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2016年のドル円レートはどう動くのか? 米「利上げ」後のマネタリーベース比率に注目して考えてみよう(現代ビジネス)
http://www.asyura2.com/15/hasan103/msg/575.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 12 月 17 日 07:51:15: igsppGRN/E9PQ
 


2016年のドル円レートはどう動くのか? 米「利上げ」後のマネタリーベース比率に注目して考えてみよう
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46933
2015年12月17日(木) 安達 誠司「講座:ビジネスに役立つ世界経済」 現代ビジネス


■未来の為替レートは予測できるのか?


先日参加したあるイベントで、聴衆の方から来年の為替レートに関するご質問を受けたが、時間の関係であまり詳細に話すことができなかった。そこで今回は、この場を借りて、今後の為替レート(特にドル円レート)をどう占うか、について考察してみたい。


このようなイベントに関わらず、「来年のドル円レートはどのくらいになるのか」という為替見通しは、経済に関する話をする場合に中心的な話題になることが多い。そして、職業柄、エコノミストや為替アナリストは、なにかしらの精緻なモデルに基づいた話をしている風を装って見通しを語ることが多い。


だが、1983年にRichard Meese氏 とKenneth Rogoff氏が「Empirical Exchange Rate Models of the Seventies」という論文を発表して以来、「どんなに精緻な手法を用いて為替レートの予測値を出したとしても、『ランダムウォーク(酔歩)』に基づく予測値には勝てない」ことが研究者の間では通説となっている。


しかも、その状況は今でも変わっていない。すなわち、為替レートの予想をわざわざ為替アナリストなどに聞いたとしても、自分で足元の為替レートを元に適当に答えた値とそのパフォーマンスには大した差はないということが実証されて久しいのである。


よって、為替取引で利益を上げるためには、よほどの幸運を持ち合わせているか、類まれな運動神経をもっているか、誰もが模倣できないトレーディングのアルゴリズムを開発するか、いずれかに該当する必要があろう。


とはいえ、為替レートについての研究は現在進行形である。そして、現在の研究は、@「経済データ」の1つとして為替レートをみた場合、どういう「振る舞い」をしているか、A為替への投資で利益を上げるためには、どのような指標を用いればよいか、という点に移行している。


これを「投資」という観点から簡単にいえば、為替レート変動の特徴を把握した上で、「使える指標」の動きをみて、適切なタイミングで売買することができれば、わざわざ絶対水準を当てにいかなくても、的中させなくても、利益は得られるという考えが主流となっている。


■「ソロスチャート」というアプローチ


そこで、まず、第一の問題は、「使える指標」は何かという点である。


現在、もっとも一般的に用いられているものは、「金利差」、もしくは、「経常収支(場合によっては貿易収支)」であろう。しかし、残念ながら、これら2つの指標は、統計学的にいって、為替レートの動きを説明するために有効な指標とはなりえない。


それでは「使える指標」は何かといえば、「物価の比率」と「マネタリーベースの比率」の2つである。つまり、前者は「購買力平価」の考え方であり、後者は「ソロスチャート」の考え方である。このうち、今回は、後者の「ソロスチャート」の有効性について考えてみよう。


「ソロスチャート」とは、2国のマネタリーベースの比率と為替レートの間に高い相関関係があることを利用して為替レートの先行きを考えようとするアプローチである(かの著名投資家ジョージ・ソロス氏が考案したといわれているが、本人は否定しているらしい)。


図表1には、1988年以降のドル円レートのソロスチャートが描かれている。これをみると、特に、リーマンショック以降の量的緩和局面におけるドル円レートの動きをうまく説明しているようにみえる(リーマンショック後の両者の相関係数は0.90)。



また、図表1ではうまく説明できていないようにみえるが、2002年以前の局面においても、ドル円レートの動きとの相関性は高い(1988年1月から2002年12月にかけての両者の相関係数も0.82と極めて高い)。


為替分析の世界では、ソロスチャートはあまり有効な手法ではないという見方もあるが、マネタリーベースは金利差や経常収支に比べれば、「使える指標」になりえる(しかも、金利差や経常収支が為替レートを決めるという考え方は理論的にも大きな問題がある)。


だが、問題点もある。それは、「経済データ」の1つとして為替レートをみた場合のデータの「振る舞い」である。


今しがた、「ドル円レートとマネタリーベース比率は相関が高いから有効な指標である」という話をしたが、実は、2つの指標(データ)が「定常」でないとこの話は成り立たない。


「定常」というのは、時間のとりかたによって(例えば、1992年1月から2001年12月までの10年間と2006年1月から2005年12月までの10年間のデータを比較して)、両者の平均やちらばりが変わらないことを意味する。


もし、「定常」でなければ、相関が高くても、それは「みせかけの相関(たまたま高かっただけ)」となり、為替レートを予想するための有効な指標にはなりえない。そして、残念なことに、単純なソロスチャートの場合、為替レートとマネタリーベース比率はともに「定常」なデータではない(そのため、先ほどはわざわざ、期間を区切って両者の相関が高いと言った)。


