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「覚悟もリーダー性もゼロ」東芝社長へ社内から容赦ない退任要求!「室町さんに再建無理」(Business Journal)
http://www.asyura2.com/15/hasan101/msg/313.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 10 月 07 日 00:45:01: igsppGRN/E9PQ
 

                       東芝の室町正志会長兼社長


「覚悟もリーダー性もゼロ」東芝社長へ社内から容赦ない退任要求!「室町さんに再建無理」
http://biz-journal.jp/2015/10/post_11839.html
2015.10.07 文=編集部 Business Journal


 不正会計問題で揺れる東芝は9月30日、幕張メッセ(千葉市美浜区)で臨時株主総会を開催し、室町正志社長の続投をはじめとする取締役11人による新体制が承認された。社外取締役は11人中7人となった。総会には1924人の株主が出席。開催時間は3時間50分に達し、同社としては過去最長となった。利益の水増しが行われていた当時副社長などを務めていた室町氏に対する批判が噴出し、再生は厳しい船出となった。

 株主23人が質問に立ち、「今回の問題について、室町さんはまったく知らなかったのか。気づかなかったのなら問題だし、黙認なら辞めた歴代3社長と同罪だ」との質問が飛んだ。8月の記者会見でも室町氏の社長就任について、「再生に向けて、アピールできないのではないか」との辛辣な質問が出ていた。株主の質問に室町氏は「第三者委員会の報告、委員長の会見でも、私自身の関与はないと認定された」と述べる一方、「経営責任は感じている」と認めた。

 また、総会では議決権行使助言会社、米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)が機関投資家に対して、問題が起きた当時取締役を務めていた室町氏ら3人の再任に反対票を投じるよう推奨していた。

 室町氏は「危機的な状況を乗り切ったら、後進に道を譲る」と語っており、暫定的な社長就任であると強調してきた。だが、創業以来の危機といわれている状況を打破するには、強力なリーダーシップが必要になる。東芝社員からは、「腰掛け社長では、家電など不採算部門の構造改革や再建などできない」「室町氏からは覚悟もリーダーシップも感じられない」と容赦ない声が聞かれる。

 総会で室町氏から、構造改革について具体的な言及はなく、株主らの怒号が飛び交った。壇上にいた7人の社外取締役が発言する機会はほとんどなく、出番はなかった。株主からは「歴代社長の指示による『粉飾決算』ではないか」「(過去に東芝再建を担った)土光敏夫さんの墓前で土下座すべきだ」「(訂正された)決算も信用できない」「日立はパソコンをやめた。東芝はどうするのか」など、経営陣に対する不信の根深さを示す発言が相次いだ。室町氏は「パソコンに加え、家電なども見直しの対象になる」と述べたが、「厳しい構造改革をやり遂げるだけのパワーは感じられなかった」(記者)という。

■株主から室町氏への厳しい評価

 東芝は10月2日、総会における取締役選任投票の結果を明らかにした。室町氏への賛成率は76.06%。反対は23.32%に達した。株主の4人に1人が反対したことになる。室町氏の社長就任について株主が厳しい見方をしていることを数字が裏付けた。

 室町氏のほかに、ISSが事前に反対を推奨していた代表執行役専務の牛尾文昭氏は賛成率74.68%(反対24.71%)、社外取締役で指名・監査委員会委員の伊丹敬之氏は賛成67.23%(反対32.16%)だった。伊丹氏は不正会計が行われている当時から社外取締役を務めており、責任を取らずに社外取締役を続投した。株主の批判は予想以上に強かったことを、数字が物語っている。

 社外取締役が主導するガバナンス改革への期待から、新任社外取締役は98%前後の高い支持を得た。中でも三菱ケミカルホールディングス会長で経済同友会の代表幹事でもある小林喜光氏は賛成率98.33%(反対1.06%)だった。取締役会議長に就任した前田新造・資生堂相談役は賛成98.32%(反対1.07%)だった。

 反対が32%を超えた伊丹氏は一時期、取締役会議長に就任と報じられていたが、取締役会で反対の声が多く出て、就任が見送られた経緯がある。室町社長をはじめとする続投した役員に対する風当たりは、会社側が想像した以上に強かったことがわかった。室町氏は10月1日、「株主からの厳しい評価を真摯に受け止め、再建に向け、最大限の努力をする」とのコメントを出した。

