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日本で貧富の格差が拡大してきた本当の原因 アトキンソン「21世紀の不平等」から考える(東洋経済)
http://www.asyura2.com/15/hasan102/msg/791.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 11 月 23 日 11:28:50: igsppGRN/E9PQ
 

      アンソニー・アトキンソンの指摘とは?(写真:M・O/PIXTA)


日本で貧富の格差が拡大してきた本当の原因 アトキンソン「21世紀の不平等」から考える
http://toyokeizai.net/articles/-/93693
2015年11月23日 櫨 浩一 :ニッセイ基礎研究所 専務理事 東洋経済


『21世紀の資本』で話題になったトマ・ピケティ(1971-)の師でもある不平等問題の大家、アンソニー・アトキンソン(1944-)は、世界的に第二次世界大戦後に不平等が縮小し、その後1980年代以降格差が再び拡大した原因の一つに、労働分配率の動きがあると指摘している。



1950年代から1970年代にかけて多くの国で労働分配率は上昇したが、その後2000年代にかけては資本の取り分が上昇(労働分配率は低下)した。日本は例外的に2000年代にかけても労働分配率の上昇が続いたと述べている(Anthony B. Atkinson, “Inequality: What Can Be Done?”, Harvard University Press 2015)。


しかし、日本の労働分配率の動きをると、欧米諸国に遅れて1990年代がピークになっているが、その後は労働分配率が低下傾向に転じているように見える。


■労働分配率の低下による相乗効果


経済が発展していく原動力は、資本の蓄積と人口の増加、そして技術進歩だ。一見、経済が発展してビルや工場の設備などの資本が増えていくと国民所得から資本への分配が増えてしまい賃金が圧迫されそうにみえる。しかし、ニコラス・カルドア(1908-1986)は経済成長について長期的に観察される事実として、国民所得の労働と資本に対する分配率はほぼ一定だということを指摘している。


教科書で習うコブ・ダグラス型の生産関数では、市場原理が働けば、資本の蓄積が進むと資本収益率が低下して労働分配率は一定に保たれる。技術進歩があれば、労働の取り分も資本の取り分も拡大することが可能になる。


しかし、現実の経済がこのように都合のよい生産関数の形をしているとは限らないし、不完全競争の世界では企業と労働者が共有する余剰の分配は交渉力次第ということもある。現在の社会は資本家と労働者という二つの階級に分裂しているわけではないが、それでも労働分配率が上昇すれば所得格差は縮小するということは変わらない。


逆に労働分配率が低下していくと、資産家は大きな財産所得を得るので速いスピードでさらに資産を増やして行くのに対して、元々資産が少なく勤労所得だけが主な収入源となっている人達は資産の蓄積速度が遅くなる。資産格差と所得格差の相互作用で格差は雪だるま式に拡大してしまう恐れがある。


日本銀行の資金循環統計では2014年度末の家計部門の金融資産残高は約1700兆円だから、世帯数を約5000万世帯とすると一世帯当たりの金融資産は3000万円以上にもなる。しかし、家計調査での平均貯蓄額は1798万円に過ぎず、資金循環統計から求めた平均貯蓄額とは大きな差がある。



これは資金循環統計には個人企業の金融資産などが含まれているということだけではなく、家計調査の調査対象サンプルに含まれたかった著しい大金持ちが少数だがいるからだ。


さらに言えば、家計調査による貯蓄保有額の中央値(貯蓄額の順に並べたときにちょうど真ん中の世帯の保有額)は1052万円に過ぎず、分布はかなり偏っている。


■政府債務の拡大も所得格差を拡大する一因


政府債務が拡大していくことが、所得格差に及ぼす影響も懸念される。国債の残高が増えるとそれだけ家計の金融資産も増えることになるが、富裕層ほど多くの金融資産を増加させることになるからだ。


財政破たんのリスクが高まれば、国債の金利は高くなるはずで、税で吸い上げられた所得が相対的に多くの国債を保有している富裕層により多く利子所得として分配されることになる。累進的な所得税制度がある財政には所得再分配機能があるはずだが、格差を抑制する効果は弱まってしまうのではないか。


子、孫と子孫が遺産を分割していくので大金持ちの資産は分散して行き、貧しい人達も資産を蓄積して豊かになって、両者ともに平均に回帰すると期待したい。しかし親の成功の結果は普通に考えられているよりも長く子孫に受け継がれているようだ。グレゴリー・クラーク(1957-)が各国の長期に渡る苗字と職業や所得との関係を研究したところでは、社会階層間の移動は意外に遅いという(Gregory Clark, ”The Son Also Rises: Surnames and the History of Social Mobility”、Princeton University Press 2014)。


