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貧困が遺伝する。すでに日本は危険な時代に入ってしまった(ダークネスDUA)
http://www.asyura2.com/15/hasan100/msg/210.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 8 月 29 日 21:04:15: igsppGRN/E9PQ
 

貧困が遺伝する。すでに日本は危険な時代に入ってしまった
http://www.bllackz.com/?m=c&c=20150829T1238210900
2015-08-29 ダークネスDUA


2015年8月28日、安倍首相は子供の貧困を防ぐための政策を年内にまとめる方針を表明している。

日本は結婚そのものが減っているのだが、せっかく結婚しても3組に1組は離婚する国になっている。そして、シングルマザーが経済苦境に追い込まれ、「子供の貧困」が深刻化してしまっている。

子供の6人に1人は貧困であると言われ、給食費が払えない子供も今や珍しい存在ではなくなった。また、ひとり親が増えたことによって放置児童も増え、夜中に外をうろついて事件に巻き込まれる子供も出てきている。

虐待も増え、児童虐待相談もうなぎ登りに増えている。

貧困から派生する問題が日本で深刻化しており、そのしわ寄せが子供たちに及び、もはや政府も座視することができない状況にまで来ているのだ。

子供の貧困を放置すると将来の日本に大きな問題を起こす理由のひとつとして、「貧困の連鎖」の問題がある。貧困に生まれ育った子供は貧困から抜け出せず、あたかも「貧困が遺伝する」ような様相を見せるのだ。


■貧困児童は、一生貧困から抜け出せない可能性

普通、遺伝と言えば容姿が遺伝するとか、性格が遺伝するとか、そういった肉体的・精神的なものを指すことが多い。

だから、「貧困が遺伝する」という言い方が広がっていることに戸惑いを覚える人も多いかも知れない。貧困とは社会現象だから、遺伝とは結びつかない。それなのに、遺伝と結びつけられていることに困惑を覚える。

「貧困が遺伝する」という言葉には、実は2つの意味が含まれている。

(1)貧困者の子供は自動的に貧困生活になる。
(2)貧困者の子供は一生貧困のままで終わる。

ここで重要なのは、(2)の部分だ。

貧しい家庭に生まれた子供が貧しい生活をするのは当たり前の現象だが、問題は彼らが一生その世界から抜け出せない可能性が高いことである。

なぜ、貧困の中で生まれた子供たちは、そこから抜け出す可能性が低いのか。

ここで重要になってくるのが「教育」である。複雑化し、専門的になった現代社会では、そこで働くためには何にしても一定レベルの教育が必要となる。

教育レベルは高ければ高いほど良い。なぜなら、現代社会が高度な知識・技術・技能を求めているからだ。

また、最初に教育を持っているのかどうかを知るために出身大学や所持資格を見るので、やはりそこでも「教育の履歴」が重要になって来る。

そういった教育を受けるためには本人の資質も重要なのだが、その資質を伸ばすための「教育費」も重要になって来る。

その「教育費」が問題なのだ。


■学歴を向上させるような雰囲気になっていない

金持ちの子供が比較的「高学歴になりやすい」のは、教育費に何の問題もなく、ありとあらゆる教育サポートが為されるからだ。資質がなくても資質を伸ばす環境が用意される。

財力があれば、場合によっては学歴も資格も「カネで買える」ようになり、中身はともかく表面的には学歴や資格で「飾る」ことすらも可能になっていく。

しかし、貧困層は日々の生活をやりくりすることに精一杯で、子供の教育に投資することができない。また、貧困層の環境も、学歴を向上させるような雰囲気になっていないことも多い。

国外では貧困層の子供はみんな働きに出ており、教育にカネや時間をかけるのは無駄だという意識もある。また、子供たちも最初から上を見るのをあきらめる。

だから、貧困層では子供にいくら資質があっても、その資質は眠ったままになってしまうことが多い。

もちろん、すべての子供がそうなるわけではない。貧困家庭に生まれながらも凄まじい知性と能力で成り上がっていく希有な子供たちもいる。そういう子供たちを、私たちは痛切に求めている。

しかし、それは小さな例外でしかなく、大部分は貧困家庭で生まれると、貧困に飲まれて一生が終わってしまう。教育どころではなく、その日を生きるのに精一杯なのである。

教育も学歴なく、資質も伸ばされないで放置され、その日暮らしのための仕事をするしかないのであれば、いつまで経っても這い上がることができない。

つまり、貧困者の子供は自動的に貧困生活になる。そして、貧困者の子供は一生貧困のままで終わる。これを指して、「貧困は遺伝する」と言われているのである。


■貧困層の中で最もダメージが大きいのが母子家庭

日本では識字率がほぼ100%に近い。非常に教育の行き届いた社会だが、逆に日本では字が読めるくらいでは何の自慢にもならず、もっと高度な教育が必要になる。

実は子供の成績と親の年収は比例するというのは、すでに文部科学省の全国学力調査の結果から明らかにされている。

一番分かりやすいのは、保護者の収入が多ければ多いほど、子供の大学進学率が高くなる現象だろう。

単純に、大学に行くにもカネがかかり、貧困層の家庭はそれを用意できない。それが、長い目で見ると子供たちの収入格差につながっていく。

貧困層の中で最もダメージが大きいのは母子家庭だ。基本的に母子家庭が追い詰められるのは、3つの要因がある。

(1)夫からのサポートがなくなる。
(2)子供がいるので働けないか、働きづらい。
(3)それなのに子供のために出費がかさむ。

母親が苦しんでいる姿を見て育ち、子供たちも無邪気に向学心だけを伸ばす気にはなれず、早めの独立を考えるし、そういったプレッシャーを受けるだろう。

早めに教育から抜け出すというのは、そこで学歴が打ち切られるということでもある。その時点で「貧困が遺伝する」危険性が高まってしまう。

ユダヤ人は貧困から脱するには何が何でも教育が必要だと流浪の人生の中で痛感していたので、一家全員が飢えても子供にだけは教育を施し続けた。

それほど教育の重要性を認識していたことになる。


※全文転載禁止ですので続きはこちらで
http://www.bllackz.com/?m=c&c=20150829T1238210900


 

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コメント
 
1. 2015年8月30日 11:18:01 : 62QaAmZ1Pg
《 早めに教育から抜け出すというのは、そこで学歴が打ち切られるということでもある。その時点で「貧困が遺伝する」危険性が高まってしまう。》

 一見すると真っ当そうな意見ですが 完璧に間違いです

       悪意あるミスリードです

筆者は教育産業の回し者でしょうか それとも単なる愚者なのでしょうか

 「高学歴」=「高収入」というのはいまや

    事実無根以上に詐欺ペテンになりつつあります

 逆に

法科大学院で学び司法試験に失敗した数万人が単なる「法務博士」として

    三〇歳を過ぎた穀潰しになっている現実

     一千万円単位の負債を持ったまさに「末は博士か廃人か」集団

    に典型的な 資格試験絶対信仰と高学歴盲信の時代は

         幸か不幸か終わっています

     日本はもはや そんな牧歌的な社会ではありません

あるいは

  勉強が好きでもなく 才覚もない人間を無意味に学校へ行かせる風潮

    明治以来の富国強兵と立身出世思想を未だに信じる傾向

  現在では教育産業と教育官僚の奸計の餌食でしかありません

       《 早めの独立を考える 》

     この考え方のどこが悪いのでしょう

  学歴だ偏差値だと お座敷犬のようなことを得々と話す奴隷たち

    「東大を作った人間は大学を出ていない」

  産業革命と黒船襲来とマッカーサーの厚木到着が同時に来たほどの変革期

         学歴信仰こそ弊履です 

  癲癇じゃあるまいし そんな物をアタマに乗っけてどうする/笑。

    