■「悠長な受け答え」

 10月1日、室町氏は7月の社長就任後初めて、報道各社の共同インタビューに応じた。室町氏自身、在任期間について「3年はない」と述べた。株主総会で社長に再任された直後の経営トップが「いつまでやるのか」と問われること自体、通常とはいえない。9月の会見で示唆したパソコンや家電の国内撤退の可能性については、「改革に制約を設けないという意味。現時点では、そこまで考えていない」と軌道修正した。

 さらに、「ディスクリート(単機能半導体)とシステムLSIについては、ある程度方向付けはできる。11月初旬に予定する、15年4〜9月期決算までに発表したい。映像や白物家電、パソコンも、11月初めにはある程度の方向性を出したい。不振事業の人員削減については、可能性はあるとだけ申し上げる」とした。「創業以来の危機に瀕している会社のトップとしては、実に悠長な受け答え」(経済記者)といえる。

 関西などの弁護士でつくる「東芝事件株主弁護団」は9月から、株価下落で損害を被った個人株主向けに説明会を始めた。個人株主は全国に40万人以上いる。株価下落に伴う被害総額は1000億円から1500億円と推定されている。米国の法律事務所も、個人株主に集団訴訟への参加を呼びかけている。

 奈良県に住む個人株主は東芝に対し、現役と過去の役員28人に対し、10億円の賠償を求める訴訟を起こすよう請求している。もし、会社が動かなければ、歴代経営陣を直接訴える構えだ。28人の中には、問題発覚後に引責辞任した田中久雄前社長ら歴代3社長のほか、室町氏も含まれている。東芝は役員の責任の有無などについて検討する「役員責任調査委員会」の提言を踏まえ、11月8日までに提訴するかどうかを判断することになっている。

■社長の信任を問う無記名投票

 東芝は社長の信任、不信任を問う無記名投票を11月に実施することになっている。執行役、統括責任者、事業部長、支社長など上級管理職120人が無記名で行う。不正の再発防止が目的で、まず室町氏が信任されるかどうかが試される。

「社長自身の法令順守(コンプライアンス)姿勢に問題はないか」と「経営者として行動全体を信任するか」を問う。「問題なし・信任する」「どちらでもない」「問題あり・信任しない」の3つの選択肢がある。不信任が20%以上になった場合は追加調査を行い、問題点を把握する。投票結果は取締役候補を選任する指名委員会に開示し、社長再任の判断材料とするが、結果は公表しないことになっている。

 信任投票制度の導入は、社外取締役の伊丹氏の発案とされる。室町氏は不正会計に関連して、役員以外の幹部・管理職の処分対象者が30人前後になるとの見通しを10月1日の共同会見で明らかにした。役員の責任の有無を調べている「役員責任調査委員会」が11月中に結論を出すが、これを受けて管理職の減給などの処分を実施する。解雇はなく、減給以下の処分になる見通しだ。「幹部・管理職が30人前後処分されれば、社内に『やってられない』といった空気が、さらに強くなるだろう」(東芝筋)

「取締役会が西室泰三相談役を切れるかどうかが当面の焦点だ。相談役・顧問制度を廃止すればいい。室町さんは西室さんの言いなり。ただ、力関係が変われば、室町さんは取締役会側につく可能性はある」(東芝役員OB)

 16年3月期の業績見通しは悪い。東芝としては早く痛みを伴う経営再建・事業の刷新に踏み出さないと、じり貧になる。

「年内に社外からリーダーシップを発揮できる社長を選び、バトンタッチして、室町さんはその後1期くらい会長を務めて辞めるのが一番いい」(同)

「東芝が再建に向けてまず取り組むべきは、西室さんと室町さんの影響力を排除すること」(東芝社員)との厳しい声も聞こえてくる。

(文=編集部)

 

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コメント
 
1. 2015年10月08日 00:27:33 : gjSWR86AiA
西欧の重電大手のアセア・ブラウン・ボベリが原発事業から撤退していた時代に、東芝はウェスチングハウスを買収していたのである。それも、売れるものは全て売ってしまった後の、原発部門しか残っていない状態の同社を、当時のレートで6,600億円で買収していたのである。それだけで、東芝は心中を選んだに等しい。

このような状態では、とてもじゃないが東芝の再建は不可能だろう。売れる部門を切り売りしても、少しだけ延命できるだけだろう。

パソコン部門は、かつてノート型パソコンで世界の3割のシェアを取っていた。それが今や、無残な姿だ。(日本国内では、まだ存在感はあるが、外国では忘却されたに近い状態。)

根本的てこ入れが行なわれなかったのは、やはりかつての東芝ルポと呼ばれるワープロ時代の栄光が忘れられなかったからだろう。確かにあの頃は、東芝のワープロは飛ぶように売れた。今から考えたら、各社とも強気の商売をしていたな。

