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日本経済の実態は、ピケティのモデルとは異なる 野口悠紀雄(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/15/hasan93/msg/544.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 2 月 12 日 10:52:05: igsppGRN/E9PQ
 

日本経済の実態は、ピケティのモデルとは異なる
http://diamond.jp/articles/-/66629
2015年2月12日 野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問] ダイヤモンド・オンライン


 トマ・ピケティは、『21世紀の資本』において、格差の拡大が、簡単なマクロ変数で説明できるとした。前回は、そのようなマクロ経済の姿は日本では観察されないことを、GDPデータを用いて示した。以下では、同じことを法人企業統計のデータを用いて示そう。


■従業員給与と営業利益の比率はほぼ一定


 法人企業統計は、経済全体ではなく、法人企業という経済の一部だけを対象としている。しかし、極めて詳細なデータを長期間について提供する貴重な情報源だ。経済の生産活動のほとんどは法人部門で行なわれるので、この部門を分析することによって、所得が生み出される過程をかなり詳細に知ることができる。


 営業利益の中には、支払利息、配当金、社内留保という資本所得が含まれている(内部留保は、株主のキャピタルゲインという形で所得になる)。そこで、営業利益を資本所得と見なし、従業員給与を労働所得と見なすことにする(注1)。


 従業員給与と営業利益の比率を見ると、図表1のとおりである。


 この比率は1998、99年度頃の期間と2009年度頃に上昇したが、それは、景気後退の中で従業員所得がほぼ一定にとどまり、景気変動で大きな影響を受ける営業利益が急減したことによる。


 この影響を除くと、70年代の初め以降、長期的に見て、比率は3〜4程度の水準で安定といえる。



 後に述べるコブ・ダグラス生産関数を想定する場合には、これは、関数のパラメータγ(資本所得の分配率)を20〜25%とした場合にほぼ相当する。


 なお、60年代にはこの比率は2ないしそれ未満の水準なので、長期トレンドでは、営業利益に対する従業員給与の比率は上昇している。


 このように、日本経済の実際の姿は、ピケティの言う「資本所得の比率上昇」とは逆のものになっている。


 なお、従業員給与と営業利益の比率は、09年以降現在までは低下傾向だが、これは09年度に急上昇したことの調整と見るべきだろう。


(注1)支払利息、配当金、社内留保の合計の営業利益に対する比率は、80年代まではほぼ100%だった。その後低下したが、最近では再び100%程度に戻っている。


■支払利子が減って社内留保が増加


 前述のように、ここでは、支払利息、配当金、社内留保を資本所得としている。これらの相対的な大きさは変動している。


 支払利息、配当金、社内留保が営業利益に占める比重を見ると、図表2のとおりである。


 注目されるのは、支払い利子の比率が、1990年代の後半以降、顕著に低下していることだ。70年代から90年代前半にかけては70%程度であったが、2004年には20%程度に低下した。これは、借入金が減少したことと、長期金利が低下したことの結果である。


 これに対して、配当の比率は上昇している。70年代から80年代には10%程度であったが、最近では30%を超える水準になり、40%を超えたこともある。


 社内留保の比率は変動が大きいが、90年代後半以降は上昇傾向にあると見ることができる。



■固定資産対付加価値の比率は上昇し資本収益率が低下


 つぎに固定資産対付加価値の比率を見ると、図表3に示すとおりであり、1960年代から80年代半ばまではほぼ1.5程度であったが、80年代後半から上昇し、最近では3程度の値になっている。



 固定資産対従業員給与の比率は、資本装備率を表わすと解釈できる。図表4に示すように、この値は、80年代以降上昇している。つまり、資本蓄積が進んでいる。



 前回述べたように、GDPデータでは資本/所得比率の上昇は、はっきりした形では観測できなかった。日本の場合、資本蓄積は法人企業の中で進んでいるということができよう。


 この状況は、ピケティの言う「資本/所得比率が上昇」ということと一致している。ただし、後で示すように、標準的な経済モデルでは、資本蓄積によって資本収益率は低下するはずだ。そして、前回述べたように、営業利益率は顕著に低下している。つまり、その点においては、ピケティの言う「資本収益率rがあまり変わらない」という主張は成り立っていない。


