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ピケティ「日本の消費増税は正しい方向ではない」〈週刊朝日〉
http://www.asyura2.com/15/hasan93/msg/434.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 2 月 05 日 16:17:05: igsppGRN/E9PQ
 

ピケティ「日本の消費増税は正しい方向ではない」〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150205-00000012-sasahi-bus_all
週刊朝日 2015年2月13日号より抜粋


 これはもはや社会現象だ──。5940円の経済専門書『21世紀の資本』(みすず書房)が、発売から2カ月弱で13万部を突破した。著者のフランスの経済学者ピケティ氏は、1月29日の来日シンポジウムで日本についてこう語った。

【書評 ベストセラー解読『21世紀の資本』】
*  *  *
 日本の格差は米国より低いが、増大している。トップ10%の層の所得が、全体の30〜40%にまで上がっている。それでも高成長の時代であれば、誰でも恩恵を受けられるので大きな問題ではない。しかし、低成長の時代に富の集中が起きていることは深刻な問題です。

 日本の最高所得税率はあまり高くない。1960〜70年代の水準と比べても、低くなっています。国際的な水準から見ても高くない。これは、トップの層の所得は増えているのに、税率は下がっていることを意味します。日本は、所得税の累進性を高めるべきです。

──この発言は、パネルディスカッションに登壇した西村康稔(やすとし)内閣府副大臣が、安倍政権の経済政策について説明したことへの返答だった。西村副大臣は「日本の格差は米国より小さい」「雇用者数は100万人増えた」「アベノミクスの成果を全国津々浦々に」と強調。アベノミクスの成果を紹介した。だが、ピケティは疑問点を次々と指摘していく。

 私の見方では、消費増税は正しい方向ではない。それよりも、低中所得者の所得税を下げ、固定資産税を増やす。このほうが現実の日本経済の状況に合うのではないか。特に若い世代にプラスになる。

 紙幣を増刷するのはいいことなのだろうか。増やしたお金は、資産や不動産のバブルになるだけで、一般の人への恩恵にはならないのではないか。物価のインフレを起こしたいのであれば、賃金を増やさなければなりません。

 欧州と米国、そして日本も金融政策に依存しすぎています。むしろ財政改革、教育改革、累進制のある税制が必要でしょう。もちろん、インフレ率は0%より、2〜3%あったほうがいい。ただし、金融緩和や紙幣の増刷では不十分だと思います。

 

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コメント
 
01. 2015年2月05日 16:41:05 : EmlyqzO1DE
生活の党が、正しい主張であった。

消費税増税を言い張った政党は、反省してもらいたいものだ。
こんな政党は消えてくれ!
自民党、公明党、民主党、維新の会、、、、、
国・国民のために政治しているのか?こんな政党は。

マスコミも反省してもらいたいね。
今良くなっているのか?
有識者会議メンバ-、御用学者はクビにしろ!


02. 2015年2月06日 09:08:46 : jXbiWWJBCA

「富の集中? もっと重要な問題がある!」

トマ・ピケティ教授×吉川洋教授 特別対談

2015年2月6日(金)  広野 彩子

 格差解消の処方箋として「富裕層の資産や所得に対する累進課税」などを提唱し、一世を風靡した仏パリ経済学校のトマ・ピケティ教授。1月末に来日するや連日の講演や取材に追われ、「経済学界のロックスター」とも称される人気ぶりを見せつけた。伝統的な経済理論を身に付けたトップクラスの経済学者でありながら、20世紀フランス現代歴史学のアナール派における巨匠リュシアン・フェーヴルやフェルナン・ブローデルらの思想を受け継ぐ、フランス流エリートだ。
 アナール派は、民衆の文化生活や経済などの社会的背景を重視、歴史を言語学、経済学、統計学、地理学など他の学問の知見を取り入れながら分析し、歴史学に革命を起こした学派だ。それまでの歴史研究で主流だった、政治史や事件史、人物の研究が中心になる手法とは異なり、おびただしい数の数値や事実を集め、地球的な規模で学際的な分析を重視する。
 ピケティ教授はそうしたフランス発の手法を、経済学に生かした。「経済学は、もっとほかの社会科学の手法もとりいれるべきだ」と訴え、いわば経済学のフランス革命を起こそうとする気鋭の研究者が、日本を代表する経済学者である吉川洋・東京大学教授と対談し、近著『21世紀の資本』で明らかにした「格差」の正体や、日本経済の行方について議論した。