例えば社会の流動性が高いと考えられているスウェーデンですら、医者や法曹界などで特定の姓が人口中の比率よりも長期にわたって高い比率を維持しているという。


相続などを通じて世代を超えて格差が固定化されて、どこかで限界を超え、大きな社会的な混乱を引き起こしてしまうのではないだろうか。


■海外からの所得が増えている


対外資産の蓄積が進んだことも、労働分配率の低下を引き起こしている原因のひとつと考えられている。


日本では1980年頃から経常収支の黒字基調が定着した。これが毎年の金融収支の黒字となって海外に保有する資産の増加につながるので、長年、対外純資産残高の増加傾向が続いてきた。



日本の対外純資産は名目GDP比でみても1967年末には0.7%の債務超過だったが、2014年末には純資産が77.3%にも達する規模に拡大している。こうした対外資産から得られる所得も増加しており、2014年度には海外との間の利子や配当の受払などの海外からの所得は名目GDP比で4.3%の黒字に拡大している。


かつては経済活動を見る指標としては、GDP(国内総生産)ではなくGNP(国民総生産)が用いられていたが、三面等価の原理からGNPとGNI(国民総所得)は等しい。GDPは国内の経済活動水準を示す指標としては適切だが、消費や投資に使える所得を考える場合には海外からの利子・配当などの所得を含めたGNI(GNP)を見る方が良い。これは、資産家の世帯を考えれば働いて得る所得がほとんどなくても、財産所得が大きければ豊かだということと同じことだ。


日本社会が豊かになったのかどうかという指標としてはGNIを見るべきなのだから、名目GDP比で8割近くにも達する対外純資産の収益性を高めることには大きな意味がある。


経済政策の方向としてもGDPの動向だけではくGNIの拡大にもっと注意を払うべきだというのは確かで、安倍内閣が2013年に策定した「日本再興戦略」では一人当たりGNIを10年後には150万円以上増やすという目標を示していることは、「所得150万円増加って、どういうこと?」でも述べた通りだ。


海外への投資取引を考慮していないことも、資本と労働の間の分配率が一定となるという結果が得られる理由である。だから、近年の世界経済のように海外への投資が活発になっている状況では、労働分配率が一定になるとは期待できない。なぜなら、所得が賃金と資本に分配されると考えるのは、所得を得るためには労働と資本の両方が必要だからだ。


しかし、海外から得られる財産所得は国内の労働を必要としない。例えば海外子会社から得られる配当が、日本にある本社で海外戦略を担っているような部門で働く人達の賃金に反映されることはあるだろうが、国内の工場などで働く人達の賃金にも分配されるとは考え難い。


今後対外投資を拡大することで海外からの所得が増え、日本全体としては所得の増え方が速くなるはずだ。しかし、対外資産から得た所得が普通の労働者に賃金として分配されるとは考えにくく、国民所得の伸びを賃金の伸びが下回って、国民所得の中で賃金に分配される比率である労働分配率は低下していく可能性が高いだろう。


大幅な経常収支黒字を続けているドイツや韓国を除けば、先進国の多くはそれほど大きな経常収支黒字を出しているわけではない。とくに米国は経常収支の赤字が続いていて、対外債務が対外資産を上回る純債務国になっているにもかかわらず、第一次所得収支は黒字が続いている。


■格差が拡大しないような方策を検討すべき


日本以外の先進諸国でも経済活動のグローバル化によって拡大した海外からの所得の分配が労働分配率の低下に関わっている可能性があり、高齢化が進んで日本の経常収支が赤字化しても労働分配率の低下が続く恐れもあるだろう。


第二次世界大戦後の各種の改革で資産の再分配がおこなわれたこと、さらに遡れば明治維新のような大きな社会変化があったことは、日本の資産格差を比較的小さなものにしてきた原因の一つかも知れない。


格差が小さかったということは、必ずしも日本社会の固有の特徴ではないとすれば、日本でも資産の格差が所得の格差を生み、それがまた資産格差を拡大させるという、格差の拡大再生産が起こる可能性は否定できない。


全く格差のない社会が理想的でないことは明らかだが、余りに格差が大きく固定的な社会も望ましくない。これまでは格差が小さい国だったということに安心していないで、日本でも許容範囲を超えて格差が拡大しないような方策を十分検討する必要があるのではないだろうか。


 

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コメント
 
1. 2015年11月23日 11:38:43 : b5JdkWvGxs
株式の配当を累進課税にすれば格差はなくなるよ

2. 2015年11月23日 13:11:12 : LY52bYZiZQ
Business | 2015年 11月 23日 12:02 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス

