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老後貧乏から下流老人に転落する分かれ目はどこか(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/15/hasan101/msg/319.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 10 月 07 日 11:31:15: igsppGRN/E9PQ
 

老後貧乏から下流老人に転落する分かれ目はどこか
http://diamond.jp/articles/-/79558
2015年10月7日 深田晶恵 ダイヤモンド・オンライン


■3つの「ない」で下流老人に!?

 話題の書、「下流老人」(藤田孝典著・朝日新書)と「老後破産〜長寿という悪夢」(NHKスペシャル取材班・新潮社)を読んだ。どちらも、年金生活者が普通の生活から些細なきっかけで陥る貧困について、事例を紹介しながら問題解決に向けての提言を行っている。

 個人的には、生活支援の現場の実状から書かれた「下流老人」が興味深かった(「老後破産」は、テレビ局らしくジャーナリスティックな切り口で書かれている)。「下流老人」の著者の藤田孝典氏は、NPO法人ほっとプラスの代表理事として10年以上、埼玉県を中心に生活困窮者支援を行っている。

 藤田氏は著書のなかで、下流老人とは「生活保護基準相当で暮らす高齢者及びその恐れがある高齢者」と定義し、生活支援の実体験から下流老人には次の3つが「ない」としている。

 @収入が著しく少「ない」
 A十分な貯蓄が「ない」
 B頼れる人間がい「ない」(社会的孤立)

 確かにその通り。この3つが「ない」状態だと、ちょっとしたきっかけで貧困に転じる可能性は高い。

 なかでも「収入」と「貯蓄」は密接な関係がある。高齢になるほど、病気や求人の年齢制限などにより、働く意志はあっても働けないケースが増える。そうなると収入はおもに年金だけとなるが、事例で紹介されている高齢者はみなさん、さまざまな事情で年金収入がかなり少ない。

 年金が少ないと、蓄えを取り崩しながらの生活をしなくてはならいため、あっという間に貯蓄が減っていく。健康状態が悪化すると、負のスパイラルから抜け出せなくなるのである。

■2つの力が「ない」と、「老後貧乏」から「下流老人」に転落する!

 この連載は、40〜50代(おもに男性)に向けて、定年後に「老後貧乏」にならないためのお金の知識と処方箋を伝えることがテーマである。テーマと「40代から備えたい!老後のお金クライシス」というタイトルは、昨年8月に担当編集者が決めてくれた。

 連載スタート時点では、NHKスペシャル「老後破産〜長寿という悪夢」という番組は放送されていなかったし、「下流老人」も出版されていなかった。2014年9月にNHKスペシャルが放送されると、番組は大きな反響を呼び、今年4月に書籍化。「下流老人」が今年6月に出版されて以降、さらに関心が高まり、雑誌を中心に「老後破産」「下流老人」特集が次々組まれるようになった。

 先週、女性雑誌から「深田さん、女性が下流老人にならないためにはどうしたらいいですか」と取材依頼があったときには驚いた。女性雑誌までもが取り上げるということは「ブーム」になっているということ。ブームはしばらく続くことになるだろう。

 誰でも将来「下流老人」になる可能性はあるが、全員ではない。40〜50代がまず心配すべきは、「老後貧乏」になることだろう。そもそも日本の年金制度は、現役時代の収入を100%保証する制度設計にはなっていないため、定年後は収入が大幅にダウンする。老後資金という蓄えがない限り、誰もが貧乏になるのである。

 今の40〜50代は、多額の住宅ローンを抱え、ハイパーインフレ気味の子どもの教育費を負担し、自分たちもお金を使うのが好きな消費世代。上の世代に比べ、老後資金準備がままならない人が圧倒的に多い。

 FPである私の役割は、現役世代の「老後貧乏予備軍」を1人でも減らすこと。その詳細な方策についてはぜひ本連載のバックナンバーをご一読いただきたいが、それでは万が一「老後貧乏」に陥ってしまったとして、さらにその先の「下流老人」との分かれ目は、どこにあるのだろうか。

 私は“制度を知る・利用する力が「ない」”と“少し先を想像する力が「ない」”、この2つの「ない」によって、藤田氏が定義する「下流老人」という貧困状態に陥りやすくなると考える。

■社会保障や福祉制度は「知らなきゃソン」であることを認識する

 セーフティネットとしての社会保障制度や福祉制度の多くは、「申請主義」。知らないと利用することができない、まさに「知らなきゃソン」なのである。専門家並みの知識を持つことは無理だとしても、困ったときには「何か頼れる制度はないだろうか」と役所に出向いて相談するという発想を、常に持っておくことが重要だ。

 意外に思うかもしれないが、会社員や公務員はこれが苦手。勤務先の総務部や人事部が自分に代わって「手続き」をしてくれる環境に長く置かれるため、「自分で調べる」「相談に出向く」ことに慣れていないのだ。出世が早く管理職が長かった人は特に要注意と言えるだろう。総務、人事部以外に部下も手足となってくれていたからだ。

「制度を知る・利用する力」は、70代や80代になってから身につけるのでは遅い。現役のうちから練習しておくことが肝心だ。まずは年老いた両親の日常を聞き出し、知らずに利用していない制度がないか調べることから始めるといいだろう(言うまでもなく、ここで妻任せにしてしまっては意味がない)。

■「少し先を想像する力」は割り算とかけ算ができればOK!

「少し先を想像する力」は、5年後、10年後の「自分のお金周り」を予測する力のこと。たとえば、退職金を手にしたとき、はじめて手にする数千万円のお金に気持ちが大きくなり、後先考えずに数年で300万円とか500万円を使ってしまう人がいる。残念ながら、こうした人は少なくない。

 その調子でお金を使い続けると、70歳になる頃には蓄えが底をつくことになるかもしれないのに気がつかない。というより、家計を予測する習慣を持ち合わせていない。年金生活に入ったら、蓄えを取り崩す前に必ず「割り算」すること。

 退職金を含めた老後資金から医療費の備え、住宅の修繕費用といった特別支出を差し引いて、90歳までの年数で割ると「1年あたりの取り崩し額の目安」がわかる。

 65歳時点で老後資金が3000万円あったとして、特別支出を1000万円と見積もると、残りは2000万円。90歳までの25年間で割ると1年あたりの取り崩し額の目安は80万円。意外に少ない金額となるのだ。

 いつもこの欄で書いているが「90歳までなんて、俺は生きてない」などと思っていてはダメ。長生きする前提で割り算するのがリスク管理の基本であるし、妻は90歳を超えて長生きする可能性は大だ。自分のことだけを考えてはいけないのである。

 これからの出費は「かけ算」するといい。たとえば医療保険。退職直前セミナーの講師をすると、「子どもが社会人になって死亡保障が入らなくなった分、医療保険にたっぷり入りたい」と言う参加者が多い。会場で保険料の予算を尋ねてみると「月1万円」と答える人が結構いて、私は毎回驚く。