2. 2015年8月30日 16:03:00 : IJjjrLkBu1
  確かに、マス的教育機関というものの転換期にあるのかも知れない。昔、日本の皇室や西洋貴族階級では家庭教師が当たり前で有った。今で言えば個人の選任塾教師、といったところか。
   ここまでネットが発展している時代、本屋で目的の本を探さなくてもネットで幾らでも情報を得ることが出来る。
   ということは、退屈な教授の授業を受け、その間スマホでチャットしたり、友人と喋ったりで時間を過ごす大学生活であれば、やる気が有れば専門知識をネットで安価で学ぶことが出来る時代だ、ということであろう。
   しかも、大学二年にもなれば何故か就活に入るようであり、本当に学べるのは一体4年間の内何年か、ということだ。学び足りずに院にまで行く学生も居るが、親が支払う授業料は倍増であろう。
   ましてや、就活も新規採用が相変わらず多く、専門性を持った者を中途採用する企業も少ないようである。しかも新規でも中途でも、単に大卒というだけでは採用は困難であろう。
   とすれば、大学での専門教育を浅く広く得る必要は無く、自分で必要な手段を選んで専門知識を重点的に学んでも良い、ということになる。
   猫も杓子も大学へ、ということで、今や高卒並みの価値しかないとすると、一から考え直さなくてはならないだろう。
   脳の活性化は学ぶことで向上するが、必ずしも大学教育による必要は無い。
   それより、大学へ行かねばならない、という強迫観念が経済徴兵制などに結びつき、気づいたらどこか分からぬ戦場に居た、ということにもなり兼ねない。

3. 2015年8月30日 19:33:47 : bYUTlGq7cE
↑2さま <とすれば、大学での専門教育を浅く広く得る必要は無く、自分で必要な手段を選んで専門知識を重点的に学んでも良い、ということになる。>>

正論のようですが、「実力を証明する手段があれば」の話です。さらに「年齢」も関係します。
現実には実力を評価する手段がないので、採用側(企業)としては「将来性」を判断して、「大卒」などの学歴を条件にするしかないでしょう。
なお、外資系企業は学歴重視傾向が一段と強いです。


4. 2015年8月30日 21:49:49 : OmzFHi7DQM
>  ここまでネットが発展している時代、本屋で目的の本を探さなくてもネットで幾ら>でも情報を得ることが出来る。
>   ということは、退屈な教授の授業を受け、その間スマホでチャットしたり、友人>と喋ったりで時間を過ごす大学生活であれば、やる気が有れば専門知識をネットで安価>で学ぶことが出来る時代だ、ということであろう。

典型的なネット信者の妄言だな。
ではネット情報だけで専門的な勉強をできるか試してみてごらん。

断片的な情報はたくさんあるが系統だった知識はネットで得られるのか?
ネット情報だけで量子力学は勉強できるのか? ○○工学ではどうかな?
理工学分野では実験もあるが、独学では実験はどうするの?


5. 2015年8月30日 22:45:56 : ZgjFDcgSd6
その通り。
だから、政府は「もう理系しか要らん」と文系潰しを始めている。
実際、俺も文学部卒だが、あれこそ独学で十分習得可能な学問だよ。

6. 2015年8月30日 23:03:02 : StmOQlebrw
貧乏なのは教育のせいだ。
黒田緩和とは関係ないぞ。
教育格差で日本分断を図れ!!


7. 2015年8月31日 00:32:16 : VLeSe71maI

母子家庭シングルマザーを弱者扱いにするな

そいつらは既に犯罪予備軍か税金泥棒の寄生虫と同じ

そもそもそいつらのガキの実の父親はどこへ行ったんだ?

という話♪

[32削除理由]:削除人:関係が薄い長文

8. 2015年8月31日 12:14:45 : OO6Zlan35k

「2000万人の貧困」

「シングルマザー専用」のシェアハウスに住んでいます

子育てを負うのは両親だけか

2015年8月31日(月)中川 雅之

 日経ビジネスでは2015年3月23日号で特集「2000万人の貧困」を掲載しました。その後、日経ビジネスオンラインでは本誌特集に連動する形で連載記事を掲載(連載「2000万人の貧困」)。このたび、本誌とオンラインの記事に大幅な加筆をし、再構成した書籍『ニッポンの貧困 必要なのは「慈善」より「投資」』を発売しました。
 日本社会に広く巣食う貧困の現状は、その対策も含めて日々変化しています。特集や連載では紹介できなかった視点やエピソードを、書籍の発売に合わせて掲載します。今回は、都内にあるシングルマザー専用のシェアハウスに入居した母親の事例を紹介します。彼女は生活には困窮しておらず、平均よりもむしろ高い収入を得て、安定した暮らしを営んでいます。ただ、その立場を獲得できた理由を考える時、女性と家族のあり方を巡る課題が浮き彫りになります。

シングルマザー専用のシェアハウスが映し出すものは何か(写真はイメージ)
 私が取材で都内のあるシェアハウスを訪れたのは、2015年の2月のことだった。

 そのシェアハウスを取材しようと思ったのは、全国的にも珍しく、シングルマザーとその子供だけを対象にしていたからだ。平日の取材で、先方から指定された時刻は午後7時半。入居する母親が仕事を終えてからの、遅めの取材だった。

はきはきした子どもたち

 時間通りに呼び鈴を鳴らすと、子供たちが玄関に降りてきた。「こんばんは」と声を掛けると、小学校低学年くらいの男の子が大きな声で「こんばんは!どうぞ」と返してくれた。同い年くらいの子供を持つ自分が驚いてしまうくらい、はきはきとしたしっかりした対応だった。

 取材に応じてくれたのは佐藤由紀子さん(仮名、40歳)。6歳の娘を持つシングルマザーだ。IT企業の正社員で、年収は600万円ある。生活は安定しており、困窮状態にはない。だが彼女の中には、今の比較的恵まれた状況は、偶然の産物だという強い思いがある。「シェアハウスに来ていなかったら、私はどうなっていたか分からない」。

 佐藤さんが娘と暮らすのは、ストーンズ(神奈川県川崎市)が運営するシェアハウスのうちの1つだ。最大5世帯入居が可能で、取材時点では4世帯8人が一つ屋根の下で暮らしていた。それぞれの居室は7〜12畳ほどで、個室のドアには鍵がかかる。キッチンやリビング、風呂などは共用で、ダイニングには大型の冷蔵庫が並ぶ。

 賃料は月8万円から。それとは別に、共益費が2万円かかる。共益費の中に光熱費などのほか、週1回4時間の「チャイルドケアサービス」が含まれるのが特徴だ。

 チャイルドケアでは専門のケアワーカーが夕方5時頃に訪問し、食事を用意したり子供の遊び相手をしたりする。預かり保育ではなく、親がいる環境でのサービスになるが、家庭で子供にかかりきりになりがちなシングルマザーが、自分の時間を持てるようにという狙いがある。

 佐藤さんがストーンズのシングルマザー専用シェアハウスに入居したのは2012年。夫との別居がきっかけだった。

 夫とは同じ職場で知り合い、結婚。その翌年に娘をもうけた。産休と育児休暇を合わせて1年取得し、その後、職場復帰する。夫は「将来のリスクを考えると収入が1人分だけというのは考えられない」と、復帰には大賛成だった。ここまでは、特に大きな問題はなかった。

育児で狂った、夫婦の歯車

 いろいろなものが上手くいかなくなったのは、子供が1歳を超えた辺りのことだ。復帰直後は時短で働いていたが、徐々に慣れたこともあって、朝9時〜夕方6時の正規時間に戻した。もともと、夫婦共に残業もいとわず働く仕事人間。ほかの人と同じように働こうと考えたが、保育園の時間などを考えると、例え中途半端でも仕事を切り上げざるを得ない状況が生まれた。