■日本における現実のデータは標準的な経済モデルが示すところに近い


 以上で見たことをまとめると、


(1)労働所得と資本所得の分配率はほぼ一定
(2)資本/所得比は時間とともに上昇
(3)資本収益率rは、時間とともに低下


 ということである。


 実は、これは、標準的な経済モデルの予測に近い結果だ。


 生産関数として一次同次関数を仮定すると、労働者1人当たりの生産y=Y/Lは、資本装備k=K/Lの関数になる。定常状態(y、kが時間的に一定である状態)では、yはkの関数になる。これをy=f(k)と書く(図表5参照)。



 一次同次生産関数の特殊な形として、コブ・ダグラス生産関数Y=aKγL(1−γ)を仮定しよう(0<γ<1)。この場合には、f(k)=akγとなる。


 この場合には、つぎのようになることが簡単な計算でわかる。


(1)資本/所得比βは、k(1-γ)/aとなる。定常状態では、これは一定値になる。βが上昇するのは、資本装備率kが上昇するときだが、そのときは、(2)で見るように、資本収益率rは低下する。


(2)資本収益率はr=aγk(γ-1)となるので、資本所得rKは、γYとなる。また、賃金率はw=a(1−γ)kγとなるので、労働所得wLは、(1−γ)Yとなる。つまり、要素所得の分配率は、資本所得がγであり、労働所得が(1−γ)で、一定である。この関係は、kのいかんにかかわらず成立する。つまり、資本蓄積が進み資本装備率が上昇したとしても、分配率は一定だ。


 ピケティの言う「資本所得の比率の上昇」という事態は起らないのだ。


(3)労働者1人当たりの貯蓄はgk(注2)。したがって、労働者1人当たりの消費をcとすると、生産=投資+貯蓄という需給均衡式は、f(k)=gk+cとなる。


 1人当たり消費cはf(k)−gkであるから、cを最大化するようなkは、f'(k)=gを満たすkによって与えられる(注2)。左辺は資本収益率rなので、最適条件はr=gとなる(資本蓄積の黄金律)。


 資本蓄積が進み資本装備率kが上昇すれば、それに伴って資本収益率rも低下する。


 ピケティの言うr>gという状態は、図表5で、これより左側の状態、つまり、kが最適値より低い状態(資本蓄積が十分でない状態)だ。


 ところで、ピケティは、以上の関係が成り立たないとしている。


 すなわち、『21世紀の資本』の第6章の「コブ=ダグラス型生産関数を超えて」という項のなかで、コブ・ダグラス生産関数なら要素所得の分配率が一定になってしまうが、「歴史的事実はもっと複雑だ」としている。


 しかし、上で見たように、日本のデータはコブ・ダグラス生産関数を否定するほどのものではないと思われる。


 ピケティはまた、「1人当たり消費を最大化するという」最適成長理論も否定している(第16章)。そして、つぎのように言う。「黄金律で与えられる答えは実際にはあまり使い物にならない」。しかし、上で述べたように、黄金律が満たされていないにしても、資本蓄積が進んでkが上昇すれば、rは低下することに注意が必要である。


 なお、ピケティの言う資本主義の第1法則α=rβ、同第2法則β=s/gは、どんな場合にも成立する定義式である(αは資本所得の分配率)。問題は、「r、s、gなどの変数がどのように動くか」ということなのである。


(注2)その理由はつぎのとおりだ。
 図表5において、生産関数y=f(k)の他に、3本の平行な直線が描かれている。
 例えばk=k2の場合、1人当たり生産高はy2であり、1人当たり貯蓄は、
僵/L=(僵/K)×(K/L)=gk2だから、1人当たり消費はy2−gk2である。
 ところが、直線が生産関数に接する点P0を選んだ場合には、1人当たり消費はy0−gk0となり、これはy2−gk2より大きい。k0以外のどの点を選んだ場合にも1人当たり消費は少なくなる。



 

