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若杉冽 著「東京ブラックアウト」を読みました。
http://www.asyura2.com/15/genpatu43/msg/758.html
投稿者 taked4700 日時 2015 年 9 月 02 日 17:29:23: 9XFNe/BiX575U
 

http://blogs.yahoo.co.jp/taked4700/13265555.html
若杉冽 著「東京ブラックアウト」を読みました。

 数日前に、前々から読んでみたいと思っていた若杉冽 著「東京ブラックアウト」を読みました。その感想文です。

 まず、「原発ホワイトアウト」とは違う方が書いたのではという感覚がします。「おいらの党」という表現とか、66ページから76ページにかけての筑紫電力の地元自治体職員の描き方などが、前作の人物設定の仕方とは異なる感じがするのです。ただ、どちらにしろ、純粋に日本で育った方ということではなく、日本滞在が長い日系の方が書いたのではと思います。26ページの「東京っ子」と言う表現は普通なら「江戸っ子」です。この表現のすぐ後に出てくる「公務員になるなら」も「官僚になるなら」という表現の方が自然です。32ページの「物はいわず」も普通は「ものは言わず」です。133ページの「が、実は法律には明記されていない。」は、字下げがされていて別段落ですが、普通の日本人の物書きであればこういった段落の起き方は普通しないと思います。321ページの「しかし、陛下のお声は平静だ。」は、普通なら2行前の「不機嫌であられた。」の直後に置かれるはずです。

 多分、今回の著者は「原発ホワイトアウト」の著者の方よりも年配の方でしょう。72ページの「住民は都会へ出稼ぎに出なければならない。昭和の時代の暮らしに逆戻りだ」という記述は、今の20代・30代の方には思い浮かばないもののはずです。136ページの「あさま山荘事件や東大紛争で威嚇のために用いられた四〇年前の、、、」という記述も、少なくともあの当時20歳以上であった方が書いたはずだと思わせます。196ページの「ちょうどヒロシマの原爆投下のあとに、被災者が郊外へ向け、さまよい歩いていったように」という比喩は若い人には出来にくいものだと思います。

 以下、その他に気が付いたことです。

1.相変わらず地震と原発の関係については書かれていません。M6以上の直下型の地震が起こることこそが原発にとって大きな脅威であるはずですが、一切触れらていません。

2.前作に続いて主人公であるはずの「日村直史」の人物描写があまりにおざなりです。別の言い方で言うと、人間に対しての関心が全体に感じられません。人間を単なる操作の対象として捉えているような印象があります。267ページの「こいつは使えるかも知れない。」とか、269ページの「守下の術中にはまった」と言うような記述はそういったことを典型的に表しているように思えます。290ページの「法治国家以前の、蛮族が支配する地域」とか「人間の本性は変わらない。剥き出しの欲望」などの表現は、人種偏見を持っているのかとさえ思わせるものです。また、275ページの「いつの世も」というセリフは、1997年に起こったサカキバラセイト事件を思い起こさせるものでした。まあ、サカキバラセイト事件に関係したとは思いたくありませんが。

3.天皇に関する表現では確実に敬語が使われています。また自衛隊とか警察に関係した描写では比較的好意的なものがあります。特に、136ページの「自衛隊が陸上自衛隊の大型ヘリCH47二機を派遣し、空からの海水投入に華々しく成功」という部分は、普通にあの場面をテレビ中継で見ていた日本人なら誰でも違和感を感じるはずです。政治家、官僚、マスコミ関係者、電力会社関係者に対しての描写は相当に上から目線ですから、この本の筆者は皇室や警察・自衛隊に比較的近い存在で、こういった人たちと日常的に接している方、または警察や自衛隊に対して指示をする立場にある方なのではと思いました。ある意味、政治家、官僚や電力関係者に対して、イメージ悪化をねらっているとも思えます。

