中国大陸から亡命した蒋介石･中正先生は、大陸反攻を終生、念願とされてきたが、1975年に没する。子息の蔣経国先生は1978年に中華民国総統(大統領)に就任するが、1979年の米中国交樹立が打撃となる。当時のカーター政権の独断に対して、アメリカ議会の反発は大きく、それから間もなくアメリカ国内法として台湾関係法が成立したのである。ここで台湾の名称が表に出てきた。

中華民国政府は、反体制運動に対して弾圧を行ってきたが、この台湾関係法では人権保護、人権推進の条項が追加された。(註　この法律は、アメリカの国内法であることに注目)これによりアメリカ議会では公聴会が行なわれ、民主化を推進する決議案が採択された。これが、その後の台湾の民主化を推進することとなる。

深刻な糖尿病に苦しんでいた蔣経国先生は、早急に後継者を選出しなくてはならない状況であったが、アメリカの民主化要求に対し、世襲制と軍事政権をやめると表明。これにより戒厳令解除と複数政党制導入が1980年代に進められた。野党の民主進歩党が1986年に結成されている。

1988年に蔣経国先生が無くなると、李登輝先生が総統代行に就任され、1990年に総統選挙が行なわれた。その後、1996年に初の国民による直接選挙が行なわれたのである。その後、台湾では政権交替が行なわれるようになった。

●前置きが長くなってしまったが、これら台湾の民主化の流れの中で、台湾は中国ではなく、「台湾」であると言う考え方が年々強くなっていったのである。

受賞された台湾が女優が産まれ、育った時代は、李登輝先生の総統時代である。彼ら若者世代は、大陸から逃げてきた「中国人」との自覚はない。あの蒋介石先生の曾孫でさえ、自分は台湾人だと言っておられる。彼らから見て、中国国民党は時代遅れの政党なのだ。2016年1月の総統(大統領)選挙でも、国民党候補は最初から形勢不利だと伝えられている。

国民党を率いた蒋介石･中正先生は、長らく政敵の中共から非難されてきたが、今では逆に「中国の旗を降ろさなかった」ことから、逆に評価を受けるようになった。時代は変わるものである。