トマ・ピケティ(Thomas Piketty)氏
1971年、フランス・クリシー生まれ。仏パリ経済学校経済学教授。社会科学高等研究院(EHESS)経済学教授。EHESSとロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で博士号を取得後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)で教鞭をとる。2000年からEHESS教授。2007年からパリ経済学校教授。「American Economic Review」をはじめ多数の世界的な経済学術誌に論文を掲載。著書多数。経済発展と所得分配の相互作用に関する歴史的・理論的研究に携わる。邦訳書に『21世紀の資本』(みすず書房)、『トマ・ピケティの新・資本論』(日経BP)。(写真:菅野勝男、以下同)
吉川:あなたは、まえがきで「経済学は、歴史を含めた社会科学であるべきだ」と言っています。とても大胆な発言で、歴史と経済理論の間にある種の緊張感をもたらそうとしていますね。私は日本経済を研究し続けてきたマクロ経済学者です。私も、制度的背景や過去の歴史に立ち返ることなく、マクロ経済分析に取り組むことはできないと考えてきました。

 格差は、日本でも関心の高い話題です。読者は「高所得層が富の大半を保有している」という点に注目しているようですが…。

ピケティ:いえ、私はどちらかと言えば、低所得層の方に注意を払っています。高所得層には正直、あまり関心がありません。重要なのは、富のうちどのくらいのシェアが、低所得層のものになるのかです。『21世紀の資本』でも、実は高所得層についてはとりたてて詳しく論じてはいません。

低所得層がますます困窮していることが問題

吉川:なるほど。

ピケティ:私は、高所得層の富のシェアがどの程度増えるかより、低所得層のシェアが減っていくことの方を問題視しています。これが日本だけでなく世界中で起こっています。米国でも最低賃金が大きな問題になっています。現在の米国の最低賃金では、50年前と比べて購買力がかなり小さくなっています。低所得層がますます困窮していることこそが問題なのです。


吉川洋(よしかわ・ひろし)氏
東京大学大学院経済学研究科教授。1974年3月東京大学経済学部経済学科卒業、78年12月米エール大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。82年大阪大学社会経済研究所助教授、88年東京大学経済学部助教授、93年2月東京大学経済学部教授を経て現職。著書に『デフレーション』(日本経済新聞出版社)『高度成長―日本を変えた6000日』(中公文庫)『いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ―有効需要とイノベーションの経済学』(ダイヤモンド社)など多数。
吉川:つまり、貧困により目を向けているということですね。米国では富める者がより加速度的に裕福になっていることの方が問題だと思いますが、日本では事情が違います。

日本では、若者間での格差もありますが、高齢者間でも格差が大きい。高齢化が進めば、社会全体で格差が高まっていくことになります。若年層では非正規雇用が増えています。資本課税のアイデアは悪くないかもしれないですが、日本の格差問題の解決には、資本課税よりもまず社会保障制度改革が重要だと思います。

ピケティ:もちろん格差に対処するには、政策と社会保障の組み合わせが必須です。また労働市場において、最低賃金をどうするかも重要です。さらに、教育は常に重要な政策課題です。累進課税だけではだめです。どういう政策と組み合わせるかが重要です。

 繰り返しになりますが、トップクラスの富裕層のシェアが増えていることそのものが問題なのではなく、低所得層の最下層の富がどんどん減っていることが問題なのです。もちろん両者は関係しています。米国で上位10%の総所得のシェアを見ると、80年代には30%だったのが、現在は50%まで高まりました。下層の富が、看過できない巨大な規模でトップ層に移転している。

日本の格差の大きさは、米国と欧州の中間程度

 日本の上位10%が占める富のシェアはどうかと言えば、米国ほどではありませんがやはり大きいです。30%だったのが、現在は40%です。しかし90年から2010年までの低成長を鑑みれば、上位10%の富のシェアが10%増えているということは、やはり下層が所得を失っているからだといえるでしょう。

 欧州はそこまでいきません。恐らく30%から35%になった程度です。日本の格差上昇は、米国と欧州の中間ぐらい、若干欧州寄りの水準ですね。

吉川:あなたはフランスの方ですが、フランスでは失業率が大変高いですね。

ピケティ:はい、大変高いです。

吉川:パリのシャルリエブド襲撃事件は大変悲しいニュースでした。テロは許してはいけませんが、移民の2世の若い世代が貧困に追いやられていることも、テロの温床になっているのではないですか?


