムスが搭乗して
いたヘリは攻撃を受けていない」ということが明らかになっているにも関わらず、
年月を経る中で、「自分が乗り合わせたヘリが、敵方によるRPG弾攻撃を受けて
不時着した」という言い方をしてしまっているというのです。

 ウィリアムスは2年前の2013年3月に、お笑い番組『レイトショー』に出演
した際に、ハッキリと「自分の乗ったヘリがRPG(対戦車迫撃砲)とAK47
(戦闘用連射ライフル)で攻撃を受け」たので「自分はハッキリと身の危険を感じ
た」と言っています。

 この発言が「事実に反する」ということで、批判がじわじわと広まっていました。
特にイラク帰還兵を含む退役軍人のコミュニティで「あれはひどい」という話にな
っていったのです。事件からは10年以上、そして「失言」から2年近くを経た今
年の1月にはSNSによる拡散が無視できなくなり、遂にウィリアムスは全面的な
訂正と謝罪に追い込まれました。

 最近のこの種の事件のご多分にもれず、先週行われたこの謝罪の結果、ウィリア
ムスへの批判は猛然と「炎上」という格好になっています。事実関係を整理します
と、ウィリアムスの乗っていた機に先行していた機が、確かにRPGの攻撃を受け
ており、その不時着した機も含めた周辺空域を飛行中のヘリは全機が緊急着陸した
上で、地上では友軍による敵との戦闘もあったようです。ですから、ウィリアムス
としては、相当に危険な状況だという印象が残ったのは間違いないでしょう。

 従軍取材の中でかなり危険な経験をしたということに、徐々に「思い違い」や
「誇大表現」が積み重なる中で「自分の搭乗機が被弾」という話に発展していった
ということだと思います。プロとしては許せるものではありませんが、人間として
「やりがちなエラー」であることかもしれません。

 では、どうして退役軍人のコミュニティは激怒しているでしょう? 個別の戦闘
としては必ずしも「完勝」ではない、むしろ「失態」に近い内容をメディアの人間
が喋っているからでしょうか? そうではないと思います。そうではなくて、多く
の退役軍人は自分や自分の戦友、あるいは戦死した戦友が「ヘリを撃墜される恐怖
の経験」をしているからです。「ホンモノの恐怖を知っている」からこそ「経験を
誇張したニセモノの話」が許せないということになるのです。

 つまり、ウィリアムスの失言や、訂正への炎上というのは、戦争において「味方
ヘリが攻撃されて不時着したこと」を蒸し返しているから怒りを買うのではなく、
「被弾と不時着という恐怖を経験していない人間が自分の経験だとねつ造すること」
への「そんなもんじゃない」という怒りだと言えます。それは、戦意が高まってい
ることの証明ではなく、むしろ退役軍人のコミュニティが激しく傷ついているため
だと言うことができます。

 アメリカは、今、新たな地上戦闘へと自国の兵士を送るような状態にはありませ
ん。そのことは、こうした世相を考えると明らかだと思います。

 ISILをめぐる事態を受けて、米国の一部には「地上戦闘で追い詰めるべき」
という意見が出ているという報道もありますが、せいぜいが「シーア派を中心とし
たイラク軍」と「クルド勢力」あるいは「自由シリア軍(FSA)」が地上戦でI
SILを追い詰めるように、支援するかどうかという話であって、直接に米軍が対
ISILの地上戦に踏み切るかどうかという話ではありません。

 そのレベルの話でも、基本的には「困難」であり「空爆による敵の戦力低下」し
か現実には選択できないというのが現状です。オバマ大統領は事態が動くたびに、
強硬な言葉を並べていますが、基本的に戦略を変えるつもりはありません。

 オバマ大統領が、対ISILに対して特に陸上戦闘に消極的なのには、世論に
「厭戦ムード」が強いからだけではありません。もっと本質的な政治的問題もそこ
にはあります。

 まず、シリアですが、オバマ大統領としては基本的には2009年にエジプトの
カイロ大学で行った「イスラムとの和解」演説をベースとして、その後にチュニジ
ア、リビア、エジプトで発生した「アラブの春」がシリアに飛び火した際にも、当
初から「反アサド派」には同情的でした。

