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スー・チー氏、仏教勢力の壁  保守派「反NLD」鮮明に 宗教的中立性に不満の声
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投稿者 あっしら 日時 2015 年 11 月 07 日 08:32:58: Mo7ApAlflbQ6s
 

スー・チー氏、仏教勢力の壁
保守派「反NLD」鮮明に 宗教的中立性に不満の声

 11月8日の総選挙後の政権参画を目指すミャンマー最大野党、国民民主連盟(NLD)のアウン・サン・スー・チー党首が宗教の壁にぶつかっている。イスラム教徒が増加する地域では、多数派仏教徒がスー・チー氏の“宗教的中立性”に不満の声を上げ、与党と結びついた保守派仏教団体はNLDを攻撃する。歴史的にミャンマー政治に大きな影響を及ぼしてきた仏教勢力とどう対峙するか、重い課題に直面している。


 10月17日、ミャンマー西部ラカイン州タンドゥエ。スー・チー氏の選挙演説の会場となったサッカー場は、NLDのシンボルカラーの赤に染まった。近隣の村々から集まった数千人の支持者から地鳴りのような「ドー・スー(スーおばさん)」コールがわき上がる。「この国を良くしたければNLDに投票して下さい。教育水準を引き上げ雇用も生み出します」。スー・チー氏のひと言ひと言に、聴衆は万雷の拍手で応えた。

 会場の空気が変わったのは、質疑応答が始まってからだ。「ドー・スーが権力を握ればカラー(イスラム教徒)の味方をするのか」「NLDがイスラム系武装組織を支援しているという噂は本当か」。どの質問も切実なトーンを帯びた。

 人口の9割を仏教徒が占めるミャンマーだが、ラカイン州は19世紀までにバングラデシュから移住したロヒンギャ族など、イスラム教徒の比率が3分の1を超える。2011年春の民政移管後にバングラから流入しロヒンギャを自称する不法移民も多い。12年、仏教徒女性がロヒンギャ族に殺害された事件をきっかけに大規模な衝突が起き、200人以上が死亡した。

 その後、政府は治安維持を名目にイスラム教徒を郊外に隔離。多くが難民となって周辺国に逃れた。ラカイン州の仏教徒には不法移民への不満が渦巻く。“未来の為政者”が自分たちと同じ反イスラム感情を共有するのかどうか、聴衆の関心はそこに集中した。

 スー・チー氏の回答は歯切れが悪かった。「私たちは法の支配を尊重します。宗教対立をあおる質問は憲法違反です」。会場の空気はしらけたように見えた。

 基本的人権に至上の価値を置き軍事政権と対決してきたスー・チー氏にとり、信教の自由は重要なはず。宗教間融和を率直に説くべきだったかもしれない。だが翌日以降のラカイン遊説でも、イスラム人口の増加について意見をただされたスー・チー氏は、原則論を繰り返すだけだった。

 スー・チー氏が煮え切らない発言を繰り返す背景には宗教的保守主義の台頭がある。ミャンマー国会では今年8月までに民族・宗教保護法と呼ばれる一連の法律が成立した。仏教徒女性の異教徒男性との結婚や改宗に政府の許可を求める内容で、人口増加地域の出産を制限する関連法も含む。ラカイン州などで顕在化するイスラム教の影響力拡大に歯止めをかける目的は明白だ。国際人権団体は同法を“イスラム差別”だと強く批判。信教の自由の侵害を恐れるNLDも同法の成立に消極的だった。

 反対の声を押し切ったのが保守派仏教団体「民族・宗教保護委員会(マバタ)」の圧力だ。伝統的な仏教共同体の防衛を掲げ、民族・宗教保護法成立を後押しする大規模な署名運動を展開した。指導者の1人、ウィラトゥ師はイスラム排斥運動を唱導し、欧米メディアから「ミャンマーのビンラディン」と呼ばれる。

 9月、最大都市ヤンゴンで民族・宗教保護法の成立を祝う大規模な式典が開かれた。数千人の僧侶が参加した会場では同法を成立させたテイン・セイン政権を支持し、法律制定に消極的だったNLDを非難するパンフレットがまかれた。ウィラトゥ師はフェイスブック上で、国民に大統領支持を訴えるなど政権との連携を強く打ち出している。

 ミャンマーには人口の1%に当たる約50万人の仏僧がいる。宗教的戒律が生活の隅々に浸透し仏教指導者の発言力は大きい。NLDは幹部がウィラトゥ師を訪ね仏教を尊重する考えを伝えるなど懐柔に躍起だ。

 しかし、ウィラトゥ師は海外メディアに、大統領就任のため憲法改正を目指したスー・チー氏を「利己的」と批判するなど反NLD色を鮮明にしつつある。イスラム教に同情的な姿勢を示せばマバタから集中砲火を浴びるのは確実。スー・チー氏が宗教問題への発言に慎重な理由はここにある。

 時の政権にとり仏教への対応は常に難題だった。1990年には民主化運動に参加した僧侶の弾圧に抗議するストライキが発生。発足直後の軍事政権を動揺させた。2007年にはガソリン値上げに対する市民の抗議運動が僧侶の参加で反政府暴動に発展。暴動は僧侶の法衣の色から「サフラン革命」と呼ばれた。

 旧軍事政権は08年に制定した現行憲法で仏教を「国民の大半が信仰する特別な宗教」と位置づけ特権を与える一方、仏教教団を国家管理に置く法律を制定するなど統制も進めたが、民族・宗教保護法の制定は、仏教勢力が依然、政権のコントロールを許さないほど強大であることを示した。

 “スー・チー人気”に支えられ各種世論調査で優位に立つNLDは、11月の総選挙でも議席を伸ばし政権参画する公算が大きい。だが、スー・チー氏が仏教勢力との向き合い方を問われるのはその後だ。ラカイン州で見せたような問題回避はもう許されない。
(ヤンゴン=松井基一)

[日経新聞11月1日朝刊P.13]

 

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