★阿修羅♪ > 経世済民102 > 159.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
転落死続出の「虐待」老人ホームのトンデモ実態!職員の年収3百万円台、高い離職率…(Business Journal)
http://www.asyura2.com/15/hasan102/msg/159.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 10 月 31 日 00:19:16: igsppGRN/E9PQ
 

             第三者調査委員会の設置に関するお知らせ(「メッセージ HP」より)


転落死続出の「虐待」老人ホームのトンデモ実態!職員の年収3百万円台、高い離職率…
http://biz-journal.jp/2015/10/post_12181.html
2015.10.31 文=編集部 Business Journal


 介護事業で国内3位のメッセージ(岡山市、ジャスダック上場)が運営する介護付き有料老人ホームで職員が入所者を虐待していた問題で、厚生労働省は9月29日、本社を立ち入り検査した。介護保険法に基づき、職員の研修内容や人員配置など管理体制を調べた。

 メッセージをめぐっては虐待や窃盗が常態化していた。子会社の積和サポートシステムが運営する川崎市幸区の介護付有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」では、昨年11月から12月にかけて3人の高齢者が深夜に相次いでベランダから転落死した。ベランダの手すりは高さ120センチもあり、高齢者が自力で手すりを超えるのは不可能とみられている。事故が起きたすべての日に夜勤していた23歳の元職員は今年5月、施設内での窃盗容疑で逮捕された。窃盗は計19件、被害総額200万円以上に及んだ。

 さらに同施設では、今年3月に高齢者が浴槽の中で呼吸を停止して死亡。家族の通報で4名の介護職員がナースコールを外したり、「死ね」などと暴言を吐き、頭部を叩いたりする虐待が行われていたことも判明した。

 大阪府豊中市の「アミーユ豊中穂積」では男性職員が今年6月、入居者の女性に平手打ちしたり腰を蹴ったりして、全治3週間のけがを負わせた。職員は、大阪府警に傷害容疑で逮捕された。名古屋市の「アミーユ大曽根」でも、職員による虐待が発覚している。

 2014年11月にも、千葉県松戸市の施設で入所者の男性(80)がベランダから転落死していた。男性は入所して数日後の早朝、3階の自宅ベランダから転落した。職員が物音に気付き、男性を病院に搬送したが亡くなった。メッセージ広報担当者は「川崎市の転落死との関連はない」としている。千葉県警によると、発生直後にホームから「転落死があった」との報告があったという。

■株価急落

 事故の報道を受け、メッセージの株価は急落した。9月8日には700円安のストップ安となり、9日も560円安の2733円、10日は500円安の2385円。9月16日には2011円で年初来安値をつけた。年初来の高値は8月17日の4545円。高値から56%も下げた。

 大手証券会社は「会社は入居者及び家族、職員へのフォローを欠かさず、自治体、厚生労働省にも協力的な姿勢は一貫している」と指摘。再発防止策では職員の問題行動等の早期把握など問題解決が図られ、業績への悪影響は長期化しないと見て、「入居者の(大量)退去等の兆しは見られない」と解説している。目標株価を5100円から3600円に引き下げたものの、「最近の株価下落は行き過ぎの印象が強い」としてレーティングは「バイ(買い)」を継続した。これで株価は、10月に入り、5日に2654円(211円高)まで戻した。

 厚労省は9月18日、関東オフィス(東京)の立ち入り検査をしたのに続き、29日には本社を立ち入り検査。メッセージグループの業務管理体制や再発防止策を調査した。

 川崎市は10月6日、Sアミーユ川崎幸町に対して、職員6人で3度目の監査を行った。監査後、川崎市の担当者は、厚労省と相談して行政処分を含めて対応する方針を明らかにした。行政処分が出れば、再びメッセージの株価が下落することは避けられない。株式市場は厚労省の調査結果を注視している。

■拡大の歴史

 メッセージの創業者は橋本俊明会長。1973年に岡山大学医学部を卒業、同大学医学部第一外科医局を経て81年に橋本胃腸外科病院(現・岡山光南病院)を開業。91年にリハビリを主体とした老人保護施設をつくり、94年に医療法人自由会を設立した。95年にケアハウスやグループホームを始めた。

 97年に株式会社メッセージを設立。2000年に施行された介護保険制度で、相部屋だったグループホームが補助対象から外れたため、介護付き有料老人ホーム「アミーユ」を展開するようになった。04年4月、ジャスダック上場を果たした。07年からサービス付き高齢者向け住宅に進出した。