つまり、両者の相関は期間を区切ると確かに高かったが、「見せかけの相関」かもしれないということだ。


■為替レートとマネタリーベース比率の「変化率」


そこで、この「定常性」の問題を解決する必要が出てくる。実際にそのための手段はいろいろあるが、その中で最も簡単な方法は、「変化率」をとる方法である。


そこで、変化率をとり、「定常性」を確保した上であらためて両者の関係をみると、2つのデータの間には、ある均衡関係が存在していることがわかる(「共和分関係」という)。簡単にいえば、為替レートの変化率とマネタリーベース比率の変化率の間には、長期間にわたって「つかず離れず」の関係が維持されていると考えられるのである。


技術的な話は省略するが、この両者の「均衡関係(ドル円レートの「均衡値」)」と実際のドル円レートの関係を示したものが図表2である。これを見ると、実際のドル円レートは均衡値に巻きつくように動いていることがわかる(見やすいように、変化率で求めた均衡関係を水準に換算し直して表示している)。



これで、ようやくドル円レートを考える準備ができた。


まず、均衡値自体の動きをみると、2013年以降、均衡値は円安方向で推移していることがわかる。2013年から日銀のQQE(量的質的緩和)政策が始まり、日本のマネタリーベースが急増したことを考えると、マネタリーベースの増加は通貨安をもたらすという結果は変わらないことがわかる。


そして、図表3は、実際のドル円レートが均衡値からどの程度乖離しているかを示したものである。これを見ると、現状のドル円レートの水準(1ドル=121円前後)は、均衡値から約15%程度、円安方向に乖離していることがわかる(よって、推定誤差を考えると、現在の均衡値は1ドル=103〜105円ほどになる)。



そのため、ドル円レートがこの不均衡を解消する方向に鞘寄せされていくのであれば、今後は円高方向で推移する可能性が高いということになる。


ただし、実際のドル円レートと均衡値が一致することは極めて稀であることは図表2をみれば明らかである。また、均衡値を決める日米のマネタリーベースも、今後の日米の金融政策如何で変化していくので、当然、均衡値自体の水準も変わっていくことに留意する必要がある。


そこで、もう一つ、最近の研究で主流になりつつある動きを紹介しよう。データの変動性(「ボラティリティ」)自体の相関(「データ」そのものの相関ではなく、データの変動パターンの相関)に注目する方法である。


これを「ソロスチャート」の議論でよりわかりやすくいえば、マネタリーベース比率が急激に変わるタイミング(マネタリーベース比率の変動性が高まると同時に)で、ドル円レートの水準も大きく変わり(ドル円レートの変動性も高まる、その結果、両者のボラティリティの相関が高まる)、ドル円レートが均衡値に急激に鞘寄せされることがあり得ることを意味する。


例えば、リーマンショックをきっかけにドル円レートは1ドル=100円割れの急激な円高局面(均衡値から20%程度の円高局面)に移行したが、そのきっかけは、米FRBが大規模な量的緩和(QE)政策を採る中、日銀は積極的な金融緩和政策に踏み切れず、日米のマネタリーベース比率が大きく変動したことであった。


逆に、均衡値との対比で円安局面に移行したのは、2013年の日銀のQQE政策への移行であり、均衡値から20%を超える円安水準へ移行したのは、2014年10月の「ハロウィン緩和」によってであった。この時は、米国の量的緩和政策が一服する中、日本の量的緩和が拡大され、マネタリーベース比率の変動が大きくなったことが、ドル円レートを大きく動かした。


■基本的には1ドル=120円前後が持続


以上を踏まえて、来年のドル円レートがどうなるかであるが、@FRBが利上げをやりながらもマネタリーベースの水準自体は維持する、A日銀の追加緩和によって日本のマネタリーベースが年間100兆円ペースで増えていく(現在80兆円)、と仮定した場合、マネタリーベース比率のボラティリティはそれほど急激に上昇しない。


そのため、ドル円レートが大きく変動する可能性は大きくないだろう(この場合、実際のドル円相場が大きく円高方向に振れなくても、均衡値自体が円安方向に推移することによって現状の円安バイアスが緩やかに是正される)。


先日のイベントで「場合によっては1ドル=115円程度の円高局面があり得るが、基本的には現状の1ドル=120円前後の円安局面が持続するのではないか」と答えたのはそのためである。


このシナリオが崩れるとすれば、@FRBの利上げが想定よりもアグレッシブなものになり、その結果、マネタリーベースが大きく減少する場合、A逆に、米国景気の悪化、もしくは株価の急落によって、FRBが再び金融緩和に転じる(マネタリーベースの拡大を再開させる)場合であろう。


前者のケースでは、さらなる円安が、後者の場合には、想定以上の円高が発生するかもしれない。


 

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