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シェール開発、早すぎたバブルの終焉 環境破壊、原油下落…米国生産現地ルポ〈AERA〉
http://www.asyura2.com/15/hasan93/msg/264.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 1 月 26 日 16:44:06: igsppGRN/E9PQ
 

シェール開発、早すぎたバブルの終焉 環境破壊、原油下落…米国生産現地ルポ〈AERA〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150126-00000018-sasahi-bus_all
AERA 2015年2月2日号


エネルギーの「革命」とまでもてはやされたシェールガス。過ぎ去りつつあるブームは、米国人の意識の確実な変化も示している。(ジャーナリスト・津山恵子)

「このシェール(頁岩<けつがん>)は、何百万年も前に形成されて、天然ガスが含まれていた層だ。破片を分析すれば、すぐにそれが分かるよ」

 と、米コーネル大学石油技術博士アントニー・イングラフィア(67)。

 地面と水平に横に裂けて重なった、古城の壁のように美しい表面に、雪とつららがちりばめられたシェールの崖が、深い滝つぼと真っ白に凍った川の両側に広がる。

 彼が住むのはニューヨーク・マンハッタンから約350キロ北西にあるコーネル大の城下町、ニューヨーク州トンプキンズ郡イサカ(人口約3万人)。米北東部の5州にまたがる広大なマーセラス・シェール層(約480万ヘクタール)が地下に眠る。

「北部にある小川で、マッチの火をかざすと水面に火がつくところがあるのよ。天然ガスが水面に薄く漏れているのね」

 同地域の環境団体「サステイナブル・トンプキンズ」のゲイ・ニコルソン会長(62)もこう語った。

●住民と業界に衝撃

 こうした話は、米国の地底がいかに天然ガスに恵まれたシェール層に覆われているかを物語る。しかし、それを地面から抽出することがいかに危険なことか。イサカ周辺の住民は2009年頃から学習して行動を起こし、ニューヨーク州政府にシェール開発の禁止を働きかけた。

 昨年12月17日、クオモ同州知事は、健康への懸念がある上、経済効果が見込めないとして、シェール開発で使われているフラッキング(水圧破砕)法を州全域で禁止する方針を示した。

 雇用など経済効果を期待してシェール開発を支持する住民と、健康被害を理由に反対する住民。州北西部は住民が真っ二つに分かれていたが、州政府の決定は、住民とエネルギー業界に大きな衝撃を与えた。

 これまでクオモ知事を板挟みにした住民の対立の中で、イサカは、一体となって「フラッキング反対」を叫んだ稀有な地域だ。

「12年にコーネル大に入学したとき、街中に“フラッキング反対”“太陽光発電にしよう”といった看板が、あちこちに立っていて、反対運動の最中だった」

 コーネル大数学専攻で博士号論文を書いている運動家ジェフリー・バーグフォーク(35)はそう回想する。

●健康被害も懸念

 郊外に住む獣医ミシェル・バンバーガー(59)と、夫でコーネル大分子医学教授ロバート・オズワルド(61)は09年春、ルイジアナ州でフラッキングの現場にいた家畜牛が、何かに接触してから1時間以内に死亡したという事件に関心を抱いた。

「フラッキングは安全だとシェール企業は言うけれど、牛のような大きな家畜が、呼吸困難で死ぬんです」(バンバーガー)

 フラッキングは、天然ガスやオイルを採掘する新しい技術だ。地上から約3キロもの地下にあるシェール層まで井戸を掘り、そこから水平に掘った穴に、特殊な化学物質を含む大量の「フラッキング水」を高圧で流し込む。すると岩盤に毛細血管のような割れ目ができ、そこから天然ガスやオイルが取り出せる。

 シェールガスの採掘現場は、原油や石炭などと違って、一般の農地にあることが多い。高圧がかかるため垂直に掘った井戸が爆発したり、採掘用の化学物質が入った水が漏れたりする危険もある。もし漏れた化学物質が水源に入れば、「汚染事故」が起きてしまう。

 そうなれば、農作物、飲料水、肉やミルクまで化学物質の影響を受ける可能性が高く、人の健康にまで被害が及びかねない。夫妻は、フラッキングがすでに行われていた、隣接するペンシルベニア州などに調査に行き、その被害をつぶさに見て戦慄した。

 12年、夫妻は「ガス採掘が人間と動物に及ぼす影響」という論文で、汚染の影響を受けやすい家畜のオーナーへの調査を行った結果を発表した。すると2日以内にオーストラリアの新聞が掲載し、各国の多くの媒体も数日内に論文を取り上げた。

 その後、夫婦はシェール論争に揺れる街々で、講演やワークショップを開き、地域住民や農家に警鐘を鳴らし続けてきた。論文や書物も次々に発表した。

「地域での反対運動も盛り上がった結果、ニューヨーク州北西部の世論は、『フラッキングNO』にシフトしてきたと思う」(オズワルド)

 シェール層は、実は、人類が触ってはいけない「聖域」だったという。前出の石油技術博士アントニー・イングラフィアも08年ごろからフラッキングについて関心を持ち、研究を進めていたが、その結論は明らかだった。

「ばかげているとしか言えない。高コストな技術を使って、リターンが異常に少ない。しかも健康に悪い。さらに気候変動がこんなに世界的に問題になっている最中、人々の裏庭や農地にフラッキングを持ち込むのは、懸念が大きすぎる」