 月1万円、夫婦で2万円の保険料を60歳から80歳までの20年間支払い続けると(ここでかけ算)、総額480万円にもなる! 月5000円だとしても20年間だと240万円だ。これだけのお金が確実に手元からなくなるのである。

 公的な健康保険には、自己負担額が一定額を超えると超過分が戻ってくる高額療養費制度がある。一般的な所得なら69歳までは月9万円前後が最終的な自己負担になる。健保組合の付加給付が充実していると、月2万円が上限というケースも少なくない。70歳になると、自己負担の上限はさらに低くなることも知っておきたい。

 一方、民間医療保険は1入院「60日」とか「120日」といった日数制限があり、長期間の入院のすべてをカバーするわけではない。入院日額5000円・1入院120日型の医療保険から受け取れるお金は、1入院最大で60万円。手術をすると手術給付金が5万〜20万円受け取れるが、それでも支払う保険料には届かないだろう。

 年をとると病気がちになるが、多くの場合、通院で薬をもらい治療を受ける期間が長くなる。忘れてはいけないのは、医療保険は原則、入院か手術をしないと給付金がもらえないということだ(通院給付金があったとしても、金額はごくわずか)。通院での治療費は、年金や老後資金から捻出することになる。

 支払う予定の保険料をかけ算し、健康保険制度や商品を知る力を持っていると、医療保険に頼る部分が少なくなり、年金収入や預貯金の目減りを数百万円単位で防ぐことができるのだ。

「自分のお金を予測する力」を身につけることはそれほど難しいことではない。お金を使うときにはその前に「割り算」と「かけ算」をすることを忘れなければいいだけである。ぜひ、実践してみてほしい。


 

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コメント
 
1. 2015年10月08日 08:47:43 : OO6Zlan35k
「引きこもり」するオトナたち
【第247回】 2015年10月8日 池上正樹 [ジャーナリスト]
40代の再就職難民を増殖させる
ハローワークの不都合な真実

40代以降の再就職には、厳しい現実が待ち構えている
 大阪府に住む40歳代男性のAさんは、大学卒業後、大手企業の技術職として勤めていた。

 しかし、リーマンショックの頃に、上司との人間関係が原因で会社を退職。その後、なかなか再就職先が見つからないため、ここ数年は自宅ですることもなく、引きこもらざるを得ない状態に陥っている。

 中学高校時代は人気者で、クラスメートを笑わせるのが好きだった。そんな明るいキャラクターゆえ、同窓会にもこれまでは欠かさず出席していた。

 それが会社を辞めてから、同窓会の誘いがあったとき「仕事もしていなくてみじめだから、行きたくない」と断った。

「何言ってんだ。おまえが来なきゃ盛り上がらないだろ」

 何も知らない同窓生から無理やり引っ張り出されて、余計に落ち込むことになり、人脈も閉ざした。

仕事が欲しいだけなのに
勧められるのは「精神科の受診」

 そんなAさんがとくに憤慨するのは、「ハローワークの真実」に対してだ。

「最初の頃、相談に行くと、中には気のいいおじさんとかいて、いろいろ話すんですが、気合論しか言わない。なかなか効果的な話につながっていかないんです」

 Aさんによれば、ハローワークでよく言われるのは、主に次の3点だという。

「とにかく履歴書を出しなさい」
「めげない」
「しんどくなったら、精神科医へ通いなさい」

 とはいえ、正規社員の仕事さえ決まれば、元気になって精神科へ行く必要もないと、Aさんは言う。

「仕事が決まらない人に、精神科へ行かせたがるんです。メールでも“こころの相談室”にいろいろ書いて出すと、やはりまず“精神科医を紹介しますから”と返って来る。会社を辞めるときも“うつの疑いがあるから”などと言われ、精神科医(への受診)を勧められた。“心の安定を図ってください”が決まり文句なんですよ」

 仕事が欲しいのに、どこへ行っても精神科医につながっていく。仕事は紹介されないのに、病院への入り口はあちこちにある社会。これでは、ハローワークではなくハローホスピタルだ。

 Aさんは、「しんどいです」という言葉を、精神論や根性論に対して「難儀です」というような意味で使っている。にもかかわらず、窓口のスタッフは、ネガティブな意味に受け取る。

「職歴がなくなると、採用率がものすごく下がるんですよ。“この期間、何やってたのか?”と問われるたびに、繕ろうのが大変なんです。そう聞いてくれたらまだいい方ですけど、結局は履歴書を送っても“お祈り”の返事がくるだけです」

探しても出てくるのは同じ求人
40歳を超えればサポートすらない

 ハローワークにはずっと通い続けてきた。しかし、正規社員はおろか、アルバイトにも採用されなかった。

 自立相談窓口を謳う社会福祉協議会に行っても、Aさんの住む自治体ではハローワークの求人を紹介されるだけで、とっくに見ているような情報ばかり。その社協には、支援メニューの厚みやノウハウがなく、セーフティーネットとして機能していない。

 Aさんの自治体では、大手派遣企業も窓口に入っている。でも出てくるのは、ハローワークの求人で、60歳代くらいの担当者は、同じ情報を一生懸命見ているだけという。

「その人も一生懸命探してくれる。でも、パイがない。担当者もイライラしたように困っている状況でした」

 単調な生活にリズムをつけたくて、いまは毎日、図書館に通って、自習室で勉強などもしている。

「何でもいいから仕事したい。内容を選んでいるわけではないのに、経験がないからという理由で、まったく採用されない。役所が非正規の仕事を募集しているからと生活支援課で紹介され、経験が欲しくて応募したことがありました。ところが、面接のとき、同じ役所内の生活支援課にも社協にも通っていて、相談していることを話したのに、落ちたんです。後でわかったのは、面接した担当者が、社協や生活支援課に確認すらしてくれてませんでした。一方、生活支援課の人も同じ役所内なのに一言も伝えてくれず、あまりに縦割りすぎることがショックで、ここはもうダメだと…」

 結局は、自分で仕事を探すしかない。でも、自分で探すと、求人は経験者に限られる。

「やる気があります」とか「自分を買ってください」といった意気込みを示しても、その努力は実らない。

「40歳までは何らかの支援がある。サポステ(地域若者サポートステーション)も39歳までならサポートしてくれる。でも、その後がないんです」

ハローワークで傷つき、引きこもる
徒労感だけ残る無意味な仕組み

 ハローワークに登録しても、何の連絡もない。

「やることって、履歴書の書き方とか、パソコン講座とか、こんなことはさんざんやってきた。

 それに、ハローワークへ行っても、非正規の人が多い。大体、わかるんですよ。この人、短期で雇われてる人だなって。当たり障りのない説明をして、そんなの僕でも言えます。向こうも、それぞれの職歴やスキルに即した就職支援の指導をされていないから、何も言えないんですよ」

