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選択と集中、IT投資…日本経済の7割を占めるサービス業の成長を妨げる製造業的発想(Business Journal)
http://www.asyura2.com/15/hasan93/msg/210.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 1 月 23 日 08:24:15: igsppGRN/E9PQ
 

選択と集中、IT投資…日本経済の7割を占めるサービス業の成長を妨げる製造業的発想
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150123-00010006-bjournal-bus_all
Business Journal 1月23日(金)6時1分配信


 今の日本経済において、GDPの7割、雇用の7割をサービス業が占めている。よって、今後の成長戦略としては、そのサービス業の生産性を上げ、雇用を拡大することが、経済成長に最も効果的である。企業の成長戦略としても、最も巨大で成長余地のあるサービス業か、もしくはサービス業に関係した製造業・インターネット事業によって収益を拡大するのが当然の策となる。

 ところが、企業の経営戦略や国の経済政策に関わる人たちが、あまりに高度成長期の製造業とその製品販売事業の発想にとらわれた策を、サービス業中心の経済に適用するものだから、かえって成長に害をなしてしまっている。昨今の国内外の経営学者のデータ分析によっても(『サービス産業の生産性分析』<森川正之/日本評論社>等)、サービス業の生産性を向上させる方法は、従来の製造業における施策と大きく異なると実証されている。現在のサービス業の環境では、米経営学者マイケル・ポーターの5 forces modelで戦略構築しても機能しないという研究者もいるくらいだ(『サービスイノベーション』<産業能率大学総合研究所/産業能率大学出版部>)。

 従って、経営者、コンサルタント、政策担当者などが、口を開けばどの件に対しても「選択と集中」「IT設備投資による効率化」「内部統制体制の整備」などという処方箋を提示しているのは、7割は間違っており、試験でいうと30点の救いがたい落第点だといえよう。

●サービス業の本質

 それでは、製造業と異なるサービス業の本質とはなんだろうか。それは、生産と消費の同時性である。製造業のように中国の工場で大量生産して、量販店に運び込んで大量に売ることができない。ヘアサロンでは、美容師が個別に客の髪を切ることによって生産ができ、同じ場所(空間的同時性)、同じ時間(時間的同時性)に消費される。後述するように、この同時性ゆえに、範囲の経済性(多角化の利益)、密度の経済性、需要変動の平準化によって、サービス業は生産性を向上できる。

 また、サービスの生産に必要な主要な資源は、一に人材、二に店舗(生産と消費を行う場)である。それは、工場の設備機械が主要な生産のための資源である製造業と大きく異なり、収益構造にも大きな違いが出てくる。

 一般に製造業では、固定費が高いのは設備投資が大きいビジネスである。そして、固定費の高い製造業では、例えば半導体の製造のように売り上げが損益分岐点より少ないと大赤字だが、それを超えると飛躍的に収益が伸びる。しかし、サービス業は、設備投資が少ないのに人件費と店舗の家賃という固定費の比率が高い。また、需要に応じて人と店舗を急拡大できないので、損益分岐点を超えてからも生産能力の拡大テンポが遅く、売り上げの上限がすぐに来て飛躍的に収益が伸びない。「設備投資が少ない。にもかかわらず固定費比率が高い。にもかかわらず、利益上限がすぐにくる」。製造業に慣れた頭には、混乱してくらくらしてくる収益構造なのだ。

 また、サービス業は、本質的に時間消費そのものが価値であり、製造業における時間短縮と省力化などによる効率化は難しい。サービスの付加価値の源泉は娯楽的要素だが、本質的に「娯楽は、効率と矛盾する」(評論家・山崎正和)。効率を求めて推理小説の最後のページを先に読んだところで、娯楽・サービスの価値は半減する。マッサージにおいて、もむ力を2倍にして半分の時間で済まされたら、客は怒って半分の値段も払わない。
 
 これらのサービス業の本質を踏まえ、以下では従来の製造業的発想に基づいた施策とまったく異なるサービス業の生産性向上策を説明してみよう。

●「選択と集中」より多角化 ― 範囲の経済
 
 サービス業では、多角化が生産性を高め、「選択と集中」戦略は生産性を低くする。特定のサービス事業のみに依存している事業所の生産性は低く、逆にあるサービス事業以外の売り上げシェアが大きい事業所の生産性は高い(森川、前掲書)。集客効果、設備、人材がシナジー効果を出しながら効率的に使われるからだ。