4.「原発ホワイトアウト」と同様、今回の本も被曝とか原発の仕組みについて事実とは異なることが書かれています。当初、自分は単に著者の方がこういったことに詳しくないためかと思ったのですが、どうも、誤誘導を仕掛けているようですね。故意に読者に間違った印象を与えようとしているのではと思います。50ページの「放射性プルーム、別名『黒い雲』が襲って来れば、ヨウ素剤を服用しないと健康を害することになる」は典型的な誤誘導、洗脳のための記述です。そもそも、「黒い雲」という状態であれば、非常に高い放射線量であるはずで、ほぼ即死のはずです。311の福島第一原発事故でも、「黒い雲」のようなものが市街地に来たとは思えません。更に、ヨウ素剤を服用しても、防げるのは甲状腺へのヨウ素の取り込みだけであり、肺への放射性微粒子の取り込みは防止できませんし、各種の被曝も防ぐことはできません。更に、ヨウ素剤服用の効果は長続きせず、甲状腺への放射性ヨウ素や放射性セシウムの蓄積は、環境次第でどんどんと進みます。52ページの「フクシマの沖合一六〇キロ先でデッキに出ていた米空母の乗組員は、一カ月分の上限とされる線量を、一時間で浴びたんですよ。」は事実とは異なるはずです。そもそも、原子力空母であるわけで、放射能漏れについてはかなりきちんとした対策がされていて、甲板上での放射線量も常にモニターされているはずです。更に、もしも「フクシマの沖合一六〇キロ先で」ホットプルームによっての被曝であれば、米軍自体が被曝について認めるでしょうし、東電や日本政府を相手にした裁判での主張などの情報公開が積極的にされていくはずです。同様に、86ページの「少なくとも過失相殺で請求額は一〇分の一にすべきでしょ。(途中略)『最後は金目でしょ。』っていう環境大臣のご発言、まったくもっておっしゃる通りなんです。(途中略)お前らが希望したから原発建ててやったっつーの!」も明らかに事実誤認です。日本政府と原発立地自治体の関係を述べていますが、この論理はアメリカと日本の関係でもあり、アメリカの原発関係者の言い訳そのものです。そもそも、地震頻発地域であるアメリカ西海岸には原発はあまり立地していません。また、スリーマイル島原発事故が起こる前の1973年のオイルショック時点から、アメリカ国内での原発の新設は止まっていたのです。アメリカ自体は地震による原発事故の可能性を明らかに自覚していたわけですし、原発が経済的に見合わないと言うこともオイルショックのころからはっきりと分かっていたのです。121ページにある「経産省のDNAの悲願ともいうべき発送電分離を実現するためにも、とにもかくにも一応は、原発再稼働をさせておかなくてはならぬ。」も、とんでもない誤誘導です。まず、そもそも、経産省は発送電分離に向けて本気になって動いてきていたようには思えません。次に、ここがもっとも大切ですが、原発再稼働と発送電分離は別物であり、原発再稼働をすることによって発送電分離が促進されることはありません。それどころか、却って原発再稼動で発送電分離は難しくなるはずです。発送電分離は、新たな発電事業者の参入を促すためのものですが、原発が再稼働されれば、新規発電事業者は必要なくなるのです。発送電分離は、この本で描かれる電力モンスターシステムの廃止のためにこそ必要であり、原発再稼働は電力モンスターシステム延命のための施策です。200ページの「世界的には常識となっているコアキャッチャー」も事実とは異なっています。コアキャッチャーを備えている原子炉は、世界で現状では5基もないはずです。

5.新崎原発が事故に至った結果、首都圏に放射性プルームが来るという設定自体が現実的ではありません。1月の風向きであっても首都圏に北北西の風が吹くことはまれであるはずです。首都圏壊滅は、浜岡原発の事故による可能性が最も高いのであり、このことを全く無視している物語の展開には、一種の誤誘導が仕掛けられているように思います。また、首都圏だけでなく、日本全国の壊滅は西日本の原発再稼働によっても起こりえます。もし、日本の官僚の方が書くのであれば、こちらの危険性を強調するでしょう。東電の柏崎刈羽原発の再稼働を危険視させることによって、東電をより追いつめて裏取引に引き込もうという意図があるのかもしれません。

6.もし、次の原発事故が起こってしまえば、そもそも電力モンスターシステム自体が存続不可能です。円安が一気に進み、日本は数か月で財政破たん状態になってしまうはずです。新崎原発事故後に、関東地方で選挙が行われるとか春の園遊会が赤坂御苑で行われるなども、あまりに事故の影響を甘く見ています。