 結局、窓口の相談スタッフは、紹介状を出すだけの人。なぜ、そんなスタッフが配置されているのかと、Aさんは不思議がる。

 実際に、一旦、職場などで傷つけられた人たちが、何とか社会に戻りたいからと、せっかくやる気を出して相談に訪れた支援の窓口で、再びトラブルを起こされて傷つけられ、引きこもっていく人たちが少なくない。

「窓口の人たちが、僕に愚痴ってくるんですよ。“プロパーの人は、ほんとに…”とか“あいつらは、いいよ”とか。キャリアアップハローワーク(以下、現在のキャリアアップコーナー)なんて、本当にお笑いでした」

 キャリアアップハローワークといっても、一般のハローワークとはほとんど変わらないと、Aさんは言う。 
むしろ不機嫌にさせられた。

 キャリアアップハローワークに登録に行くと、窓口の職員から、こう言われた。

「私がいままで見た中で、最高レベルの出来ですよ。もう、指導することはありません。ここに来る必要はないです。あとは、履歴書をどんどん送るだけです」

 では、どうして履歴書を送り続けているのに採用されないのか。これまで窓口へ行っても、スタッフから「履歴書を送れ」としか言われなかった。

「(キャリアアップハローワークでで)言われる“〇〇へ行かれたほうがいいと思いますけど…”という内容は、すべて“やってます”ということばかり。勉強不足も甚だしいというのか、相手のスタッフのほうが自分より知らないくらいでした。全然、キャリアアップになっていないんです」

 Aさんは、そうため息をつく。

「支援」と言いながら、カラカラと空回りさせられて、徒労感だけが残る。何と無意味な仕組みなのかと、この実態に唖然とさせられるという。

「だから、もうハローワークは基本的に信じていないです」

 Aさんは、「雇われる生き方」はあきらめた。これから先は、ハローワークで身につけた経験やノウハウを生かし、大阪で中高年世代の仕事を創り出す「中高年仕事創造センター」(仮称)を立ち上げる予定だ。さらに、本人を「引きこもり」にしないため、情報提供などによる家族支援をしていきたいと構想を練っていて、一緒に協力してくれる仲間たちを募っている。

※この記事や引きこもり問題に関する情報や感想をお持ちの方、また、「こういうきっかけが欲しい」「こういう情報を知りたい」「こんなことを取材してほしい」といったリクエストがあれば、下記までお寄せください。
otonahiki@gmail.com(送信の際は「@」を半角の「@」に変換してお送りください)
http://diamond.jp/articles/-/79634


2. 2015年10月08日 19:34:17 : OO6Zlan35k
2014年10月06日(月) 週刊現代
「老後破産」200万人の衝撃第1部 「普通のサラリーマン」だった私は、定年からたった10年で破産した
65歳以上の16人に1人が直面する

〔photo〕gettyimages
——長生きなんか、するんじゃなかった

人生の最期を悲惨な状態で迎える人がいま急増している。なぜ、どのようにして人は破産してしまうのか。厳しい老後破産の現実はあなたも無関係ではない。

妻の病をきっかけに
「なんでこんなつらい思いをしてまで、長生きしなきゃいけないんでしょうか」

着古したジャージに身を包んだ香川庄治さん(仮名/71歳)は、嗄れた声を絞り出し、こうつぶやく。6年前に妻を亡くしてから、神奈川県の自宅でひとり「亡骸」のような日々を送っているという。

「家事は妻に任せきりにしていましたから、彼女が亡くなってからも自分で炊事することはありません。食事は日に一食。夜にスーパーで半額になる弁当を買うか、チェーン店の牛丼を食べに行くのが日課です。近所付き合いもないですし、毎日することは何もない。家に閉じこもり、テレビを眺めて一日が過ぎていきます。こんな惨めな生活をしているなんて、誰にも言えません。親戚にだって、無用な心配をかけたくないので、連絡を取らなくなりました」

大学を出て、食品メーカーに38年間勤務し、60歳で退職。一人息子は同居している。定年後は、妻と穏やかな老後を送ろう—そう思っていた。当時の貯金は、退職金もあわせて約3200万円。だが現在、貯金は底をついている。

「定年してから半年後、妻にがんが見つかったんです。進行した乳がんでした。手術しましたが、すでに全身に転移してしまっていた。

現役時代、私は家庭を顧みず、すべて妻に任せて働いていました。これからは楽をさせてあげようと思っていたんです。だからこそ、何をしてでも元気になってほしかった。病院を転々とし、最新の放射線治療も受けました。それに漢方や健康食品など、身体にいいと聞いたものは何でも試した。

彼女が自力で歩けなくなってからは、300万円出して車椅子を乗せられるワゴン車を買い、がんに効くと言われる温泉にも連れて行った。けれど結局、闘病の末に亡くなったんです」

妻の命のために、カネを惜しむという選択肢はなかった。がん保険には入っていなかったため、3000万円という貯金額は、6年間でみるみるうちに目減りしていた。気づいたときには、もう「手遅れ」。現在は月14万円の年金だけで生活している。

「実はウチには、40代になる息子がいて、うつ病を患って会社を辞めてから、家に引きこもっているんです。私の年金だけでは暮らしていけない。

少々具合が悪くても、病院にも行けません。検査なんかしたら、絶対悪い病気が見つかるに決まっていますから。毎日、目が覚めるたびに気が重くなります。何度も死のうと考えましたが、息子がいますし、天国の妻がそれを知ったら悲しむだろうと思って、必死で生きている状態です」

悠々自適な老後を送れるはずだったのに、気がつけば、想像だにしない厳しい現実と向き合わざるを得ない。香川さんのように、破産状態に陥る高齢者がいま急増している。

9月28日に放映されたNHKスペシャル『老人漂流社会老後破産≠フ現実』では、「生活保護水準以下の収入しかないにもかかわらず、保護を受けていない」破産状態にある高齢者の現状を「老後破産」と呼び、特集を組んだ。番組を制作した板垣淑子プロデューサーが語る。

「少子高齢化が進み、年金の給付水準を引き下げざるを得ない一方、医療や介護の負担は重くなっています。自分の年金だけを頼りに暮らしている独り暮らしの高齢者の中には、崖っぷちでとどまっていた人たちが、崖から転げ落ちてしまう、いわば『老後破産』ともいえる深刻な状況が拡がっています」

いったい破産世帯はどれくらい存在するのか。河合克義明治学院大教授が語る。

「私たちが実施した東京都港区と山形県における調査では、生活保護基準よりも低年収である高齢世帯の割合がどちらも56%と、高齢世帯のほぼ半数にのぼることがわかっています。現在、一人暮らしの高齢世帯はおよそ600万人。推定で300万人が低年収世帯と言ってよいでしょう」