 コンサルタントなどがよく描くように、製品ジャンル別成長率を調べて、成長率の高い分野に集中的に資源を投入して参入するという「商品ターゲティング戦略」は成功しない。サービス業では、業界間格差よりも企業間格差のほうが大きいからだ。この製品・サービスを扱っていればどの会社も大儲けというジャンルはなく、どのジャンルも上位の経営力のある1〜2社だけが儲かっている。同様に、かつて通産省が行った有望な特定産業を育成する産業政策(産業ターゲティング政策)はほとんど機能しない。

●「1商品全国シェアNo.1」より「地域No.1の総合サービス」 − 密度の経済

 サービス業では、全国で特定のサービス・商品のシェアアップを目指すよりも、特定地域で多様なサービスを提供するほうが生産性の向上につながる。人口密度の高い地域内で、複数の事業所で多様なサービスを提供するのがよい。空間的同時性のために人やノウハウを融通しやすい同じ地域で実店舗を増やし、規模を拡大するのが効率的だからだ。実際に多くの地方において地場の有力企業が、総合サービス企業として地域内で断トツの存在感をもって、持続的な高収益を生み出している。

●IT設備投資よりネット・マーケティングの利用 − 需要(繁閑)の平準化

 企業においてIT投資が必要だとか、成長政策としての設備投資の減税などがいわれる。しかし、サービス業におけるIT投資は、生産性向上に貢献していない。当たり前だが、新しい経理システムを入れても、売り上げ・利益がすぐには増えないのだ。

 ところで、前述のようにサービス業は固定費が高いので、客の繁閑(需要)の時間的平準化ができるかどうかが生産性に直結する。レストランは、お客が最大数来る時に備えて食材・座席・スタッフなどを用意して固定費を負担しているので、季節や曜日によって人数が大きく変動すると、無駄が多くて生産性が悪化する。この点については、特に、インターネット・マーケティングを上手に活用し、集客や仕事の繁閑の平準化ができると生産性は向上する。フラッシュ・マーケティングの「グル―ポン」創業者は、そもそも空席を埋めるニーズに応えようとしたのだ。「ホットペッパービューティ」(リクルート)は、予約手続きを入れてヘアサロンでの繁閑の平準化を提供し、急成長している。

 国の政策としては、サービス業の需要の時間的平準化をするために、フレックス制の導入の促進などをしてもいいだろう。また、子供の夏休みがある7・8月だけ、電力需要の平準化のためにも、業界ごとに土日以外の週休曜日の設定をしてもいいだろう。こうして需要の平準化ができると、サービス業は正規雇用の比率を上げやすく、雇用の質を上げることにもつながる。

●経営の保護よりも新陳代謝促進
 
 サービス業では生産と消費が同時に行われるので、製造業のような出荷前の最終品質検査がやりにくい。中国の電子製品工場では、生産ラインとは独立した検査担当の労働者が不良品発見率でボーナスを決められ、ぎしぎしと目を血走らせてチェックしている。このように製造業は、物理的インセンティブをつけた内部統制システムを整備して品質管理を行いやすい。

 しかし、サービス業では、生産をする労働者自身が自分で品質管理をせざるを得ず、内発的な高いモチベーションで自らを律さないと事業が成り立たない。従ってサービス業の品質確保は、内部統制システムよりも、そのサービス事業の意味や企業理念に労働者が共感できるかどうかにかかっている。つまり、制度やシステムよりも、経営者の資質や企業文化が重要なのである。

 このように、サービス業の生産性は、設備投資、技術、参入分野よりも、経営者の資質や企業文化といった経営力が一番影響する。だからこそ、内外の研究が示しているように、サービス業では優良サービス事業者が効率の悪い企業を買収して規模を拡大して新陳代謝を行うのが、生産性向上に一番効き目がある。それを促進するには、経営共創基盤代表取締役CEO・冨山和彦氏が主張するように、経営者個人の連帯保証や信用保証をつける金融のシステムをやめるべきであり、労働市場の流動性を増すべきである(『なぜローカル経済から日本は甦るのか』<PHP新書>より)。

 ところで、優良サービス業の多くが、カリスマ的経営者に率いられ独特の個性的な企業文化を持っているのは、上記のように生産と消費の同時性というサービス業の本質に由来している。優良サービス業では、独特の研修や社員イベント、経営者の理念の徹底が行われ、労働者の内発的なモチベーション向上が図られている。

 しかし、これが少し行き過ぎると、今度は世間からカルトのようだとして「ブラック企業」との批判を受けかねない。言い換えると、優良サービス業がブラック批判の罠にかかりやすいのは、サービス業の本質に由来しているだけに、十分に気をつけなければならない。

小林敬幸/『ビジネスをつくる仕事』著者


 

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