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ソニー、アバクロ…強いブランドが企業を滅ぼす?過剰な慢心=「全能感」病の罠(Business Journal)
http://www.asyura2.com/15/hasan100/msg/378.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 9 月 06 日 00:27:10: igsppGRN/E9PQ
 

                    アバクロの店舗(「Wikipedia」より/Wideangle)


ソニー、アバクロ…強いブランドが企業を滅ぼす?過剰な慢心=「全能感」病の罠
http://biz-journal.jp/2015/09/post_11416.html
2015.09.06 文=田中洋/中央大学ビジネススクール教授 Business Journal


■ブランドが強くなる結果

 強力なブランドを築くこと、これは現在では経営が目指す大きな目標のひとつになっています。もし企業が強いブランドを持てば、さほど営業努力をすることがなくても流通に商品を受け入れられ、広告やプロモーションもより効率的に実施することができます。また、さらにブランドが強力になると、ブランドが社会的な存在となり、ブランドの活動が注目され、わざわざ広告や広報活動を行わなくてもニュースになることもあります。例えばアップルのiPhoneなどはそのような例でしょう。iPhoneの新しいモデルの発表は、NHKのニュースでも報道されるほどです。

 このように強力なブランドを保有することのメリットは、すでに多く語られてきました。しかし、強力なブランドを持つことのデメリット、マイナスの側面についてはあまり語られてきませんでした。強いブランドを持つことによって、ネガティブな側面が出てくることがありうるのです。

 ブランドが長い間トップの地位にあり、その地位をおびやかす競争相手が弱いとき、そのブランドを保有する企業の社員には、一種の「ゆるみ」が生じることがあります。企業の創業者が大変な努力をして事業を立ち上げたにもかかわらず、創業期が終わってあとから入社してきた社員たちにとって、自社ブランドの地位は絶対に揺るがないものに見えることがあります。

■ブランドへの過信

 ブランドが強力になることの反動として出てくるのは、ブランドへの過剰な自信や慢心です。こうした現象を「ブランド全能感」(brand omnipotence)と呼んでみましょう。これは、そのブランド企業の社員やトップが抱く、自社のブランドの強さは絶対的なもので、ブランドが何をしてもどのような主張をしても社会的に受け入れられるというような、傲慢な態度を指しています。

 全能感という用語は、オーストラリアの心理学者、ジークムント・フロイトなどによる精神分析の文脈で、「幼児期全能感」(infantile omnipotence)として語られてきました。これは、私たちがまだ赤ちゃんや乳児であったころ、誰しもがもつ全能感、つまり親に保護されている身分でありながら、「自分(乳児)は全能の存在でなんでも身の回りの人たちは言うことを聞いてくれる」と考える傾向を指しています。もちろんこうした幼児期の全能感は、成長するにつれて現実とぶつかる中で解消されていくのが普通です。

 つまり、全能感とはまず、自分が他者の手で護られているにもかかわらず、自分が一番で完璧な存在であると思いこむ勘違いから生じることがわかります。

 こうした幼児期全能感は、大人になっても姿を変えて発現することがあります。精神医学では、こうした状態を「誇大観念」(grandiose)と呼んでいます。誇大観念の、より病的な状態が誇大妄想です。ナルシスティックな自己愛的人格を持つ人には、往々にしてこうした誇大観念が見られます。こうした誇大観念には、傲慢さ、自己没頭、注目願望、自己主張などの傾向がみられます(『恥と自己愛の精神分析』<岡野憲一郎/岩崎学術出版社>)。

 つまり、誇大観念を抱いた人は、周りの人に大きな態度で接したり、周囲の人に留意することなく自分のやることに没頭したり、周囲から注目されたいと思ったり、自己主張が激しくなる傾向があるのです。

 企業でも、自社ブランドが絶対だと思うと、このような行動がみられるようになります。それでは、企業が自社のブランドを絶対視し「全能感」を抱くようになると、具体的にどのような症状が出てくるでしょうか。

■ブランド全能感の症状(1):永続感

 ブランド全能感の第一の症状は、ブランドの「永続感」です。自社のブランドの存在は絶対的なものであり、環境がどのように変化しても大丈夫だ、あるいは一時的に変調があったとしてもすぐに回復する、と考えてしまう傾向です。

 ブロック玩具で世界最大規模の企業であるレゴ社は2004年に競争の激化により、310億円という大きな赤字に陥りました。当時CEO(最高経営責任者)に就任したのはクヌッドストープ氏でした。そのときに彼と一緒に再建を任された前CFO(最高財務責任者)が言った言葉は次のようなものでした。

 「こんなにひどい業績を見たのは生まれて初めてだ。何もかもひどい。まったく儲けが出ていない。売り上げの予測すら立てられない。なのに、誰もが満ち足りた顔をしている。これこそ不思議だ」(「日経ビジネス」<日経BP社/2月16日号より>)