そこから、生活保護を受給している高齢世帯を差し引いた、200万以上もの人々が老後破産の状態にあると推定される。日本全国で65歳以上の高齢者の数は3200万人。およそ16人に1人が老後破産の状態にあり、独居高齢者に限れば3人に1人にも上る。

友達もいなくなり
前出の番組で紹介された破産の当事者の姿は衝撃的だった。

番組の冒頭、カメラは東京都港区のアパートに住む田中樹さん(仮名/83歳)のもとを区の相談員とともに訪れる。全国的に見て高齢世帯のうち単身世帯の割合が高い港区では、孤立対策として聞き取り調査を行っている。

カメラに映し出されたのは、ゴミ屋敷になる一歩寸前までモノが散乱し、足の踏み場もない一室。そこで田中さんは、小さく縮こまっている。痩せていて、顔に覇気がない。心配した相談員が尋ねる。

—暮らしぶりはいかがですか?

「ぜいたくはできないねえ」

—もしかして電気止められていませんか?

「そのままにしています。夕飯の仕度をするときはガスの炎を頼りにすれば、なんとか調理できるよ」

—ちゃんと食べれていますか?

「こういう時が来るんじゃないかと思って、ひやむぎを買い置きしておいたんだ。それでなんとか助かっているよ……」

田中さんの頼みの綱は、会社員時代に払った厚生年金を含めた月10万円の年金収入だ。家賃6万円を引けば、4万円しか残らないため、一日500円以下の切り詰めた生活を送っている。

田中さんは、特に変わった経歴の持ち主というわけではない。ビール会社で正社員として23年間働いたのち、40代半ばで独立し、飲食店の経営をはじめた。だが、赤字が続いて倒産し、退職金も使い果たした。

田中さんは番組スタッフに一枚の絵を見せた。黒い背広を着て、口ひげを生やした男性の肖像画。絵が趣味だった田中さんが「社長となった自分の老後」を想像して描いたものだ。

「まさか(現実が)こんなことになるとは夢にも思っていなかったね」

絵を見つめ、こうつぶやく田中さんにいまの生活で何が一番辛いか、と番組のスタッフが尋ねる。

「友達がいなくなったことだね。貧しさを知られたくないから、付き合いを避けてしまった」

年金支給日の前日、食べ物を買うカネも尽きた田中さんは、部屋で横たわったまま動かない。

「やることはすべてやったんだから、早く死にたいというのが正直なところです。でも自殺するわけにもいかないしね。いま抱えている不安をなくすためには、死んじゃったほうがマシだ……」

彼らは決して特異なケースではない。普通のサラリーマンであっても、老後破産状態に陥る可能性はある。そう警鐘を鳴らすのは山田知子放送大教授だ。

「たとえ大企業の部長職まで出世した人であっても、老後破産と無縁というわけにはいきません。住宅ローンを退職金で払い終えたら、残りの金額は心もとないという方は多いのではないでしょうか。

当然、中小企業のサラリーマンはもっと危険で、年金収入のみに頼る状態では、いわば薄氷の上を歩いているようなものです。親の介護や子どもの就職失敗など想定外の出来事で、当初の予定が容易に崩壊するからです」

多くの人は、何をきっかけに破産に追い込まれるのか。まず直面するのが、自身の健康問題だ。西垣千春神戸学院大教授が解説する。

「高齢者にとって、健康問題は避けることはできません。それまで元気でも急にひとりで動けなくなる人もいますし、90歳を超えるとおよそ半数が認知症になると言われています。

家族と離れて暮らしていれば、健康の変化がなかなかわからない。そのため、周りの人が気づいたときには、破産に至っていたというケースは決して少なくありません」

子や孫には言えない…
実際、本誌が取材した中で次のような事例があった。

愛知県に住む浅田隆さん(仮名/73歳)は、大学卒業後、警備会社に就職し、定年後も再雇用制度を利用し、働き続けていた。しかし、腰痛が悪化して欠勤の日が増え、会社にいづらくなって、2年で自主退職。以来、退職金と年金収入のみで暮らすようになる。

そんな浅田さんが破産にいたるまで、10年もかからなかった。浅田さんを保護したNPOの担当者が語る。

「浅田さんの場合、腰痛の治療費に加え、退職後しばらくしてから、軽度でしたが、認知症を発症したのが、破産にいたった大きな要因でした」

浅田さんは妻を60歳のときに亡くし、子どもも離れて暮らしていたため、誰も苦境に気づかなかった。

「息子さんも盆や正月に帰省したときに『少しカネ遣いが荒くなった』とは感じていたそうですが、『やっと退職したんだから自由にさせてあげよう』と放っておいたそうです。

しかし、判断力の低下による無駄遣いや保険の使えない鍼治療などで、あっという間に退職金は底をついてしまった。食うや食わずの生活をしていた浅田さんが万引きで捕まったときに、私たちの団体に引き渡されて、破産がやっと発覚したんです。

捕まったときも『子どもや孫には恥ずかしいから言わないでくれ』と懇願されましたが、連絡を取りました。面会に来た息子さんに対して、『たった10年でどうしてこんなことに』と嘆いていました」

破産に至るきっかけは、病気だけではない。頼りになるはずの子どももリスクになりうる。

神奈川県に住む小野雅俊さん(仮名/69歳)は、都内の建築設計事務所の正社員として定年まで勤め上げた。現役時代は、よく働きながらも、同僚と飲んだりと、サラリーマン生活を謳歌。退職時には、退職金を含めて2500万円ほどの貯金と、株券や保険などを合わせて総額4000万円程度の資産があった。小野さんが語る。

「家は持ち家だし、庭の畑で野菜を作っているし、生活費は光熱費とガソリン代、そして趣味のゴルフや付き合いの飲み代くらいなものでした。二人の子どもたちも独立しており、何年も前にローンは完済。いままで懸命に働いてきた分、『さあ、これから老後を楽しもう』と暢気に考えていました」

そんな小野さんが「いまほど苦しい時期はない」と語るようになるまでに、何が起こったのか。小野さんが続ける。

「きっかけは、すでに独立し家庭をもっていた息子が起こした交通事故でした。100%こちらに責任のある事故で、相手は障害を負ってしまいました。しかも、運の悪いことに、息子は1ヵ月前に保険が切れていたんです。慰謝料に1000万円、相手に治療代や入院費、障害が残ったことで必要になった家の改築費など、総額で5000万円も相手から請求されました。これをすべて払わないといけない。裁判をしても仕方ない、息子の過失責任は逃れられないと覚悟し、そのまま払うことにしました」

