彼らの自動車に対する設計哲学とか設計思想など、ないに等しい。もともと同社が設立された目的は、今のパク・クネ大統領の父のパク・チョンヒ大統領が大きく関わっている。

日本統治時代、北は重化学工業の重点育成が図られ、大規模な水力発電や工場が建設されていた。これに対し南は農業地域だった。第一次産業しかめぼしい産業が泣く、国力が北に対して大きく劣っていた。これはそのまま両国の軍事力に反映されており、南の軍事力は弱かった。南は、いつも北の「南進」の恐怖に晒されていた。

パク・チョンヒ大統領は、開発独裁と言う手法を用いた。国内の反対派を徹底的に弾圧し、国民を完全に統制する。懸案だった日本との国交を、1965年の日韓基本条約で締結した。この時に、日本に対する謝罪と賠償を求めていた南朝鮮国民の不満を、強権的手法で押さえ込んだのである。

南朝鮮の日本に対する反発は、パク・チョンヒ大統領が黙らせたのである。日本側も、これに安心したのか、ここから総額6,000億円に達する巨大な円借款が行なわれるのである。西側のリーダーであるアメリカは、南朝鮮の国力を強めることを考えていた。南朝鮮を、共産主義陣営に対峙する反共陣営の前線国家として、経済建設を強力に推進する。その中で、南朝鮮の自動車産業育成が盛り込まれたのである。

現代自動車は1967年、パク・チョンヒ大統領の肝いりで設立された。当初は欧州フォードの車種を生産していた。当時の佐藤内閣は、アメリカの方針に従って、南朝鮮の自動車産業育成を支援するため、日本国内の各自動車メーカーに協力を打診したが、トヨタも日産も拒否した。しかし三菱自工は、1970年に三菱重工からクライスラーとの合弁会社として自動車部門が独立したばかりの時期であったが、日本政府の方針に協力することとなった。三菱グループとして、南朝鮮の経済建設に協力したのである。

このことを彼らは忘れているのだろう。南朝鮮の経済人は、自分たちの実力でここまでのし上がってきたと思い込んでいるようだが。

現代自動車が小型車ポニーを1975年に発売したが、これは中身が三菱ランサーそのものだった。このため、乗ったフィーリングが三菱車そのものだった。一世代遅れの三菱車(その分、低価格)と言う現代自動車の性格は、この頃に形成されたのである。

三菱自工が2000年代に入ってから経営不振に陥り、ダイムラーの傘下に入った頃から、一世代遅れの三菱車と言う性格に変化が出始めた。日本からの技術移転が行なわれなくなったからである。すると彼らが目指したのは、製品の性格をトヨタに似せることだった。日本最大の自動車メーカー、トヨタの自動車にそっくりな自動車をつくる。早い話、「トヨタモドキ」を目指す。このことからも分かるように、現代自動車は、自動車の設計思想や設計哲学は、ないに等しいのである。要は台数を売って稼ぐことが、会社の目的なのだ。

現代自動車の製品に乗ってみると、トヨタそっくりのフィーリングである。トヨタと言うと、乗り味や操縦感覚で自動車好きには褒められない傾向があるが、実にそのままである。エンジンマウントが柔らかいために、アクセルのオン・オフで、車体全体が大きく前後動するが、これが不快と言えば不快だ。車体にエンジンの振動を伝えさせないために、エンジンマウントを柔らかくしている設計方針は、確かに自動車好きには受けないようだ。

サスペンションにしても、ゴムブッシュに頼った乗り心地だから、確かに柔らかいが、何か腰のない動きを見せる。彼らは、これを「最高の乗り心地」だと信じているらしい。当方はフランスのシトロエンの愛好家だが、彼らはシトロエンのハイドロ・ニューマチックの乗り心地を試したことがあるのか疑問だ。現代自動車の製品で1,000kmもドライブしたいとは思わない理由が、ここにある。

現代自動車が使っている、ポスコの鋼板が錆びやすいのも問題だ。ポスコは、日本の円借款で設立されたが、技術指導を行なったにも関わらず鋼板が錆びやすいのは問題だ。利益を上げるのが目的だから、工程のどこかで手を抜いているのは明白である。現代自動車の製品の錆びやすさは、南朝鮮国内のユーザーの怒りの対象になっている。南朝鮮の冬は寒く、凍結するので、凍結防止剤を撒く。これは塩だから、車体を錆びさせてしまう。

現代自動車の製品は、新車だと見栄えがいい。価格も比較的安いので、レンタカーに最適だ。そうして数年使った後、安く転売する。安さにつられて、それを買ったユーザーが、故障と錆びに悩まされて廃車する。それなら買わなければいいが、先立つものがないユーザーは、現代自動車にどうしても手を出すから、この手の悲劇が絶えることはない。

現代自動車が中国大陸の自動車メーカーの傘下に入る可能性について書かれているが、今のままなら、いずれそうなりそうな気がする。