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世界経済揺らす中国 軟着陸できるか:市場との対話未成熟:政府想定外の減速も
http://www.asyura2.com/15/hasan102/msg/163.html
投稿者 あっしら 日時 2015 年 10 月 31 日 01:51:26: Mo7ApAlflbQ6s
 


世界経済揺らす中国 軟着陸できるか

市場との対話未成熟 独アリアンツ首席経済顧問 モハメド・エラリアン氏

 中国の習近平指導部は「新常態」の旗印で安定成長への軟着陸を狙う。一方で中国景気の急減速を案じる声は多い。2008年の金融危機後の世界経済の新たな常識を「ニューノーマル」と表現したモハメド・エラリアン氏(現在は独アリアンツ首席経済顧問)と、仏ソシエテ・ジェネラルの中国担当エコノミスト、姚煒氏に中国発のリスクなどを聞いた。


 ――中国経済の変調をきっかけに、世界経済の行方が不透明になりました。

 「リーマン危機後に打ち出したニューノーマルの考え方は、『低成長下での均衡』だった。米国をはじめとする先進国の経済は、危機の後遺症で大きくふらついてきた。それでも中国をはじめとする新興国の成長が埋め合わせて世界は安定を維持してきた」

 「そんな均衡が脅かされたのが今年これまで起きたことの意味だ。新興国の経済変調が引き金だった。中国、ブラジル、インドネシア、トルコ……。インドを除き、多くの新興国の景気にブレーキがかかった」


 ――この夏の世界的な市場波乱は、どんなメッセージをもたらしたのでしょうか。

 「第1に、世界経済は何事も中国次第になった。今や米国の株式市場を観察するために、中国を理解しなければならない。つい数年前までは、おかしな発想だった」

 「第2に、中国のバブルがしぼみ始めた。中国政府は国民に株式の保有を促した。多くの人々が市場に参加すれば経済の市場化が進むと考えたからだ。リーマン危機の前まで米政府が、国民に家を持ってもらおうと政策で促したのと似た構図だ。その結果、やはり米国の住宅と同様にバブルが膨らみ、はじけた」

 「第3に、中国の中央銀行に対する投資家の信頼が揺らいだ。何かが起きたとき、中銀が事態を制御できるかどうか不安になった。市場の混乱が経済の混乱につながり、ソフトランディングが難しくなったのではないかと。この意見はさすがに悲観的すぎると私は思う。それでもリーマン危機後、各国の中銀が流動性を供給して市場の信用を保ったのとは対照的だ」

 ――日本が株や不動産のバブル崩壊で苦しんだ「日本化」を懸念する人もいます。

 「日本は金融的にも社会的にも富を蓄えていたので持ちこたえられた。だが中国はそうではない。日本と同じ構図が長期間続けば、社会的な不安が高まるだろう」

 「中国の場合、経済成長のスピードが一線を下回ると実際には成長できなくなると見ている。飛行機が『失速速度』を下回れば墜落するのと同じだ。中国の失速速度を6%という人も多い。楽観的にみても2〜3%だと厳しい」


 ――中国が「新常態」と呼ぶ投資主導から消費主導の経済への移行は円滑に進むでしょうか。

 「中国の人々は、自国の経済システムが自分や子供を守ってくれるのか、不安に思っている。結局自分で自分の資産を守るしか無く、財布を開きにくい。これが新常態への最も厳しい試練だと思う」

 「中国政府は人々が安心して消費できるよう、家計に対する経済的、金融的な保障のしくみを構築しなければと考えている。政府が株式相場の暴落を深刻に受け止めたのも、『やはり資産は守られない』と家計が受け止めることを恐れたからに違いない」


 ――市場との対話には課題を残しました。

 「中国政府にとって懸案事項は多い。だが『市場』はトップ3に入っていないと思う。市場経済への移行には上手な市場との対話が欠かせない。そのことを他国の例などから学ぶ機会はあったはずだが、生かされていない。市場が不安定になった一因だ」

 「ただ中国は『中所得国のワナ』という難易度の高い技に取り組んでいることは忘れるべきではない。中所得国から先進国への移行を果たしたのはシンガポールなど数えるほどしかない。ましてや中国は巨大な国で、移行に伴ってつじつまの合わない様々な問題が吹き出している。市場との対話にも苦労するだろう」


 ――中国の変調で世界の均衡は崩れるのでしょうか。

 「がたがた道を経て、2年以内にニューノーマルは終わると思う。世界の成長率はさらに落ち、それに伴い所得格差、家計の経済的な不安、市場の波乱などの問題も出てきた。一方で良い兆しもある。(米配車アプリの)ウーバーに見られるようにイノベーションは健在で、企業の保有資金も豊富だ」

 「世界はいずれ『T字路』に突き当たる。経済が回復するか、金融秩序の動揺を伴ってさらなる低成長に陥るか。今のところ可能性は五分五分だが、政策次第で良い方向に変わる。企業がお金を成長に投じたくなるように、需要を刺激する各国の包括的な政策が不可欠だ」

(聞き手は編集委員 梶原誠)

 Mohamed El−Erian 米運用会社ピムコのトップを退き現職。オバマ政権でグローバル開発委員会も率いる。57歳。
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政府想定外の減速も 仏ソシエテ・ジェネラル中国担当エコノミスト 姚煒氏

 ――中国は投資主導による2桁成長から、消費やサービスに軸足を置いた安定成長に軟着陸できますか。

 「私たちは軟着陸できるとはみていない。がたがたと揺れる着陸(bumpy landing)になるだろう。中国経済の減速は時に政府の想定を超えるものになりうるし、当局が状況をコントロールできるかという懸念もある。中国の減速は世界経済にも非常に大きな影響を及ぼすだろう」