GDP600兆円へ「緊急対応」 甘利氏原案、低年金受給者支援も明記

http://s2.reutersmedia.net/resources/r/?m=02&d=20151123&t=2&i=1097000226&w=644&fh=&fw=&ll=&pl=&sq=&r=LYNXMPEBAM033
11月23日、甘利経済財政担当相が24日の経済財政諮問会議(議長、安倍晋三首相)で示す緊急対応策の全容が分かった。都内で3月撮影(2015年 ロイター/YUYA SHINO)
〖東京 23日 ロイター〗 - 甘利明経済財政担当相が24日の経済財政諮問会議(議長、安倍晋三首相)で示す緊急対応策の全容が分かった。名目国内総生産(GDP)600兆円を今後5年程度で実現するため、企業収益を賃上げに回すよう促す。アベノミクスの恩恵を広く行き届かせるため、低所得の年金受給者に対する支援も明記する。

甘利氏が「希望を生み出す強い経済実現に向けた緊急対応策」として報告する。原案は、デフレマインドからの決別に向け企業の設備投資や賃上げを促すことが柱となっており、26日に取りまとめる1億総活躍社会の実現に向けた対策に反映させたい考え。

原案では、好調な企業収益の割に設備投資や賃金水準が「十分、回復していない」との認識のもと、企業の内部資金を活用し、攻めの投資を促すことで名目GDPの伸びを上回る設備投資を実現するほか、焦点の法人実効税率引き下げについて、2016年度の下げ幅を確実に上乗せしたうえで「早期に20%台に引き下げる道筋をつける」との姿勢を示す。

新たなサービスモデルの開発を通じて生産性向上に取り組む中小企業への支援も盛り込む。省エネ効果の高い設備導入を支援し、中小企業の投資を促す方針も打ち出す。

GDP600兆円を今後5年程度(名目成長率は平均3%程度)で実現するため、賃上げや最低賃金の引き上げへの取り組みが重要との認識も示す。

賃上げの恩恵が及びにくい低所得の年金受給者に対する支援に加え、新たな就業希望者や就業時間を増やしたいという希望者が計950万人いる現状を踏まえ、実現を阻害している規制や制度を見直し、労働参加を促す。

日銀の金融政策運営については「経済・物価情勢を踏まえつつ、2%の物価目標を実現することを期待する」と明記する。

http://jp.reuters.com/article/2015/11/23/jp-gdp-600trl-draft-idJPKBN0TC06G20151123


3. 2015年11月23日 13:15:33 : nJF6kGWndY

>>01 株式の配当を累進課税にすれば格差はなくなる

そう

これを突き詰めれば、富裕層や優秀な若者は逃げ、大衆は、等しく貧しくなり

結局はロシアや中国のようになるw


4. 2015年11月23日 13:20:10 : nJF6kGWndY

>全く格差のない社会が理想的でないことは明らかだが、余りに格差が大きく固定的な社会も望ましくない

そう

結局は、バランスの問題ということになる

その適切な指標としては、人口規模や構成が似た先進国と比較した場合のジニ係数や

一人当たり実質GDPといったものが挙げられるが

安全保障や自然環境、資源、民度などが異なるし

日本は少子高齢化先進国だから、いずれにせよ、そう単純ではない


5. 2015年11月23日 13:26:55 : nJF6kGWndY

>政府債務が拡大していくことが、所得格差に及ぼす影響も懸念される。国債の残高が増えるとそれだけ家計の金融資産も増えることになるが、富裕層ほど多くの金融資産を増加させる

これは正確ではない

日本の政府債務は、ほぼ社会保障(高齢者や地方など既得権層へのバラマキ)によるから、財政破綻を防ぐために、QEによる財政ファイナンスを今後も続ける限り、

大多数の国内富裕層の金融資産は、実質ベースでは、今後、減っていくことになる

つまり何度も言うように、国内産業の生産性が上がらない限り、いくら再分配したところで貧困化(一人当たり実質消費の減少)は避けられないということだ



6. 2015年11月23日 14:38:21 : EYBGXjMglw
>>03
そして海外に逃避しイスラム国にヌッ殺されて来い
消費税で低取得者層から搾り取り
法人税・高額所得者層の税金はまけまくる
こんなウハウハの国があるか
貧富の差が拡大してきた原因
決まっているじゃないか
政府がそういう政策を取り続けているからだ

7. 2015年11月23日 19:41:04 : GLFIShwE7E
>>3. 2015年11月23日 13:15:33 : nJF6kGWndY

貴殿は経済記事に対して良くコメントをしている様だが
サプライサイドでしか経済を考えられないんだね、可哀そうに!


8. 2015年11月25日 14:34:09 : C31aL3EEO2
生活できなくなった貧困層の爆発が、避けれなくなってきつつあるのでないか?
あまりにも強欲社会になってきた。

社会的正義が必要かもしれません。
正義とは何か?が問題ですが、、、

この地球は誰のものか?
一部の富裕層が独占して良いのか?


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