 12年2月、在宅介護サービス大手でジャスダック上場のジャパンケアサービスグループ(現・ジャパンケアサービス)に対するTOB(株式公開買い付け)を実施し、100%子会社にして上場を廃止した。買収額は28億円だった。ジャパンケアサービスは札幌市で創立。営利企業による特別養護老人ホームを日本で初めて運用。介護会社として株式を店頭公開した最初の企業として知られている。折口雅博氏が率いるグッドウィル・グループが解体され、07年に子会社のコムスンを売却して介護事業から撤退したが、ジャパンケアサービスは13都府県のコムスンの在宅介護事業を継承し、東日本に多くの事業所を得た。その事業を、メッセージは丸ごと手に入れたことになる。

 ジャパンケアサービスを子会社に組み入れた効果は大きかった。メッセージは一気に介護サービス業界の3位に躍進した。15年3月期時点で、主力事業である介護付き有料老人ホームのアミーユ、サービス付き高齢者向け住宅の「Cアミーユ」など合わせて303施設を展開、総入居定員は1万6807人となっている。

 メッセージの15年3月期の売上高は前期比6.4%増の789億円、営業利益は同10.4%増の73億円だった。Cアミーユとジャパンケアサービスを統合した地域包括ケア事業は、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の収入が増加したことが寄与し、営業収入は382億円となった。この結果、アミーユ部門の365億円を上回った。

■低い給与で高収益実現

 メッセージの営業利益率は9.3%で、ライバル他社を上回る。それは介護職員の給与が業界平均より低く抑えられていることによる。連結対象の従業員数は7227人、臨時雇用者は1万645人。単体の従業員の平均年間給与は358万円。同業他社に比べて50万円は低い。オーナーの橋本俊明会長は、「週刊文春」(文藝春秋/10月1日号)の取材に対し、「職員の給料を上げると赤字になる」と語っている。資産管理会社の東畦商事、橋本会長と妻を合わせたメッセージの所有株式数は全体の34.67%(15年3月末現在)。

 メッセージは10月5日、同社グループが運営する介護付き有料老人ホームでの転落死や虐待の問題について調べる、第三者調査委員会の設置を決めた。11月末をメドに結果を公表する。同委員会は、弁護士2人と大学教授の3人で構成する。

 高齢化に伴い、介護の需要は確実に増える。国民の誰もが介護サービスを利用できるよう、供給が不足してもサービス価格が高騰することはない。介護職員の給与が低く抑えられているため、介護職員は慢性的に不足している。

 東京商工リサーチによると、15年1〜8月累計で、老人福祉・介護事業の倒産は前年同期から5割増の55件。介護保険制度が導入された2000年以降で最悪のペースになっている。倒産した55件の半分は、10年以降に設立された新規参入組だった。住宅メーカーが主導して、高齢者向け住宅がつくられている。完成後、介護業者にリースされる。箱物の施設はあっても、人手が足りず経営は苦しい。

 メッセージのSアミーユ川崎幸町は頭金なしで、食費や光熱費を含めた月額22万円という超安値で入居者を集めていた。頭金なしなら月額30万円、月額22万円なら頭金は500万円以上必要になるのが、業界の常識となっている。

 低価格を売りに入居者を集めるが、低賃金などを理由に離職率も高い。そうした状況が職員による虐待を引き起こしたが、今回発覚した事件は氷山の一角とみられている。介護離職者が年間10万人を超える中、安倍晋三首相はアベノミクスの「新3本の矢」として「介護離職者ゼロ」という目標を掲げているが、達成までの道のりは険しい。

(文=編集部)

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
1. 2015年11月05日 08:29:30 : OO6Zlan35k
老後貧困」を避けるために今できること ――社会保障と自衛策を学ぶための3冊

「3冊だけ」で仕事術向上! ――奥野宣之「ビジネス書、徹底比較レビュー」
「老後貧困」を避けるために今できること ――社会保障と自衛策を学ぶための3冊
2015.10.30コメント(2件)

■今回取り上げる3冊

●『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』
 藤田孝典/朝日新聞出版/821円
●『すぐそばにある「貧困」』
 大西 連/ポプラ社/1620円
●『老後貧乏にならないためのお金の法則』
 田村正之/日本経済新聞出版社/1620円
 近所のスーパーに行くと、時間限定セールのたまごを求めて老人が先を争って並んでいる光景をよく見る。傷んだ白菜やバナナなどの「おつとめ品」をチェックしているのもたいてい高齢者だ。

