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中国金融不安の構図
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投稿者 あっしら 日時 2015 年 9 月 08 日 04:12:14: Mo7ApAlflbQ6s
 


※日経新聞連載

中国金融不安の構図

(1)動き出す国有企業改革 過剰債務が重荷

 中国で株価が大幅に下落した。経済成長の鈍化が背景で、金融不安が懸念されている。

 リーマン危機後、中国は4兆元の景気対策を実施した。インフラや基幹産業に関わる企業への銀行融資を拡大し、設備投資主導で高成長を維持した。しかし2012年には成長が鈍化し、2桁成長を当てにした設備の稼働率は低下。「企業は債務が膨らむ一方、人件費高騰の影響も加わり純利益率が低下した」(HSBCの張之明氏)。

 中国企業の債務(借り入れと社債)は08年から6年で2.8倍の80兆元(1500兆円)強と、米国の企業債務を上回る。1990年代後半に日本企業が経験したような過剰債務の状況だ。

 中国政府は国有企業改革の方針を示している。民間資本の受け入れ拡大と企業統治改善で収益性を高める狙いだ。米ゴールドマン・サックスは「改革が円滑に進めば企業効率と収益性は改善する」と指摘。そうした期待が金融緩和と相まって、6月初めまでの1年間で株価が2倍以上になった。

 ただ本格的な企業改革には資本増強や資産売却、リストラが不可欠だ。低収益・高負債業種は資本調達が難しく、整理淘汰も必要になる。90年代の日本では過剰債務企業が相次ぎ破綻し、株価が下がったいきさつがある。

 中国人民銀行(中央銀行)は先週、株価対策もあって利下げを実施。企業の利払い負担は軽くなるが、過剰債務がすぐ解消されるわけではない。時間をかけて企業改革に取り組むしかなく、経済には中期的に下押し圧力がかかる公算が大きい。

(経済解説部 太田康夫)

[日経新聞8月31日朝刊P.19]


(2)不良債権が増加 信用膨張のツケ

 企業債務拡大と歩調をあわせ、経済への信用供与を表す社会融資総量は2008年末の37兆元から14年末に127兆元と3.4倍になった。

 その6割強を占める銀行融資の14年末の公表不良債権比率は1.6%。なお健全な水準だが、前年比0.11ポイント上がっている。不良債権ではないが予備軍といえる要注意債権比率は3.98%と、同0.29ポイント上昇。黄信号がついた状況だ。

 中国人民銀行は「28の大手商業銀行は自己資本が厚く、ストレス状況でも健全性を保てる」としている。ただ28行以外の銀行の不良債権比率は2%前後と見られ、健全性への懸念がくすぶる。

 社会融資総量には銀行以外が手掛け高リスク融資が多い「影の銀行」の信用供与も含まれる。そのうち企業間信用のエントラステッド融資は規制強化で新規供与が前年の3割以下に減少。借り換えが難しく、破綻が増える恐れがある。情報開示が不十分で不良化の実態が見えないことも、不信感を増幅している。

 構造的には規制金利による厚い利ざやが、金融機関に高収益をもたらしてきた。ただ中国政府は金利自由化を進めており、今後利ざやが縮小し、不良債権処理の余力が低下する公算が大きい。

 1990年代の日本ではリスク管理の甘いノンバンク破綻から金融システムが揺らいだ。中国でも影の銀行の商品を銀行が販売、保有しており、リスクがシステム全体に波及しかねない。短期間で膨張した信用が、成長鈍化で維持不能になり、中国金融にのしかかろうとしている。

(経済解説部 太田康夫)

[日経新聞9月1日朝刊P.28]


(3)地方調達機関にメス 開発にブレーキも

 2008年のリーマン危機以降、中国では地方政府が地下鉄や道路などインフラ開発を加速。資金調達のため設けた地方融資平台(プラットフォーム)を活用し、借り入れや債券発行による融資平台の債務残高は20兆元を超えるとみられる。

 ただ、融資平台は高金利で資金調達し、相次いで高リスクの開発案件に投融資した。建物ができても利用されないゴーストタウンが続出した。

 政府は14年10月、融資平台による新規調達を大幅に制限し、必要な調達の地方債発行への切り替えに着手した。財政省が発行を監視し、地方開発の規律を厳格にした。

 その結果、融資平台の調達は激減した。新たな地方債には発行枠があるため、「地方で進む開発案件で国内総生産の12%にも相当する大幅な資金不足が起きている」(英調査会社オックスフォード・エコノミクスのアレサンドロ・セース氏)。

 これまでの融資平台の調達資金は返済が必要になり、地方政府が肩代わりする。地方債が発行できない市の融資平台の債務は省などに付け替えることになるが、その過程で債務不履行(デフォルト)が起きる恐れもある。