●原油価格の下落が影響

 イングラフィアら科学者グループと、住民運動の側面から連携したのが、地域の環境保護活動をしていた前出の「サステイナブル・トンプキンズ」のニコルソン会長らだ。

 イサカは、氷河で形成され、滝やブドウ畑など美しい自然に恵まれたケイユガ湖に接している。同湖を含む無数の湖があるフィンガー湖地域に、シェール開発の計画が浮上した時に、ニコルソンらが立ち上がった。同団体は「ニューヨーク州政府によるフラッキング禁止」を最も早い時期に要請した団体だとい
う。
 地域や遠く離れたニューヨーク市の環境・市民団体と連携し、絆を深め、フラッキングの危険性を知らせるイベントで住民を教育し、州都オールバニのロビイストに働きかけ、デモも何回も開催した。

「州政府による禁止というのは、ナイーブだという運動家もいたわ。でも、とにかく、クオモ知事の目にとまるような行動を続ければ、米大統領選への出馬を目指しているかもしれない州知事が、有権者をみて、政治的な判断をせざるを得ないだろうという戦略だったの」(ニコルソン)

 実際に、クオモ知事のフラッキング禁止の決断は、同州健康局の調査や報告に基づいたものだ。同州環境保護局は健康局の勧告を受け、今後、拘束力のあるフラッキング禁止勧告を出す見込みだ。

 一方で、ノースダコタ、ペンシルベニア、テキサスなどの州では、フラッキングが天然ガス・石油のブームを引き起こし、「シェール革命」とまで言われた。

 州経済を潤し、リーマン・ショックの後、10%にも達した全米の失業率を横目に、1桁の失業率を誇った。その結果、世界の原油価格も劇的に下落し、家計を助けた。

 しかし、「シェールバブルの終焉」(前出のニコルソン)には、原油価格のさらなる下落が大きく影響した。ニューヨークで取引される原油のWTI先物価格は08年に一時、1バレルで147ドルの最高値をつけたが、昨年からじわじわと下落し、1月22日現在は約47ドルと3分の1だ。シェール企業が、予想産出量をこれ以上の価格でヘッジし
ていれば大赤字となる。

●シェール倒産の第一号

 このため、シェール企業の株価は、原油価格が下降し始めてから軒並み大幅下落した。減産や設備投資の見送りも始まっている。ノースダコタ州バッケン・シェールの生産大手コンチネンタル・リソーシーズなどは、15年の設備投資計画を撤回した。

 年明けには、南部テキサス州の小さな石油企業WBHエナジーが、連邦破産法
11条(日本の民事再生法に相当)の適用申請をして経営破綻し、米メディアは「シェール倒産の第1号」の可能性が高いと報じた。マーケットは今後もシェール倒産が相次ぐのではないかと懸念してい
る。
 ニューヨーク州の決定、そして、イサカなどの住民や科学者からの情報発信も含め、米国のエネルギー問題に対する意識は、少しずつだが確実に変化し始めている。

 10年ほど前は、「大きくて、ガソリンをたくさん食う車ほどいい車だ」といったエネルギーの過剰消費を当たり前としていた米国人だが、現在は、低燃費車を購入するのが当たり前。ハイブリッドカーがニューヨークのタクシーに多く採用されている。

 この10年の間に、明らかに「脱化石燃料」の流れが生まれてきた。

「キーストーンにNO!」

 1月13日夜、ニューヨーク・マンハッタンなど全米各地で、カナダからの石油パイプライン「キーストーンXL」敷設に反対するデモが開催された。ニューヨークでは、零下10度近い中、100人以上がプラカードを用意して集まった。

 カナダ・アルバータ州北部のオイルサンドとテキサス州の製油所を結び、一日当たり83万バレルの原油を輸送する計画。パイプラインは全長2700キロ超で、南側は完成し、送油を始めている。

●大量消費信仰が変わる

 焦点となっているのは、米国とカナダの国境をまたぐ北側半分で、州政府が敷設を認可していないところもあるほか、6年にわたり、反対運動で計画が宙に浮いたままであることだ。

 しかし、保守派でエネルギー業界との結びつきが強い共和党が多数派の議会は、キーストーン計画の承認法案を採決する意向だ。オバマ大統領は、同法案が可決された場合は拒否権を行使する意向を示唆。それに期待をかけた反対派が、デモを繰り返している。これも
10年前であれば、全米規模には及ばなかった運動だ。

 世界有数の石油産出国で、大量消費に対する信仰が強い米国が変われば、エネルギー問題で、世界に影響を及ぼすことも可能になる。

 人口わずか3万人の大学街イサカの住民は、それを信じて、フラッキングの全州における禁止を提案した。今後も、温暖化ガス削減の動きの中で、新たな挑戦に挑んでいくに違いない。

(文中敬称略)

 

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コメント
 
01. 2015年1月26日 16:57:35 : nJF6kGWndY

環境破壊のシェール開発が止まるのは生態系保全にとってはプラス要因だが

いずれまた再開しそうではある


02. 2015年1月27日 00:16:26 : Qk0z0gVGLY
こういう開発はいったんやめると再開は困難だろな。

03. 2015年1月27日 00:30:55 : Qk0z0gVGLY
どうも書き込み出来たり出来なかったりでコメントが細切れになってしまうw

米国は再生可能エネルギーの導入にかなり遅れている。太陽光などに対して
米国民の意識がかなり低い。近所見ても誰も使っていない。日本ほどは。

逆に、この意識があがってくると、シェールが再び浮かび上がってくる可能性
はかなり低くなる。土地もあれば風も強い。太陽光も風力もいくらでもできる。

現在は、電力会社が無駄に儲かるような構造だな。


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