 その場面だけを切り取って「悲惨だ!」と断じるつもりはないけれど、いろいろと思ってしまう。

 やはり老後は苦しい生活になるのだろうか、と。

 若者であればカネがなくても働けばいいし、これから逆転の目もなくはない。
 しかし、働けない老人は年金があるだけで、収入を増やす方法はない。貯金や子供からの仕送りがない場合、節約して年金をやりくりするしか道はない。

 中高年はどちらかといえば老人に近い。若者よりカネはあるだろうが、勤め先が大企業でもなければ賃金は増えないし、これから何かの才能が花開くというのも考えにくい。幸運にもリストラされずに会社を勤め上げることができたら、年金支給年齢になるまでさらに職を探し、年金が出るようになっても安心せずしっかり節約して……。

 うう、暗い。
「やっぱりこれからは死ぬまで働くってことじゃないですか?」
 こんなことを言う人もいる。流行りの「一億総活躍」には、老人も含まれているだろう。「社会で活躍する」といえば聞こえはいいが、本当に「死ぬまで働く」なんてできるのか。むしろ体を壊して死ぬことになるのでは。

 とはいえ、ごぞんじのとおり日本は世界トップを突っ走る高齢大国だ。税収源である現役世代はどんどん減っていく。財源が少なくなる一方で、社会保障のニーズはどんどん高まるばかりだ。

 もはや日本で老後生活は立ちゆかないのか。
 これから老後を迎える人世代の貧困は避けられないのか。
 老後の貧困に備えてどういった対策が取れるのか。
 今回も3冊の本で考えてみよう。

次ページ:巨大化する「一寸先の闇」

巨大化する「一寸先の闇」

 まずは『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』から。ソーシャルワーカーで貧困対策のNPO代表の著者が、今まさに日本中で起きている「老後の貧困」をレポートしている。

「一億総老後崩壊」はやや煽りすぎにも思えるが、要は「誰でも老後貧困になる可能性がある」ということである。
 どういうことか。

 もちろん、若いうちから大きい会社に勤め、年金をきっちり納め、貯金して、子供を独立させて、大きな病気やケガもなく……と、すべてがうまくいけば老後貧困にはならない。
 ところが、なにか歯車が違えば、貧困ルートに向かう可能性がある。

 たとえば、本書が代表的なきっかけとして挙げているのは、次のようなことだ。
●親の介護……介護離職で生活が不安定になったり、介護費用の出費がかさんだり
●独立できない子供……引きこもりやニートなど、子供の世話で家計が苦しくなる
●大病、ケガ……手術費や治療費で貯金や退職金が吹っ飛ぶ
●離婚……料理や家事ができない男性は生活が荒む

 人生が「一寸先は闇」なのは、今も昔も変わらないのだが、経済の停滞や高齢化の結果、あまりにも「闇」に落ちていく人が多くなってしまった、というわけだ。

 とくに本書に出てくるある高齢男性の話はインパクトがあった。彼は62歳の退職時点で3000万円の貯金があったにもかかわらず、すべて失って、今は生活保護を受けている。

 カネはどこに消えたのか。
 最大の原因は、二度におよんだ心筋梗塞の治療費である。

「病院の医療費が高くてね。心臓の手術は難しいらしくて、診察代や薬代も高かった。入院したときも個室だったから、退院のときにすごい金を取られたよ。それも1年の間に2回倒れたもんだから大変」と話す。
 残りの貯蓄は、その医療費と生活費にすべて消えたそうだ。しかし、62歳からのたった7年間で、3000万円もの現金がなくなるものだろうか。わたしが「高額療養費制度は利用しなかったんですか?」と質問すると、「そういう制度があるってことを知らなかった」と言う。
 それから生活が破綻するまでは、あっという間だった。(下流老人/P.62 ※太線強調は引用者によるもの。以下引用部も同様)
 ちょっとズッコケそうになるやりとりだが、他人事ではない。筆者も「高額療養費制度」という制度があるなんて、まったく知らなかった。

 こういう場合、家族がいればいろいろと調べたり役所に相談してくれたりしそうなものだけれど、彼は独身。心筋梗塞で生きるか死ぬかというときに、カネの心配をする余裕はないだろう。