 このシリアでの動乱が始まった2011年から12年の情勢においては、アサド
政権が「反政府デモの起きた都市を空爆して、自国民を虐殺している」という非難
が、国際的に高まっていました。例えば共和党の中には「反政府勢力に武器供与を」
という声が大きくもなっていたのです。

 ですが、オバマは「反政府勢力の中にはアルカイダに通じるグループがある」と
いう情報を元に、極めて慎重な姿勢で終始していました。そんな中で、2013年
の夏にはアサド政権は「反政府派に対して化学兵器を使用している」ということが
明らかとなり、「反アサド勢力に呼応した軍事介入を」という声が高まりました。

 この2013年の8月から9月の状況では、「オバマはアサドへの空爆を決断」
「米議会は慎重」「日本の安倍政権はロシアとの関係を使いながらオバマの空爆に
不支持のメッセージを出した」という中で、事態が推移していったという解説があ
るようです。

 結局のところ、9月の10日になって事態は急展開し、アメリカのケリー国務長
官とロシアのラブロフ外相の交渉の結果として、ロシアが外交的に介入して、アサ
ド政権に対して「化学兵器の使用・保有を認めさせる」ことと「国連の化学兵器禁
止機関(OPCW)による化学兵器の移転・廃棄に協力する」という条項での「和
議」が成立していくことになります。

 一部には、ロシアが上手く立ち回って、その中で安倍政権がしかるべき役割をし
ており、そのためにオバマ政権は安倍政権に悪感情を持ったとか、オバマ政権は弱
腰だという解説がされていますが、実はこの2014年の8月という時点が、IS
ILがイラクでの脱獄作戦を完了させて、シリアの権力の空隙を狙って暴走を始め
たタイミングに重なってきています。

 そう考えると、オバマとしては「弱腰」でもないし「安倍政権にロシアとの調整
を強いられた」わけでもなく、アサドではないISILという「新たな敵」を意識
することで、アサドとの全面対決「ではない」戦略を選択せざるを得なかったと考
えることができます。

 いずれにしても、シリアで「弱腰」であったからISILの跋扈を招いたという
のは、正確な理解ではないし、オバマとしては相当に早期からイラクのスンニー派
の過激な部分が、シリアとの国境を越えて活性化していたのは理解していたと思わ
れます。

 そのイラクに関してですが、今から考えれば、スンニー派勢力を完全に「除外し
た」格好で、シーア派とクルドの連合政府という格好になっていったのは、ブッシ
ュの作戦の誤りであったということは言えます。ですが、オバマが2008年の選
挙で勝って、イラク戦争の「撤退まで」を担った時点では、この選択は既に変更不
可能になっていました。また、オバマは「イラク戦争への反対=米国の介入の速や
かな撤退」という世論を受けて政権を奪取しているわけです。

 ですから、シリアに関しても、イラクに関してもオバマ政権は「弱腰」だからこ
のようにISILの跋扈を許したというよりも、過去からの経緯、そしてアサド政
権の問題、ロシアの影響力の問題などを整理する中で、必然的に現在の状況に立ち
至っているということが言えます。

 ですから、今後もオバマは、このISILに対する対応に関して、陸上戦闘に直
接・間接に関与していくという可能性は極めて低いと思います。では、どうやって
ISILの挑発に対抗していくのでしょうか?