 地方政府からみるとオフバランスの調達がオンバランスに移されることになり、財政が悪化する。国際通貨基金(IMF)のユアニャン・ソフィア・ザン氏は「中国の財政赤字は表面的な数字よりかなり多い」と分析している。

 中国の地方政府支出は全政府支出の8割を超える。その開発支出にブレーキがかかる公算が大きく、中国の経済成長は一段の鈍化が懸念される。

(経済解説部 太田康夫)

[日経新聞9月2日朝刊P.28]


(4)住宅バブル崩壊の懸念 市場調整長期化も

 中国では2008年のリーマン危機以降、住宅価格がほぼ2倍になった。都市化の進展と所得の向上を背景に、住宅需要が高まったためだ。

 バブルを警戒した中国政府は10年から住宅購入規制を導入。金融引き締めもあり需要が減速し、供給過剰に陥った。14年の販売面積は前年比で減少。売れ残った分譲住宅の床面積合計は650平方キロメートルと、東京23区に匹敵する規模となり、住宅価格は全土で下落した。

 住宅建設を手掛けてきた開発業者には借金返済がのしかかり、一部は在庫を投げ売りしている。今年4月には大手不動産の佳兆業集団がドル建て債で債務不履行(デフォルト)を起こした。

 地方政府は土地使用権を高く売り、地方の住宅価格を押し上げてきた面もある。しかし調達機関を通じた資金調達が難しくなるとともに、汚職取り締まり強化で、安易な使用権売却ができなくなっている。

 構造的には中国は都市化を進める計画だが、そのペースはこれまでより鈍化する。また一人っ子政策の影響で高齢化が進み、住宅需要の伸びも縮小する公算が大きい。

 国際通貨基金(IMF)は8月、「中国の住宅の過剰供給は基本シナリオでは20年に解消する」と指摘。住宅市場の調整が長期化するリスクを示唆した。

 英HSBCのエコノミスト、朱日平氏は「中国は1990年代初めの(バブル崩壊後の)日本のようなリスクを抱えている。遅くて、小規模な政策対応で失敗した日本の教訓を生かして、十分な対応をとるべきだ」と指摘している。

(経済解説部 太田康夫)

[日経新聞9月3日朝刊P.29]


(5)巨額の資金が流出 資本自由化遅れも

 中国は成長期待で世界中から資金を引き寄せてきたが、昨年半ばから資金流出超過になった。先進国銀行による中国向け信用供与残高(融資と債券保有)は、今年3月末までの半年間で1070億ドル(約13兆円)減った。

 資金流出の要因で大きいのは企業の動きだ。昨年半ばまで外貨借り入れを増やしてきた企業が、成長鈍化に伴う人民元安観測から外貨債務を圧縮。欧州金融大手UBSのタオ・ワン氏は「資金流出は企業の資産負債管理の結果で、警戒サインではない」と分析する。

 とはいえ資金流出が続けば元に下落圧力がかかりかねない。今年に入り中国は元レート維持のためドル売りを実施。その結果、外貨準備は減少に転じている。外貨準備減少は国内では金融引き締めに作用するため、成長が鈍化する中で大幅減少は回避する必要がある。8月には元の基準値を引き下げ、元の維持ではなく下落に軸足を移した。

 ただ元の下げ幅が大きくなれば、国外での資産価値の保全を狙った悪い資本流出が加速する恐れがある。中国人民銀行(中央銀行)が1日に銀行に通達した為替予約のコストの引き上げは、資本流出や投機的な元売りに歯止めをかける目的があるとみられている。

 中国は市場の仕組みを利用して高い成長を続けてきた。成長が鈍化すれば市場の見方は厳しくなり、一段の成長を阻害しかねない。ハードランディングを避け安定成長に移行できるか、資本移動自由化のペース見直しなど難しいかじ取りを迫られている。

(経済解説部 太田康夫)

=この項おわり

[日経新聞9月4日朝刊P.27]

 

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コメント
 
1. 2015年9月09日 10:29:50 : jXbiWWJBCA
中国経済に巣食う債務というシロアリ
気づいた時にはもう手遅れ、蝕まれていく経済成長の基盤
2015.9.9(水) ジーン・フリーダ
2009年2月に火災が起きた直後のCCTV新社屋(右)と全焼した中央電視台電視文化センター(通称シロアリの巣)(Wikipediaより)
 中国が直面する経済的な試練を表すのに、中国国営中央テレビ(CCTV)の新社屋として設計された未来的な名建築物以上にぴったりの象徴はない。2009年にこの象徴的なビルが完成する数カ月前、CCTV幹部らは許可を受けていない花火の打ち上げを行い、火災が発生。北京の住民たちが「シロアリの巣」というあだ名をつけた、複雑なくさび形高層ビルに付随する比較的小さい建物がほび全焼した。