 これは象徴的な言葉です。赤字に陥っていながらも、社員は誰も危機感を持っていないのです。レゴ社は身売りさえ囁かれているというのに、おそらく社員は「うちの会社は大丈夫だ、なんせレゴなんだから」と思っていたのかもしれません。

 これがブランド全能感から出てくる自社の永続感です。誰しもが認める強力なブランドを築いたレゴですが、強力なブランドを構築した後では、それが社員にとっては何もしなくてもブランドは永遠に続くと思わせ、イノベーションの必要を感じさせなくなっていたのです。

 レゴ社の改革に立ち上がったクヌッドストープ氏は、その後、コモディティであるブロック素材をそのまま売る「バケツ」ビジネスを縮小しました。その代わり、多角化した事業を整理するとともに、より付加価値の高い「プレイテーマ」、つまりストーリーをもつスター・ウォーズのようなセットを提案することでレゴは蘇りました。

■ブランド全能感の症状(2):自己主張

 ブランド全能感の2つめの症状は、自己主張のありようにおいて現れます。特に、トップマネジメントが「わが社は間違いを犯さない、自分たちの意見は絶対的なものだ」「他者の自社への批判は当たっていない」と思いこむ傾向です。

 すぐに思い出されるのが、雪印乳業が2000年に起こした「雪印集団食中毒事件」です。この事件では約1万5000人が被害を訴えた戦後最大級の食中毒事件でした。この事件で有名になったのは、当時社長だった石川哲郎氏がエレベーターに乗ったとき記者に詰め寄られて「私は寝ていないんだよ!」と発言したことが大きく報道され、事故を起こした当事者にもかかわらず傲慢な態度として当時大きく取り上げられました。これが大きなきっかけとなり、クリーンで純粋なイメージだった雪印ブランドの威力は地に落ちました。

 当時雪印乳業に勤務してこの事件を経験した人物に、鳥越淳司氏という人物がいます。鳥越氏はこの事件のさなか、雪印乳業の営業社員として関西エリアの被害者を回って見舞う仕事をしています。鳥越氏は雪印をのちに辞めて、群馬県にある相模屋食料という企業の社長になり、豆腐製造業として同社を日本一の会社に導きました。

 鳥越氏は雪印時代の経験を振り返り、自著の中で次のような教訓を得たと語っています。「自分が誇っていいのは、自分がやってきたこと、自分にできること」だけだと。それまで雪印という「一流企業」に勤めていた誇りはしょせん、ほかの誰かがつくってくれた誇りにすぎなかったのです。

 つまり、強い企業ブランドは過去の栄光と実績によってかたちづくられてきたものであって、それを現在の企業の社員やトップが笠に着ることは許されないということになります。しかしこうした傲慢さは、ブランドが強くなるほど、起こり得ることとしてあちこちにエピソードを残しています。

 アップルの創始者である故スティーブ・ジョブズ氏は1995年のインタビューの中で、自分がアップルから追い出された85年の経験(その後、97年に復帰)について、追い出した当人であるジョン・スカリー氏について次のように言っています。

「私がアップルを去ったとき、スカリーは深刻な病に侵された。同じ病にかかった人を見てきたが、彼らはアイデアを出せば、作業の9割は完成だと思い込む。社員が具体化してくれると思い込む。しかしスゴいアイデアから優れた製品を生み出すには、大変な職人技(craftsmanship)の積み重ねが必要だ。それに製品に発展させる中でアイデアは成長し変容する。細部を詰める過程で多くを学ぶし、妥協も必要になってくるからね」

 ジョブズ氏のスカリー氏に対する言い分が正しいかどうかは別として、ここにはアップルブランドが形成されてきた秘密が隠されています。それはブランドの形成とは、積み重ねのプロセスの中にあるという認識です。つまり、ブランドの強さの秘密は製品づくりのプロセスの中にあり、いったん完成された揺るぎないものと思い込むことが間違いなのです。

 米アバクロンビー&フィッチ(アバクロ)のCEOであったマイク・ジェフリーズ氏は、92年から就任していたCEO職を14年に退きます。その当時、彼が06年にサロン誌のインタビューに対して行った発言が批判されています。それは次のようなものでした。

「我々はかっこよくて、見栄えのする人たちに対してマーケティングを行っている。それ以外の人たちはターゲットにしていない」 (米誌「フォーチュン」14年12月9日号)

「どの学校にもかっこよくて人気のある子どもはいる。同時にそうではない子どももいる。正直言って我々はかっこいい子どもだけを相手にしている。我々は、魅力的で、すばらしい人柄で、友達がたくさんいるすべてのアメリカの子どもを相手にしている。多くの人々はそうした子供たちではないし、そうした子どもにはなれない。我々は排外的ではないかって? そのとおり」(米誌「シカゴ・トリビューン」13年5月11日号)

 こうした発言も、やはりブランド全能感がもたらす弊害のひとつではないかと考えられます。つまり強力なブランドならば、差別的発言であろうが、どのような発言も許される、というような態度です。これも幼児期全能感のように、実はブランドによってかろうじて自分が護られているにもかかわらず、「自分自身が全能なのだ」と勘違いする態度を表しています。