 「中国経済が抱える最大の問題は(リーマン危機後の景気対策で積み上がった)過剰債務と過剰供給をどのように解決するかだ。過剰債務を解消するためには投資を減らさざるを得ない。それは痛みを伴う過程だ。今のところ雇用が順調なため消費も底堅いが、さらに消費を伸ばすには社会保障制度や労働市場の改革など政府によるさらなる取り組みが必要だ」

 ――7〜9月期の実質国内総生産(GDP)成長率は前年同期比6.9%でした。経済の実態はさらに悪いとの見方も少なくありません。

 「中国政府が(高めの数字を)意図的に出しているわけではない。(名目GDPを実質GDPに評価し直す際の指数である)GDPデフレーターという技術的な問題だ。名目GDPは比較的信頼できる。私たちは産業構造などを考慮してGDPデフレーターを独自に計算した結果、2015年の実質成長率を5.8%と見積もっている」

 ――26日から始まる中国共産党中央委員会第5回全体会議(5中全会)で第13次5カ年計画(16〜20年)が審議されます。2年前の会議で決めた市場の役割を重視する経済改革の実行は遅れています。

 「改革が進んでいないとは思わない。金利の自由化や資本の自由化、財政構造改革では着実に進展があった。ただ中国政府が短期の経済成長と長期の改革のバランスをどうとるべきかをためらっていることが、いくつかの改革が予想よりも遅れている大きな理由だ。例えば、財政構造改革の主な目的の一つは地方政府の債務を削減することだが、そのためには投資を減らす必要がある。国有企業改革も失業の増加をもたらす」

 「改革は不安定な着陸をもたらす理由の一つにもなっている。長期的に良い効果をもたらす改革も短期的には痛みを伴う。中国政府が金融市場や国有企業の改革を本当に進めれば経済は一段と減速し、市場は不安定になりうる」


 ――国有企業改革には目立った進展がみられません。

 「これまでに示されている改革の方針にはいくつかの問題点がある。1つはコーポレートガバナンス(企業統治)の問題だ。国有企業がこれまで通り党への報告を重視するのか、利益を上げることを重視するのかがはっきりしない。第2に改革の進め方を示していない。国有企業の多くは利益を出せず、過剰供給体質を抱えるが、どのように再編を進めるのかという計画も現時点では出されていない」

 「政府が国有企業改革の方針を示さないかぎり、民間企業の成長の余地は限られたままだ。民間企業の方が効率が高く、経済全体の生産性を高められるのに、それができなくなるのは中国の長期的な成長にとっても打撃だ」


 ――環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意は中国の戦略にどう影響しますか。

 「TPPは各国による批准手続きなど実現にはまだ時間がかかる。中国は他の自由貿易協定(FTA)を進めて負の影響を和らげようとするだろう。あるいはTPPへの参加を試みるかもしれない」

 「(陸路と海路で中国から欧州までつなぐ)一帯一路構想は地政学的な発想に基づいており、短期的には経済への影響は限られる。ある程度の需要は生むかもしれないが、企業の過剰供給問題の解決につながるとは思わない」


 ――国際通貨基金(IMF)は11月にも準備通貨であるSDR(特別引き出し権)バスケットに人民元を採用するかどうかを決める予定です。

 「(前回のSDR見直し時の)5年前から中国政府はIMFが推奨した改革手段を採用するなど自由化を進めてきた。SDRへの採用が今年決まる可能性は高いだろう。だが中国にとって大きな後押しになるとは思わない。(各国の中央銀行が)準備通貨として人民元を採用するかは、中国が資本市場の開放や金融市場の育成といった改革努力を続けるかにかかっている」

(聞き手は香港=粟井康夫)

 Yao Wei 上海・復旦大学卒、米タフツ大学で経済学修士号取得。中東の投資会社の調査部門を経て、10年から現職。

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<聞き手から>同時株安、中国依存に警告

 「がたがた(bumpy)」は2人に共通するメッセージだ。23日に追加利下げを決めた中国は消費主導経済への移行に向け試行錯誤を繰り返すだろう。低い成長ながら安定を享受してきた世界も、そんな中国に振り回される――。

 市場がそんな変化のにおいをかぎ取ったからこそ、8月の世界同時株安は起きた。「中国発の世界景気後退のシグナル」。こう表現した投資家がいる。メーンシナリオとしては少数派だが、テールリスク(可能性は小さいが、起こると甚大な影響が及ぶリスク)として半数以上が意識しているという調査もある。

 この四半世紀、米欧を震源地とする世界的な危機はあっても中国発はなかった。市場の動揺は、経済規模が日本の2倍にもなった中国の経済が変調を来したという、二重の地殻変動を映している。

 がたがた道を行くには政府も民間も新たな対応が欠かせない。市場が放ったのはそんな警告でもある。(梶原誠)


[日経新聞10月25日朝刊P.9]

 

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コメント
 
1. 2015年10月31日 14:39:59 : Zr4XPbrcrA
中国には、多くの人々がいる。過剰投資と過剰設備に経済は失速しているが、政府の強い方向転換がなされれば、順調になるはず。溜め込んだドルもあり、元通貨のコントロールもできる。
 むしろ問題は、中国経済に依存度を強めてきた先進国経済にある。自分の国の過剰さを抑制できないできたのではないか。自分で適切な成長の方向を見失っているのではないか。

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