毎月30万円の賠償金を払うため、息子の給料は、ほぼ天引きされている。子どものいる息子家族は、住んでいたアパートを出て、小野さんの一軒家に同居することになった。小野さん自身も、貯金や保険をすべて解約したが、5000万円には到底足りなかった。

「大事にしていたゴルフクラブもまとめて売りに行きました。何十万円もしたパターが、2000円という悲しくなるほど安いカネにしかならず呆然としましたよ。会社時代の人間関係も、カネがかかるので畳みました。正直なところ、当初は『こんなことがあっていいのか』と、相手を随分と怨みました。

ですが、責任を重く感じた息子が、休みの日もトラック運転手のアルバイトをしている姿を見て、私も生きているうちに出来る限り助けてやりたいと思うようになり、早朝のチラシ配りのバイトをはじめました」

現在、小野さんはチラシ配りに加えて、隣町にあるコインパーキングの管理人のバイトもしている。孫を含めた一家5人にとって、小野さんの年金は、大きな収入源のひとつだ。

「孫に『おじいちゃん!ファミレスに連れて行って』とせがまれても、『いいよ』とはなかなか言えない。貴重な生活費が何日分か飛んでしまいますからね。『外食は身体によくないからね』と適当な言い訳をして、なるべく断っています。本当に情けなくなります。これで持ち家でなかったら、さらに悲惨な状況になっていたと考えると、本当に恐ろしい……」

息子の会社が倒産して
小野さんのように持ち家が命綱になる場合もあれば、逆に持ち家が大きな足かせになる場合もある。

都内に土地と家をもっていた大木ハルさん(仮名/85歳)は、介護が必要な上、持病の心臓病の不安もあり、40代の息子夫婦と同居することに決めて、千葉の高級住宅地に2世帯住宅を購入した。息子と大木さんの二人の名義で住宅ローンを組み、子どもに見守られながら老後を過ごすはずだった。だが、これが破産への引き金となった。

大木さん一家の相談を受けた、ケアマネージャーオフィス「ぽけっと」代表の上田浩美氏が語る。

「毎月20万円のローンを組んだのですが、息子さんの勤めている会社が不況のあおりを受け倒産するという不運に見舞われたんです。大木さんの預貯金をローンの返済に充てたのですが、おかげで老後のために取っておいたおカネはゼロに。それでも足りずに、お嫁さんも働きに出ています。

大木さんはひと月10万円近くかかる介護サービスを受けています。心臓病だけでなく、認知症もあるので、もっとサービスも必要なのですが、家計の都合もあって、満足に受けられない。生活保護を受けてもいいくらいの水準です」

意外に知られていないことだが、住宅ローンがあると生活保護を受けることができない。というのも、その状態で生活保護を受けると税金で個人の資産を形成していることになってしまうからだ。上田氏が続ける。

「生活保護を受けるために世帯分離という方法もあるのですが、この歳で家族と離れて暮らすのも厳しいでしょうし、ご本人も『お上の世話にはならない』と言っています。大木さんのようにプライドがあって『施しは受けない』『世間様に申し訳が立たない』という人は多いですね」

前述の香川さんたちのように、誰にも頼れず、自らカネに困っていることを声に出せない人だけではない。大木さんのように、家族と同居していてさえ、破産の危険と無縁というわけにはいかないのだ。

大木さんは別れ際、大きなため息をつきながら次のように答えた。

「こんなに長生きするなんて思ってもみなかった。もっと早くコロリと逝くはずだったのに。85歳にもなって、こんなに苦労する目に遭うなんて……」

これが、老後破産に陥った多くの人の本音だろう。超高齢社会が生んだ厳しい現実は、あなたのすぐそばにまで迫っている。

→第2部【破産する人・しない人の分かれ目】はこちら

「週刊現代」2014年10月11日号より
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40603


「老後破産」200万人の衝撃第2部 カネはない、でもプライドはある「破産する人」「しない人」ここが分かれ目だった
65歳以上の16人に1人が直面する
「一人暮らしの男」が危ない
誰にでも襲いかかるかもしれない老後破産の恐怖。第1部では、その実態をお伝えしたが、どんな人が貧困状態に陥りやすいのか。高齢者問題に詳しい淑徳大学総合福祉学部教授・結城康博氏と、生活困窮者への支援を行っているNPO法人ほっとプラス代表理事の藤田孝典氏に聞いた。

*

藤田 私が代表理事を務めているNPOでは、生活困窮者の相談を年間300件ほど受けていますが、そのうち半数が65歳以上の高齢者で、しかも一人暮らしの男性なんです。

もともと独身で天涯孤独の方だったり、離婚してしまった方だったりと事情はさまざまですが、誰にも相談できずに貧困状態のまま我慢して暮らしてきて、「いよいよ」という状態になってはじめて我々のところへ来られる。

結城 女性よりも男性のほうが、老後破産しやすいという傾向にありますね。

藤田 女性のほうがコミュニケーション能力が高いので、比較的早めに相談に来るんです。男性の場合、「たくましく、強くなければ」という意識の強い人が多い。

まずいのは誰にも相談できず、自分だけでなんとかしようとするケースです。最悪の場合、孤独死とか餓死という事態になってしまいます。

結城 収入について見てみると、まず国民年金だけでは生活するのは困難です。

国民年金は定年のない自営業者のための年金で、本来なら65歳以上になっても働き続けながら年金を受け取るとか、高齢者は子ども世代に扶養されつつ年金を受け取るという前提で制度設計がされています。

しかし実際にはそんな悠々自適な自営業者ばかりではないし、65歳以上になって新たに就労するのはまず無理でしょう。

では子どもや親族に頼れるかというと、さまざまな事情から家族と絶縁状態にある人もいるし、子ども自体が貧しくて親の面倒を見られないという場合もあります。

藤田 そうですね。高齢者が頼れる子ども世代は、いまや雇用者の約3割が非正規雇用ですから、ワーキングプア状態の人が多い。夫婦と職探し中の息子の3人暮らしで、収入は夫婦の年金10万円だけ、なんていう家庭もあるくらいです。

そのため子どもに世話になるどころか、定年後も子どもの学生時代の奨学金の返済に追われていたり、息子の自動車ローンを払っていたりして貧困状態になっている高齢者も多いんです。子ども世代の貧困問題を親世代が被ってしまっているんですね。自分自身は大丈夫だと思っていても、子どもが自立していない、というのも破産の原因になるんです。

結城 国民年金や無年金の人だけではなく、サラリーマンで厚生年金をもらえる人でも困窮する人は少なくないはずです。

藤田 以前、相談にのったおじいちゃんは、65歳までの40年間、町工場で働き続けながらコツコツ貯金もしていました。引退後は、「貯金もあるし、年金も入ってくるから大丈夫だろう」と思っていたけど、75歳くらいから貯金が目に見えて減り、そのうちアパートの家賃が払えなくなって、78歳になったときに家賃滞納を理由にアパートを追われてしまったんです。

