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スイス中銀がもたらした衝撃 〜最高の「調達通貨」だったフラン暴落の意味と影響〜 (近藤駿介 証券アナリスト)
http://www.asyura2.com/15/hasan93/msg/158.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 1 月 20 日 08:25:05: igsppGRN/E9PQ
 

スイス中銀がもたらした衝撃 〜最高の「調達通貨」だったフラン暴落の意味と影響〜 (近藤駿介 証券アナリスト)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150120-00010003-scafe-bus_all
シェアーズカフェ・オンライン 1月20日(火)6時0分配信


◆ 物価下落に苦しむ中で通貨高政策に転じたスイス

「スイス国立銀行(中央銀行)は15日、自国通貨スイスフランの上昇を抑えるために対ユーロで設けていた1ユーロ=1.20スイスフランの上限を撤廃すると発表した。2011年9月以降、外国為替市場で無制限にスイスフランを売り、ユーロを買ってフラン高を防いできたが、欧州中央銀行(ECB)の量的緩和観測もあって異例の政策の継続を断念したとみられる」(16日付日本経済新聞 「スイスフラン上限撤廃」)

市場は完全に「虚」を突かれた形となりました。2015年は、中央銀行にとって試練の年になるだろうことは想像していましたが、このタイミングでスイス中央銀行が対ユーロの上限撤廃に動くことは想定外のことでした。

スイス中銀の突然の決定を受けスイスフラン(CHF)は、「ユーロに対して一時41%上昇し、1ユーロ=0.8517フランの過去最高値を付けた。チューリヒ時間午後4時5分現在は1.03782フラン。対ドルは13%高の1ドル=0.8885フラン」(Bloomberg)と、急騰しました。

フランの急上昇を受けスイスの株式市場も急落。代表的なスイスSMIは▲8.67%下落し、ボラティリティは36.6%と、2011年9月にスイス中銀が対ユーロでの上限設定直前の8月に付けた43.5%以来の高水準となりました。スイスSMIのボラティリティは概ね13%前後でしたから、今回のスイス中銀の決定の衝撃の大きさが現れています。

スイス中銀の今回の決定が想定外であったのは、スイスもユーロ圏諸国と同様に物価の下落に見舞われていた(12月のCPIは前年比で▲0.3%)ことに加え、スイスフラン高を抑える政策を維持すると思われていたからです。

デフレからの脱却を目指すのであれば、明言できないものの、日銀のように通貨安政策をとるのが常套手段です。今回のスイス中銀のように、スイスフラン高を招きかねない政策は、輸入物価の下落を通して物価押し下げ要因になるからです。

「中銀の抱えるユーロ建て資産が際限なく拡大するリスクを無視できなくなったもようだ」(同日本経済新聞)という指摘もありますが、中銀資産のリスク拡大に対する不安もスイスフラン安要因ですから、物価下落に歯止めをかけるためにはそれを容認する選択肢もあったはずです。

結局のところ、今回スイス中銀はスイスフラン高に伴う物価の下落よりも、中央銀行の資産劣化に伴う信用力低下による通貨下落の方を懸念したということかもしれません。

蛇足ですが、日銀の営業毎旬報告によると、1月10日時点での日銀総資産は304兆6980億円で、そのうち84%に相当する255兆3145億円を国債が占めています。さらに、その内長期債は204兆8012億円(総資産の67%)となっており、純資産(資本金+準備金)が2兆8863億円に過ぎない日銀は、大きな金利上昇リスクを抱えているといえる状況です。

日銀は資産劣化による日銀の信用力の低下よりも、輸入物価上昇による物価高を優先しているということで、今回のスイス中銀の決断によって、姿勢の違いが明確になった格好になりました。

◆ 負けるはずのない戦を止めたスイス中銀

スイス中銀はスイスフラン高を抑えるために無制限の介入を続けて来ました。中央銀行と市場との戦いとしてまず思い出されるのが、「イングランド銀行を潰した男」として名をあげたジョージ・ソロスが1992年に仕掛けたポンド売りです。

しかし、ソロスがイングランド銀行を打ち負かすことが出来たのは、ポンド売りだったからです。イングランド銀行はソロスの仕掛けたポンド売りに対して「ポンド買い+外貨売り」介入で対応したわけですが、この介入は「売れる外貨」を持っている、調達する必要がありました。つまり、自国通貨の買い介入には限界があるということです。

これに対してスイス銀行が実施して来た介入は「自国通貨売+ユーロ買」でした。中央銀行は事実上自国通貨を幾らでも刷れるわけですから、イングランド銀行のように市場に負けることはあり得ない立場にいたといえます。