 自由に仕事ができない。そのストレスは、夫婦関係に溝を生んだ。育児の負担が増すにつれ、うまくいっていたはずの家事などの分担にも、相手の理解が足りない気がした。

 もう少し家事や育児を手伝ってほしいと持ちかけると、「時間がなくて難しい。大変なら、うちの親に頼んでくれ」と言われた。夫の両親は近くに住んでいたが、気軽に家事や育児を頼めるような関係ではなかった。

 負担を軽減するために、月に1回、外部の家事代行サービスを利用したり、外食を増やしたりした。すると夫は、「子供には手作りの物を食べさせたい」「掃除なんて家族でするもの」と言った。口論が増え、互いに相手を思いやる余裕はなくなっていった。そして佐藤さんは夫と別居する道を選ぶ。2011年のことだった。

 佐藤さんの両親は東日本大震災で被災して避難生活を送っており、頼ることは難しかった。住む場所を探したが、想像以上にシングルマザーに貸してくれる物件は少なかった。

 収入証明書を出して、十分に支払い能力があると訴えても断られる。自分の隣には、まだ幼い娘がいる。不安と焦りが、佐藤さんの胸に冷たく広がった。

 やっとの思いで、ファミリー向けの集合住宅を見つけて仮契約までこぎつける。予算は多少オーバーしていたが、背に腹は代えられないと思った。

入れなかった「家族コミュニティ」

 しかし、最終的に佐藤さん親子がその住宅に入ることはなかった。当初は、周囲がファミリー層ばかりという環境は子育てに向くように思えた。だが、ひとり親であることにどこか引け目を感じていた佐藤さんは、そのコミュニティに入ることに不安を感じた。

 「昔から仲良かった友達とも、次第に子供の悩みについて本心から話せなくなっていた。周りを両親のいる家族に囲まれたら、余計惨めな気持ちになるのではと思った」と言う。

 別居を決めた時、佐藤さんは一人で子供を育てる決意をした。しかしシングルマザーになることの心理的な心細さは、想像を超えていた。本人も気づかないまま、あるいは認めたくないまま、孤独感はどんどん強まっていった。

 「もしあそこで2人で住んでいたら、良くない方向に行っていたんじゃないかな。自分の気持ちはどんどん沈んでいった。子供は一人ぼっちで、私が相手をしなければいけないのに、あの時は無理だった。そんな精神状態で生活を始めていたら、どうなっていたのか」と佐藤さんは振り返る。

 そんな時に、ネットで見つけたのがシングルマザーのシェアハウスだった。もともと共同生活に興味があった佐藤さんは、同じ境遇にある人との生活に魅力を感じた。チャイルドケアなどのサポートが受けられることにもひかれた。

 当初、佐藤さんの周囲には入居に反対する人も多かった。佐藤さん自身にも、教育方針や経歴が異なる母子家庭と共同生活することに不安もあった。だが、しばらくしてその選択を「本当に良かった」と思うようになる。子供同士が、親同士以上に仲良くなり、楽しそうに過ごしているからだ。

 娘と2人の時は、何か子供に辛いことがあると必要以上に自分を責めた。ひとり親という選択を自分がしたことで、子供に何か不利があるんじゃないかという思いに押しつぶされそうになった。だが最近は「引け目がなくなったような気がする。自分がひとり親だと言えるようになってきた感じ」と言う。もっと子供に手をかけなきゃという強迫観念が薄れ、落ち着いて仕事に打ち込むこともできるようになった。

 月に10万円からというシェアハウスの賃料は、決して安くない。むしろシングルマザーが負担することを考えれば、地価が高い都内だということを差し引いてもかなり高額だ。共用部分が多く、自分の自由にならないシェアハウスであるということも含めれば、「割高」にも思える。

 だが佐藤さんからすれば、これは必要な経費に近い。仕事を辞めずに通える場所にあり、同じ悩みを抱える人同士の新たな人間関係も築ける。子供に、年の近い兄弟のような友人もできる。「ちょうど自分が探している時にこういう物件があって、空きもあって、入るだけの収入もあった。自分は本当にラッキーだったと思う」と佐藤さんは話す。

家族か、経済的な自立か

 佐藤さんのケースから、「どうすれば夫と離別せずに済んだか」といったことを考えることもできる。もしかしたら、「我慢が足りない」と思う読者もいるかもしれない。

 だがここで示唆されていることは、より深い意味を持っているのではないだろうか。佐藤さんは夫や両親と暮らすことよりも、シングルマザーというまとまりの生活を選び、その選択に合理性を見いだしている。働く女性が増え、共働きが当たり前になった今、果たして「両親と子供」という世帯構成は、子供を育てていくのに最良の家族形態だろうか。

 確かに佐藤さんには「家族が一緒に暮らすために仕事を辞める」という選択肢もあっただろう。実際、夫との口論が増えた時期には「こんなにもめるくらいなら、仕事を辞めた方がいいのでは」と悩んだこともあるという。だが「精神的に家にいられない」と思うほどの苦痛は、仕事を辞めれば解決するのか。結局は自分が家族のために犠牲になった、ということになりはしないか。そうした状態で両親が一緒にいることが子供のためにいいのか。明確な答えは見いだせなかった。

 一方で、確かなこともある。仕事を辞めなかったおかげで、経済的な自立は佐藤さんの手に残った。仮に会社を辞めていれば、現在の雇用情勢を鑑みて、「同等以上の収入を見込める正社員になることはほぼ不可能だろう」(佐藤さん)。子供を引き取っても、安くはない家賃を負担し、生活の基盤を整えられたのは、今の収入があってこそだ。

 人間の時間と能力が限られている以上、女性が企業社会で働くほど、それまで主に女性が担ってきた家庭内労働は外部に依存せざるを得なくなる。保育サービスを利用するにせよ、家事代行を頼むにせよ、外食やできあいの食事をするにせよ、それは必ずコストとして家計にのしかかる。質の高いサービスを利用しようとすれば、その分、生活コストは高くなり、働いて収入を得なければならなくなる。

 核家族化、若年層の都市部への人口集中などで、親世代に頼れない夫婦も増えた。理想はどうあれ、少なくとも現実を見ると、今の子育て世代にとって育児は、「対価を払って一定部分を外部委託するのが当然」になりつつある。この結果、育児は昔に比べてはるかに高コストになっている。

バラバラになる家族

 それにもかかわらず、家族はよりバラバラになろうとしている。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計では、今後2010年と2035年を比べると、日本で最も増加率が高いのは「ひとり親と子」の世帯だ。伸び率は24.4%で、2020年には全世帯の1割を超える。もう一つ増えるのは「単独世帯」で、2035年に全体の37.2%を占める。今から20年後、「夫婦」がいる世帯といない世帯は、およそ同数になる。

 離婚も広がっている。結婚している人の数に対して、ある年に離婚した人の割合を示す「有配偶離婚率」という指標がある(ただの「離婚率」は配偶関係の有無に関係ない人口に対する比率なので、婚姻率が下がると離婚率も下がる傾向がある)。

 国立社会保障・人口問題研究所の2012年版のデータによると、2000年以後は男女共に1000人に5〜6人の割合で離婚しており、1000人に1.92人しか離婚しなかった1960年のおよそ3倍になった。

 特に子育て世代、もしくは結婚して日が浅いであろう若年層の離婚が目立つ。15〜19歳の女性で見ると、2010年は1000人に82人が離婚しており、割合は1960年の7倍以上になる。20代前半では男女共に1000人中およそ47〜48人が離婚しており60年比5〜7倍、20代後半では男女共に約22人が離婚と、60年比4〜6倍に増えている。