7.216ページの「汚れた土地、まあ関東平野のかなりの部分にまで及ぶかもしれない・・・その使い道として、海外から使用済み核燃料の中間貯蔵施設を誘致」とか、333ページの「新崎原発の事故から10年後、(途中略)コスト削減のために建屋は設けられず、野ざらしで、コンクリートキャスクがいくつもいくつも並んでいるだけ」という記述も誤誘導というか、現実を甘く見ているように思います。そもそも、208ページに「新崎原発の七基とその使用済み核燃料プールが制御できなくなったら、(途中略)少なくとも東日本が壊滅する。」と書いているのですから、10年後であっても関東地方が人が作業できるような環境にあるとはとても思えません。放射能汚染についてあまりにも甘く考えているなと思える箇所が他にもあります。257ページの「事故から一週間後、自衛隊が中心となって、(途中略)ようやく新崎原発からの放射性物質の放出が落ち着いた。」としてありますが、再稼動から多分数週間程度の事故であっても、一週間で現場作業ができるようになっているとは思えません。炉心がほぼ露出しているはずであり、そこからの中性子線の飛距離は空気中で数キロにはなります。旧ソ連の軍隊のような組織がない限り、本格的な原発事故で、格納容器が爆発し、それに伴い、圧力容器やプールが大破したような状態であれば、数か月どころか数年間以上まったく人は近づけないのです。まあ、この本で描かれている新崎原発の事故が作り物であれば別ですが。

2015年9月2日17時15分 武田信弘  

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コメント
 
1. 2015年9月03日 19:52:36 : 8BCFjG8Zic
ニコニコ動画 記者会見の中継で、脱原発ソングのみを 「ミュート」 する措置
 
http://echo-news.red/Studies/nico-nico-videos-obscene-censorship-suspision-makes-black-laughter
 
ニコニコ動画は、酷い詐欺サイトですな。
 

2. taked4700 2015年9月04日 09:48:17 : 9XFNe/BiX575U : Gzxmhj6KbI
http://blogs.yahoo.co.jp/taked4700/12366744.html
「原発ホワイトアウト」の読書感想(その1)

3. taked4700 2015年9月04日 16:58:38 : 9XFNe/BiX575U : I51RUPx4Zc
多分、一番の誤誘導は、電力モンスターシステムがいつまでも存続しえるということでしょうね。

電力モンスターシステムこそが価値があるものであり、これさえ維持できれば自分たちは勝ち残れるというイメージ作りということです。原発ホワイトアウトも同じですから、どうも、若杉冽と言う方の一番の使命は、こういった思い込みを日本の関係者にさせておくと言うことなのでしょう。

逆から言うと、こういったマインドコントロールが必要になるほど、現状では、電力モンスターシステムは日本の社会にとっては存続が無理になっているということです。

そして、同時に、電力モンスターシステムにかじりついている人々が多くいて、彼らを誤誘導することで日本社会を混乱させると言うことが狙われているということですね。


4. 2015年9月06日 11:02:47 : jmQgcLPEPo
>26ページの「東京っ子」と言う表現は普通なら「江戸っ子」です。

そんなことはない。
江戸っ子の江戸というと下町を指す場合が多いのではないか。

東京一般23区内と広げると東京っ子のほうがふさわしい。


5. 2015年9月06日 16:59:54 : qKZWkadIbs
江戸っ子って言うと、東、を「シガシ」と発音するイメージ。
するってぇと何かい、原発とやらが安全だってのかい?馬鹿お言いでないよ、おまぃさん。

6. taked4700 2015年9月07日 08:04:43 : 9XFNe/BiX575U : W2sU5yT9oA
>>04

書き忘れていたのですが、この第2作は、第1作に比べてずっと日本語としてはこなれた表現が多くあったと思います。この意味で、第1作の書き手の方に比べて、ずっと日本語に慣れたというか、日本語能力の高い方が書かれたのだと思います。

「東京っ子」という表現については、単に使用頻度が「江戸っ子」よりも少ないと思えたために、記事に書いたように判断をさせて頂きました。


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