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AECが生まれる:今年末にASEAN経済共同体
http://www.asyura2.com/15/hasan101/msg/786.html
投稿者 あっしら 日時 2015 年 10 月 25 日 04:06:30: Mo7ApAlflbQ6s
 


[ゼミナール]AECが生まれる


(1) 単一市場目指す東南アジア

 東南アジア諸国連合(ASEAN)は1967年に誕生した。92年にASEAN自由貿易地域(AFTA)を創設、翌年から関税削減を始めた。関税0〜5%をほぼ達成し、域内貿易は毎年10%前後も伸びている。

 さらなる外資誘致や競争力拡大に向け、ASEANは2003年、ASEAN経済共同体(AEC)創設で合意した。究極の目標はASEAN一体化。サービスや投資、人や資本の移動の自由化も盛り込み、15年末までの単一市場創設を目指す。

 国際経済学者のバラッサは60年代、関税や貿易の自由化を段階別に分類した。まず、関税やサービス貿易の自由化をすすめる自由貿易協定(FTA)。FTAに、域内関税の撤廃や域外諸国への対外共通関税を設けたものが関税同盟だ。

 関税同盟を一歩進め、輸出入の数量制限など非関税障壁を撤廃し、人・モノ・カネ・サービスなどを自由に移動可能にするのが共同市場。さらに進み、共通の農業・通商政策(通貨統合)を実施するのが経済同盟だ。

 今では関税同盟を飛ばし、共同市場へ部分的に踏み込むFTAが現れた。人や資本の移動、知的財産権、政府調達、競争政策など包括的な内容だ。

 AECは単一市場を目指すが、目標達成はまだ不十分。関税同盟、共同市場、経済同盟の条件を完全には満たさず、実質的には包括的なFTAだ。

 ただ、その先がある。経済共同体の実現に向け道路・鉄道といったインフラや空運・海運の単一市場、エネルギー供給統合、格差是正など、幅広い分野の経済統合を目指す。本稿はAECと東南アジア経済を解説する。

(国際貿易投資研究所)

[日経新聞10月6日朝刊P.28]


(2) 関税以外の障壁様々

 東南アジア諸国連合(ASEAN)経済共同体(AEC)では関税の削減・撤廃が進んでいる。

 先発6カ国(ASEAN6)と呼ばれるタイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ブルネイでは関税削減・撤廃の対象品目は2010年から0%。後発のCLMVと呼ばれるカンボジア・ラオス・ミャンマー・ベトナムは15年までに0%にすることになっている。税率7%が上限の一部品目は、18年まで猶予される。

 ASEAN6の自由化率(関税0の品目の割合)は15年に99.2%、CLMVは90.8%となる。

 一方、物の貿易に影響を与える非関税障壁(NTB)は、複雑な税関審査や輸入制限措置、規格・基準認証制度、検疫、内国税など様々だ。規制緩和は遅れている。

 複雑な通関手続きの解決策の中核は「ASEANシングルウインドー(ASW)」。複数の行政機関にまたがる手続きを電子化などで一つの窓口に集約する。だがカンボジア・ラオス・ミャンマーの対応が遅れている。

 ASEAN6でも、インドネシアは船積み前検査や携帯電話・パソコンなどの輸入許可が必要。マレーシアは自動車の輸入制限や豚肉の輸入許可がある。シンガポールもワイン・たばこ・自動車に高い物品税を課す。

 対象国・地域で生産されたことを示す原産地証明手続きもNTB。自由貿易協定(FTA)の利用には不可欠だ。ただ、証明書発給には時間がかかる。AECでは、指定発給機関が証明する第三者証明制度から、企業が申請する自己証明制度に移行する動きがある。日本企業も対応が必要だ。

(国際貿易投資研究所)

[日経新聞10月7日朝刊P.30]

(3) 緩和遅れるサービス分野

 東南アジア諸国連合(ASEAN)経済共同体(AEC)は関税だけでなくサービスや投資、人の移動の自由化も推進している。進捗状況の指標として、ASEAN事務局は各国の自己申告を基に「スコアカード」を作成。それによると2014年の自由化の実施率は82.1%だ。中でもサービス貿易や輸送の分野が他よりも低かった。