 ここで紹介したシェアハウスを運営するストーンズの細山勝紀社長は「当初は社会的なことをやろうなんて全く思わなかった。やり始めてから、利用者に感謝され、いいことをしているのかもと思うようになった」と話す。「うちの賃料では、本当に困窮している人は入れない。だが、このような施設がないために、本当は困窮状況に陥らないで済むはずの人が、困窮状態になるのを防げればと思う」。

 細山社長も、賃料を抑えた物件の展開を考えていないわけではない。だが、賃料を抑えるなら郊外立地にする必要がある。好条件の仕事を探すなら職場は都心部になりがちだが、そうすると通勤時間などの問題が出てくる。ひとり親の生活を考えれば職住接近は優先順位の高い項目だ。また、ある程度高い賃料が実質的に入居者を”ふるい”にかけるため、入居者が安心して入りやすくなるという効果もある。

ビジネスとして何ができるか

 「事業として成り立つモデルでなければ、長続きはしない。ひとり親を『助けよう』という気持ちが強すぎると、それは福祉の領域になる。現代の女性のニーズをくみ取りながら、ビジネスとして何ができるかを考える」(細山社長)。

 当然ながら、ひとり親が仕事をしながら子供を育てるのは大変だ。どちらかの実家から全面的な援助が得られればまだしも、そうでなければ男性であっても転職を迫られ、収入が大きく落ち込み、貧困化するケースもある。

 我々は、想像を膨らませなければいけない時期に差し掛かっている。

 これまでのように、育児を両親の責任としてとらえ続けることは正しいのか。両親の労働力がより企業に提供されていく中で、親だけで育児をすることは現実的なのか。もしそうでないなら、これまで家庭の問題としてきた子育てや教育を、必要な場合には外部に開放することも考えなければならないはずだ。

 両親から子供を取り上げよと主張したいのではない。これまで家庭の根幹だった「母親」の生き方が大きく変化し、夫婦関係、親と子の関係にも少なからず変化が生まれている。それにもかかわらず、子供の生活について、両親だけがあまりに大きな責任を持ち続けることのリスクが、無視できなくなっているのではないだろうか。

 子供が親にとっての宝であることは間違いない。だが同時に子供には、貴重な社会資源という側面もある。女性の貧困が男性の貧困よりも深刻な問題として認識されるのは、男女の賃金的な不平等があるためだけではない。女性の方が現実的に育児を引き受けることが多く、そこから派生する貧困が子供世代に連鎖する可能性が高いからだ。

 親のためではなく、子供のために必要な施策を実行できなければ、この国はより多くの子供の貧困を生み続けることになる。


連載「2000万人の貧困」などを大幅加筆した書籍『ニッポンの貧困』が発売されました。是非、手に取ってお読みください。

このコラムについて
2000万人の貧困

日本を貧困が蝕んでいる。月に10.2万円未満で生活する人は日本に2000万人超と、後期高齢者よりも多い。これ以上見て見ぬふりを続ければ、国力の衰退を招き、ひいてはあなたの生活も脅かされる。

日経ビジネス3月23日号に掲載した特集には収められなかったエピソードやインタビューを通じて、複雑なこの問題を少しでも多面的に理解していただければ幸いだ。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278874/082400002/

[12削除理由]:管理人:無関係の長文多数

9. 2015年8月31日 21:23:06 : IJjjrLkBu1
  3さん、4さんに批判されてしまったが、無論大学進学が全く無駄だなどとは思っていないが、種々の選択肢を探しても良いのではないか。
  確かに、大学には実験器具や資料が沢山揃っているのだから、科学や化学を学ぶには理想的な環境であろう。
  だが、それにしては、授業料が高額過ぎはしないか。他の先進国では、大学まで授業料は無料というところが多く有り、有料化される兆しが有ると学生デモが起こるくらいである。
  通常、一般的に通用する社会人としての人格は高校で得られる、という認識があり、それ以上の専門知識を得たいと考える者が大学以上に進学すると聞く。
  ドイツのマイスター制度などは、大学へ行かずとも、また大学から勉強し直してマイスターの資格を取るなど、多様であるようだ。
  猫も杓子も、とは言わないが、とにかく大卒の資格を得て就職有利とするも、早くも二年生くらいから就活に出るということでは、一体専門知識はいつ学べるか、と思うのである。
  米国では、貧しい黒人用のコミュニティカレッジでも、論文書き、エッセイ提出、日常のディベートは必須である。図書館にでも通い詰めなければ好成績で卒業出来ない。
  日本の場合は、入試は厳しいが、入学してしまえば二年生から就活しても卒業が出来る、これが不可思議である。
   企業の人事部では応募者の卒業大学を指針に、一次をパスさせるようだが、このために数百万円かけて大学へ行かねばならないとなると、専門知識云々以前に、大学は就職のための単なる通過点に過ぎない。
  応募者との対話の内容から、知識の有無は解る筈であり、大企業はともかく、中小企業であれば、経営者が直接応募者に面接することである。企業を興した経営者というのは、必ず自分のポリシーというものを持っており、企業理念は経営者が最も把握しているのだから、卒業大学名だとか、大卒か高卒かに関係無く、充分な対話を交わすことにより、経営者としての感性で、育てて磨けば光る玉を見出すことが出来る筈なのである。
  それを、全て人事担当者に任せてしまえば、人事担当者はまず卒業大学で振り分けることになる。それでは磨けば光る玉を見出すことは困難であろう。経営サイドで無いことで、どうしても無難な選別の仕方に甘んじてしまうのではないか。
  要は、大学とは何か、そこで何を学べるのか、学ぶべきものが有るのか、学生が費やすコストは学びに見合うのか、であろう。
  入学当初からアルバイトに精を出し、学費滞納で中退を余技無くされてまで入る必要が有るのか、多少なりとも疑問を持つことは間違っていないだろう。
  今や、アカデミズムもビジネスである。政財官学トップが構成する一大護送船団方式においては、一般民衆は、学にコストをかけ、政官に血税を払い、財から利益の若干の配分を受ける、護送船団ビジネスの消耗品となっている感がある。
  その一連の流れの中に大学進学が有る、ということでは本来無いように思う。

10. 2015年9月03日 08:50:55 : jXbiWWJBCA
「2000万人の貧困」西友の「5日間の就労支援」が変えたある人生“引きこもり”を社会に戻せ

2015年9月2日(水)中川 雅之

 日経ビジネスでは2015年3月23日号で特集「2000万人の貧困」を掲載しました。日経ビジネスオンラインでは本誌特集に連動する形で連載記事を掲載しました(連載「2000万人の貧困」)。本誌とオンラインの記事に大幅な加筆をし、再構成した書籍『ニッポンの貧困 必要なのは「慈善」より「投資」』が発売されました。
 日本社会に広く巣食う貧困の現状は、その対策も含めて日々変化しています。特集や連載では紹介できなかった視点やエピソードを、書籍の発売に合わせて掲載します。今回は、若者の貧困に対してある対策を取り始めた外資系スーパーの取り組みを紹介します。

今回は、西友の就労支援によって「支援を受ける側」から「支援をする側」へと変わった一人の男性のエピソードを紹介する(写真はイメージ)
 「“最強外資”ゴールドマン・サックスが貧困に投資する理由」や「『社会的インパクト投資』が問う公と私の新しい関係」などで触れたように、より多くの人が「支援を受ける側」から「支援する側」「納税する側」へ回るようになれば、社会全体は恩恵を受ける。

 今回紹介するのは、そうした転換を後押しすべく動き出したある外資系スーパーの取り組みだ。生活困窮に陥った人は、精神的に問題を抱えていることが少なくない。その人たちを社会に戻すために必要なのは、「普通の人」と同じアプローチとは限らない。