結城 決して贅沢をしていたわけではなくても、気づいたら貯金が目減りしていたということはありえます。定年後は、収入は確実に下がるわけですから、現役時代と変わらない生活習慣を続け、生活のレベルを下げられない人—これも破産に陥る一因でしょう。

藤田 うまくやりくりしていけると思っていても、実際に年金が支給されると、「これだけ低いとは」と驚く人が少なくないんですね。

このように中小企業のサラリーマンはもともと給料が低いので、現役時代の報酬に比例する年金支給額も少ないのですが、かつて高額の給与をもらっていた銀行員のような人でも生活が破綻してしまう場合もあります。

ある元銀行員は、定年後に事業を始めるためのタネ銭として、年金担保融資で数百万円もの多額のおカネを借りていたんです。

ところが、事業を始める準備をした形跡がなかった。借りたおカネはどこに消えたのかと思って調べてみたら、食品やお酒のレシートがわんさか出てきたんですね。どうやら周囲の人に配っていたようで、結局破産してしまった。

おかしいと思って家族が病院に連れて行って診察してもらったら、若年性の認知症だったということが発覚しました。本人も周囲も気付かないうちに認知症の症状が進んで、おカネの管理ができずに貧困化してしまう人も少なくないんです。

それから、悪徳商法やオレオレ詐欺の被害にあったことをきっかけに、貧困状態に陥ってしまう人もいます。そういう意味では、誰もが老後破産に陥る危険性があるわけです。

プライドが邪魔をする
結城 社会の高齢化は急ピッチで進みますから、このままでは社会秩序が崩壊しかねません。実際、貧困から来る高齢者の犯罪も増えていますからね。

藤田 そうですね。高齢者の犯罪の増加は肌身で感じています。多いのは万引きですが、やはり貧困が原因になっているものが圧倒的です。万引きする商品も弁当3つだったりしますから、明らかに生きるために盗んでいる。

もう一つ増えているのが無銭飲食です。牛丼店やカラオケボックスで大量に食べ、支払いの段になったら「警察を呼んでくれ」と。

万引きは窃盗罪、無銭飲食は詐欺罪になりますが、初犯だと逮捕されても罰金刑で釈放されることがほとんどです。でも、貧困状態のままだと同じことの繰り返しになる。そのうち裁判所も「もう社会の中で生活できない」と判断しますから、刑務所に入ることになる。しかし、半年、1年と刑務所生活が続くと、出所した時に帰れるアパートもなくなってしまう。そこから生活を再建するために必要なコストが一層増えることになるんです。

だから貧困問題というのは早期発見、早期介入が原則なんですが、難しいのは外見からは困窮しているのか否かを見分けることができないことです。最近は衣料品も安いので、貧困層の人でも見た目はこざっぱりしている人が多い。背広を着ていながら、「実はネットカフェで寝泊まりしています」という高齢者もいますからね。

結城 だけど、本当は高齢者の貧困問題というのは存在しないはずなんです。なぜなら、事実上就労が困難である65歳以上で困窮状態にある人なら、生活保護を受けられるんですから。

藤田 本当にその通りだと思いますけど、問題は二つあります。一つは、彼らが持っているプライド。とくに高齢の方に多いのは、他人の世話になってはいけないという道徳観が根強くある。

「生活保護受給者となるのは恥だ、お上の世話にはなりたくない」と思う人も多いですし、身近な人にも頼れない。

だけど、そのままでは生活が破綻するし、中には栄養状態が悪化して健康を損なう人もいる。

結城 私は若者の貧困問題は、当事者の甘えも半分はあると思っているんですが、お年寄りに限っては、生活保護の受給は権利であるという認識がもう少し必要なんだと思います。そうしないと、憲法第25条で保障されている「健康で文化的な最低限度の生活」が保てません。

藤田 老後破産のもう一つの問題は、窓口となる福祉事務所の対応です。

結城 わざと生活保護を受けさせなかったり、いい加減な職員が門前払いをしているのが実態ですからね。

藤田 ええ、持ち家のような資産を持っている人の場合、扱いが非常に厳しくなるんですね。

相談に来られる方というのは、古くてボロボロになった家に住んでいる人が多いんですが、自宅を売却しようと思ってもおそらく買い手はつかないような物件です。それでも役所では「生活保護は資産を売ってからです」と言うところがまだまだ多い。

結城 本来、ローンがなくて資産価値が一定基準以下で、生活に利用している持ち家であれば、売却する必要はありません。

藤田 そうなんです。いま住んでいるところに住み続けながら生活保護を受けましょうという方向に国の政策は動いているんですが、福祉事務所の現場では「資産を売却してから」という説明が、まだまだまかり通っているんです。世の中にも「家や車を持っていると生活保護は受けられない」という誤った情報が広まっているので、事前に諦めてしまうお年寄りも多いんですよね。

年金額15万円の落とし穴
結城 制度上の問題もありますよね。

藤田 はい。生活保護を受けるためには、親族に扶養能力があるかどうかを調査してからということになっています。そのための「扶養照会」は三親等以内の親族に対してなされます。つまり厳格に運用されれば、兄弟姉妹やおじおば・甥姪はもちろん、配偶者側の兄弟姉妹やおじおば、子供や孫、ひ孫らの配偶者にまで知られることになる。

生活保護を申請しようと福祉事務所に行ったら、まずそれを説明されるため、「そんな遠い親戚にまで連絡されるなら、生活保護なんて受けたくない」と高齢者は躊躇してしまう。他人には迷惑をかけたくないと思いますからね。

結城 貧困状態にある高齢者というのは、いろんな事情で家族や親族と疎遠になっている人が多いわけです。極言すれば高齢者の貧困問題は、生活保護を受けてもらうことで解決できます。

ですがこれから問題になってくるのは、中小企業に勤めていたサラリーマンなど、定年後の収入も生活保護水準以上にある人ではないでしょうか。

藤田 そうなんです。サラリーマン時代にあまり給料が多くなかった人は、厚生年金の額が15万円以下という人が多いんですが、この程度の収入があると、生活保護の給付対象にならないケースもあります。

受け取る年金は報酬に比例し、現役世代の収入の5~6割に設定されています。たとえばモデルケースとして、月収30万円の人は引退後、65歳以降に月15万円以下で暮らしていかないといけない。このラインの人の生活水準は、おそらく生活保護レベルよりも低くなる可能性が大なのです。

なぜなら、生活保護の人は税金や健康保険・介護保険の保険料も免除になる。医療費も実質的に全額免除です。比べてみると、生活保護レベルの少し上の層が最も生活が厳しいというのが現実なんですね。