 火災のために、CCTV本社の完成は2012年にずれ込むことになった。シロアリの巣はまだ未完成で、入居者もいない。

 ビルの構造的完全性が火災で破壊されてしまい、隣接する大きいビルを損なう恐れから、解体することもできない。構造物の良い部分は、悪分の負担を払いのけることができないのだ。

二重の軌道を描く中国経済

 この2つのビルは、二重の軌道を描く中国経済を彷彿させる。サービスと消費に基づく新しい軌道が、鉄鋼や鉱業など、非効率で余剰生産能力に苦しむ産業で構成される、古くて遅い軌道に足を引っ張られているのだ。

 2つの軌道をまたぐのが、中小規模の都市での膨大な過剰設備と大都市での堅調な需要を特徴とする中国の不動産市場だ。

 問題を悪化させているのが、高い成長目標――現時点で7%――に固執する中国指導部の姿勢と、その結果、必要不可欠な生産を生み出すために融資に依存する状況だ。信用制度は暗黙の政府保証を軸に設計されているため、融資の大半は中国経済のうち、比較的非効率で多額の債務を抱えたセクターに不適切に配分される。

 その結果、中国の成長の奇跡の基盤が、減退する兆しがほとんど見えない過剰債務によって蝕まれている。

 政府が経済をコントロールできなくなったことが次第に明白になっている。中国株式市場の急騰とその後の暴落で、投資家はひどく動転した。だが、本当の警鐘になったのは、地方政府の借り入れと不適切な支出を整理する遅まきの努力だった。

 地方政府の債務の規模を推計する審計署(会計検査院に相当)の最初の試みにより、2010年末に国内総生産(GDP)の26%に相当する債務残高を明らかになった。

 2013年半ばの2度目の試みでは、債務残高がさらに増加し、GDP比32%になったことが分かった。

 そして、中国社会科学院による最新の調査では、債務が急増し、2014年末時点でGDP比47.5%に達している。

 習近平国家主席は2013年11月に、中国経済における市場の役割を強化すること目指す改革政策を打ち出した。この改革は持続不能な債務増加につながっているように見える不適切な資本配分の問題を解決すると期待された。

テストケースとなった地方政府の債務

 地方政府の債務は大きなテストケースになった。2015年前半、中央政府は地方政府が抱える、期限が短く、高金利の銀行融資を長期債に転換する計画を発表した。中央政府は、債務の満期を延長することで地方政府の財政上の制約を和らげ、これにより地方政府が財政刺激策を追求できるようになることを期待した。

 中国の市中銀行が新たな債券の低利回りを受け入れることに二の足を踏むと、経済における市場の役割を強化するという目標は捨て去られた。政府は銀行に、債務交換の実行を強いた。驚くまでもなく、銀行は突如、リスクを嫌うようになった。地方政府は、たとえ流動性ポジションが改善しても、銀行が新規融資の実施を渋ることを知る羽目になった。

 一方、不動産市場の落ち込みで、地方政府は土地の売却という主たる歳入源を失った。こうして、近代中国の政策立案において特にショッキングな出来事が起きた。刺激策を求める政府の要求が、単に無視されたのだ。

 中国は必死に避けようとしてきた罠にはまろうとしているように見える。中国が短期的な成長目標を優先して改革を無視するに従い、中国の債務問題は悪化することが確実視される。引き続き非効率な企業を破綻から守ることに資源が回され、経済の足かせは大きくなっていく。銀行は不良債権を隠し、損失処理を避けようとして、一段とリスクを嫌うようになるだろう。

 政府は資本移動の規制を撤廃することで流動性を高めようとした。そうすることは、経済に対する政府の支配力を一段と弱めるだけでなく、近隣諸国や他の新興国を飲み込みかねない全面的な金融危機のリスクも生み出す。

 差し当たっては、ドル高を受けて人民元が地域の他通貨に対して急上昇し、中国の経済問題が増大したことから、当局は昔の本能を頼りにし、通貨切り下げに踏み切った。

 これでも不十分だ。中国の不動産市場は落ち込んでいる。株式市場は信用を失った。経済は次第に停滞の度合いが強まっている。その結果、中国の莫大な国内貯蓄が次第に海外に向かおうとしている。中国の対外債務の規模と国外へ移動する可能性のあるマネーの量と比較すると、中国が持つ3兆7000億ドルの外貨準備さえも取るに足りないように見え始める。

向こう1〜2年内に成長の危機

 シロアリと同じように、債務には経済の基盤をあっという間に台無しにする独特な力がある。侵入が認識される頃には、多くの場合、もう手遅れだ。中国が被害を覆すのであれば、債務の圧縮に集中し、資本配分のメカニズムを修復し、資本規制の撤廃を延期する必要がある。

 この国の経済は向こう12〜24カ月以内に成長の危機に見舞われる可能性が高い。危機の深刻度は、政府が難しい調整をいま行うか、あるいは――1990年代の日本のように――何もせずにシロアリが消えることを願うだけかによって決まるだろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44746


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