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コメント
 
01. 2015年2月12日 19:59:57 : htsIPgOYYk
このグラフを見てほぼ一定だとさ。
誰とは言わんが相当の阿呆がどこかにいるようだ。

02. 管理人さん 2015年2月12日 23:19:02 : Master
二重投稿削除に伴うコメントコピペ

01. 2015年2月12日 14:52:50 : nJF6kGWndY

>ピケティ効果で民間税調が発足 不公正な税制こそ格差の根源だ

日本は、それほど格差はないから

どの程度、実効性があるかは、疑問ではあるが

小さいに越したことはないし

無策だと国民の勤労意欲にも影響するから、できることはやるべきだな

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NJC0SI6K50XV01.html

富裕層、海外移住で税逃れ許さず−7月から含み益に出国時課税

  (ブルームバーグ):政府は富裕層の海外移住による租税回避を阻止するため、出国時に株式などの含み益などに課税する仕組み(みなし課税)を盛り込んだ特例を7月から施行する。財務省によると、日本を除く主要7カ国(G7)や北欧各国では既に課税しており、政府も特例の実施に乗り出す。
特例は出国直近10年以内に日本に5年以上居住し、株式などの金融資産(評価額)が1億円を超える人が対象。一時的な出国や納税資金が不十分な場合は、原則5年間猶予される。政府は17日にも特例を盛り込んだ来年度税制改正法案を国会に提出する。

特例実施の背景には金融資産の売却益に課税しない国・地域への永住者数が増加傾向にあるからだ。財務省によると、シンガポールや香港、スイス、ニュージーランドの4カ国・地域への永住者数は1996年の約6700人から13年には約1万7000人と2.6倍に膨らんだ。同省はこの中に租税回避目的の移住が含まれているとみている。 
大和総研の吉井一洋制度調査担当部長は、政府が厳しい財政状況から富裕層への課税強化を迫られているとし、この動きについては消費増税で苦しむ国民からの批判をかわす意味もあるという。

野村総合研究所が昨年11月にとりまとめた調査によると、1億円以上の富裕層は13年は100.7万世帯と00年の83.5万世帯に比べて約2割増えた。特に安倍政権発足前の11年と比較すると世帯数は24.3%増、純金融資産総額は28.2%増の241兆円と大きく伸びた。同研究所は「アベノミクスによる株価上昇がもたらした金融資産増加の影響が大きかった」とし、株式や投信の比率が高いとみている。 

けん制効果
特例は経済協力開発機構(OECD)租税委員会が国際的な脱税・租税逃れへの取り組みをまとめた「税源侵食と利益移転(BEPS)行動計画」の一環。株式などの含み益に対する課税権を、売却した人の居住国が持つ租税条約の乱用防止策が求められていた。

中央大法科大学院の森信茂樹教授は「特例の対象は100人から200人程度。けん制効果の意味合いが強い。日本に居住したままでもシンガポールや香港に会社をつくって資産を移し、日本株に投資することもできる」と述べ、効果は限定的との見方を示した。

国税庁は租税回避の実態を把握するため、昨年1月から富裕層に対し国外で保有する財産の種類や数量、価格について申告を求める対策に乗り出した。13年末時点での国外財産の合計額は約2兆5000億円。内訳は有価証券が6割超と大半を占め、預貯金、建物と続く。今年1月以降の申告については、期限内に提出がない場合や虚偽記載の場合に、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金を課すことになった。

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 下土井京子 kshimodoi@bloomberg.net;東京 岩本正明 miwamoto4@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Brett Miller bmiller30@bloomberg.net 淡路毅, 上野英治郎
更新日時: 2015/02/12 12:58 JST


03. 2015年2月13日 00:49:32 : 9URYgBZ4Qz
ピケティ氏の国、フランスは地震も津波も台風ばども殆どなく、建物は石造りの古城などが数百年、或いは千年以上持つものが多い。
だから不動産は維持費がそれ程でないので資産価値大となりやすい。
そう言う点が地震、津波、台風、火山、浸水その他が多い日本とは違う。
日本は建物の維持費が高くつく。だから日本の不動産価値は疑問。
ただピケティ氏の基本思想は正しいと思う。
階級社会の上に上がろうとする人、或いは上でいるのを維持しようとする人は資本主義を利用する。だから「資本主義は闘争だ」はその通り。

04. 2015年2月13日 17:03:27 : OHdkCiO8Z6
箇所的には正しいとこもあるだろうが、タイミングからして、何故
今700ページの寄り道が必要かって方が問題だ。
あっちにこっち連れて行かれて、出てきたら現実ボケしていた。
都合の悪い状況 隠しの700ページなんじゃないか。
だれが連れてきたのかね?


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