 3000万円の貯金があっても、下流老人になるときはなる。
 もちろん本人の責任も大きい。ただそれでも気の毒な話である。

次ページ:生活保護をめぐるドラマ

この高齢男性のように、カネが底をつき、頼れる人もいない場合、残された道は生活保護しかない。

 2冊目『すぐそばにある「貧困」』はそんな「困窮者が生活保護を申請するとき」を描いたノンフィクションだ。著者の大西連氏は1987年生まれの若者。10代の頃からホームレスへの炊き出しや夜回りなどのボランティア活動を続け、今は貧困問題に取り組むNPO「もやい」の理事長を務めている。

 本書では、高校生だった大西氏が、ホームレスや生活困窮者への支援活動に身を投じ、ついに貧困撲滅の活動家になるまでの話を軸に、彼が支援してきた人々のエピソードが語られる。

 面白いのは、生活保護の需給を目指して、数々の障害をクリアしていく展開だ。
 それはいわゆる「水際作戦」とのバトルとは限らない。生活保護を申請する側の相談者にもとんでもない曲者がいるし、福祉事務所の職員にも涙を流しながら話を聞いてくれる人がいる。

 ただ、あたりまえだが生活保護はそう簡単には受けられない。
 そこで大西氏のような支援者が、申請者が福祉事務所の相談員から一方的にやり込められないように付き添ったり、受給の障害となるものを取り除く手伝いをするのだ。

 たとえば、著者が一夜漬けの勉強で、はじめてホームレス男性と福祉事務所(通称:フクシ)に行き、申請に付き添うシーンはこんな具合だ。

「いまサトウさんは大久保駅の近くの路上でホームレス生活をしています。腰の具合も悪いし、生活保護の申請をして、どこか泊まれる場所や食事など、なんとかしてもらえないでしょうか。生活保護の申請を受けつけないなんてことは、まさかないですよね?」
 昨晩得た知識をフル活用する。生活保護を申請することは誰にでも可能だ。極端な話、1億円の収入がある人でも申請自体はできるし、申請があればフクシはそれを受けつけなければならない。受けつけたうえで、生活保護が必要かどうかを判断するのであって、申請そのものを受けつけないのは違法な運用なのだ。
 少しむっとしたようにAさんが答える。
「もちろんです。本人が希望するなら申請を妨げるようなことはしませんよ。では、サトウさん、生活保護を希望するんですね? この人が言っていることに間違いはないですか?(すぐそばにある「貧困」/P.71)
 こういった駆け引きが「法廷もの」みたいで読ませる。老人だけでなく女性、DV被害者など、さまざまなケースにおける生活保護の申請をストーリーに沿って学ぶことができる。

 生活保護を受けないで済むならそれに越したことはない。しかし人生は一寸先は闇なのだから、どんなに順調な人でも「生活保護制度について知っておくこと」は必要だろう。

 生活保護で、働かずに金を得ることについてはいろいろと批判はあるけれど、「野垂れ死にすることがない社会」というのは、すばらしいものだと素直に思った。現実にそうなっているかはさておき。

次ページ:「相続」は最後の希望?

 生活保護や年金のような社会保障を受けるのはなにもやましいことではない。
 しかし、財源が厳しい以上、いざというとき、充分な保障を受けられないケースがあることも想定しておいたほうがいいだろう。

 セーフティーネットだけでなく「自衛策」も講じておくべきだ。
 こんなことを考えたとき頼りになるのが3冊目の『老後貧乏にならないためのお金の法則』である。

 著者の田村正之氏は日経新聞のベテラン記者。架空の対談形式で、貯金だけでなく、投資・年金・相続など、あらゆるマネー知識を駆使して、超高齢時代をサバイバルしていく術を説く。

 投資信託などの資産運用をはじめ、個人年金、住宅ローンや生命保険の見直しなど、パーソナルファイナンスとしてのアドバイスはどれも実践的だが、まあ、よくある話ではある。

 それより注目したいのは「老後貧乏を避けるための相続」を語った章である。
 親の遺産で老後の不安を吹っ飛ばす! というとかなりダメな感じがするが、もはやそういう先入観に囚われている場合ではないのではないか。

 政府は少子化対策をうたっているが、もうとっくに手遅れだ。すでに日本では4人に1人以上が高齢者だが、もっと高齢者率は高くなって、ほとんどの老人が90歳以上生きるような社会が来るのは間違いない。もはやよほどのことがない限り全体的に貧しい老人が増えていくという「貧困傾向」は避けられないのだ。