やってきたのは「引きこもり」

 都内にある西友のある店舗の吉田秀雄店長が、24歳のA君に初めて会ったのは2015年の3月4日だった。会社が2014年から始めた「若年層への就労支援プログラム」。その一環で吉田店長は、ある就労希望者の受け入れを求められた。

 A君は専門学校を2年で中退し、その後3年ほどは家でパソコンやテレビを見て過ごす生活をしていた。いわゆる引きこもり状態だ。実家では母との2人暮らし。それまで、短期間のアルバイトは何度かしたことがあったが、将来を考えると、まずはきちんと働けるようにならないといけないとの意識があった。そこでNPO法人「育て上げネット」を頼り、同店にやってきた。

 育て上げネットの支援担当者に付き添われて挨拶に来たA君は、人の目を見て話そうとはしなかった。本人は見ているつもりなのかもしれない。だが、コミュニケーションに難があることは疑いようがなかった。

 この時の印象を吉田店長は「普通にアルバイトの面接で来ても、恐らく雇わなかったでしょうね」と振り返る。

 A君を受け入れることに、ためらいはなかった。様々な理由で無業状態となった人たちに、会社が就労体験の場を提供し始めたことは知っていた。それに、プログラムは5日間と短い。ただ経験がないのも確かで、どんな形で働いてもらえばいいのかは分からない。

 吉田店長は店のマネジャーなどと話し合った。「十分なサポート体制がないと、嫌になっちゃうだろう」「1人にならないようにした方がいいんじゃないか」。結論として、気さくで接客などがうまい60歳のベテランパート従業員に白羽の矢を立てた。指導係として、体験中は彼にぴったりと付いてもらうことにした。事情を話すと従業員は「分かりました。フォローします」と快く引き受けてくれた。

 A君が担当した仕事は、納入された商品のバックヤードでの仕分けと品出しだ。3月10日、初日の彼は吉田店長が一目見て分かるくらいにとても緊張していた。バックヤードでの作業はまだしも、客が行き交う売り場に出ることに不安を感じている様子があった。相変わらず口数はとても少なかった。

「働かせて欲しい」

 指導係となったパート従業員は、子供よりも年の離れた彼に対して、休憩時間も昼休みも寄り添い、声をかけ続けた。

 すると、驚くような変化があった。2日目まではなかなか反応もなかったが、3日目、4日目となると「次は何をしたらいいのか」「何かできることはないか」などと、自分から尋ねてくるようになった。

 不安そうにしていた初日の様子と打って変わって、最終日には吉田店長が「どう?」と声を掛けると笑顔で「少し自信が出てきた気がする」と答えるようになった。「わずか5日で、人はこうも変わるのか」と吉田店長が思うほどの劇的な変化だったという。

 そして5日目の体験を終えた夕方のミーティング。15人ほどの従業員が集まるバックヤードでA君は「ちょっと話があります」と、皆の前で切り出した。「僕をここで働かせてほしい」。吉田店長はにわかにはその出来事を受け止めることができなかった。

 体験就労の修了書を渡した後、吉田店長はA君を別室に呼び、真意を確かめた。

「さっき言っていたこと、もう一度言ってみて」

「ここでもう少し、働きたいんです」

「正式に働くということは、今までと違う。もちろん給料は普通通り払う。でもその分、仕事をちゃんと覚えてくれなければ、厳しいことも言うし、人だってずっとつけてあげられない。辛い思いをするかもしれないけど、それでもやりたい?」

「はい」

 彼の目はしっかりと、吉田店長をとらえていた。皆がいる場で、発言の機会を与えられたわけでもなく「働きたい」と口にするのは、相当の勇気が必要だっただろう。彼の意志の強さを感じた吉田店長は、その場で「よし、じゃあ一緒にやろう」と即決した。

 「採用を決めたのに、情の部分が一切なかったかと言えば嘘になります。だけど、彼に限らず、スーパーの人員募集にはもともといろんな人が来ます。性格が荒っぽかったり、到底続かないだろうなという人だったり。でも今は人手不足で、なかなか人を選んでもいられない。普段のそんな状況からすれば、5日間の体験を終えた彼は、仕事に対する姿勢も思いも申し分ないと思いました」と吉田店長は言う。

 プログラムの最終日は3月18日。初対面からわずか2週間で、彼は「とても雇えない人」から「ぜひ来てほしい人材」に変わっていた。「社員の方々がいろいろ教えてくれる時の優しさが印象深い」とA君は振り返る。

 3月24日から正式に働き始め、1日5時間、週4日、同店で働くようになった。給与などの条件は通常のパート社員と同じ。最近は「やっぱり気温が高くなると、焼肉用の商品がよく売れるんですね」と自分から声を掛けるようになってきた。

足かせさえ外せば

 20代の若い男性で、肉体的には健康で何の問題もない。そんな彼を「働きにくい人材」にしていたのは、世間の目や、自らに対する失望や罪悪感といった複雑な感情だったのだと、吉田店長は気づく。

 「スタート時点は、ほかのパート社員と比べればマイナスでした。でも成長の早さは圧倒的だった。伸びしろがあるということです。彼はハンディを背負っていた。でもその足かせさえ外してあげれば、すぐに普通に働けるんです」

 彼の存在は、周囲にも好影響をもたらした。5日間で皆で仕事をフォローし合う環境が生まれ、チームの連帯感が増したからだ。吉田店長は次回の人材受け入れも歓迎し、次は別の人をアテンド役に付けるつもりだという。「客にもいろんな人がいて、我々の商売はそれにいかに共感するかが原点。そうした人をアテンドするのは貴重な経験だし、必ず接客などに生きる」と話す。

 育て上げネットと西友が共同で取り組むこのプログラムは、「西友パック」と呼ばれる。

 育て上げネットが手掛ける座学中心のトレーニングを1〜2カ月受けた後、西友の店頭で職場体験をするというものだ。育て上げネットの就労支援トレーニング「ジョブトレ」は通常月額4万円がかかるが、その費用は助成金として西友が負担。初めてプログラムを実施した2014年は13人が西友パックを利用した。

交通費も助成

 初年度に180万円だった予算は、2015年度に約290万円に上積みされた。プログラム参加者の大半が終了後、実際に職を見つけるなど明らかな効果が見られたからだ。5日間の店舗研修後、半月はその後の就職活動に対する支援が必要だとして、そのための費用と、初期の座学トレーニングに通う交通費が賄えない人への交通費も西友が助成するようにした。

 もともと旧西武グループ系だった西友は、バブル崩壊後に業績が急激に悪化し、2002年に世界最大の小売企業、米ウォルマート・ストアーズと資本・業務提携。同社のグループ入りした。2005年にはウォルマートの出資比率が過半となり、同社の子会社に。今や営業面でも管理面でも、ウォルマート流の手法が浸透してきた。

 パート従業員の登用についてもそうだ。2006年には、社内の階級で2つ上がれば希望するパート社員が正社員になれる人事制度を導入。それ以来、約380人がパート社員から正社員に登用された。こうしたキャリアパスがあることが、育て上げネットの工藤啓理事長の共感を呼び、西友パックが誕生した。

「人同士が触れ合わなければ、変化は起きない」

 西友側で取り組みに尽力した金山亮・執行役員は、若年層の就労支援を始めた理由をこのように説明する。「小売業の本質は地域密着にある。地域への貢献には、どんな商品を提供するかというだけではなく、雇用だったり安全だったり、様々な要素がある。人と人とが触れ合う場を提供している事業者にしか、人をポジティブに変える手伝いはできない」。就労支援は、その地域を活性化するための取り組みの一つだというのだ。