それにも拘らずスイス中銀が今回スイスフランの上限撤廃に踏み切ったのは、中央銀行の資産の劣化というコストに見合うだけの成果が上げられないと考えた証左かもしれません。

◆ 量的緩和では物価下落を止められない

スイス中銀は対ユーロでの上限を維持するために大量の「スイスフラン売+ユーロ買」を実施して来ました。この介入は、介入資金を吸収するオペを実施しない非不胎化介入でしたから、スイス中銀は大規模な資金を市場に供給して来たことになります。

スイスフラン売の介入で大量の資金がばら撒かれたにも関らず、スイスの消費者物価は足下マイナス圏まで落ち込んで来ています。つまり、市場に大規模な資金を供給することでスイスフラン高を抑え込んで来たのに、物価下落に歯止めをかけることは出来なかったということです。これでは中央銀行の資産内容の劣化というコスト(リスク)を掛けてまで自国通貨高を止める意味はありません。

直近で5%という高い経済成長を見せた米国でもディスインフレ懸念は払拭できていませんし、「異次元の金融緩和」で50%近い自国通貨安を実現した日本でも、デフレ経済への後戻り懸念が根強く残っています。このような事実が突き付けているのは、量的緩和では物価下落を止めることは出来ないということです。

このような金融政策の限界が見え始めているなかで、欧州中央銀行(ECB)も大規模な量的緩和に踏み切ることが見込まれています。ECBが効果が疑わしい量的緩和に踏み切るとしたら、スイス中銀が対ユーロでの上限を維持するためには、介入規模をさらに増やし、資金供給量を増やさなければなりません。それは同時にスイス中央銀行の資産内容の劣化を招くものでもありますから、スイス中央銀行がこれ以上お付き合いするのは無理だと判断したとしても当然かもしれません。

スイス中央銀行の対ユーロでの上限撤廃は、日米を中心に実施されてきた量的緩和政策のコストパフォーマンスに対して疑問を投げ掛けたものとなりそうです。ECB内でも量的緩和に対する意見が分かれていると報じられていますが、量的緩和による効果やコスト/リスクに対して世界の中央銀行が一枚岩ではなくなったことを白日の下に晒したという点において、今回のスイス中銀の決定は衝撃的であったといえそうです。

◆ 軽視してはいけない「最高の調達通貨」

スイス中銀の今回の決定は、金融市場にも大きな影響を及ぼしそうです。それは、スイスフランが金融市場において重要な「調達通貨」だったからです。

「調達通貨」の必要条件は、「通貨が切り上がらないこと」と「金利が上昇しないこと」の2つです。スイス中銀がこれまで対ユーロでの上限を1ユーロ=1.2スイスフランに設定して来たということは、ユーロに対しては為替リスクがないということでもありました。

さらに、ユーロ自体が対ドルで下落基調にありましたから、事実上対ユーロと固定相場になっていたスイスフランは、対ドルでも「切り上がることのない通貨」でした。しかも、物価も下落していますから「金利上昇リスクがない通貨」でもあるうえ、政策金利がマイナス金利にある唯一の通貨でもあります。

つまり、スイスフランは、キャリートレードにおいて「最高の調達通貨」であったといえます。

こうした状況のなかで、スイス中銀が対ユーロでの上限撤廃に踏み込んだということは、スイスフランが「切り上がる可能性のある通貨」に変貌したことを意味するものでもあります。スイスフランが「最高の調達通貨」から「切り上がる可能性のある通貨」に変化したことは、これまでキャリートレードを行って来た投資家にポジションの修正を迫るものです。

資金調達ポジションの修正を迫られる投資家が出てくるということは、当然資産サイドにも影響を及ぼすことになります。それに伴い、リスク資産市場のボラティリティが上昇することは自然の流れだと思われます。
メディアでは株式関係者の間を中心に、スイスフランはドル、円、ユーロという基軸通貨ではないから市場への影響は限定的であるという見方も紹介されているようですが、スイスフランがキャリートレードにおいて「最高の調達通貨」であったことを甘く見てはいけないと思います。

◆ 金利が消え、ボラティリティだけが残った

今回のスイス中央銀行の突然の対ユーロでの上限撤廃は、米国を中心にフォワードガイダンスによる中央銀行と市場の対話という世界の潮流の終焉を告げるものかもしれません。

米国のフォワードガイダンス修正に続いて、10月末の日銀の追加緩和、今回のスイス中央銀行の決定と市場の虚をつく金融政策が続いて打ち出されたということは、フォワードガイダンスに基づく金融政策の運営が制度疲労を起こし、世界の潮流ではなくなりつつあることを強く感じさせることです。