 そこで、相続である。
 著者は「実はみんな、相続こそが老後をなんとかもたせる最後のチャンスだと思い始めているのかもしれない」と指摘した上で、次のようにいう。

 考えてみるとそもそも老後貧乏の不安の大きな要因は年金の実質減額で、その背景にあるのは少子高齢化でしょ? しかし、少子化で子どもが少なくなるということは、一方では1人当たりの相続財産は増える。これって、少子化というキーワードを軸にして裏表の関係にある話じゃないかな。少子化で年金が減るからこそ、逆に1人当たりの取り分が増える相続で取り返そうと、みんな必死になるのかもね。親の財産をいかにうまく受け継ぐかは、老後資金づくりの重要なテーマだよ。(老後貧乏にならないためのお金の法則/P.275)
 少子高齢化は、「年金」の側面では、少数者(現役世代)が多数者(高齢者)にカネを送るかたちになるのでデメリットだらけだ。ところが、「相続」の側面では、多数者(高齢者)が少数者(現役世代)にカネを送るかたちになるので、メリットが大きい。

 つまり、広い視野で見たとき、年金の不足は相続で相殺できる、と。
 実際に突然、実家の親に電話して「遺産どれくらいある?」と聞くのは、かなり抵抗があるだろう。

 しかし、将来の不安が大きいなら、相続が有利に進むように現実的な視点で備えておくことも必要だろう。どん詰まりになってからでは遅い。
 もう、なりふり構っている場合ではないのだ。

次ページ:貧乏人の無知は命に関わる

老後の貧困に備えてなにができるのか。
 まずは、若いうちから年金や資産形成で自衛策を採る。
 それでも予期せぬことがあって生活に困窮した場合には、生活保護などの社会保障の制度を使う。
 たったこれだけのことだ。

 しかし、知識がなくては、何ひとつ手は打てない。
 1冊目の『下流老人』で紹介した生活保護受給者の老人のように、医療費の手当も受けられず、病院のいいなりで個室に入院させられ、大金を失うことになる。

 今回紹介した3冊の本では、どの本でも、
「正しい情報を手に入れて理解し、活用する」
 ということの重要性が語られている。

 たとえば、もっとも基本的な社会保障である国民年金だって、次のような解説をちゃんと読めば、保険料を払わないなんてとんでもないとわかる。

国民年金の保険料は、このうち半分が税金でまかなわれている。だからこそお得に作れるんだ。国民年金を払わないと将来受け取れない。ということは自分の払う税金でみんなの保険料の一部を払う一方で、自分には税金が還元されない。もったいない話だよ。しかも年金は老後にもらえるだけじゃない。若くして心身に障害を負えば障害年金がずっともらえるし、働き手が亡くなって子どもがいれば遺族年金も給付される。人生をまるごと保障してくれている制度なんだ。保険料を払っていなかったために、こうした給付が受けられなくて後悔している人は多いよ。(老後貧乏にならないためのお金の法則/P.265)
 まずは、医療保険や個人年金の前に、国民年金の仕組みをしっかり理解しておく必要があるだろう。

 生活保護のようなセーフティーネットも、ただ「そういう制度があるらしい」と知っているだけでは、いざというときに使えない。

『下流老人』の著者は、制度の利用を促さないばかりか、利用を阻んでいるとしか思えない国の姿勢を以下のように問う。

社会福祉制度は専門家ですら全容を把握しきれないほど、広範かつ複雑にできているが、国民に対してそれを知らせたり、学習機会を与えることを国はしていない。「ホームページを見れば書いてある」というのは知らせることにならないし、その情報にたどり着けるほどITリテラシーの高い高齢者がどれほどいるだろうか。(下流老人/P.138)
『すぐそばにある「貧困」』では、軽い知的障害のある男性が、生活保護申請ができずに困り果てていたことについて、次のように書く。

 生活に困っている人に不足しているのは、何も食べ物やお金といった物質的なものだけではない。彼らには、正しい情報にアクセスする手段も足りていないのだ。(すぐそばにある「貧困」/P.122)
 必要なのは知識だけではない。制度を自分の有利なように利用するには知恵がいるのだ。そのことがよくわかるエピソードがある。