 それは、結局のところキメの細かい外交ということになると思います。外交とい
うことでは、留意点は大きく4つあります。

 1つは、イランとの外交です。イランはいくら穏健派のロウハニ政権が成立して
いるとは言え、要するに「シーア派のイスラム国家」という枠組みからは外れるこ
とはできません。その一方で、国民には「長年の経済制裁を早く解除してもらいた
い」という要求が高まっているのも事実であるようです。ここで、オバマ政権が
「反イラン」の怨念を抱えた議会共和党の軟化を進めて、イランとの連携が機能す
るようですと、ISIL対策としては前進することになると思います。

 2つ目は国連です。ISILの活動を封じ込めるためには、国連による正当性の
付与ということは関係国にとって重要な問題になります。国連の安保理が機能する
ためには中国とロシアが拒否権行使を行わないように調整が必要なのですが、シリ
アのアサド政権との間で軍港租借の利害のあるロシア、またそのロシアの立場に理
解を示す中国としては、なかなか対ISIL対策に同調ができないのが現状です。

 となると、問題はアサド政権にあるとも言えるわけで、今後もOPCWの活動の
進捗の確認は必要ですし、仮にアサド政権が「大変に軟化して、バッシャー・アサ
ド大統領自身の引退などを考慮」するようなら、国連の調整を経てアサド派の軟着
陸を図るか、アサド政権とFSAの和平を粘り強く仕掛けていくなど、とにかくア
サド政権の位置づけを国連を中心に明確化することは必要でしょう。

 来年度、2016年以降に安保理の非常任理事国に選出される可能性の強い日本
としては、こうした国連外交で何とか貢献がしたいものです。

 3つ目はロシアです。ロシアは、依然としてウクライナの問題で西側との対決を
抱える中で、原油安に苦しんでいます。ただ、今後もロシアはアサド政権との「腐
れ縁」をすぐには清算できないでしょうし、政治的にも西側勢力との安易な妥協は
難しいでしょう。イランの問題も水面下では米ロの駆け引きがあると思われます。
それでもロシアに対して粘り強く、是々非々で対抗していくことは必要と思います。

 4つ目は中国です。中国とISILの問題は、現時点ではそんなに深刻にはなっ
ていませんが、この状態を維持すべきと思います。というのは、仮に中国出身者が
ISILにもっと大勢が参加すると同時に、そうした人間が中国に対してテロ工作
をするようになると、北京の政府とウイグル族などのイスラム系が激しく対立する
可能性があります。

 中国でそのような国内の不安定化が起きるということは、日本を含む東アジア全
体の安全を脅かすことになるわけですし、同時に中国がより多様性を許す柔軟な社
会へと成熟することも阻害します。そうしたマイナスは、中国という大国が「対I
SIL」の外交戦なり軍事行動の前面に「出て来てくれる」ことで、有志連合が強
化されるメリットを相殺してしまうと思います。

 この問題はロシアも同じで、仮にロシアが「アサドを軟化させつつ」対ISIL
で「強硬になってくれた」としても、それがチェチェンの問題とISILが連携し
ているということで、徹底して敵味方を峻別するための行動であれば、若干のクエ
スチョンがつくことになります。

 いずれにしても、中国に関しては東アジアへの影響が大きいだけに、深刻に考え
たほうが良いように思います。例えばですが、中国が「真剣にISIL討伐を決意
し、その上でウイグルへの徹底弾圧を行う」ような立場になって「その代わりに南
シナ海や東シナ海での活動を思い切り沈静化する」というような姿勢を見せた(そ
んなことは即座には起きないと思いますが)場合には、何となく敵味方の区別がス
ッキリするように思われますが、私にはそんな状態が「東アジアにとって今より安
全」であるとは思えません。

 とりあえず、中国とロシアに関しては、西側との多少の確執が過去からあり、安
保理での連携やシリア対応などに、そうした政治的な経緯を引きずった齟齬が出る
ものの、ISILに関しては同じように「相手からは敵視されている」という「曖
昧さ」を抱えつつ、安保理ではもう少し「西側に理解をするようにポジションを寄
せる」ようにアプローチを続けるということではないかと思います。

 外交ということでは以上ですが、その他にもクルド人の「独立具合をどの程度ま
で認めていくのか?」という問題、そのクルド問題との関連でトルコのポジション
の問題、更には中東和平の問題と、ガザにおけるハマス、レバノンのヒズボラがど
こまで軟化できるか問う問題なども、複雑に絡み合ってきます。