皮肉にも、その当時にワープロが強かった東芝、NEC、シャープの3社が、その後まとめて経営不振に陥ってしまった。これ、偶然とは考えられない。

ワープロに強かったメーカーは、ガラパゴスになってしまったのでは。つまり、他国で通用しないマーケティングの会社に成り果ててしまったと言うべきか。当方、ワープロに慣れ親しんだため、その後に外国に行くようになってから、パソコンを覚えるのに苦労したからである。

●話が脱線したが、かつて日本メーカーが世界市場を席巻したテレビジョンの栄光は、今やどこにもない。これもVTRに固執して、自らダメになったのに似ている。今や世界のテレビジョンのメーカー勢力図は、南朝鮮を急速に追い上げる中国大陸のメーカーに主導権が移っている。その中でもパナソニックは頑張っているけど、他の日本メーカーは、もはや過去のメーカーになってしまった。東芝は、それの典型例である。

かつて世界的な音楽ソフトの会社、東芝EMIを売却したのは、これから原子力とか社会インフラで生きていく選択をしたからだと思うが、社運をかけた原子力が、今や大コケの状態である。ウェスチングハウス買収を決めたのは、西室だろ。今度は郵便局の株式を国際ユダヤ勢力に売ろうってか。このような売国奴を相談役などに据えているようでは、東芝は「凍死場」になるのは確実。

原子力じゃない社会インフラ事業にしたって、ライバルに負けているじゃないか。
例えば、これ。

日本製勾配用電気機関車のブロアー音 =ニュージーランド国鉄EO型=
https://www.youtube.com/watch?v=bHRjX0kM93Y

これは東芝製なのだが、後継機はこれ。

DALIAN Locomotive..New Zealand Rail DL Class 中国-大連機車車輛製ディーゼル機関車
https://www.youtube.com/watch?v=v6aakbcT2Xk

●電化の経費は高いことから、貨物用機関車のディーゼル化の動きが外国では進んでいる。東芝も、この手の電気式ディーゼル機関車をカタログに載せている。しかし、受注できた案件は極めて少ない。日本製は価格が高く、その割に他国製品に対するアドバンテージが見られないからである。

東芝が本気で生き残っていくためには、この分野で中国大陸メーカーに勝たないといけない。今の同社の状況では、無理だと思う。


2. 2015年10月20日 02:57:21 : jXbiWWJBCA
多くの企業が東芝と同じ不正に手を染めている 企業不祥事研究の第一人者、樋口晴彦・警察大学校教授に聞く(前編)

2015年10月20日(火)中野目 純一

 組織ぐるみで不正な会計操作をしていた実態が明るみに出て、歴代社長3人が辞任する事態に至った東芝の会計問題──。
 日本を代表する“名門企業”で発覚した不祥事からどのような教訓を導き出し、同様の不祥事の防止につなげるべきなのか。危機管理の専門家で、企業不祥事研究の第一人者である樋口晴彦・警察大学校警察政策研究センター教授に聞いた。同教授のインタビューを2回にわたって紹介する。
(聞き手は中野目 純一)

9月7日の決算会見で陳謝する東芝の室町正志会長兼社長(写真:ロイター/アフロ)
今回の東芝の会計不祥事の内容についてどう見ていらっしゃいますか。

樋口:個別の手口を分析すると、はっきり申し上げて、よく聞く話ばかりです。ですから、東芝だけがやっているのではなくて、程度の差こそあっても、こうしたことをやっている会社はざらにあります。東芝は(売上高の)規模が大きいために金額が大きくなりましたけれど、売上高に占める比率から見ると、東芝並みの比率で不正をしている企業も、それほど少なくないのではと思います。

東芝は非常に特殊な例ではなくて、会計操作といったものはかなり広範に行われている。東芝のような大規模な会社で行われたから、不正のスケールが大きくなった。

樋口:上場企業でもやっているところはたくさんあるのでは。そうした話はよく聞きますからね。例えば、期末の押し込み販売ぐらいはよく行われていますよ。工事進行基準についても、極めて裁量の余地が多いものですから、そのあたりでちょっとごまかしをやっているところは、決して少なくないでしょう。

確かに私も製薬業界を担当していた時には、大衆薬メーカーが取引先に取りあえず押し込み販売をして、それで次の期の初めに買い戻すことで売り上げを立てるといった話はよく聞きました。