 育て上げネットには、子供の就労に関する相談が後を絶たない。

 高校1年生で中退し、10年間無職で、弟が社会人になったのをきっかけに相談に訪れる人。それまで子の生活を支えてきたが、病気や退職などを理由にこれ以上面倒を見られなくなり頼ってくる両親。夫婦共働きで子供の様子が全く分からず、退職して初めて独立していたはずの子供がずっと無業状態だったことを知るケースすらある。

 いったん意欲を失った人を社会に引き戻すためには、多大なエネルギーがいる。「引きこもりやニートが自分の職場に来る」という話を耳にすると、多くの人はそれを好意的に受け止められないのではないだろうか。そこには多分に、人物像に対する偏見や思い込みがある。

 もちろん、その思い込みが否定できない事実の場合もある。だがその思いにとらわれたまま本人と接すれば、新たな関係性は生まれにくくなり、「社会復帰の可能性」はしぼむ。

 内閣府の「子ども・若者白書(2014年版)」によると、15〜34歳の非労働力人口のうち、通学も家事もしていない、いわゆる「若年無業者」の数は2013年に約60 万人。ここ10年ほどは、ほぼ横ばいで推移している。同世代における人口比率は約2.2%で、こちらは緩やかながら上昇傾向にある。

 若年層はじわじわと、無業状態になりやすくなっている。

 無業に陥る理由は様々で、一概に言うことはできない。病気やけが、家庭内不和、親の死や離別、受験失敗、就職失敗、いじめなどの理由が、複数重なって起きることも珍しくない。だが、そうした状況にあっても、前向きに生きたいと願う人は数多い。果たして、彼らを社会に戻すための仕組みは、十分用意されていると言えるだろうか。

 「働けるのに働いていない、働かない」という人に対して、それを「甘え」だとする風潮は強い。多くの人の目に、ただ怠けているようにしか見えない人がいることも事実だろう。

 だが、それを断罪しても課題は何も解決しない。人手不足はそのままだし、彼らがそのまま就労せずに生活保護を受給すれば、社会的なコストが上積みされる。

 労働力の面でも財政的にも今の日本に余裕がないのだとすれば取り得る道は一つしかない。彼らの「働けない」理由を取り除き、貴重な潜在力を顕在化させることだ。そこから目を逸らすほど、将来の社会的なコストが膨らむことになる。


連載「2000万人の貧困」などを大幅加筆した書籍『ニッポンの貧困』が発売されました。是非、手に取ってお読みください。

このコラムについて
2000万人の貧困

日本を貧困が蝕んでいる。月に10.2万円未満で生活する人は日本に2000万人超と、後期高齢者よりも多い。これ以上見て見ぬふりを続ければ、国力の衰退を招き、ひいてはあなたの生活も脅かされる。

日経ビジネス3月23日号に掲載した特集には収められなかったエピソードやインタビューを通じて、複雑なこの問題を少しでも多面的に理解していただければ幸いだ。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278874/082400004


11. 2015年9月03日 08:54:37 : jXbiWWJBCA

「2000万人の貧困」
「奨学金、当社が代わりに返します」

企業は家計に無関心でいられるか

2015年9月3日(木)中川 雅之

 日経ビジネスでは2015年3月23日号で特集「2000万人の貧困」を掲載しました。日経ビジネスオンラインでは本誌特集に連動する形で連載記事を掲載しました(連載「2000万人の貧困」)。本誌とオンラインの記事に大幅な加筆をし、再構成した書籍『ニッポンの貧困 必要なのは「慈善」より「投資」』が発売されました。
 日本社会に広く巣食う貧困の現状は、その対策も含めて日々変化しています。特集や連載では紹介できなかった視点やエピソードを、書籍の発売に合わせて掲載します。今回は、学生の2.6人に1人以上が受給するようになった奨学金を、実質的に社員に代わって返還するある企業の取り組みを紹介します。
 「奨学金理事長『大学にさえ行けばいいなんてイリュージョン』」「今の公教育は異常。異常を拡大するな」では、膨張する教育費と家計収入のアンバランスを示す象徴として、奨学金の問題を取り上げた。

 現在、日本最大の奨学金貸与団体である日本学生支援機構から奨学金を受ける大学生は2.6人に1人。多くの家庭が奨学金をあてにしている構図が浮かび上がるが、社会に出る前に抱える“借金”にはリスクもある。その現状を知ったある企業が、動き出した。

月の返還額を給与に上乗せ

 奨学金返還を“肩代わり”します――。

 国内外に120のメガネ店を展開する低価格チェーン、オンデーズ(東京都港区)。同社は2014年12月、「奨学金返金救済制度」を導入した。学生時代に受けた奨学金の返還を続けている従業員に対して、返済分を毎月の給与に上乗せする仕組みだ。社内面接などを通過すれば、上乗せは返還が終わるか、退職するまで続くという。同様の仕組みは、大手企業などでもほとんど例がない。


従業員の奨学金返還を肩代わりする制度を導入したオンデーズ
 田中修治社長が同制度の必要性を感じたのは2014年のことだ。たまたま見ていたテレビ番組で、日本の大学生の半分近くが奨学金を受けていること、さらには卒業後に十分な収入が得られず、奨学金を返せない人が増えていることを知った。衝撃を受けた。

 気になって調べてみると、社内にも奨学金を受けていた社員が何人もいた。そして、仕事内容では別の企業に魅力を感じているが、奨学金の返済を考えて、初任給が高めの企業へ就職する学生が多いことも分かった。

 流通関連企業は、多くの場合労働集約的で、決して平均給与が高い業界ではない。だが「客は店ではなく店員に付く」と言われるほど、店頭での接客が大きな差別化要因となる。

 やる気があり、接客が好きな人に来てもらわなければ、企業の成長はままならない。

 「奨学金の返済が理由で、当社に来ることを諦めた人材もいるかもしれない」。田中社長はそう考えて、奨学金返金救済制度の骨子を固めた。

「新卒は平等」がおかしい

 この制度では、同じ新入社員でも額面上は奨学金を受けていた人の方が給与が多くなる。返済に充てるとはいえ、社員同士に不公平感が生まれることはないのか。その懸念に対する、田中社長の回答は明快だ。「そもそも、新入社員だからみんな同じ給料だという方がおかしい」。

 実はオンデーズでは、新卒の初任給も採用の方式によって明確な差を付けている。例えば、転勤がない地域社員の初任給は19万円、転勤可の全国社員が25万円。1カ国語以上の外国語が会社の定める基準に達しており、ほかに課す課題で優秀と認められた幹部候補生は35万円からスタートする。地域社員と比べると実に16万円も差がある。

 「同じ新卒と言っても、人によって大学卒業までに培ったスキルも経験も何もかもが違う。大学で一生懸命勉強して専門技能を磨いた人材と、遊びほうけていたがたまたま面接が得意で受かった人間が、同じ会社に入ったからといってなぜ同じ給料なのか。むしろその方が不公平ではないか」と、田中社長は言う。

 オンデーズの新卒時の階級分けは、永続的ではない。つまり、入社後に基準を満たせば別の給与体系に移ることも可能だ。同社の仕組みは、「その時の能力や会社への貢献度に応じて給与を支払う」という考え方の下に運営されている。

仕組みを生んだ“シューカツ”への疑念

 田中社長には、現在の就職・採用活動に対する強い疑念がある。

 大学全入時代になり、以前だったら大学に行かなかったであろう層が大学に行くようになった。その分、より多くの人が社会に出るまでに多大な時間と学費を費やすようになった。一方で、大卒として社会に送り出される人材の質が高まったようには思えない。「大学で分数の計算を教えている」などといった報道を見るにつけ、社会全体がどこか誤った方向に進んでいる感覚に襲われる。