 アメリカとしては、折角長い時間をかけてアフガンのタリバンの「無害化工作」
を行ってきたのに、仮にタリバンの中からISILの同調者が出るようですと、過
去の犠牲や努力が水の泡という問題もあります。

 つまり、このISILをめぐる状況に関しては、「明快な解決策はない」のです。
そんな中で、明らかな人道上の被害が起きないように、難民の生活水準がどうにか
して向上するように、複雑な方程式の中で、冷静に関係国が「その時点での最善の
策を」進めていくしかないように思います。

 その意味で、アメリカは現在この問題に対して、歴史的な経緯から見て「比較的
冷静に対処しようとして」いる段階にあります。そのアメリカを軸として、関係国
がキメの細かい外交を続けて行くしかこの問題への向き合い方としてはないように
思うのです。
    
------------------------------------------------------------------
冷泉彰彦(れいぜい・あきひこ)
作家(米国ニュージャージー州在住)
1959年東京生まれ。東京大学文学部、コロンビア大学大学院(修士)卒。
著書に『911 セプテンバーイレブンス』『メジャーリーグの愛され方』『「関係の空
気」「場の空気」』『アメリカは本当に「貧困大国」なのか?』『チェンジはどこへ
消えたか〜オーラをなくしたオバマの試練』。訳書に『チャター』がある。 最新作
は『場違いな人〜「空気」と「目線」に悩まないコミュニケーション』(大和書房)。
またNHKBS『クールジャパン』の準レギュラーを務める。

◆"from 911/USAレポート"『10周年メモリアル特別編集版』◆
「FROM911、USAレポート 10年の記録」 App Storeにて配信中
詳しくはこちら ≫ http://itunes.apple.com/jp/app/id460233679?mt=8
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●編集部より 引用する場合は出典の明記をお願いします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
JMM [Japan Mail Media]                No.831 Saturday Edition
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【発行】村上龍事務所
【編集】村上龍
【発行部数】92,621部
【お問い合わせ】村上龍電子本製作所 http://ryumurakami.com/jmm/
 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
01. 2015年2月07日 19:47:45 : 0gP4xCLEGk
>その意味で、アメリカは現在この問題に対して、歴史的な経緯から見て「比較的
>冷静に対処しようとして」いる段階にあります。そのアメリカを軸として、関係国
>がキメの細かい外交を続けて行くしかこの問題への向き合い方としてはないように
思うのです。


冷静どころか、戦争ゴッコに挑む子供のように興奮している総理が居る国もありますけどね


02. 2015年2月07日 20:22:31 : Ke2uc0ClEo

>冷静どころか、戦争ゴッコに挑む子供のように興奮している総理が居る国もありますけどね


その総理って奴は知能の低いksなんでしょう。


03. 2015年2月07日 23:18:12 : LMcQpa07KY
 イスラエルとネオコンはとにかくアメリカを中東に引き留めておきたい。
地上戦に引っ張り込むのはその一環であり目標達成の徴だ。
アメリカに出て行かれてはイスラエルが消滅しかねない。
オバマは
アフガンから撤兵
シリアを事実上承認

イスラエルにとっては悪夢以外の何物でもない。


04. 2015年2月07日 23:30:04 : JohUb3Zw9I
その意味で、アメリカは現在この問題に対して、歴史的な経緯から見て「比較的
>冷静に対処しようとして」いる段階にあります。

 というか、アフガニスタン、イラク侵略で 米国が果たしたことは

 多くの市民、婦女子、子供まで戦争の巻き添えにして、安定を崩し

 米国侵略以前よりも、中東地域の混乱に落としいれただけ。

 最大の責任は米国にあるのだから、確信犯だから冷静だろ

 混乱させるのが当初からの目的ではないのか、爆弾落として、米国軍産複合体

 を喜ばせる、儲けさせる、これも大きな目的だろ。

 日本はどうする・・・。


05. 2015年2月07日 23:49:54 : tYEyIuqs7Y
空爆だけで十分だろ。色々と理屈をつけているが、人口削減のために地上軍の派遣を主張しているだけだ。ISISに武器をわざと米軍の飛行機で落としている時点で茶番だ。