ピケティ:フランスをはじめとする欧州で、失業率が格差の主要なテーマであることは確かです。とりわけ若年失業がそうです。フランス、スペイン、ギリシャやイタリアでは、4分の1の若者が失業しています。30%に達している国もあるかもしれません。大変ひどい状況です。将来に大変な禍根を残すだけでなく、それが民族や宗教のグループ間の緊張関係を生む。

 さらに4分の1から3分の1の若者が、手に職を持たずに社会人としての生活をスタートさせており、これは過去5年間でかなり悪化しています。社会に長期的な悪影響をもたらすでしょう。

 ただ、構造的な問題もあります。失業率は、過去5年でさらに悪化したとはいえ、10年ほどずっと高い水準のままなのです。これは、経済危機における政府の対応に責任があり、やり方が大変非効率で、まずかったからだと思います。

ユーロ域内は財政赤字の解消に躍起になりすぎています。対策が拙速で、緊縮財政をしすぎです。それが過去5年の経済悪化をもたらしていますし、失業率の増大につながっています。一方の米国では、過去5年で失業率が改善しているのですよ。

 5年前、ユーロ圏と米国の失業率は同じだったのです。それ以来、米国では減少し、ユーロ圏では増えた。財政赤字の水準だって同じ程度でした。しかし欧州では財政赤字削減を急ぎすぎました。フランスでは景気後退のさなかに増税したのです。これは、経済成長の息の根を止める行為です。フランスはデフレに入りかかっています。日本と同じ状況に陥ろうとしている。

どの国も、固有の歴史を抱えている

吉川:デフレは金融緩和だけで解消できませんからね。

ピケティ:全くその通りです。ですから、日本の現在に至るまで経験はとても興味深い。一方ユーロ圏では18の異なる財政赤字、18の異なる利子率、そして18の異なる税制という極めて困難な問題を1つの通貨圏で抱えています。


 この問題を解決しない限り、ユーロは信認を失い、組織もガタガタになってしまいます。問題の解決には、政治と財政に関して、フランス、ドイツとイタリア間でもっと緊密な連合を作り、公的債務を1つにして、利子率を1つに統一することでしょう。そうすれば、ECB(欧州中央銀行)の金融政策もやりやすくなります。

 例えば米国で、各州の連邦準備銀行がそれぞれ違う利子率を毎朝選んでいたら大変な混乱に陥りますよね。欧州ではそれが今、起こっているのです。

 欧州の失業率が高いもう1つの重要な理由は、教育制度と労働市場の制度にあります。フランスでは人種差別とその組織的な活動、北アフリカ移民やその2世に対する差別といった大変深刻な問題もあります。

 もちろん、どの国も格差に伴う固有の歴史を抱えています。そのすべてが問題です。日本では、社会保障をどの程度まで広げていくのか、どの程度まで社会による保護が望ましいのか、が問題になっています。40%程度の労働者が非正規なので、それが少ない失業率にもつながっているものの、別の格差を生み出しています。

 こうして各国が置かれた状況を比較することで様々なことが分かります。『21世紀の資本』でやろうとしたのは、極めて多様な歴史を抱えた国々の経験を、1つにまとめて提示することでした。

吉川:なるほど。では、ここで少し経済学の議論をしてもいいですか。あなたは基本的に「ソローモデル」に依拠しています。資本の中身を分けずひとくくりにして経済成長を分析している「ワンセクターモデル」よりも、私は19世紀を理解するうえでは、アーサー・ルイスの提唱した「二重経済モデル」(ルイス・モデル)の方が良いと思います。

 これは途上国経済を分析するモデルで、経済を分析する時に経済を都市工業部門と農業部門に分け、農業部門にある余剰労働力を使いながら工業部門が経済成長していくモデルです。ポイントは、実質賃金が労働の限界生産に等しくないことです。

ソローモデルは全く信用できない

ピケティ:まず、ソローのワンセクターモデルはあまりいいモデルではないと思います。私のアプローチは、(農地、住宅など)複数のセクターに分けて資本をとらえています。それは『21世紀の資本』の113ページ(注:原書、邦訳版では119ページの第3章「資本の変化」)から書いたのですが、重要なのは、資本の中身の変化をとらえることです。