ありふれたパターンの再発防止に取り組んでいない

そうなりますと、今回の東芝の件で新たな手口として着目しなければいけないものはないと。

樋口:むしろ「またこのパターンか」という印象を持ちました。私は不祥事の原因メカニズムと呼んでいますが、不祥事を誘発したり助長したりする原因構造のパターンがいくつかあり、会社の体質や事情に応じて、そのパターンが組み合わさる形で不祥事が発生するのです。

 今回の東芝の不祥事についてざっと見たところでは、過去の不祥事でも散見されたパターンばかりですね。そういう意味では、決して特殊ではありません。逆に言いますと、日本企業の場合、そのようなありふれたパターンに対しても防止の取り組みをしていないケースが多いのですよ。

 むしろ、ありふれたパターンの組み合わせで起きた不祥事だからこそ、ほかの企業にとっても他山の石として学ぶ余地は大きいですね。

これまでは同じようなことが繰り返し起きていて、他山の石として学べるところが多いのに学ばず、再発防止の有効な対策が打てていないわけですね。

樋口:不祥事を起こした企業は「反省しました」と言います。確かに反省しているのでしょうが、問題となった原因メカニズムを解消するような具体的な対策は施していない。

 「お詫びをします」「担当者を処分しました」「社内教育をしっかりとやります」、それでおしまいです。あと最近よく見受けられる対策は、「○○委員会や△△対策室を作りました」「××マニュアルを新たに整備しました」などです。そのように制度上の監視の仕組みを充実いたしましたということで幕を引くわけですね。

 今年8月に出版した『なぜ、企業は不祥事を繰り返すのか−有名事件13の原因メカニズムに迫る』(日刊工業新聞社)という著書で、最近の企業不祥事13事例の原因メカニズムを分析したのですが、再発防止のために本当に必要なのは、その原因メカニズムの構図をつぶすことです。

 先述のように、委員会や対策室を作ったり、マニュアルを整備したりといったことには意味がないと、私は常々申し上げています。その理由は新著にも書きましたが、私がこれまで分析したすべての不祥事で、まさに100%ですが、不祥事を防ぐためのリスク管理や内部統制の仕組みが社内に既にありました。にもかかわらず、それが機能不全に陥っていたために、不祥事が起きてしまったのです。

 ですから、本当に対処すべきは、そういったリスク管理の仕組みを機能不全に陥らせた原因メカニズムであるはずです。そうした原因をなくせば、これまでのシステムだけで対応できます。もしも不祥事の原因メカニズムが残っていたら、新しい仕組みや制度を追加したとしても、やはり同じように機能不全に陥ってしまうだけです。

閉鎖的な人事が不正の温床の一つに

 東芝の不祥事におけるポイントの1つは、財務、経理部門にいったん配属されたら、ずっとそこに所属し続けることです。ある程度大きな会社では避けられないことですが、はっきり申し上げて、このように閉鎖的な人事ローテーションをすれば、内部統制環境がだめになるのは当たり前のことです。

 同じようなパターンとして、新著で紹介した東海ゴム工業の労働安全衛生法違反事件が挙げられます。この事件で違反の舞台となったのは、プラントの補修課です。その課内で人事の長期化によって統制環境が悪化していたため、法的に問題がある補修工事に対して誰もが「おかしい」と内心は思いながらも、それを指摘することができなかった。


樋口 晴彦(ひぐち・はるひこ)氏
警察大学校警察政策研究センター教授。1984年東京大学経済学部卒業。上級職公務員として警察庁入庁。外務省、内閣官房内閣安全保障室への出向経験あり。94年米ダートマス大学経営大学院でMBA(経営学修士)取得。2012年に組織不祥事研究で博士(政策研究)を取得。危機管理、リスク管理に関して広い知見を有し、特に企業不祥事の研究では第一人者。危機管理システム研究学会理事。失敗学会理事。主な著書に『組織の失敗学 (中災防新書)』(中災防止新書)、『組織不祥事研究』(白桃書房)、『悪魔は細部に宿る 危機管理の落とし穴(祥伝社新書)』(祥伝社新書)、『なぜ、企業は不祥事を繰り返すのか−有名事件13の原因メカニズムに迫る』(日刊工業新聞社)など
 なぜ人事の長期化、すなわち、人員の固定配置が進んだのかといえば、圧力容器を扱う関係でボイラーの資格が必要だったことがあります。それと同様に、専門的な知識やノウハウが必要とされる財務や経理についても、人員が長期的に固定化するのはある程度まではやむを得ないでしょう。しかし、「それはそういうものだ」と放置してはいけません。