 製造業への投資に関しては、ASEAN諸国の多くで外資出資比率の制限が撤廃されている。

 だが、サービスへの投資では、依然として規制がある。インドネシアは営業床面積が400平方メートル以上のミニマーケットへの外資進出を認めていない。タイはAECのサービス自由化交渉で、同国で製造した自社ブランド製品を販売する場合のみ、小売業に70%まで出資できると約束するにとどまる。サービスで緩和が進まないのは、外資法だけでなく国内法の変更も必要になるためだ。

 その他の分野はどうか。シンガポールは銀行業への出資を規制するほか、新聞発行での外資出資比率や外国人取締役の人数を制限。インドネシアはベニヤ・合板、発動機部品、ポンプ・コンプレッサーなどの分野で外資進出を規制している。

 規制を緩める動きもある。ミャンマーは14年の外国投資法細則で、239あった外資規制業種を135に絞った。

 AECは貿易投資に従事する人材や専門技能者が国境を越えて移動することを自由化しようとしている。そのためには、熟練労働者や専門家の資格を互いに承認する仕組み(相互承認協定)やビザ・雇用許可証の円滑な発行推進が求められる。

(国際貿易投資研究所)

[日経新聞10月8日朝刊P.31]


(4) 域内経済格差どう縮小

 東南アジア諸国連合(ASEAN)経済共同体(AEC)は、域内の経済格差を是正するため、インフラ整備や人材育成に取り組んでいる。

 自由化の先発国であるASEAN6(タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ブルネイ)と、後発のCLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)との格差は大きい。14年のシンガポールの1人あたり国内総生産(GDP)は5万6316ドルで、カンボジア(1080ドル)の52倍だ。

 格差是正にむけて、タイ・ベトナム・ラオス・カンボジア・ミャンマー・中国南西部の「大メコン圏」では、アジア開発銀行の支援で輸送・人材開発などハード・ソフト両面の開発が進む。同地域に「東西・南北・南部経済回廊」を張り巡らし、道路などインフラを整備する。同時に物流を促すため、国境での積み替えなしで車両の相互乗り入れを進めている。

 また、アジアに進出する企業の間で、中国以外に拠点を確保する「チャイナ+1」や、同様に「タイ+1」と呼ばれる動きがある。これによりCLMVなどへの投資を促すことが、経済格差縮小につながりそうだ。CLMVは低賃金で豊富な労働力を有し、日欧などへの輸出で一般特恵関税制度を利用し関税を削減できる。カンボジアとラオスでは関税減免措置がある経済特区を中心に日本企業が進出している。

 最近はミャンマーのティラワ経済特区への日本企業の関心が高い。小売業では14年、プノンペンでイオンが開業した。大メコン圏の経済回廊や経済特区の活用により、機会が広がりそうだ。

(国際貿易投資研究所)

[日経新聞10月9日朝刊P.27]

(5) 自由化達成は自己申告

 域内の自由化を進める東南アジア諸国連合(ASEAN)経済共同体(AEC)だが、サービス貿易では規制撤廃が進んでいない分野が多い。

 ベトナムでは、小売業への進出が2009年に自由化された。だが2店舗目以降、500平方メートル以上の規模で出店する場合は許可制となる。

 また、サービス分野でASEAN企業の外資出資比率を70%まで引き上げる交渉が遅れている。タイが卸売業に70%の比率で出資することを認めたのは医療品のみだ。また、ある分野で外資出資比率が70%まで認められたとしても、現地日系企業がASEAN企業と認定されるかは各国で解釈が違う可能性がある。

 さらに、AECの自由化目標の達成率を示すスコアカードは自己申告制で、詳細が公表されないため、自己評価に近いのが問題だ。ASEANは各国の報告を基に、非関税障壁(NTB)のデータベースを作成している。07〜10年、域内全体の報告件数は5781件だった。とくにインドネシアは自由化に逆行する動きをみせている。NTB報告件数は2000件超。10年には自動車部品、陶器、化粧品、鉄鋼、省エネ電球、携帯電話、自転車の7品目で、輸入検査を義務化した。

 海外の日系企業は外国人労働者を雇用しているが、急に規制が変わり、人の確保が難しくなることがある。ASEAN以外の国籍を持つ人へのビザ発行が滞り、企業グループ間の人の移動に支障が出る場合もある。

 資本の自由化でも課題が残る。海外送金の申請手続きの簡素化や、グループ会社からの融資の規制緩和が必要だ。

(国際貿易投資研究所)