結城 サラリーマンとして定年まで勤めたし、年金ももらえるから大丈夫だと思っている人ほど、リスクが高まる可能性があるということですよね。こういう層にまで生活保護のセーフティネットを広げられればいいけれど、財源の問題もあるので、実際問題難しいでしょう。

たとえば、生活保護を受けていなくて収入が一定以下の人に対しては、健康保険料・介護保険料を免除し、医療費も無料にすることも一つの方法かもしれません。

藤田 高齢者が貧困に陥る最大の原因は、病気と介護なんです。無料低額診療施設もあるんですが、この存在はあまり知られていません。そういう中で、結城さんがおっしゃるように医療や介護費の負担が減れば、高齢者は楽になりますね。

結城 老人の貧困は表からは見えにくい。でも、隠れている貧困高齢者をどうにかして見つけ出し、福祉サービスに結び付けていくことが大切です。そうしないと本当に社会秩序が崩壊してしまいます。

藤田 高齢者の貧困問題を解消するためには、若年層の雇用問題もどうにかしないといけないですよね。非正規雇用ではなく、若者が安定的な生活を送れるような雇用環境を整えていかないと、彼らが頼っている親世代の貧困が解決しないし、近い将来、大量の貧困世代が生まれることになりますから。

結城 それと希薄化した家族関係に対する施策ですね。行政に支援を求めているような高齢者は、家族関係が崩壊している人がほとんどなんですから。家族関係を深めていくような何らかの対策が必要です。

現状では、生活保護にせよその手前のボーダーラインのレベルにせよ、就労できない高齢者の貧困は放置しておけない問題です。破産状態に陥らないための知識を個人が持っておくと同時に、国の制度も見直していかないと、老後破産の問題はさらに深刻になってしまうでしょう。

→第3部【年齢・タイプ別 この先「かかるカネ」】はこちら

藤田孝典(ふじた・たかのり)/生活困窮者の支援活動を行うNPO法人ほっとプラス代表理事。反貧困ネットワーク埼玉代表なども務める。著書に『ひとりも殺させない』(堀之内出版)など
結城康博(ゆうき・やすひろ)/淑徳大学総合福祉学部教授。社会福祉士、ケアマネジャー、介護福祉士として地方自治体に勤務した後に現職。近著に『孤独死のリアル』(講談社現代新書)など
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40605


3. 2015年10月14日 08:02:11 : jXbiWWJBCA
2015年10月14日 ダイヤモンド・オンライン編集部
中流のはずが…下流老人転落はなぜ起こる
藤田孝典・NPO法人ほっとプラス代表理事に聞く
低賃金の仕事だったから、年金額が低くて老後は貧困――そんなイメージは過去のもの。今や、比較的所得が高かった人が下流老人に転落するケースが相次いでいる。「下流老人」の著者・藤田孝典氏に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 津本朋子)

元地銀マンでも下流老人に!
ささいなきっかけから転落が始まる

――著書「下流老人」(朝日新書)では、現役時代の年収が高いからといって、決して老後が安泰とは限らない。そんな事例が描かれています。

 私は、ホームレス状態や生活困窮状態にある方を支援するNPO法人・ほっとプラスで活動してきた経験から、年収が高いから老後も大丈夫とはとても思えません。


現役時代に中流以上の稼ぎがあっても、老後は思わぬ事態から貧困に転落。「下流老人」著者・藤田孝典氏が語る老後の現実とは?
 以前は、低賃金の仕事に就いていて、老後に無年金や低年金で苦しんで生活保護を受給しなければならなくなる、というケースが比較的多かったように思います。

 しかし最近は現役時代に、比較的所得が高かった人たちが相談に来られるケースが増えています。貧困に転落した理由はさまざまです。本人の病気やケガで医療費がかさんだ結果だったり、子どもなど家族の病気で、看護や介護が必要な状態が長引いた結果だったり。もう1つ、最近増えているのが単身世帯の貧困です。

 もともと独身だったり、離婚や死別で1人暮らしとなった方々なのですが、特に男性は貧困に陥りやすい。たとえば、元地銀マンだった67歳の男性は、離婚をして妻と資産や年金を折半。月額12万円の年金暮らしをしていたのですが、あれこれ散財して家賃を払えなくなり、アパートを追い出されて、公園で生活をしていました。認知症の症状もありました。

 今の若い世代はまだしも、60代、70代の男性たちは、仕事一辺倒で生きてきた方が多い。結婚している割合は高い世代なのですが、離別や死別で1人暮らしとなった場合、極端に生活能力が低いのです。家は荒れているし、食事はすべてコンビニ弁当か外食。当然、栄養が偏ります。病気になるなどして、だんだんと体が弱ってきて、要介護状態にまでいってしまう。


ふじた・たかのり
1982年生まれ、NPO法人ほっとプラス代表理事。聖学院大学人間福祉学部客員准教授、反貧困ネットワーク埼玉代表、ブラック企業対策プロジェクト共同代表、厚生労働省社会保障審議会特別部会委員。ソーシャルワーカーとして現場で活動する一方、生活保護や生活困窮者支援のあり方に関する提言を行っている。主な著書に「下流老人」(朝日新書)、「ひとりも殺させない」(堀之内出版)など。
 一方の女性は、12万円の年金でも、それなりにしっかりと暮らしていけていたりする。男性とは対照的です。

 こうしたケースは、決して珍しくありません。よく「下流老人に転落しないためにどうすればいいのか」と聞かれます。もちろん、生活に必要な金銭の確保も大切なのですが、特に男性の場合は、現役時代に持っていた「家にお金を運んでくることが男の価値」という考え方を変えていく必要があります。下流老人に欠けている3つの要素は、収入(年金)と貯蓄、そして人とのつながりです。

――男性は「助けてくれ」と言えない人が多いですよね。

 相談を受けていても、女性や若者は「助けてほしい」とストレートに言えるし、生活保護制度を説明して受給を勧めると「明日にでも申請に行きます」との返事が返ってきたりする。一方、男性だと「親族に連絡がいくのだろうか?迷惑をかけたくない」とか、「昔おもちゃを買ってあげた甥っ子にもバレるんですか?だったら死んだ方がマシ」といった返事が返ってくる。理想像に固執しすぎるため、生きることへの、いい意味での貪欲さが欠けている印象です。

「助けてくれ」と騒げる人は、強いのです。実は、孤独に耐えることが強さなのではなく、依存先が多い人ほど強い。私はそう考えています。男性の場合は、「助けてくれ」と口にできない弱さをどう抑制し、助けを求められる強さを身につけるか。ここに、孤独死や自殺を防ぐカギがあると思います。