フォワードガイダンスが世界の潮流でなくなるということは、今後金融市場でボラティリティが上昇して行くことを想像させるものです。この10年ほど金融市場はフォワードガイダンスという名の下で中央銀行と馴れ合いを続けて甘やかされて来ましたから、フォワードガイダンスがない金融市場に対する投資家の対応能力はかなり落ちていると考えなくてはなりません。

フォワードガイダンスがない金融市場に対する投資家の対応能力が低下するなか、「金利」も低下し、0金利やマイナス金利も珍しいものではなくなって来ています。

金利がなくなりつつある中で、リスク資産のボラティリティが上昇する。

世界の投資家は、こうした「これまで教科書に存在しなかった金融市場」のなかでどのように戦っていくのでしょうか。世界の資産運用業務も岐路に立たされているという覚悟を持つ必要があるのかもしれません。

少なくとも「アベノミクスは買いだ」という安易な発想で運用計画を立てるような投資家は淘汰されていく運命にあるのかもしれません。GPIFの投資委員会の有識者達はどのように考えているのでしょうか。

近藤駿介 証券アナリスト 元ファンドマネージャー 経済評論家 セミナー講師


 

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コメント
 
01. 2015年1月20日 10:46:01 : nJF6kGWndY

>量的緩和では物価下落を止められない

正しくは

量的緩和<だけ>では物価下落を止められない

公的需要創造(財政拡張)か、民間需要創造(投資増大、外需増加or内需増=賃金上昇or家計貯蓄の減少)が必要だ



02. 2015年1月20日 10:57:55 : nJF6kGWndY

>日銀は資産劣化による日銀の信用力の低下よりも、輸入物価上昇による物価高を優先

と言うより、やはり社会保障による財政膨張と累積赤字が止まらず、増税もできない現状で、財政ファイナンスが、真の目的かもね

そして、世界経済の低迷が想定以上であれば、以前予想していた以上に長持ちする可能性もある

http://markethack.net/archives/51871229.html
短命に終わる? 黒田総裁の財政ファイナンス
2013年04月15日00:48


http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF25H09_V21C14A1MM0000/
追加緩和で国債の大半を日銀が買い入れれば「国債市場の(取引が急減し)流動性を著しく損なう」との声が相次いだ。日銀が政府の財政赤字を補填する財政ファイナンスに陥ったと「実質的にみなされるリスクがより高くなる」との懸念も何人かの委員から上がった


 
http://d.hatena.ne.jp/shavetail1/20141203 
2014-12-03 デフレ脱却には財政ファイナンスは常道 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメントAdd StarBUNTENblueecho
財政ファイナンス。 
マスコミでは決してやってはならない経済政策上のタブーとして語られることが殆どです。 しかし過去のデフレ事例を見てみると、財政ファイナンスのまるで違った姿が見えてきます。

 今朝の日経新聞でも日銀の審議委員の中に財政ファイナンス(通貨発行権を財源にした財政政策)に許容的な発言があることに対し、「財政ファイナンスが容認されるなら、日銀の信認どころか日本の信認が揺らぐことになる。」と、財政ファイナンスに手を出せば、日本経済どころか日本自身が信用を失うといった極めて強い調子で財政ファイナンスを否定する記事が載っています。*1

 では古今東西、古代ギリシャから現代日欧に至るまで、経済がデフレ化した事例は多数知られていますが、これらはどのような方法でデフレ脱却したのでしょうか。

図表1は過去のデフレ事例とその脱却方法です。

古来よりデフレ脱却は戦争と財政ファイナンスが主な手段だった
f:id:shavetail1:20141203124206j:image:w600
図表1 過去のデフレ事例とその脱却方法
デフレ化した原因では緊縮財政を淡墨色で示した。
デフレ脱却方法では、戦争を青、財政ファイナンスを煉瓦色で示した。

古来よりデフレになった原因は、貨幣量が減ってしまった(ギリシャ・アテナイや、元禄初期)、あるいは緊縮財政により敢えて世の中の貨幣量を減らしてしまった場合と、逆に技術進歩で米や物品の生産量が飛躍的に増えた場合があります。