それと冷泉彰彦の長文を載せる意味って何?
アメリカの1%の支配層の意見を代弁しているだけ…
これほど人の心を動かさない文章は、なかなかない。感情のないロボットみたいだ。


06. 2015年2月08日 00:30:22 : JohUb3Zw9I
冷泉彰彦(れいぜい・あきひこ)
作家(米国ニュージャージー州在住)
1959年東京生まれ。東京大学文学部、コロンビア大学大学院(修士)卒。

 お勉強ができて、文章が書ける、 でアメリカ支配層の犬



07. 2015年2月08日 01:15:03 : JXm0JcfKJI
アメリカの中の誰かが冷静といいうことはあっても、アメリカが全体として冷静ということはない。国防予算の減額を阻止したい勢力が政策決定の主導権を握ればまた軍事攻撃の拡大を図ることはありうる。

わかったような顔で解説している評論家のいうことが当たることはまれ。


08. 2015年2月10日 05:53:46 : vGP8oYMdks
やるなら、有志連合なんて怪しげな形ではなく、国連のPKOでやるべきだろう。
そうするとシリア軍が叩けなくなるからやらないんだろうな。

09. 2015年2月11日 19:28:48 : DKhwYBOUus
後藤さんとヨルダン兵士の殺害、新サウジ国王とオバマの会談から潮目が大きく変わりましたね。

ヨルダンの空爆再開は当然としてもUAEも再開したし、ロシアの国連決議と米軍の地上軍投入の流れは今までと違う何かが裏で起きていることでしょうか。

併せて原油の下落も止まりましたが、ここえきてウクライナがきな臭くなってきました。


10. 2015年2月12日 13:48:14 : YxpFguEt7k
浅井久仁臣氏
「米国がISISに対して地上戦に入る準備をしている。3年間の期限付きであろうと、イスラーム社会に与える影響は計り知れない。
ゲリラ戦の難しさはヴェトナム、イラク、アフガンで経験したはず。失敗に終わる可能性大。
仮に組織を破壊しても四分五裂した後再び形を変えて西側社会を脅かす。」
https://twitter.com/asaikuniomi/status/565710148346580992

無能な米軍は要らない。


11. 2015年2月14日 19:16:05 : pfJ99hUUoo
>>10
おそらくそれは計算に入っている
また、ウイグル人やチェチェン人もかなり入っている
中露に放つつもりだろう

12. 2015年2月26日 08:41:01 : quCv5Kiq9g
米軍がisisを支援しているとイラクが怒っている。
穴だらけの陰謀でも悪びれず堂々としておれば通用するようだな。

13. 2015年4月02日 20:16:27 : E0zHQw6A1I
この冷泉というおっさん、いつもいうことは同じだな。

アメリカはアフガンとイラクで土ツボにはまりやっとのことで格好だけつけ虚勢を張って撤兵した。結果イラクにはイスラム国が生まれアフガニスタンは実質タリバンが支配する。これが地上軍投入の結果だ、3兆ドル以上をつぎ込んでこのザマだった。

そのときに兵器で弾薬で大儲けした連中がまた同じことしようと企んでいる。


14. 2015年6月19日 20:02:33 : wuTgFF1a8H
日本の自衛隊がゆきますから心配しなくていいです。
ISILはすぐに殲滅されます。
もうすぐ戦争法案通りますから

15. 2015年9月08日 09:19:06 : v1gbxz7HNs
マッチポンプもいいところで、要は中東を混乱させて各国軍に戦わせてイスラエルの中東支配を確立させたい。カネも兵もリスクも他国持ちでイスラエルのために戦わせたいというだけの話だろう。
その戦争スケジュールに間に合わせるために戦争法案を急いでいる。

見るからに陰謀でもそれを陰謀と自ら認めないかぎり事実で通るんだ。
満洲鉄道爆破やトンキン湾のようにあとで陰謀と暴露されても、ああやっぱりねの一言で終わる。


  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法

▲上へ      ★阿修羅♪ > 戦争b14掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
戦争b14掲示板  
次へ