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［十字路］「２％への招待状」を信じるか
日銀の岩田規久男副総裁といえば、大規模な金融緩和によるデフレ脱却を主張するリフレ派の代表格。２年前の副総裁への就任直前、国会で２％物価目標の達成時期を問われ、「当然、就任して最初からの２年」と請け合った。できなかった場合の責任の取り方にまで言及した。それが最近では、異次元緩和から丸２年での２％目標の実現は難しいと、率直な認識を示すようになっている。
２％物価上昇の達成時期が揺れている。2013年４月の異次元緩和開始時には、日銀は「２年程度の期間を念頭にできるだけ早期」、つまり早ければ今春にも実現するように言っていた。それが「15年度を中心とする期間」に後ずれし、今や16年度に「はみ出るかもしれない」と言う。
それでいながら黒田東彦総裁は、述べてきたことは始めから変わりなく、異次元緩和は所期の効果を発揮していると強気の姿勢を崩さない。強弁のように聞こえるが、今の金融政策の本質を考えれば、そうでも言うしかあるまい。
なぜならば、異次元緩和の生命線が単純なマネー増加効果ではなく、人々の期待に働きかけ、２％物価上昇の実現を信じこませる偽薬効果にあるからだ。自ら唱える「２％への招待状」の信用を保ち、インフレ期待を高めるよう働きかけを続けなければならない。そのためには、自信有りげで事態を見通しているような物言いをせざるを得ない。
だが人々の期待形成は一筋縄ではない。原油安など不測の事態でも揺れ動く。いくら日銀総裁からの招待状でも、それがインフレ期待のアンカーになるとは限らない。
そもそも国民が求めたデフレ脱却とは景気好転のこと。統計上の２％物価の実現ではなかった。原油安は物価上昇を鈍らせながらも、景気を後押しする。政府内に物価目標の柔軟運用を求める空気が広がることに不思議はない。
（全国地方銀行協会常務理事 中川洋）
［日経新聞２月２５日夕刊Ｐ．５］
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