またデフレ脱却が可能になった原因は、金本位制の下産金量が急増した(英米での19世紀大不況)といった事例もありますが、多くは戦争により国家が大量の需要を発生させたか、あるいは通貨発行権を持つ主体が意図的に貨幣量を増やして民間に流通させたといった事例が普通です。 そして今最後に書いた通貨発行権を持つ主体が意図的に通貨量を増やして民間に流通させることこそ財政ファイナンスそのものです。

これらの財政ファイナンスによるデフレ脱却により、その国の通貨が通用しなくなったり国の信用がなくなったりしたか、といえばそんなことはありません。 例えば元禄時代の元禄の改鋳で、小判の品位を落とした結果もたらされたものは、江戸幕府の衰退ではなく、元禄景気・元禄文化の開花でした。


アベノミクスでの黒田日銀も、既に財政ファイナンスの領域に手を染めているという記事も散見されますが、黒田日銀での金融政策の主力政策は、あくまでも国債を市中から買い入れ、それを銀行の日銀当座預金口座に積み上げているだけです。 *2

アベノミクスが始まって2年。 その間最初の1年は異次元緩和と緩やかな財政政策の結果、物価上昇も起こりデフレ脱却も間近に見えました。ところが今年4月に消費税を8%に上げるや、東大日次物価指数は直ちにデフレ方向に反転しました。

現在のアベノミクスは、金融政策と、消費税つまり負の財政政策の組合せです。
過去にこうしたアクセルとブレーキを同時に踏むような政策でデフレ脱却した事例は、シェイブテイルが知る限り、ありません。 

また、今の世の中でデフレ脱却のために日中戦争を始めたいという奇人もいないでしょうし、金本位制が廃止されて久しい今、貨幣は政府・中央銀行が発行したいだけ発行可能です。

過去のデフレ脱却事例を冷静に見れば、この平成デフレでも脱却方法の最有力候補は財政ファイナンスでしょう。

日経新聞にかぎらず、マスコミや学者は財政ファイナンスをやると直ちにハイパーインフレーションが起きたり、日本の信用が全くなくなったりとお題目のように書き立てますが、それは需要と供給がバランスしているマイルドインフレ経済での話です。

戦中・戦後すぐの高インフレの原因が、当時の大蔵大臣・馬場^一が既にインフレが発生しているにも関わらず軍部の言いなりとなって実行した財政ファイナンスだったことから、マスコミや学者が財政ファイナンスを忌避する理由は解らないでもありませんが、既に熱かった湯をさらに沸かして沸騰した事例だけを引き合いに出して、冷たい湯を温めるのに有効な方法に封印をしたがるというのは、思考停止以外の何物でもないでしょう。

 


03. 2015年1月20日 11:05:59 : nJF6kGWndY

>「アベノミクスは買いだ」という安易な発想で運用計画を立てるような投資家は淘汰
>GPIFの投資委員会の有識者達はどのように考えているのでしょうか

仮に、今後も、長期的に円安インフレが進むと仮定するなら、国債保有を減らすのは合理的ではあるが、当然、不確実性はある

まあ、凍死は自己責任でやってもらいたいものだが、日本で生活する限り、愚民の愚行に付き合わざる得ないということだろう

それは、どこの国でも同じだし、まだ日本は、かなりマトモな国民が多い方ではある



04. 2015年1月21日 22:52:12 : jXbiWWJBCA

スイスフランの上限撤廃による激震(大前研一)


【欧州】対ユーロ上限を撤廃 〜スイス国立銀行〜 1ユーロ=1.20スイスフラン

 スイス国立銀行は15日、対ユーロで設定していた1ユーロ=1.20スイスフランの上限を撤廃すると発表しました。スイス国立銀行のヨルダン総裁は、国際情勢の変化から持続可能でないと判断したと語りました。為替は、先進国ではフロートが一番であり、中国ではあるまいし、このように制限する事は、かつて日本もやりましたがうまくいかないわけです。

 今回の場合、上限撤廃によりスイスフランは急騰し、一瞬にして40%以上上昇しました。これまでの上限の設定により無制限に介入することで、スイスの外貨準備高はGDP比で80%に上っていました。結局フロートに戻ったことで、今までの差分が一時的に過剰反応したわけですが、これから落ち着いてくると思います。要するに、為替相場を先進国市場で操作しようとすると、スペキュレーター、鞘取り業者などの餌食になるのが顛末なのです。スイスは賢明な国ですが、珍しく誤ったことをしたと思います。今回のことでお灸が据えられたということでしょう。