 英国とフランスの資本の中身を1700年から2010年まで見渡すと、農地が極端に減って、一方で純外国資本(その国の市民が所有する外国資産と、外国がその国で所有する資産の差。国債も含む)が増えています。宅地も1950年代から増えています。つまり「資本」はひとくくりにできるものではなく、常に多層なのです。ワンセクターモデルは全く信用していません。資本は常にマルチセクター(複数のセクター)です。この本で示したのは異なるタイプの資本の蓄積モデルで、だからこそこんなに分厚くなったのです。

 資本の中身は変化し続けます。しかもそれは重要な構造変化です。構造変化を描く方法の1つが、あなたのおっしゃったルイスの「二重経済モデル」です。これも興味深いですが、私はもっと一般的で分かりやすく、かつもっと多層な資本の変化を説明するモデルが必要だと思います。そうしなければ、資本所得比率の変遷や資本シェアの推移をたどることができません。

本で提示したかった新しい経済モデル

 最近のデータを見れば、住宅価格が上昇していることが分かると思います。日本や英国、フランスにおける資本所得比率の上昇を理解するためには、セクター内ではなく、セクター間の代替性にも注目する必要があります。

 また、日本や英国、フランスの過去数十年の資本所得比率や賃金所得比率の上昇は、ほとんどが不動産・住宅セクター、あるいはエネルギーセクターが要因になっています。資本集約的なセクターに注視する必要があるのです。私が開発しようとしたのは、こうした分析が可能になる、多層的な資本蓄積アプローチ(による経済モデル)なのです。

吉川:そうですね、ソローのワンセクターモデルでは、資本を議論する時に土地をあまり重視しません。しかも土地と機械設備すら区別をしない。しかしあなたはそれこそが極めて重要であると考えるわけですね。

ピケティ:大変重要です。ソローモデルは現実世界をあまりに単純化しすぎていて、大きな構造変化を捉えることができません。

吉川:それなら、私は、あなたがルイス・モデルを発展させればうまくいくのではないかと思いますけれど、どうですか。

ピケティ:いえ、ルイス・モデルよりもっと一般的なものにしたいのです。この本では、資本蓄積におけるマルチセクターモデルを押し出しました。ルイス・モデルの一種と呼んでも構いません。しかしルイス・モデルよりもっと分かりやすいと思います。


吉川:次のテーマにいきましょう。このたび、日本でも相続税率を上げます。これは言い換えれば「富裕税」のようなものでしょう。人生に1回限りの重い税です。かつて日本では、高い相続税率で戦前の富裕層をある意味無力化した歴史もあります。

消費増税より所得税の最高税率引き上げが先

ピケティ:面白いですね。フランスでも1945年、同じタイプの1回限りの「富裕税」がありました。ドイツ占領下で豊かになった人をある意味罰するものです。日本もフランスも、資産税という名目で大きな「富裕税」があります。我々は土地は富の半分だと考えているし、実際に富裕税の半分を占めます。問題は、課税がグロスの不動産価値に基づいている点にあります。日本なら、資産税を純資産に対する累進税などに改正できるのではないですか。

 このやり方であれば、資産を蓄積し始めた若い世代の税負担を軽くすることができるでしょう。資産を取得したばかりの時は、借金の方が多いでしょう?。純資産をより多くもつ人に課税するのです。この方法なら、世界政府なども必要ありません。それぞれの国が、少しずつ累進税の税制を整えればいいだけです。

吉川:アベノミクスの効果についてコメントはありますか。

ピケティ:安倍政権における財政政策については消費増税の意思決定がメーンですが、正しいとはとても思えません。日本における格差の最大の問題は、若年世代が社会で役割や居場所を見つけるのが難しいということです。

 とりわけ資産を得ることが困難になっている。家族に資産がなく、本人の労働所得しかないとすれば、親世代よりも資産を新たに取得することが難しくなります。若年世代が有利になるような税制にするよう、再調整する必要があるのではないですか。消費増税はその役には立ちません。

吉川:そうは言っても、欧州では付加価値税(日本の消費税に当たる)が20%の税率ですよね。日本は欧州並みに社会保障がしっかりしていると思いますが、消費税率が長い間わずか5%でした。これで将来世代の社会保障を賄うのは無理なのです。