 社会福祉制度の原点として知られる19世紀ロンドンの救貧院のできごとだ。
 当時の救貧院は「弱者を守る場所」ではなく、矯正施設のようなものだった。

 普通にの救貧院に入っても手厚い保護は受けられない。そこで、意図せぬ妊娠で路頭に迷っていた17歳の売春婦は、ある策を思いつく。
 出産間際になるまで待ってから救貧院に駆け込むことにしたのだ。身重では働けないし、妊婦を虐たい人はあまりいない。その結果、彼女は病院で元気な赤ちゃんを産み、半年かけて充分に英気を養ってから出て行くことに成功した。いわば、赤ちゃんを利用して生き延びたのである。

 制度を利用するには、このような「したたかな知恵」がいる。
 金持ちの無知はたいして問題ないが、貧乏人の無知は命に関わるのである。
 老後貧困を避けるためには、なにより頭を鍛えなくてはならないのだ。


■ここだけは押さえておく3冊の要点

『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』
●下流老人とは生活保護レベル以下で暮らしている高齢者のこと
●親の介護、子の世話、大病などで誰もが下流老人になる可能性がある
●「社会保障=お上からのお恵み」という見方を捨てなければいけない
【こんな人におすすめ】
→ 手遅れにならないよう20代30代のうちに読むべき本

『すぐそばにある「貧困」』
●困窮者には「それでもお上の世話にはなりたくない」という人が多い
●「水際作戦」の印象があるが、福祉事務所には親身になってくれる担当者もいる
●生活保護バッシングは社会保障への無理解の表れ
【こんな人におすすめ】
→ 行政と対決したり協力したり、緊張感のあるやりとりが読ませる

『老後貧乏にならないためのお金の法則』
●年金減額、長寿化、インフレ、金利抑制で老後のカネは遠のいていく
●まずは生命保険の見直し、住宅ローンの繰り上げ返済などが定石
●相続は老後崩壊をくいとめる最後のチャンスかも
【こんな人におすすめ】
→ パーソナルファイナンスの本。老後貧乏を避ける具体的な策が豊富

奥野 宣之(おくの・のぶゆき)
奥野 宣之
 1981年大阪府生まれ。同志社大学文学部を卒業後、新聞記者・ライターとして活躍。仕事や私生活での資料やメモの整理を独自に研究した結果をまとめた『情報は1冊のノートにまとめなさい』でデビュー。同書は31万部、読書を題材にした続編の『読書は1冊のノートにまとめなさい』が14万部、累計45万部のベストセラーとなる。情報の整理と活用、アウトプット技術などをテーマに「面白くて役に立つ本」をモットーとした著作活動を続けている。(発行部数は2010年1月現在のもの)
他に、『情報は「整理」しないで捨てなさい』(PHP研究所)、『だから、新書を読みなさい』(サンマーク出版)、『人生は1冊のノートにまとめなさい』(ダイヤモンド社)、『「処方せん」的読書術』(角川書店)、『新書3冊でできる「自分の考え」のつくりかた』(青春出版社)、『できる人はなぜ「情報」を捨てるのか』(講談社)、『『完全版・情報は1冊のノートにまとめなさい』、『完全版・読書は1冊のノートにまとめなさい』(ダイヤモンド社)、最新刊『「読ませる」ための文章センスが身につく本』(実業之日本社)も好評発売中。
前へ1 2 3 4 5

皆様からお寄せいただいたご意見(2件)

年金受給の引き上げや、年金生活が生活保護以下という現在の制度が続く限り、年金を払いたくないと思うのは至極当然と思う。
またそのような制度以前に役人の予算使い切り体質や、大企業が富を再配分するという意識がなければ国全体が疲弊し、国そのものが危うくなる。
そして相続で老後崩壊が止められるほどの資産があれば、普通に節約生活してれば問題ない。しかしその相続まで使い切ってしまっては子や孫に負担を強いるだけの負の連鎖になる。
マスコミや教育現場でそのような制度説明がない限り、筆者の言う無知そのものが貧困の連鎖が産んだ結果だと思う。 (2015年11月03日 00:16)

「金持ちの無知」こそが、世の中をこのような不条理にさせてしまっている、と、私は思っています。(表現としての買物) (2015年10月30日 09:59)
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/284362/102600010/?P=5

[32削除理由]:削除人:関連が薄い長文


  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法

▲上へ      ★阿修羅♪ > 経世済民102掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
経世済民102掲示板  
次へ