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写真はイメージ（Ｃ）日刊ゲンダイ
中高年で非正規社員に 出世と転落はどう関係しているのか
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/172112
2015年12月22日 日刊ゲンダイ
ワタミ過労自殺訴訟は、ワタミ側が法的責任を認め、亡くなった元社員（０８年当時２６歳）の両親に１億３４００万円を支払うことで和解した。この訴訟が進むにつれ、全国でブラック企業が吊るし上げられたが、そのターゲットは若者から中高年にシフト。下流老人が流行語の今、中高年が追い詰められている。
近藤和夫さん（５５歳＝仮名）は、８年前に家電メーカーをリストラされて、派遣社員に転落。年収は７００万円から２５０万円にダウンした。
「すぐ再就職活動をしたのですが、正社員では採用されず、以来、７つの会社を派遣で渡り歩いています。物流センターの倉庫や清掃などで、時給は９００円台。そのうえ、交通費は自腹で、倉庫での作業に必要なカッターやテープなども支給されず、『近くのコンビニで買ってこい』。費用負担を要求すると、派遣切りされるので、泣き寝入りするしかないのです。まあ、仕事があるだけマシですよ」
非正規のうち、６割が４０歳以上で、派遣は１１９万人。ところが、派遣会社は８万５０００社あり、競争が激しい。若手の求人は大手に集まり、中小が中高年を扱う。そんな過当競争も相まって、ニーズがある若手の求人は改善し、その分、中高年にしわ寄せがいく。
「派遣元の説明では、化粧品会社の工場での最終工程のチェックということでしたが、行ってみたら、ノベルティーグッズの金具留め。『２５秒で１つできなければ、欠勤扱いだ』と脅された上、トイレに行こうとすると、隣の派遣社員に『トイレも欠勤扱いだから、休憩まで我慢しな』と諭された」（５０代男性）
イベント会場までの道のりを説明する看板持ちをした６０代男性は当日、台風が直撃。派遣元に電話で確認すると、「とにかく行け」の一点張りで、８時間暴風雨にさらされ、低体温症で入院するハメに。それでも補償はなく、収入は７２００円のみ。別の６０代男性は、警備員の仕事で３２時間ぶっ通し勤務で、報酬は２万円に満たなかった。最低賃金を下回る。
「長時間労働、低賃金、重労働」が、中高年非正規の現状だ。ブラック企業アナリスト・新田龍氏は、「やむにやまれずの介護離職を別にすれば、中高年で非正規に転落する人としない人は、明確に違いがある」という。
■立場逆転で追い詰められ…
「転落する人は、出世したときに権力や地位を盾に部下に強圧的な態度を取る人です。そういう人がサラリーマン人生の晩年に出向・転籍したりして、かつての部下を上司に持つと、立場が危うくなって、追い詰められる。それで、再就職支援制度を利用して早期退職に応募するのですが、支援スタッフが会社側に能力を確認すると、『口ではデキるといっても……』と言われ、十分な支援を受けられずに失敗するケースが多い。ある大手ゼネコンの１級建築士は、大型物件を手がけた実績を糧に早期退職に応募しましたが、今は駐輪場の警備員です」
「第二の人生は、自分で切り開く」なんて大見えを切っている人ほど危ないのだ。
「部下に媚びることはありませんが、だれとでも普通に付き合える人柄のよさが、非正規転落を防ぐ最大の防御です。部下が一緒に仕事をしたいと思えるような人間関係を築き、万が一のときに声を掛けてもらう。そうやって会社に残る方が、自ら切り開くよりよっぽど確実です」（新田龍氏）
今からでも遅くない。将来の非正規転落に備えて、上下関係を見直すことだ。
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