酒・ギャンブル依存から貧困ビジネスまで
貧困に孤独が追い討ちをかける

 これは男女を問わずですが、孤独と貧困が長引くと、心も体も崩れてしまい、うつ状態になります。ストレス発散のために、発泡酒を飲み過ぎてアル中になったり、パチンコなどギャンブル依存も多い。また、貧困ビジネスに騙されたり、新興宗教にはまったり、さらには訪問販売業者から、必要ないものを大枚をはたいて買ったりする。訪問販売にはまるのは、認知症もからんでいると思いますが、寂しさも大きな要因だと考えています。

「受援力(じゅえんりょく)」という言葉があります。災害援助の現場でよく使われる言葉なのですが、ボランティアがいるのに、助けを求めない人がいる。ボランティアは、「これを手助けしてほしい」と意思表示してもらわなければ、助けられないですよね。

 高齢期の方々にも、ぜひ受援力を身につけていただきたいです。「1人で何とかできる」とがんばりすぎたり、「こんな自分になってしまって恥ずかしい」とプライドに固執しすぎれば、どんどんと転落していく。われわれのような相談機関やボランティアの手を借りることはもちろんですが、人とのつながりの基本は、やはり家族。次に親戚や友人、そして地域社会もある。無用なプライドを捨てて、「かわいいおじいちゃん、おばあちゃん」になることは、大切なのではないでしょうか。

――年金や貯蓄は、どのくらいあれば安心とお考えですか?

 これはいくらとは、一概に言いにくいですね。病気を患って思わぬ出費がかさむこともあるし、そもそも長生きをすれば、必要な金額は増えます。もちろん、ファイナンシャルプランナーなどに相談をして、老後の生活設計を考えることは大切ですが。

 私の経験から言えることは、「年金が足りなければ、働けばいい」という考えは甘いということです。一部の高度な専門職や農業の方などを除けば、高齢期に働くというのは現実的ではない。特に後期高齢者(75歳以上)の就労は難しいのです。厚生労働省の調査でも、高齢期に働いて得られる収入は、全収入の2割以下にとどまっています。体の具合が悪くて働けなくなることも多いし、第一、働く場があまりありません。

 また、子どもがワーキングプアだったり、うつ病や引きこもりになって、親に寄りかかっているために、さらにお金が必要で生活が苦しくなるというケースも多い。今、病気や引きこもりが原因で、無業・無職になっている人は、数百万人単位でいると言われています。親世代は「本人のがんばりが足りない」などと考えがちですが、今の若者世代は、「努力のしようがない」現実の中でもがいています。

 ブラック企業で心身を病み、うつ病や引きこもりになるケースも多いのですが、特に地方では、一度非正規になってしまうと、正社員への道が閉ざされてしまいがちです。また、日本はまだ新卒採用がスタンダードで、年齢を重ねると正規雇用が難しい社会です。

 こうしたケースで親が亡くなると悲惨です。ある40代の男性は、親の遺体の脇で、どうしていいか分からず、呆然と座っていました。親が亡くなったことを隠して年金を不正受給したり、葬儀費用を出せず遺体を捨ててしまうなどの事例も後を絶ちません。

極度に家族の負担が大きい日本
若者に広がる「下流老人予備軍」

――今の高齢者は、比較的豊かな世代だと思います。その彼らも下流老人に転落してしまうということは、若い世代はどうなるのでしょうか?

 専門家たちも、今の高齢者世代に、ここまで貧困が広がるとは思っていませんでした。この後の世代は、さらに大変です。今の高齢者世代は結婚している割合は高いのですが、若い世代では、非正規で収入が足りないため、結婚すらできない人がたくさんいます。彼らが高齢期を迎えれば、下流老人は今よりもっと増えるでしょう。

 下流老人の問題を、個人の努力だけでなんとかしようというのは、現実的ではありません。消費旺盛な若い世代に対して、高額の家賃や教育費、医療費負担の軽減をはかり、さらに親の面倒は国が見る、という政策に転換していかなければ、貧困問題が解消しないだけでなく、景気が良くなるはずもありません。

 また、これまで、日本は高齢者のケアを家族と企業に依存してきたと言えます。何かあれば家族が面倒を見たし、企業も社宅など福利厚生を充実させることで、こうしたあり方を支えてきました。しかし今、企業はグローバル競争の中で利潤を追求しなければ生き残れないと考え、福利厚生は削減されてきています。家族も支える財力を失っています。

 たとえば、フランスやドイツなどは、早くから少子高齢化に向けた政策を進めてきました。住宅補助を充実させたり、若者世代の家計負担を和らげて、将来に備えた貯蓄をできるように、教育費の無償化などを進めてきたのです。比較的、緩やかに少子高齢化が進んでいったため、政策を充実させる時間があったからできたと言えます。

 しかし、日本はあまりにも急速に高齢化が進み過ぎ、政策が明らかに現実に追いついていません。家族扶助が前提の年金制度は、少子化時代にマッチしていません。また、住宅費も高い。首都圏の公営住宅の当選確率は、だいたい30倍、高いときは800倍です。東京大学への入学(学部によるが約2〜10倍の入試合格率)よりもはるかに狭き門なのです。

 医療面も課題が大きい。医療費が支払えなかったり、そもそも健康保険料が未納で病院にいけず、担ぎ込まれたときには重篤な症状になっていて、高額の医療費がかかるというケースが後を絶ちません。

 孤独死問題とも密接につながっています。心筋梗塞で通院中だったのに、薬代が払えずに服薬を止めてしまった方は、苦痛で顔がゆがみ、酸欠で真っ黒に変色した死に顔で発見されました。症状が軽いうちに通院できる制度を整えなければ、尊厳ある死に方ができないだけでなく、重病者が増えて医療コストが増大する悪循環となります。

生活保護のスティグマを恐れて
共倒れする日本の家族

――日本は生活保護のスティグマ(烙印)も大きいので、「国に面倒を見てもらう」ことへの罪悪感や恥に苦しむ人も多いですね。

 特に、日本と韓国は異常ですね。生活に困窮した親の面倒を子どもが無理をしてでもみるという構図では、共倒れになってしまいます。高度経済成長期で余力があればこそできますが、既にそんな時代ではない。税の再配分をきちんと行わなければ、社会が機能しなくなります。

 海外の先進国では、税だけでなく、寄付で再配分が行われている構図が見られます。日本は寄付もあまり根付いていないし、税の再配分も弱いですから、二極化が進む一方です。これでは消費が伸びるはずもなく、企業が良い商品を作っても売れません。それなのに、アベノミクスは社会保障の充実に力を注がずに、経済成長のみを追いかけようとしている。

 資産家や企業にこそ、「こうした問題を解消するために、きちんと税金を取ってくれ」と声を上げてもらいたいものです。そして、現時点での下流老人を救うための政策ももちろん必要ですが、若い世代が将来、下流老人に転落しないような政策も必要です。今のままでは、彼らが高齢者になれば、下流老人が激増するのは確実なのです。
http://diamond.jp/articles/-/79873


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