150121_1.jpg


 また、日経新聞は17日、「ギリシャ、再び迷走」と題する記事の中で、今月25日に実施される総選挙について、反緊縮を訴える野党急進左派連合が第1党に躍り出る勢いだと紹介しました。また16日には、資金繰りに行き詰まったギリシャの大手2行が中央銀行に支援を要請したとして、事態の収拾に向け支援国とのせめぎ合いが始まったとしています。

 この選挙でツィプラス氏が勝利し、EUを無視するような事態になれば、EUはギリシャの切り離しも辞さずというところまでいくと思っています。25日が最大の分岐点となるでしょう。そこから先、一度だけ予算を立てるのを待つと思いますが、その後どうなるかは全く予想がつきません。ただ今は、「こんなことのためにギリシャを救済するのは嫌だ」という勢力と、「こんな事ぐらいでユーロを壊すのは嫌だ」という勢力が拮抗していて、ヨーロッパの態度も出たとこ勝負になってしまっています。実態はこのように予測不能な状況になってきているのです。



【日本】2015年度予算案 一般会計総額96兆3420億円で過去最大

 政府が14日に閣議決定した2015年度予算案は、一般会計総額が96兆3420億円と過去最大となりました。税収が54兆5000億円と24年ぶりの水準に回復し、国債の新規発行も40兆円を下回りました。これは増税成功を祝うような予算と言えます。ただ、予算は見通しに過ぎません。税収については来年度の景気に大きく依存するので、歳入の部分に欠損があれば国債発行をすることになり、描いているような美しい姿にはならないと思います。

 いずれにしても、一般会計における歳出歳入状況を見ると、税収を伸ばし、歳出を横ばいに抑えたということで、その点では少なくとも前年度よりギャップは改善したといえます。基本的には消費税を8%に上げ、その他にも様々なところで増税をしているので、その効果が大きいと思います。

150121_2.jpg


 また、一般会計歳出の主要経費の推移を見ると、2000年と比べると社会保障関連費がかなり多くなってきています。今後どんなに努力をしてもこの社会保障関係費と国債費については手をつけることができません。したがってそれ以外のところに手をつけることになり、公共事業関係費はかなり削っていることがわかります。従業員の数で考えても、公共工事関係は650万人ほどいたのが今は500万人を切っています。この部分に投資をしてみても人が足りないという状況なのです。このグラフのように1990年から長いスパンで見てみると、社会保障費をいかに抑えるかが重要であることがよくわかります。

 さてその日本の国債ですが、債券市場で13日、長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが一時0.255%と過去最低を更新しました。またドイツでも5年債の利回りがマイナス圏で推移しています。日本、ドイツ、米国ともに、10年債利回りは落ち込んでいます。さらにヨーロッパでは消費者物価指数がすでにマイナスになり、日本型の病気に入り込んできています。

150121_3.jpg


 また、国債利回りと会社の公債利回りが逆転してしまっている現象が起きていることも指摘されています。これについては、実は会社の方が国よりも信頼できるという見方もあるのです。なぜなら国が潰れてもグローバル企業は生き残る可能性が高いからです。そう考えると逆転現象は異常だと言われていますが、実際は正しい評価をしている結果とも言えるのです。



【米国】ウェルズ・ファーゴ 保守的方針で投資家に安心感

 日経新聞は6日、米ウェルズ・ファーゴのジョン・スタンフCEOのインタビューを掲載しました。地元アメリカの商業銀行業務に集中し、リスクの高い投資銀行ビジネスから距離を置く経営方針が投資家に安心感を与えていると紹介し、世界の銀行の株式時価総額で首位になっており、邦銀経営者の多くも注目しているということです。ウェルズ・ファーゴはもともと西海岸の会社でしたが、リーマンショックの時にワコビアを買収し、東部でもリテールが強くなりました。

 スタンフCEOは、「我々が重視するのは庶民の台所のテーブルだ」としています。つまり、いわゆるM&AやIPOを手伝う「リーグテーブル」ではなく、自分たちが重視するのは庶民の「テーブル」なのだと強調しました。質実なリテールを西でも東でも築き上げたことで、現在、純利益はJPモルガン・チェースを抜いてトップになっています。シティも回復基調ですが、かなり差がある状況です。こうしたことから金融機関の中でトップに躍りでたウェルズ・ファーゴですが、リーマンショックにより純粋にメリットを得た数少ない会社の一つと言えます。




講師紹介


大前 研一
ビジネス・ブレークスルー大学
資産形成力養成講座 学長
大前 研一
1月18日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
詳しくはこちら


その他の記事を読む
世界経済に拡散する原油安の影(大前研一)
http://www.ohmae.ac.jp/ex/asset/column/20150121_103012.html

 


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