 中高生の時を含め、人々が学生時代に思い描く人生設計が画一的になった。就職活動が始まると、学生が大挙して「合同説明会」のようなイベントに向かう。有名企業ほどネットにも多くの情報が溢れ、ネットで情報収集する学生を引きつけ、雇用のミスマッチが加速する。その結果、知名度が低い企業は、学生と企業を結びつけるような「採用ビジネス」に頼らなければ人が採れない状況も生まれている。

 社会が必要とするスキルに関係なく教育を施し、それに盲目的に投資し、その人材を用いてビジネスを展開しようとする。本当に必要な人材を得るためのコストが余計に高まり、「世の中がどんどん非効率な方向に向かっているように思える」と、田中社長は言う。

能力に明確な対価を

 「秀でたスキルがある人には新卒でもより多く払いましょう」「奨学金を受けながら頑張った人には、それが卒業後のハンディキャップにならないようにしましょう」

 オンデーズのこうした取り組みは、学生に対するメッセージの明確化にほかならない。

 多くの企業が自社の魅力として喧伝する「働きがい」や「社風」といった抽象的なものではなく、特定層に明確な金銭的なメリットを提示することで、自社が欲する人材を引きつけようとしている。「在学中にこの資格を取れば、初任給が数万円上がる」「あの会社に入れば、奨学金を自分で払わずに済む」というメリットを学生に提示し、企業ブランド以外の部分で判断する人材を採ろうという発想だ。

 在学中に勉強してもしなくても、みんな新卒時点で同じスタート地点に立たされる。だから学生がスキル向上に懸命にならないのだと田中社長は見る。「もし自社の取り組みがメガネ業界に広がり、小売業界に広がり、産業界でも当たり前になれば、奨学金の返納問題はなくなる。在学中に勉強するのが当たり前になり、世の中により優れた人材が供給されるようになり、競争力が高まる」。

 個人の奨学金を企業が肩代わりするオンデーズの新制度は、当然経営コストに上乗せされる。奨学金の返還プランは人によって異なるため一概には言えないが、仮に月2万円とすれば、1人当たり年間24万円の人件費アップになる計算だ。だが田中社長に言わせれば、現在、企業が支払う採用コストに比べれば、そんなものは微々たるものということになる。

「社員に直接還元したい」

 「知名度のない企業が一定以上の人材を採ろうとすると、仲介事業者を利用しなければならない。彼らに依頼すれば、成功報酬ですぐに100万円単位の費用がかかる。そんなことをするくらいなら、自社で働いてくれる人材に直接還元したい」

 社員に対して強化する「健康指導」の取り組みも、世の中が非効率な方向に向かっていることに対する是正策だ。同社は近年、一定以上の年齢の社員には高度ながん検診を強制的に受けさせ、早期発見できるような仕組みを導入した。きっかけは、50代の幹部ががんで亡くなったことだった。

 闘病生活で勤め続けられなくなったこの社員に、田中社長は数年間、給与を払い続けた。家族からは感謝されたが、そのことは一部の社員に「うちの会社は、病気になれば働かなくても給料がもらえる」という認識を与えることになった。

 「病気に対する備えは保険みたいな考え方をする人もいますけど、本来それは違いますよね。病気にならない、予防するのが一番大事なわけです。本人にとっても家族にとっても、優秀な人材に働き続けてもらいたい企業にとってもそうです」と田中社長は言う。

 「働きやすい職場」というと、我々はつい企業の中、オフィスの中のことを考えがちだ。

 だが人生においてプライベートの時間も会社での時間も同じ生活の一部であって、切り離せるものではない。出産、育児、PTA活動への協力、親の介護、病気など、企業人が働きながら気にしなければならないプライベートの課題は、家族形態の変化もあって深刻化する一方だ。企業が従業員一人ひとりの人生に寄り添うことができなければ、働きやすい職場など実現しない。

 オンデーズは元をたどると、大手家電量販店のビックカメラ系の企業だった。現在の田中社長は2008年に業績が悪化していたオンデーズの第三者割当増資を個人で引き受け、株式の過半を取得。商売人の家庭で育ち、20代から企業経営をしてきた田中社長は、「サラリーマン経験のなさ」を強みに、独自色の強い会社経営を続けている。

 考え方はシンプルだ。「必要と思ったことをやって、失敗したら修正していくだけ」。社会は変化の速度をますます高めている。「先のことを考えるのはムダ。今、何が必要かを考え、変わったら早く修正する。結局は、その積み重ねがいい企業を作る」。

「働きやすい職場」と企業の役割

 本連載では、日本の貧困対策に投資する外資系のゴールドマン・サックスや西友などの取り組みを紹介した(「“最強外資”ゴールドマン・サックスが貧困に投資する理由」「西友が乗り出した『引きこもり』の就労支援」)。だが当然のことながら、そうした形で社会貢献活動ができるのは、業績が堅調で一定程度の規模がある企業に限られる。

 では、そうでない企業ができることはないのか。確かに選択肢は限られているが、その限られた「できること」が、貧困対策には最も重要なことでもある。「雇用」を生み、「賃金」を上げ、「働きやすい職場」を実現することだ。

 オンデーズの田中社長は「社会貢献的な狙いも、なくはないんですよ。社会に何を返すかという発想は当然のようにある」と言う。生活に対する日本人の不安は高まっている。従業員が安心して働ける職場を用意することは、優秀な人材確保にもつながる。これは何も潤沢な資金力がある大手企業にだけ関わる話ではない。

 何のために企業はあるのか。利潤が増えても、それだけでは意味はない。カネは本来、何かをなすための手段に過ぎない。企業も、家計も、同じ経済の枠組みの中にある。従業員を見ずに利益を追っても、永続的に発展を続けることは難しい。その社会にいる人々が何を求めているのか、企業はこれまで以上に敏感になる必要がある。


連載「2000万人の貧困」などを大幅加筆した書籍『ニッポンの貧困』が発売されました。是非、手に取ってお読みください。

このコラムについて
2000万人の貧困

日本を貧困が蝕んでいる。月に10.2万円未満で生活する人は日本に2000万人超と、後期高齢者よりも多い。これ以上見て見ぬふりを続ければ、国力の衰退を招き、ひいてはあなたの生活も脅かされる。

日経ビジネス3月23日号に掲載した特集には収められなかったエピソードやインタビューを通じて、複雑なこの問題を少しでも多面的に理解していただければ幸いだ。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278874/082400005


12. 2015年9月08日 13:45:42 : OO6Zlan35k
「イギリス人は階級が9割」......じゃない!
2015年08月11日(火)16時50分
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 僕は本気でニールのことを心配している。トニーのような情熱がほしい。チャールズにはがっかりさせられる。

