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税制改正の焦点
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投稿者 あっしら 日時 2015 年 11 月 16 日 02:30:04: Mo7ApAlflbQ6s
 


[時事解析]税制改正の焦点

(1) 消費税に軽減税率導入 「欠陥」縮小どこまで

 来年度の税制改正論議が例年以上に盛り上がっている。一番の注目点は2017年4月の消費税率引き上げ時に導入する軽減税率の仕組みをどうするか。対象品目の範囲や経理方式、減収分の代替財源が焦点だ。

 軽減税率の導入には経済学者の多くが否定的だった。消費税には低所得者ほど負担割合が高くなる逆進性の問題がある。軽減税率の導入は「低所得者対策」とされるが、飲食料品への支出額は高所得者の方が多く、導入による税負担の軽減額は高所得者ほど大きくなるからだ。森信茂樹・中央大教授は「逆進性は解消されず、高所得者への優遇になる」という。

 欧州など採用している国は多い。だが、軽減税率による税収減を補うには標準税率を高くする必要がある。欧州連合(EU)指令による標準税率の下限の15%に対し、大半の国は20%以上にしている。軽減税率の適用範囲を巡って混乱や訴訟など社会的コストが増大、適用を求める業界の陳情合戦も避けられない。

 沼田博幸・明治大教授は「EUでは税収確保のため、軽減税率の廃止・縮小が課題になっているが、既得権化し、困難な状況だ」と指摘する。

 税額を記載したインボイス(税額票)を取引ごとに発行する諸外国に対し、帳簿方式の日本では納めるべき税が事業者に残る「益税」の問題もある。複数税率化で拡大が懸念される。こうした消費税や軽減税率の「欠陥」にどう対応すべきか。森信教授は「インボイスの導入時期を法律に明記し、消費税への信頼度を高めていく必要がある」と強調する。

(経済解説部 谷川健三)

[日経新聞11月10日朝刊P.31]
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(2)法人実効税率引き下げ 20%台、いつ実現

 法人実効税率の引き下げも課題だ。2015年度税制改正では、14年度の34.62%から15年度に32.11%、16年度は31.33%に下げることが決まった。政府は6月に改定した新成長戦略で、16年度改正で同年度の下げ幅を上乗せし、その後「数年で20%台まで引き下げる」と明記している。今回の検討で30%未満への引き下げ時期を明確化できるかが焦点になる。

 税収を減らさず税率を下げるには、政策税制の廃止などで財源を確保する必要がある。15年度改正では、法人税の欠損金繰越控除の縮小や受取配当金の課税強化、法人事業税の外形標準化などを代替財源に充てた。

 16年度改正では、まず外形標準課税の拡大が財源の候補になる。大企業の法人事業税は、利益、付加価値、資本金の3つに対する課税の合計額。15年度改正に続いて利益への税率を下げ、付加価値への課税割合を高める方向で検討する。今は利益だけに課税している中小企業も、新たに付加価値や資本金に課税することが検討課題になる。

 減価償却制度の見直しも財源候補だ。日本では機械装置の償却方法は定率法と定額法を選択できるのに対し、ドイツでは08年の法人税改革の一環で定率法を廃止して定額法に一本化した。政府税制調査会は昨年6月、海外動向や節税目的の使い分けへの懸念から、法人税改革に関する提言に定額法への一本化を盛り込んだ。

 このほか租税特別措置では、所得拡大促進税制や研究開発税制、とりわけ生産性向上設備投資促進税制が廃止・縮小の候補になるとみられる。

(経済解説部 谷川健三)

[日経新聞11月11日朝刊P.32]
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(3)地方税収の格差是正 東京など強く反発

 地方税収の格差是正も議論になる。地方税のうち自治体間で偏在度が高く、税収の変動も大きいのが法人住民税と法人事業税の地方法人2税。

 広がる格差に従来の地方交付税では対応しきれず、2008年から事業税の一部を国が「地方法人特別税」として集め、都道府県に再配分する「暫定措置」を実施してきた。暫定措置は17年度の消費増税にあわせて廃止する方向だが、廃止だけでは再び格差が広がるため、代替策を検討する。

 それが「地方法人税」の拡大だ。消費税率を8%に上げた14年度、暫定措置の規模を縮小する一方、今度は法人住民税の一部を国が地方法人税の名称で集め、地方交付税に組み込んで財政力の弱い自治体に配分する仕組みを導入した。この規模を17年度から拡大し、再配分の財源を事業税から法人住民税に切り替えていく。事業税は元に戻るが、法人税改革の外形標準化で利益課税の割合が低下するため、税収変動の安定化が見込まれる。

 諸富徹・京大教授は「外形化する事業税よりも、偏在度が高く応能課税の法人住民税の方が再配分の財源に適する。今後は両税の役割分担が進む」とみる。

 法人住民税の交付税財源化に対し、東京都など大都市圏の自治体は「地方税の応益性の原則に反する」「がんばる自治体ほど報われない」などと反発。「企業版ふるさと納税」創設や事業税の分割基準(自治体間の配分方法)見直しとあわせ、大幅な税収減になると懸念する。他方、全国の自治体の多くは税収格差是正策に賛成し、全国知事会も支持している。

(経済解説部 谷川健三)

[日経新聞11月12日朝刊P.30]
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(4)個人所得課税の見直し シッター代控除も

 昨年から論議されてきた配偶者控除の見直しは2016年度税制改正でも見送りになりそうだ。個人所得課税の分野では乳幼児を抱える女性の就労を支援するため、会社員が利用するベビーシッター代の一部を経費として控除できる仕組みの導入を検討する。

 妻の収入が一定以下なら、夫の所得から定額の配偶者控除が受けられる。このためパート勤務を抑える主婦も多く、「女性の就労を抑制する」との批判がある。昨年春に安倍晋三首相が見直しを指示。政府税制調査会は昨年秋に5つの改革案を示した。だが「家族の助け合いの役割も正しく評価すべきだ」といった意見も根強く、15年度改正では先送りになった。

 政府税調は目下、個人所得課税の抜本改革を議論している。再分配機能の強化に向け、諸控除を高所得者に有利な所得控除から税額控除に変える案など全体的見直しを検討中。この抜本改革の前に配偶者控除だけを16年度改正で見直しにくいという事情もある。

 一方、ベビーシッター代の負担減は、自民党が昨年の衆院選公約に盛り込んでいた。検討案はベビーシッターや認可外保育施設の費用を、会社員の経費控除として認める「特定支出控除」の対象に加えるというもの。

 欧米ではベビーシッター代が所得税の税額控除の対象になる国が多い。日本では保育料などは「所得を得るための経費ではなく所得の支出(家事費)」とされ、個人事業者でも経費に認められなかった。検討案が実現すれば、大きな転機になる。

(経済解説部 谷川健三)

=この項おわり

[日経新聞11月13日朝刊P.28]


 

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