[日経新聞10月12日朝刊P.15]


(6) 日本企業、FTAの利用を

 東南アジア諸国連合(ASEAN)経済共同体(AEC)が誕生すれば、日本企業の事業環境は改善する。利点を最大限に取り込むため、日本企業はAECを含む自由貿易協定(FTA)の利用率を引き上げるべきだ。ASEAN諸国からの日本向けの輸出でのFTA利用率はまだ低い。

 FTA利用には、加盟国で生産したことを示す原産地証明書が必要。企業が証明書を作る自己証明制度の導入がAECで進んでおり、活用すれば手続きを簡素化できる。

 AECはサービス分野の外資出資比率の上限を70%まで引き上げる目標だ。達成が遅れがちではあるが、空運、情報通信、ヘルスケア、観光、物流などが対象になる。

 人の移動の自由化が進めば、外国人労働者雇用や商用旅行が容易になる。熟練労働者や専門家が移動するための相互承認制度、ASEAN以外の国籍を持つ人の商用旅行向け共通ビザなどがAECで認められれば、日本企業の利点は大きい。

 見逃せないのは、AECによって周辺地域との貿易が容易になる可能性があることだ。タイ・ベトナム・ラオス・カンボジア・ミャンマー・中国南西部の「大メコン圏」などでは国境での検査簡素化を検討中。メコン川流域とインドをインド洋を介して結ぶ「メコン・インド経済回廊構想」が実現すれば、ホーチミンやプノンペンからインド南部まで商圏が拡大することも期待できる。

 輸出元に代わり第三国から商品と送り状を送る仲介貿易では、FTAを使えない恐れがあることは要注意だ。ASEANの日系企業の多くは仲介貿易を手掛けている。

(国際貿易投資研究所)

[日経新聞10月14日朝刊P.32]


(7) 関税どの国からが有利か

 東アジアでの生産ネットワークを形成する上で、自由貿易協定(FTA)の関税削減効果は、どこに拠点を置くか判断する際の重要な指標だ。

 例えばタイに商品を送る場合、最も有利なのはどの国からか。タイが乗用車を輸入する際、FTAを結んでいない米国や欧州連合(EU)からは最恵国待遇(MFN)税率の70.1%が適用される。日本からは、日タイ経済連携協定(JTEPA)があるので関税率は49.1%に下がる。ところが東南アジア諸国連合(ASEAN)からは、ASEAN自由貿易地域(AFTA)を利用するので関税はゼロだ。

 自動車部品もそうだ。米欧から輸入すると、関税はタイのMFN税率である25%。韓国からは15.2%、日本からは7.5%だが、ASEAN域内からの輸入には関税がかからない。ASEANの日系企業は、AFTA発効以前の1980年代からASEANの自動車部品の関税削減措置を活用し、域内で強固な供給網を築いてきた。

 タイは中国との多くの品目の貿易でASEAN中国FTA(ACFTA)、他のASEANとはAFTA、日本とはJTEPAにより関税を削減できる。全品目を平均すると関税削減効果が最大なのはAFTA。次いでJTEPA、ACFTAだ。タイを拠点にした生産ネットワークを考える際、関税の面からはAFTAの利用が最適だ。

 関税削減効果は、どの国でどのFTAを利用するかで違う。東アジア進出やサプライチェーン再編を考える企業は、FTAの関税削減効果や賃金・物流コストを十分に比べて決断すべきだろう。

(国際貿易投資研究所)

[日経新聞10月15日朝刊P.29]


(8) メガFTA、20兆ドル市場

 東南アジア諸国連合(ASEAN)では、域内や域外国との自由貿易協定(FTA)が広く利用されている。ASEAN自由貿易地域(AFTA)や「ASEAN+1」と呼ばれるものだ。

 「ASEAN+1」はASEANに他の国が加わったFTA。1999年からの日本とシンガポールのFTA交渉に触発された中国は2005年にASEAN中国FTAを成立させた。韓国は07年、日本は08年、インドは10年、豪・ニュージーランドも10年にASEANとFTAを結んだ。

 その後、複数国でつくる広域の自由貿易圏「メガFTA」の交渉が5つ動き始めた。(1)日米など12カ国の環太平洋経済連携協定(TPP)(2)日・中・韓・印など16カ国の東アジア地域包括的経済連携(RCEP)(3)日中韓FTA(4)日・欧州連合(EU)経済連携協定(EPA)(5)米国とEUの環大西洋貿易投資協定(TTIP)――である。