 同じように財務・経理部門が暴走した典型的な事例が、やはり新著で紹介したオリンパスの不正会計事件ですね。あの場合には、財務部門の中でも限られたエリートたちが、まさに会社全体を支配していました。

 不正会計の親玉に当たる人物が昇任により異動すると、その後任には一番の子分が就くといった形で、継続的に本社の中枢機能を支配していたのですね。このように人事ローテーションが閉鎖的であることは不正の温床になります。それを何とかしないといけません。他部門との人事交流などの形で、もう少し現場の風に当てることです。

 さらに、東芝の監査委員会には社外の監査委員もいましたが、財務や経理に関して十分な知見を有した者はいなかったようです。これもまさにオリンパス事件や大王製紙会長による特別背任事件と同じパターンです。株主総会の議決権行使助言大手、米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)も問題提起していますが、はっきり申し上げて、財務諸表が読めない人を監査役に充ててはだめですよ。

 元官僚や弁護士、あるいは学者の先生方は確かに著名人で有識者かもしれません。ですけれども、財務諸表を読めない人を監査役に任命するのはおかしい。残念なことに、こうした話が非常に多いですね。社外役員についても同様ですが、その人選に恐ろしく問題があるというのに、それについてあまり議論が提起されてない。

閉鎖的な組織では人間関係の縛りが大きくなる

人事ローテーションが閉鎖的になるといったところが不正の温床になって、内部統制の仕組みはあるのに機能不全に陥っていた。この因果関係についてもう少し詳しく伺えますか。

樋口:人間関係が濃厚になって、それが不正の温床に転じるということです。小さなグループの中では同調心理がどうしても強くなりますからね。

一部の同質的な集団の中で、そこでいろいろ問題があるのは分かっているんだけれど、上や周りの目を気にして口にできない…。

樋口:問題を指摘したら自分はどうなるのか。先輩の○○さんにはずっとお世話になっているから逆らえないといった心理が働きます。

 本来、仕事というものは会社のルールに則して行わなければいけません。しかし、人事が閉鎖的な職場だと、ルールよりも人間関係の縛りの方が大きくなってしまう。人間である以上、そうした閉鎖的な集団を作ってしまえば、そうなってしまうのはむしろ当たり前だと思います。

そこから出たらやっていけないし、その内部の中で少しでもはい上がろう、出世しようと思ったら、上の言うことに問題があると思っても聞かざるを得ないということですね。

樋口:同じパターンでは、メルシャン水産飼料事業部の循環取引事件が挙げられます。この事件の背景には、水産飼料事業部の存続という問題がありました。この事業部では、不採算事業として清算されることを恐れていた。関係の深い某企業に事業部ごと売却してほしかったのですが、そうしてもらうためには、事業が順調にいっていることを証明しなければならなかった。そこで、循環取引を利用して業績を好調に見せかけたというわけです。

 この事件でのポイントは、(ワイン大手の)メルシャンという会社の中では、養殖魚の餌を手掛ける水産飼料事業部は極めて異質な部署だったことです。本業のワイン事業との人的交流はほとんどなく、事業部に在籍しているのは、魚一本やりの人たちばかりです。彼らにしてみれば、水産飼料事業の存続と自分の将来はイコールですから、当時の事業部長が首謀者になって循環取引を開始し、その偽装工作に皆が従いました。

監査役や社外役員の人選に問題があるというお話があったんですけれども、具体的におっしゃっていただくと…。

樋口:例えば、創業家出身の会長による特別背任事件が発生した大王製紙の場合、3人の社外監査役がいましたが、そのうち2人は創業家のドン(当時の役職は最高顧問)の高校時代の同級生でした。

高校の同級生ですか。

樋口:ちなみに、社外役員の「社外」の定義については、日本の基準がかなり歪んでいます。とにかく外部の人物であればいいという発想なんですね。一方、グローバルスタンダードでは、社外と独立性はイコールと認識されています。つまり、形式的には外部の人物であったとしても、実質的にはインナーであって独立性を発揮できないような人物は社外と見なされない。ところが日本では、実際にはインナーで独立性が全くなくても、社外役員と認められてしまうのです。

 例えば、ある社外役員について、彼の収入のほとんどが役員報酬であった場合、つまり、社外役員としての報酬に彼の生活がかかっている場合、それを社外と言えますか(笑)。

それは言えないでしょう。


樋口:独立性を確保するためにはどうすればいいかという条件はいろいろあります。これについて、「日本における社外取締役の現状と課題 −その独立性と機能の確保を中心に−」という論文に詳しく書きました。この論文はネットでも公開されているので、どうか参考にしてください。そのポイントとなるのは、社外役員といえども、企業への依存度が高い場合には、独立性を失うのは避けられないということです。こうした事態を防ぐには、そもそも社外役員を選出する仕組みそのものから考えなければいけません。結局のところ、現在のやり方には、「監視される側が監視人を選んでいる」という、大きなパラドックスがあるのです。