■ブランド全能感の症状(3):成長への誤解

 3点目のブランド全能感の現れは、次の自社の成功ステップを間違う点です。自社のブランドにとらわれてしまった挙句、次の成功をどの方向に見いだしたらよいかわからなくなることです。

 例えば、ソニーブランドが凋落した原因についてはさまざまに語られています。ソニーブランドが強力と信じられてきた2000年代初め頃まで、誰しもがソニーブランドの強さを疑わなかったようにみえます。前出のジョブズ氏は、ソニーの問題点とはソフトウェアに力を入れなかったことだと言っています。

「本当に偉大な、日本のコンシューマー・エレクトロニクスの会社があって、それがポータブル・ミュージックの市場を支配していました。自分たちで長い時間で創り出して、自分たちで支配したのですが、彼らは適切なソフトウェアをつくれませんでした。適切なソフトを考え、インプリ(実行)することができませんでした。なぜならiPodはまさにソフトウェアなのです。iPodに入っているのはソフトウェアなのです。PCやMacに入っているのはソフトウェアです。iPhoneが何であるかといえば、こう考えてほしいのですが、その本質はソフトウェアなのです」(動画共有サイト「YouTube」-『スティーブ・ジョブズが語る ソニー失敗の本質とアップルの本質』より)

 もちろん、ソニーがソフトウェアに力を入れなかったわけではありません。ゲームやテレビ、スマートフォンについてそれなりに優秀な製品を送り出してきて、その中身がソフトウェアであることはソニー自身がよく理解していることでしょう。

 また、実際ソニーがやってきたことは、つい先ごろまでアップルのやってきたことに先んじていました。すでに68年にCBSソニーレコードを設立し、89年に映画会社コロンビアピクチャーズを買収したように、ソニーはソフトウェアの重要性に早くから気づいていました。また、00年に「エアボード」というパーソナルITテレビを発表し、iPadを先取りしていました。同年には「クリエ」というPDAを発売し、これは電話機能こそついていませんでしたが、iPhoneのコンセプトを先取りする製品でした。

 しかし結果として、ソニーがアップルの後塵を拝するようになったのは、何が原因だったのでしょうか。

 おそらく、アップルのようにブレークスルーを生むひとつの製品に徹底して集中できなかったことではないでしょうか。ソニーはそれまで広げてきた事業範囲があまりに広すぎました。金融、エレクトロニクス、映画、音楽、製造……。自分たちの持てる資源が大きすぎ、それらを統合して集中することができなかったのではないかと考えられるのです。

 再び、ジョブズ氏が言ったことに立ち返って考えてみましょう。ソニーブランドが凋落した大きな原因は、さまざまな事業範囲に手を広げることで、他社よりも卓越した優秀なソフトウェアをベースとした製品の創造に集中することができなかったことにあるといえるでしょう。

 つまり、ブランドがあまりに偉大になってしまうと、それまで自分たちがやってきたことを否定することが難しくなってしまうのです。ブランドが強力になる代償とは、自己否定を困難にさせてしまう点にあるといえます。

■グーグルの「循環」

 では、このようにブランドが強力になると引き起こされるブランド全能感を避けるには、どうしたらよいのでしょうか。

 よくいわれるのは、「危機感を持て」というようなフレーズです。しかし、危機感を持つだけでこの全能感の問題が解決するわけではありません。フロイトが考察したように、もともと人間は全能感を持って生まれてくる存在です。つまり我々の能力の中に、すでにこうした全能感が埋め込まれているのです。したがって、ブランドが強力になるにつれて、こうした問題が不可避的に浮かび上がってきます。

 すべての解決になるかどうかは別として、米グーグルがやろうとしていることは、そのひとつの解決策であろうと考えられます。

 グーグルでは優秀な技術者を雇い続けるために、「自分が世界を変えている」と思わせるプロジェクトを次々と立ち上げています。共同創立者であるラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンは、次世代の主要な技術動向を見逃さないことに全精力を注いでいるのです。つまり、「私たちの生き方を変えるような」サービスを常に開発できなければ、優秀な技術者を引き留めることができず、それがグーグルの危機につながるということを経営者が認識しているということです。

 ここでは、「革新的な製品を産み出すこと」、そのために「優秀な技術者を雇うこと」、さらにこのために「常に世界を変えるようなプロジェクトを立ち上げていくこと」という循環が生じています。この循環はいつまでも完結することはないのですが、この循環を維持していくことが、すなわちグーグルブランドを発展させていくことにつながっているのです。

 優れた、かつ強力なブランドを構築する上で避けられない全能感の問題は、企業が意識的に解決していかなければならないものなのです。

(文=田中洋/中央大学ビジネススクール教授)
 

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コメント
 
1. 2015年9月06日 19:03:37 : eYOBlOWYhI
先人が 築いた権威に 金縛り

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