 TPPにはASEANからシンガポール・ブルネイ・ベトナム・マレーシア、RCEPには全10カ国が加わる。ともに域内総生産(GDP)が計20兆ドル超の巨大市場だ。ASEANは両方の恩恵を享受できる。

 メガFTAが動き出す中、ASEAN経済共同体(AEC)は15年末までに発足を目指す。関税だけでなく様々な貿易の規制撤廃を進め、単一市場を生み出す。03年に創設を合意した狙いは、投資先としての魅力や国際競争力の向上だった。メガFTAの台頭を控え、重要性を増している。日本企業は、AECとメガFTAを並行利用して供給網を拡大できる。

(国際貿易投資研究所)

[日経新聞10月16日朝刊P.27]


(9) 部品などの供給網形成を

 東南アジア諸国連合(ASEAN)で、インドネシアとマレーシアとタイは、貿易自由化に早くから取り組む先発国だ。域内貿易でも対日・中・韓・台湾でも、部品や石油加工品など「中間財」の割合が高く「中間財のサプライチェーン(供給網)」が形成されている。主に中国に加工前の素材と中間財を輸出。中国から中間財と完成品の「最終財」を輸入している。

 一方、貿易自由化では後発国であるベトナムは素材の輸出国だ。同時に中間財を輸入して最終財を輸出する加工貿易型であることが特徴だ。

 ベトナムの世界からの輸入に占める中間財の割合は2013年、71.5%と高かった。半面、輸出では中間財は25.4%にとどまる。だがASEAN向けの輸出に限れば47.9%が中間財で、05年(26.4%)の倍近い。中間財が急速に増えた背景には、外資参入の活発化などがあるようだ。ベトナムは域内の中間財供給網に組み込まれつつあると考えられる。

 一方、ベトナムと同じく貿易自由化の後発国であるミャンマーとカンボジアからの輸出は、素材(資源)や縫製品・履物など単一の業種によるものが多い。中間財の相互調達を行う供給網を十分に形成できていない。

 2国の今後の課題は、偏りがある今の貿易形態から、中間財などの輸出割合が高い構造に転換できるかどうか。また、海外からの投資で産業の裾野を広げ、より付加価値の高い国内産業を育成できるかどうかだ。ASEAN経済共同体(AEC)の実現で先発国との経済格差が是正されれば、輸出に占める中間財の割合が高まりそうだ。

(国際貿易投資研究所)

[日経新聞10月19日朝刊P.17]

(10) 政府が担うべき役割は

 日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)との貿易の伸びは、ASEAN域内貿易よりも低い。企業の現地生産拡大や経済連携協定(EPA)活用が不十分なためだ。15年末に誕生するASEAN経済共同体(AEC)の貿易自由化策を活用すべきだ。そのために、AECの貿易自由化の達成状況を把握し、適切に対応することが求められる。

 政府が担うべき役割はまず、AECの輸入制限措置やサービス貿易および人と資本の移動の自由化の現状をデータベース化すること。また現地での企業の生産・物流ネットワーク形成を促すため、人材育成や、新たな付加価値を生む「産業クラスター」形成を支援すべきだ。さらに企業がAECを活用する上で何が問題か、ASEAN側に伝えることが重要だ。

 ASEAN域内の経済格差是正に協力することも不可欠だ。日本の政府開発援助(ODA)は2001年以降、米国に追い抜かれ、14年にはドイツよりも低水準だった。開発が遅れるカンボジア・ラオス・ミャンマー・ベトナムのインフラ整備にODAで取り組むべきだ。格差是正には、中国やインドまでも含む、より広域の経済圏成立を促すことも役立つ。

 官民が力を合わせてやるべきことは色々ある。東南アジアでの部品・製品の相互調達では、輸送費などのコスト削減が必要だ。企業が中国以外に拠点を設ける「チャイナ+1」の動きも前進させる。さらに環太平洋経済連携協定(TPP)など広域の自由貿易協定(FTA)を推進すべきだ。

 (この連載は、国際貿易投資研究所研究主幹の高橋俊樹が担当した)

=この項おわり

[日経新聞10月20日朝刊P.28]


 

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