 言い換えれば、監視される側が監視する側を恣意的に選べないようにするような社内の仕組みを作る。それがすごく重要なことです。

その有効な仕組みとして、どういったものを作ったらいいのでしょうか。

樋口:それについては、残念ながら堂々巡りになってしまうところがあります。まずはどなたか独立性のある社外役員がいないといけない。そうした本物の社外役員がいるということを前提にした上で、その人が独立した立場で次の社外役員の人選をすればよい。次善の策としては、社外役員を選ぶプロセスを「見える化」することが挙げられます。特に社外役員と経営者との交際関係については、株主総会などの場でできるだけ詳しく情報開示する。そうすれば、経営者のゴルフ仲間や高校の同級生を選ぶのは難しくなりますよね。

そうですね。

樋口:オリンパス事件の場合には、まさに滅茶苦茶でした。社外役員はぞろぞろいたのですが、全員が使い物になりませんでした。まずはノーベル賞を受賞した米国の経済学者で、取締役会への出席率はわずか4%。名義貸しのようなもので話になりません。次に医科系大学の元教授。この方は内視鏡関係の学会の理事長だった方ですが、その学会の設立運営にオリンパスが多額のお金を出していました。

 そして日本経済新聞社元取締役。当時は彼が代表取締役を務めていた広告会社とオリンパスの間で取引関係がありました。さらに野村証券の元社員。彼は、不正会計の指南役とされていた人物と野村証券で席を並べていたことがありましたので論外です。このオリンパスのケースのように、こんな人物を選んでは明らかにだめでしょうというケースが少なくないのですよ。

(後編に続く)

このコラムについて
キーパーソンに聞く

日経ビジネスのデスクが、話題の人、旬の人にインタビューします。このコラムを開けば毎日1人、新しいキーパーソンに出会えます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/238739/101400068/


3. 2015年10月21日 08:37:39 : jXbiWWJBCA
東芝の不正に大きく影響した成果主義の弊害

企業不祥事研究の第一人者、樋口晴彦・警察大学校教授に聞く(後編)

2015年10月21日(水)中野目 純一

 組織ぐるみで不正な会計操作をしていた実態が明るみに出て、歴代社長3人が辞任する事態に至った東芝の会計問題──。
 日本を代表する“名門企業”で発覚した不祥事からどのような教訓を導き出し、同様の不祥事の防止につなげるべきなのか。危機管理の専門家で、企業不祥事研究の第一人者である樋口晴彦・警察大学校警察政策研究センター教授に聞いた。今回はインタビューの後編をお届けする。
(聞き手は中野目 純一)

(前編から読む)

内部統制などの仕組みを機能不全に陥らせることなく機能させるために、どういうことから取り組んだらいいのでしょうか。

樋口:すべての不祥事の防止に効果があるような「特効薬」はありません。原因メカニズムを構成する個々の問題点について、それぞれ手を打っていくしかありません。例えば、先述した社外取締役の人選も、具体策となると本当に細かい話になりますよね。そうしたポイントを一つずつきちんと押さえていくことが重要です。

 具体的な細かいことをいろいろと手当てしていくのは、結構大変なことです。さらに、細かいことだけではなくて、企業の体質や社内制度といった大きなものにも手を付けざるを得なくなることがあります。

 今回の東芝の件でも、成果主義が相当に影響したとされていますが、このように成果主義が不祥事の原因メカニズムとなったケースは過去にも少なくありません。例えば、東京都の認可基準に適合しないディーゼル車排ガス浄化装置(DPF)を販売していた三井物産の事例が挙げられます。この事件の背景として、成果主義によって社員個人が自分の業績だけを追求する風潮が広がっていたことから、同社は人事評価制度を大きく見直しました。

依然として後を絶たない成果主義の弊害

東京都から認可を取得する際に、虚偽の試験データを作成・提出していたという事件でしたね。

樋口:最近も成果主義の弊害がいろいろな企業で続出していますが、裏を返せば、そうした問題に対する手当てがなされていないということです。新著『なぜ、企業は不祥事を繰り返すのか−有名事件13の原因メカニズムに迫る』(日刊工業新聞社)で取り上げたアクリフーズ(現マルハニチロ)の農薬混入事件もひどかったですね。この会社では契約社員にも成果主義を適用していたのですが、経営者が成果主義というものを全く理解していなかったと言わざるを得ません。