ピケティ:なるほど。とはいえ、日本の累進所得税率を見ると、30〜40年前に比べて最高税率がかなり低くなっています。


吉川:それは、世界中どこでもそうですよね。

ピケティ:その通りです。しかし、なぜ所得税を増税する前に消費税率を上げるのですか。40年前の日本は、今と比べたら格差のない社会でした。しかし今は、富と所得比率が高い高所得者層の税率が低い。それならば、もっと富裕層に課税しなければ。

 すべての税率を上げることはできません。低成長であればなおさらです。こんな時にはいかなる増税もすべきではないでしょう。消費増税は経済成長を妨げますから。昨年の日本もそうだったのではないですか? ところが、日本では誰と話しても、野党ですら消費増税に賛成しています。これには驚きました。

デフレ下では公的債務の削減が非常に難しい

吉川:それは日本の消費税率が低すぎるからです。日本の格差は、将来どうなると思いますか。

ピケティ:日本の将来にとって重要な論点は2つあると思います。そして、どちらも欧州が学ばなければいけない点です。

 1つは、人口減少とそれが格差に与えるインパクトです。もう1つは、デフレ、(資産ではなく)価格のデフレです。この2つはほかの国にも関係がありますが、日本は極端なケースに陥っています。

吉川:デフレは格差とどのような関係がありますか?

ピケティ:デフレは、格差に対して(資本とは)別の経路から影響してきます。1つは、デフレ下では(国債などの)公的債務の削減が非常に難しくなり、これが格差に強いインパクトを与えるのです。

 デフレ下における巨額の公的債務は、実質的には「持たざる者」から「持てる者」への所得移転です。歴史的には、インフレが公的債務を再分配し、削減する有効な手段でした。だからこそ民間の富に累進税を課す方が良いのです。インフレを近代化させた手法と言えます。

吉川:つまりは公的債務を、富裕層が保有しているとお考えなのですね。しかし日本の(国債などの)公的債務は、民間の都市銀行や日本銀行が保有していますので、最終的に銀行に預金を預けている一般の人が負うのです。公的債務が「超富裕層」に保有されているならインフレで帳消しにするのもいいかもしれませんが、日本では庶民が影響を受けます。

ピケティ:国民はみな公民です。もちろん、そこには豊かな人も貧しい人もいます。日本もほかの国同様、人口の所得が低い方から半分は富の5%以下しか持っていません。もちろん多少の預金はあるでしょう。しかしシェアはわずかです。ということは、公的債務についても少ししか負担していないということになります。

 デフレは深刻なテーマです。日本は20年もの間デフレを経験しました。十分に長い期間です。また、新たな「お金の創出(money creation)」が、ほんの少しのインフレしか「再創出(recreation)」できていないことが問題です。

 我々経済学者は日本の経験とアベノミクスを注視していますが、「お金の創出」を増やすことだけでインフレの「再創出」に果たして十分なのか、確信が持てません。消費者物価におけるインフレを生み出そうというなら、一番有効なのは恐らく賃金を上げることでしょうね。まずは公的セクターから賃上げをすることです。

インフレより人口成長が大事

 人口成長も重要なテーマです。これは日本にとって、インフレを創り出すことよりもはるかに重要です。本でも強調したのですが、人口は、遺産相続や過去の富の蓄積を通じて格差に大変強力なインパクトがあります。

 日本でもし、持続的に人口が減り続けるのであれば、相続や家族間の富の移転は(格差に)さらに重要な影響を及ぼすでしょう。恐らく日本社会の相続は、『人間喜劇』などで知られる19世紀フランスの小説家オレノ・ド・バルザックの時代よりもはるかに重要なものでしょう。人口減少社会は、過去の富の蓄積が一層重要なものになります。

 実際、19世紀フランスで相続がとても重視された理由の1つは、ほかのヨーロッパ諸国と比べて人口の伸びが停滞していたことでした。しかし日本は人口成長が停滞しているどころか、減っているわけですからね。

 こんな現象は歴史上見たことがありません。この人口減を少しでも人口増に変えていくことこそが、日本の政策における最優先課題です。そこでは恐らく、男女の平等を徹底することも、カギになります。

