軽井沢とその近辺はどこも急激に地価が高騰しているので手が届かない。見に行ったのは、我が家から南西のほうへ一時間ほどクルマを走らせたところだった。「まあ、少し、山のほうだがね」案内の人はそういったが、少しどころかだいぶ山の奥に入ったところだった。
いくつかの町を過ぎ、集落を抜け、そのうちに人家はなくなり、細い川のわきを淋しく伸びている道路からさらに細い山道に折れて斜面を登っていくと、そこが売りに出されている土地だった。景色は、とてもいい。なだらかな山の斜面に雑木林。前が小川。はるかかなたに連山。敷地の中には清水が湧いている。「いいところだなあ」いっぺんで気に入ってしまった。

「いくら?」「坪三千円で、三千坪ちょっとあるね。一千万ちゅうとこだに」「三千坪っていうと、この……どっからどこまで?」「この山がホー、ひと山だよ」豪気な話ではないか。土地がひと山いくらだって。私たちは周囲をドライブして自然の美しさを堪能したあと、その人の家にお邪魔して、手打ちのソバをごちそうになりながら話をした。いいところだが、問題は私たちが住めるかどうかである。「南斜面があるから、畑にはよさそうだね」「いまより一時間遠くなるだけだから、東京へ出るのにそれほど不便でもないわね」「いやあ、玉村さん、ああいう山ん中に住むなら、東京なんか出ないほうがいいですよ。山菜もあるしキノコも出る。裏山のほうには鹿も住んでる」「鹿ねえ……」「鹿刺しはウマイよ。鉄砲やるかね」「熊はいないだろうね」「熊あいねえがね。自給自足ができるから、東京なんか行かねえでいい」なるほど。たしかにそうだ。

「実は、あの山の続きの一帯も売りに出てるだよ。全部で六町歩。一万八千坪だね。下と合わせて二万坪と少しで、五、六千万だよ」ますます話が大きくなってきた。それじゃあ、鹿狩りどころか、羊を飼って羊飼いして歩きまわることだってできそうだ。自分の土地のあちこちに、野宿用の小屋を作っておこうか。「領主さまみたいに、馬に乗って自分の土地を見まわるのはどうかしら」二万坪などと聞くと、どうも話が現実離れしてくるのはいたしかたない。「だけど、電気や水道を引くのが大変だなあ」「水は井戸でいいじゃない」「あ、それね。小川が流れてるからね。そこで発電すればいいだに」「発電！？」「背の高さくらいの落差があれば、家族で使う程度の電気はまかなえるからね」そういうものかなあ。「あとは、マムシに気をつけることくらいかね」「マムシ?」「水辺にはウヨウヨいるだよ。でもあれはタバコが嫌いだからね。ニコチンの乳剤を振りまきながら歩けば平気ですよ」「……」結局その日は売買についてはそれ以上深い話はせず、ソバと酒で満腹して我が家に戻った。

「さて、どうしたものかね」「……そうねえ」馬に乗って鹿を追い、水力発電でテレビを見、畑にできたもので自足する。それもまた魅力にあふれた文化的な生活だなあと思うけれども、いちいち自分の家の庭に出るのにニコチンの乳剤をまかなければならない暮らしも大変そうだ。山里の暮らしについて想像してみると、軽井沢なんて本当に都会だなあ、と思えてくる。馬に乗って三年もしたら、もう東京になんか出られまい。

伊方で海自の艦船まで出して避難訓練がされたとかで、有事に戦争だみたいな状況考えなくてはいけない発電方式とかオカシ杉で、それより先ず訓練よりシステムのセキュリティちゃんと自前でやってんだろなみたいな声も当然あるだろーし、ここの知事が「総理が有事の際は責任とってくれるって言ってくれた」みたいな子供みたいな発言には皆も批判も出来ぬほどアッケにとられたんじゃあるまいか。
　
エネルギー、医療、農業、それらと関連した環境全般で人類の未来に希望が持てる展開が、兆候が見られればと思わずにはいられず、また今がその前段階という確信も強まる一方の昨今ですが万一遅くなっても自分の場合は肉体界離脱による高次元移転のヒサクもあり多分大丈夫です。ただ自然推移に持っていくのが肝要です＃