 成果主義というのは、「本人の努力次第で業績を伸ばせること」が前提となります。そのためには、本人がある程度の裁量権を持っていないといけない。そうした裁量権が全く与えられず、言われた通りの仕事をこなすだけの契約社員に成果主義を適用すること自体がおかしいのです。「契約社員のやる気を引き出すため」と言い訳していたようですが、本音のところは人件費の削減が目的だったのでしょう。アクリフーズでは、成果主義の導入によって、契約社員全体の平均年収が大きく減っていましたからね。

 それ以外の企業でも、成果主義がうまくいっていないケースが少なくありません。その多くは、成果主義を上手に機能させるための仕組みについて全く考えていないからです。例えば、成果主義では本人の実力によって差がつく以上、個々の従業員に対して実力を伸ばすための教育プログラムを提供することが必要です。この対策は極めて分かりやすいですよね。こういうことをやっているかどうかで効果が大きく違ってきます。さらに成果主義といっても、結局は相対評価です。その場合に、自分個人の業績を上げるために、あえてチームを犠牲にするということが起きやすいのです。

 例えば、皆で10億円の売り上げを獲得するよりも、自分1人で1億円の売り上げとした方が個人の評価が相対的に上がるケースがあります。こうしたことを防ぐためには、成果主義を設計する際に、個人成績の比重とチーム成績の比重を加減しないといけません。言ってみれば当たり前のことですが、実際にはやっていない。

 それどころか、仕事の内容に関わらず、一律に成果主義を導入している企業が多いようです。私はこうした対応を「原理主義」と揶揄していますが、決してうまくはいきません。仕事の内容によって、個人とチームの比重は当然に変えるべきです。また、各人がばらばらに営業をしている場合は別として、ある程度チームで動くような職場であれば、役割分担があってしかるべきです。こうした点について、評価の基準をいろいろ微調整しなければいけません。

 ところが、そうした微調整をするための裁量権を現場の管理職に与えているかといえば、ほとんど与えていないのです。「人事部で制度を決めてしまったから、あとは一律これでやってくれ」といった感じです。

 さらに成果主義で社員のやる気を引き出す大きなポイントは「納得感」ですね。

納得感、ですか…。

樋口:AからEの5段階評価の場合、よほどひどくないとDやEはつけないので、実質的にA、B、Cの3段階評価になりますね。そのうちでAの評価をもらった人は絶対に納得します。B評価の人も納得するかもしれない。ただし、実際に大半の人が受ける評価はCなんですよ。

 C評価の人にいかに納得してもらうか。なぜ自分はC評価になったのか、B評価の人と比べて何が劣っているのか、どこを改善していけばよいのか、評価者である管理職がそういうことをきちんと説明して、「なるほど、だから私はCだったのか。それでは、ここを頑張れば次はB評価をもらえるな」と納得してもらう。そういうフォローがあって初めて公平感が広がります。

 ですが実際には、そういうことを全くやっていない。それどころか、なぜそうした評価になったのかがブラックボックスになっている。「チェックシートに数字を書き込んで、ブラックボックスの中に入れたら、君の評価はCと出てきた」という説明では誰も納得できませんよね。そんなことだから、成果主義が機能しないのです。

 成果主義を機能させるためには、管理職の能力がこれまでよりもずっと高くないといけません。そうでないとむしろ不公平感を高めるだけです。さらに言えば、管理職のレベルが低いと、往々にして社内政治がはびこります。例えば、営業成績がそのまま成果に比例するといった単純な仕組みを作ってしまうと、資産家が多い町など成績を上げやすい担当地域を割り当ててもらった営業マンが圧倒的に有利になります。

東芝のカンパニープレジデントは課長補佐並み

確かにそうでしょうね。


樋口 晴彦(ひぐち・はるひこ)氏
警察大学校警察政策研究センター教授。1984年東京大学経済学部卒業。上級職公務員として警察庁入庁。外務省、内閣官房内閣安全保障室への出向経験あり。94年米ダートマス大学経営大学院でMBA(経営学修士)取得。2012年に組織不祥事研究で博士(政策研究)を取得。危機管理、リスク管理に関して広い知見を有し、特に企業不祥事の研究では第一人者。危機管理システム研究学会理事。失敗学会理事。主な著書に『組織の失敗学 (中災防新書)』(中災防止新書)、『組織不祥事研究』(白桃書房)、『悪魔は細部に宿る 危機管理の落とし穴(祥伝社新書)』(祥伝社新書)、『なぜ、企業は不祥事を繰り返すのか−有名事件13の原因メカニズムに迫る』(日刊工業新聞社)など
樋口:そうした地域を割り当ててもらうために、上司に取り入ろうとする社員がどんどん発生して、悪しき社内政治が蔓延します。ですから、成果主義の設計は大変なのです。こうした点を考慮せずに成果主義を導入すれば、いろいろなひずみが出るのは当たり前です。