ニックの成功は感心するけれど、いちばん喜べるのはポールのことだ。ジョンは思っていた以上に好きになったけ

ど、ブルースにはイライラする。もっとも、ブルースだって10年前に会っていたら誰より気に入ったかもしれない

。なぜだかわからないけど、「女の子たち」にはあんまり感情移入しない。とりわけスージーには。

 何のことか説明しなければ。僕はいま、10年以上気になりながらずっとできずにいたことを実行している真っ最

中。『UP』というドキュメンタリーシリーズをぶっ続けで見ているのだ。僕的にはこれはおそらく、史上最高傑

作のドキュメンタリー番組の1つ。14人のイギリス人の人生を、何十年もかけて追ったシリーズだ。

 初放送は1964年。主演者全員が7歳だった。以来、7年ごとに『7UP』『14UP』というタイトルで彼ら

のその後を追跡している。直近の『56UP』は2年前にテレビで放送されていたが、いつかシリーズを最初から順

番どおりに見たかったので、見ないでおいた。

 冒頭で名前を挙げたメンバーは、僕にとってすっかり身近な存在になった。奇妙で一方的な気持ちなのは分かっ

ているけれど、本当の友達のように感じている。人間嫌い気味の性格を自覚している僕だけに、彼らみんなを好き

になったことには、自分でも驚いている。たぶん、初めて彼らに「会った」のが7歳の時点だからだろう。相手が

7歳の子供だったら、誰しも応援せずにいられないだろうし、その人生が成功するよう祈らずにはいられないもの

だ。

 人が劇的に「成長」していくのを、ほんの数週間のうちに見守るというのは、驚くべき体験だ。7歳が14歳にな

り、21歳、28歳になるのを、僕は10日間で目撃した。35歳に行く前には一休みした。ちょっと繰り返しが多くなっ

てきたからだ(制作側は7年前や14年前の様子を視聴者に「思い出させる」必要があるし、番組を見たことがない

人のことも考えないとならない)。

 僕は今のところ『42UP』を見るのをしばらく我慢しているが、自分の今の年齢に近い彼らがどうなっているの

か知りたくてたまらない。

 初回の『7UP』に出演した「子供たち」の人選には明らかに、イギリス社会の階級格差を示す狙いがあった。

ロンドンのイーストエンド出身の少年(トニー)と、ロンドンの公立校に通う少女3人(つねに「ジャッキーとそ

の友達」として紹介される)は、労働者階級。一方で上流階級には、ロンドンの同じ私立小学校に通う3人の少年

(ジョン、チャールズ、アンドルー)がいる。さらに、施設で育つ少年2人(後に父親に再会してオーストラリア

に移住したポールと、ハーフの婚外子で母親が精神疾患を抱えているサイモン)もいる。
 
 ニールとジョンは中産階級の代表として選ばれたと思うけれど、リバプール出身なのでむしろ「下流中産階級」

に見える(後にリバプールは「衰退した都市」の同義語になっている)。イングランド北部の過疎地域の農家で育

ったニックは、典型的な「カントリーボーイ」だ。


■むしろ大きいのは個人の性格と人生の選択

 シリーズ1作目には明確なメッセージがある。上流階級の子供は自分の行く道も、成功が約束されていることも

分かっている、というものだ。上流階級の少年3人は、どのパブリックスクールに行き、その後オックスフォード

かケンブリッジ大学のどちらを目指すかを語っている(やがてその言葉通りになる)。上流階級でない少年たちは

、いかにも少年らしいことを言う。ニールがなりたいのは「宇宙飛行士かバスの運転手」。ポールは質問されて「

大学って何?」と聞き返す。サイモンは「仕事をする前に、あちこちに行っていろんなものを探したい」と話す。

 少女たちは、将来どんな家庭を望むかについてしゃべるよう誘導されているようだ(制作側もこれは失敗だった

と認めている)。僕が彼女たちに共感できなかったのはこのためだろう。7歳児なら、いつかいい人と結婚して子

供を持っていい家に住みたい、なんて言うのは当たり前のことなのだから。

 でも番組が7年ごとに進むにつれて、出身階級が必ずしも人を運命づけるわけではないことが見えてくる。労働

者階級のトニーは競馬の騎手になることを夢見て、懸命に努力した。目標に近づき、実際にレースに何度か出場し

たが、プロとしてやっていくのは難しいと判断された。その後、彼は強い決意で「専門知識」を見につけ(ロンド

ンのあらゆる道を頭にたたき込んだ)、個人タクシーのドライバーになった。彼は成功し、35歳で裕福に暮らして

いる。ロンドンにしゃれた家を所有しているだけでなく、自分の子供たちにも乗馬の楽しさを教えるため、ポニー

を買い与えている。

 農家の息子ニックが通った過疎地域の学校は、クラスに彼1人しか生徒がいなかった。それでも彼はオックスフ

ォード大学に進学して物理学を学び、後にアメリカの大学で教壇に立つようになる。

 中産階級のニールの物語には胸が痛くなる。両親とも教師で賢く陽気だった彼は、21歳で心を病んでしまう。空

き家で寝泊まりし、ボロボロの服を着て建設現場で働いている。彼が大学を中退したのは、目指したオックスフォ

ードに進めなかった失望感からかもしれない。彼の精神的な問題が育った環境のせいなのかどうかは、番組では深

入りしていない。彼は28歳でも35歳の時点でも失業手当で暮らし、時にはホームレスになっていた。

 それでもニールは誠実さと思慮を失わない。希望を抱き続け、自分が暮らす社会に貢献したいと考えている(遠

く離れたスコットランドの島に暮らし、地域の小学校でクリスマス劇をプロデュースしたという)。

 施設にいた少年たちは幸せに暮らしているが、輝かしいキャリアは築いていない。2人ともこの結果は自分の恵

まれない環境のせいではなく、自身の性格や自分で下した人生の選択のためだと考えている点は、興味深いし立派

だと思う(サイモンはあまり野心家じゃなさそうだし、ポールは心配性だ)。

■格差への怒りはむしろ薄れる

 一見分かりやすく感じられる彼らだが、実際のところはそんなに単純でもない。ジョンは典型的な上流階級の子

供に見える。気取ったアクセントで話し、必要以上に正装し、狐狩りをし(21歳で)、考え方はひどく保守的だ(

ストライキは非合法化すべきだと14歳で言う)。上流の上流であるオックスフォード大学クライストチャーチ・カ

レッジに進み、上流の上流である法廷弁護士になった。彼についてこれしか情報がなければ、簡単に嫌いになれる

だろう。

 ところがジョンの言葉には知性と見識がある。人種差別が当たり前だった時代(1971年)に彼は、人間は自

らの力で変えられないものによって差別されてはならないと話している(つまり人間は、その行動や言葉によって

判断されるべきだという)。また自分の人生は恵まれているので、できるだけのことをなし遂げて社会に還元する

のが自分の責任だとも語っている(イギリスを離れて外国で高収入を得て暮らすのは、道徳的に誤っていると考え

ている)。

 その後、ジョンは(共産主義崩壊後に困窮していた)ブルガリア支援の団体を設立し、その活動に多くの時間と

エネルギーを費やすようになる。彼は銀のスプーンを口にくわえて生まれてきたような典型的な上流階級の人間に

見えるけれど、母親がブルガリア出身で、9歳で父親に死なれ、母親が働いて息子の学費を工面しなければならな

かったことが明らかになる。

 彼と同じ私立学校出身のアンドルーは、ケンブリッジ大学トリニティー・カレッジで学び、法律家になる。暮ら

しは裕福だが、彼も思慮に富み、自分の幸運への感謝を欠かさない。彼はたとえば、体制側の人々が自分の子供を

私立学校に入れることで、公立学校の窮状に無関心になりがちな点を心配する。

 彼の話を聞いていると、僕が抱く階級格差への怒りはむしろ薄れていき、「自分に与えられたチャンスを利用し

て最善を尽くした『いいやつ』じゃないか」などと思ってしまう。

 ドキュメンタリーに登場する全員について、面白い話をすべてここで紹介するのはとても無理だ(本当はそうし

たいところだけれど)。あまりにも複雑すぎる。

 そしてこれこそが、この番組がさりげなく、力強く伝える重要な点だと思う。階級は運命であり、育った環境や

話し方、装いで人間を理解できると、僕たちは考えるかもしれない。

 いや、そんなことはできっこない。僕の新しい「友人たち」が教えてくれたように、人間の生活、そしてイギリ

ス社会は、はるかに複雑だ。


http://www.newsweekjapan.jp/joyce/2015/08/post-96_3.php

[32削除理由]:削除人:関係が薄い長文


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