アングル：金融庁が地銀にベンチマーク導入、浮上する序列化・再編の懸念

http://s4.reutersmedia.net/resources/r/?m=02&d=20151020&t=2&i=1088318837&w=644&fh=&fw=&ll=&pl=&sq=&r=LYNXNPEB9J0GX
　１０月２０日、金融庁が示した金融行政方針に盛り込まれている新施策に対し、地方銀行業界から早くも不安や懸念の声が浮上している。金融庁のビル前で昨年８月撮影（２０１５年　ロイター/Toru Hanai）

［東京　２０日　ロイター］ - 金融庁が示した金融行政方針に盛り込まれている新施策に対し、地方銀行業界から早くも不安や懸念の声が浮上している。地域経済の活性化に各地銀がどの程度コミットしているかを数字で示す「ベンチマーク制度」が盛り込まれているためだ。点数化が序列を生み、再編を強いられるとの思惑が、長らく「安全地帯」にいた地域金融機関の中で広がっている。

＜地域の活性化図るベンチマーク導入＞

「点数が付けられ、序列化されるのではないか」――。ある地銀の関係者は、金融行政方針で明らかにされた金融庁の新たな施策に懸念を示す。

この新施策では、地域経済の活性化に向けて、各地銀がそれぞれの地域でどのように金融仲介機能を発揮しているかを計測する「多様なベンチマーク」を導入する。

金融庁での議論はこれからで、行政方針では「地域における取引企業数の推移」や「支店の業績評価」が例示されているだけだ。

地方経済にマネーが潤沢に回ることをターゲットに、最終的には数十のベンチマークが導入される見通し。

ただ、金融庁は地銀全てに同じベンチマークを一律に適用して比較するのではなく、地域や地銀のビジネスの実情に合わせ、個別のベンチマークを採用し、その推移を見ながら取り組みの進ちょく程度を評価したいとしている。

これまでの地銀ヒアリングでは、いくつかの成功事例のみを挙げ、その他は定性的な表現にとどまる金融機関もあり、必ずしも実態を把握し切れていなかったとの反省が金融庁にはある。

そこで今回は確実な成果を引き出すため、ベンチマーク方式による定量的な調査に乗り出すことになった。

今回のベンチマーク採用は、安倍晋三政権が優先順位の高い目標として掲げる「地方創生」を金融面からバックアップし、人口減少で沈滞傾向の色濃い地方経済の活性化を図るという大きな目標が背景にある。

＜序列化なら再編への布石か＞

しかし、ベンチマークごとに達成度合いが点数で評価されれば、地銀・第二地銀が総点数で順位付けされかねない。

一部の地方金融機関の間からは、万が一、点数が公表され、自行が低い順位になれば市場からの信用が落ち、生き残りのために再編するのではないかとの風評が立つとの警戒感が広がっている。

これに対し、金融庁幹部は、ベンチマークをあくまで「地銀と金融庁が対話を深めるためのツール」と位置づけ、序列化を否定。金融機関の疑心暗鬼を振り払おうとしている。

だが、地銀にはもう１つの懸念もある。ビジネスモデルが画一化され、それに沿った業務方針を強制されるのではないかとの不安だ。

数十のベンチマークを導入するとはいえ、採用したベンチマークにより達成度を測るとなれば、特定のビジネスモデルを行政が押し付けることにもなりかねない。

ある地銀幹部は「地銀のビジネスモデルは千差万別だ。ベンチマークにより、どこまで多様性を確保しながら客観的に適切に評価できるのか」と危惧する。

金融庁による初の試みは、早くも地方金融業界に大きな波紋を投げかけている。

(和田崇彦　編集：布施太郎、田巻一彦)

http://jp.reuters.com/article/2015/10/20/angle-local-bank-benchmark-idJPKCN0SE0WJ20151020?sp=true