 東芝の場合にも、(調査報告書の)資料によると、職務報酬の40%〜45%が成果によって左右され、最大で2倍の差がつくということです。こうした成果主義が社員の行動にどのような影響を与えたのかについて、これから調べていく必要があります。

 そのほかに東芝の事件について感じたのは、経営幹部がその役職にふさわしい管理能力や見識を備えていなかったことです。特にカンパニーのプレジデントたちは、「課長補佐」と言った方がいいレベルですね(笑)。

 それぞれのカンパニーの中間管理職は、「これは計上しないとだめですよ」と懸命に説明しています。しかし、カンパニープレジデントは、「トップから要求されているから、こうするしかないんだ」と繰り返すだけでした。カンパニーは本来、独立した経営主体のはずなのですが、ありていに言うと、常にトップの顔色をうかがい、その意向に汲々と従うだけでした。このあたりはすごく大きな問題です。

 一方、歴代のトップの方たちは、ここまでひどいとはたぶん分かっていなかったのではないでしょうか。非常に数多くの案件があるので、不正の全体像がなかなか分からないし、そもそもカンパニーのプレジデントたちはウソの報告をすることに慣れきっています。「チャレンジ」「チャレンジ」と言い続けているうちに、不正の規模がここまで大きくなってしまったとの自覚があったのかどうか疑問ですね。先述したように、規模さえ小さかったら、よその会社でもやっていることですから。

 恐らく最初は良い意味のチャレンジから次第に変化していったのだと思います。「ちょっとこれは」という会計処理ではありますが、「よそでもやっていることだし、監査法人が目をつぶってくれているから」という意識で続けているうちに、いつしか不正処理が積もり積もって、非常に大きな規模になっていた。

 ちなみに監査法人側の抱える問題については、「オリンパス不正会計事件の事例研究」と題する学術論文に書いています。これもネットで公開されていますので、よろしければ参考にしてください。この論文では、監査法人側が実際には不正会計に気づいていたのに、それに対して手を打とうとせずに会社側に迎合していた状況について、かなり細かく検証しています。社外役員と同様に会計監査人についても、「監視される側が監視者を選ぶ」という面で大きな問題があるのです。この件についての対策を問われると、有効なものがなかなか見当たりません。

 1つのポイントとして、オリンパス事件の中にヒントがあります。当初はあずさ監査法人が同社の監査を担当していました。あずさも「さすがにこれはひどくなってきた」ということで、2009年3月期決算の監査では、品質管理担当の専務理事を同社の担当に起用して、具体的な不審点を書面でオリンパスに提出し、オリンパスが設置した有識者委員会の調査報告書についても修正を求めるなど、かなり頑張りました。

 しかしオリンパス側は修正に応じず、あずさも最終的に無限定適正意見の提出に同意しました。その途端、オリンパスは報復として新年度の会計監査を新日本監査法人に依頼したのです。

そういうことがありましたね。

樋口:突然の交代に対して、あずさはどう対応したでしょうか。無限定適正意見の提出に同意、すなわち、オリンパスの決算にオーケーをいったん出したにもかかわらず、決算に潜む問題を是正するような措置を取らないと、正式な監査報告書を提出できないとして、オリンパス側に措置の実行を迫ったのです。「このままだと、新日本による会計監査で、これまでの会計処理の闇が明らかにされてしまうかもしれない。そうなれば、あずさの責任も必然的に追及されることになる」と恐れたのでしょう。

 ここから分かることは、会計監査人が交代する際には、それまでの監査内容の問題点を別の監査法人に指摘されるのが怖いので、何とかして是正しなければならないという強いインセンティブが監査法人側に生まれるということです。そうだとすると、会計監査人を定期的に交代させることが重要だと思います。

クライアント(依頼主)である会社がそうするのは難しくはないですか。

樋口:東京証券取引所がそうしたルールを決めるしかないでしょうね。先述の社外役員の問題もそうですが、市場関係者が毅然たる態度を取ろうとしなかったことが、現状の様々な病弊につながっているのです。

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