●対談を終えて 吉川洋
 ピケティ教授の『21世紀の資本』が世界的なインパクトを与えた背景は、改めて言うまでもなく、格差が今日グローバルな問題になっているからだろう。ただし、格差の実態は国により時代により様々だ。
 対談でも述べたが、日本ではトップ1%の金持ちの問題もさることながら、下層での格差の広がりのほうがはるかに大きな問題である。このことは「ピケティ・フィーバー」の起きるだいぶ以前から、橘木俊詔著『日本の経済格差』(1998)、大竹文雄著『日本の不平等』(2005)などの優れた貢献を通して、われわれが認識してきたことだ。
 ピケティ教授の学問的な貢献は、18世紀までさかのぼるフランスの税務統計を詳細に調べた実証分析である。教授の格差論で重要な役割を果たしているのが、資本(資産)/所得比率だが、『21世紀の資本』では英仏における資本/所得の長期の時系列が印象深い形でグラフ化されている。日本は英仏より100年遅れて明治以降になるが、一橋大学の経済学者グループにより、世界に誇るべき長期統計が整えられている(問題の資本/所得比率も長期経済統計3巻『資本ストック』にある)。
 ピケティ教授の来日を機に、日本の若い経済学者・エコノミストにより、こうした過去の成果が新たな光の下で活用されることを望みたい。
●対談に同席した、財務省で国際課税などを担当した竹内洋・東京大学政策ビジョンセンター客員教授の話
 多忙な日程の合間を縫っての対談で、ピケティ教授も疲れ気味の様子だったが、吉川洋教授がピケティ教授のモデルに言及した際には、自著の具体的なページを開き快活に議論を展開し始めた。「世界的に著名な社会思想の伝道者」というより、「経済学者」として、理論と現実に真剣にとりくんでいる姿を印象付けられた。
 ところで、教授が指摘した格差の問題は、昨年12月のOECD(経済協力開発機構)報告でも指摘されている。
 富裕層と貧困層の格差は、今や大半のOECD諸国において過去30年で最も大きくなっているという。そして所得格差の超勢的な拡大が経済成長を大幅に抑制しており、その理由の1つが、貧困層ほど教育への投資が落ちていることにある。
 確かにスーパーリッチが存在する米国の例(米ハーバード大学の年間授業料527万円で、学部学生の家庭の平均所得45万ドルと最上位2%の所得に一致、東大学部は53万円)に比べれば日本は違うとの意見もあろうが、アベノミクスの長期的な成長課題は、教育を含む格差の是正である。
 ちなみに、OECDの租税委員会では、日本が議長国となって、最近の米グーグルなどによる利益移転問題に対して取り組んでいる。教授の提案する累進的資産税の可能性は遠いが、マイナンバーを2年後に導入する日本は、この分野でも積極的な役割が期待できる。
 ピケティ教授は、世代間の公平の観点からの所得税を含む税制の在り方について更に国際的な研究を深めたいとしている。消費税についての誤解をとくためにも、教授が切望するミクロデータ情報の交換を通じてわが国とも協調し、税制の歴史的実証研究を行ってはどうか。


このコラムについて
ニュースを斬る

日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20150204/277158/?ST=print
 


03. 2015年2月08日 01:15:53 : jXbiWWJBCA
2015年02月01日01:25
カテゴリ
経済
日本の格差はピケティのいう格差とは違う


ピケティが来日して日仏会館で講演したが、世代間格差について「若い世代の低中所得者の税率を下げ、トップの所得の税率を上げるべきだ」(2時間経過前後)という話は、見当違いである。彼の話が、お涙ちょうだいの「格差社会」論に利用されないようにコメントしておく。
私の『日本人のためのピケティ入門』でも、彼のいう資本収益率や資本/所得比率による格差が日本には当てはまらないことを指摘したが、世代間格差は最終段階で落とした。これはピケティの示したマクロ経済的な格差とは違う政治問題だからだが、この判断は誤りだった。

『21世紀の資本』の基本テーゼは「階級間格差が世代間格差より大きい」ということだが、これは日本には当てはまらない。彼は所得税の累進性にこだわっているが、問題は税よりも社会保障である。次の図(産業構造審議会の資料)のように、日本の年金の格差は世界最大であり、フランスの4倍近い。

この解決策は簡単で、年金の支給額を下げることだ。長期的には、年金を賦課方式から積立方式に変える必要があるが、これについては彼は否定的だ。「政治的に困難だ」というが、そんなことを言ったら「グローバルな資本課税」は政治的に不可能だ。社会保障の負担を平等化すれば平等になるというのは、経済学的には自明だが、政治的には不可能に近い。日本ではそれが最大の問題なのだ。

http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51927768.html 


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