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ギリシャ:41兆円を吹き飛ばす?(NEVADAブログ)
http://www.asyura2.com/15/hasan94/msg/421.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 3 月 15 日 17:55:06: igsppGRN/E9PQ
 

ギリシャ:41兆円を吹き飛ばす?
http://blog.livedoor.jp/nevada_report-investment/archives/4841010.html
2015年03月15日 NEVADAブログ


時事通信はギリシャ債務問題について以下のタイトルで詳しく報じています。


【ギリシャ債務問題、再び緊張=支援めぐり交渉綱渡り】


ギリシャ支援問題は『先送り』で決まりましたが、それは解決のための先送りではなく、時間稼ぎのための先送りであり、案の定、色々な問題がわき起こって来ており、ユーロ売りの格好の材料になってきています。

今やヨーロッパの金融関係者の間では、ギリシャ問題は終わった、とする意見が強いのも事実です。

即ち、ギリシャが借金をしているのはECBとIMFであり、総額は3200億ユーロとなっており、円換算では41兆円となり、これであれば仮にギリシャがデフォルトしましても大した金額ではなく、加盟国で分担すれば微々たる金額になるというものなのです。本当にそうでしょうか?

ギリシャがデフォルトしユーロ圏から追放された場合、ギリシャは通貨を発行するにも膨大な資金が必要となり、かつ当面の資金にも困り到底ギリシャはやっていけない=ECBのいうことを聞くしかない、となるのがヨーロッパの金融トップの考えですが、中国・ロシアが後ろに控えているとなってもそう言えるでしょうか?


中国が主導権を握る新しい国際銀行はギリシャを目的に設立されたとも言われる位の銀行であり、ギリシャがユーロから離脱するのを待っている感すらあります。


今やギリシャの最大の投資家は中国とも言われており、さらにECB(+IMF)が貸している41兆円を吹き飛ばせばギリシャは負債がなくなる訳であり、かつ昔の通貨である【ドラクマ】の¨虫干し¨がギリシャ中央銀行で始まったとも言われており、紙幣を新しく刷らなくてもやっていけます。


時事通信は、今やギリシャは必要な資金の供与を受けられずにギリギリの資金繰りの綱渡りを強いられていると報じており、6月までに中央銀行の金庫が空っぽになる恐れもあります。

その前にギリシャ人が預金の引き出しを一層強化すれば、ギリシャ中央銀行は6月を待たずにパンクすることも十分ありえるのです。

破綻などて来っこない、やるならやってみろ、とヨーロッパ首脳は述べているようですが、窮鼠猫を噛むではないですが、最後に追い込まれたギリシャ猫がもう反撃に出た時、油断していたヨーロッパは大打撃を受けることになりかねません。

ギリシャもバカではなく、反撃するタイミングを周到に狙っているはずだからです。

ギリシャの勝利はヨーロッパとアメリカの敗北となり、そして中国とロシアの勝利となります。

果たしてこの通りになるでしょうか?

 

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コメント
 
01. 佐助 2015年3月15日 21:59:49 : YZ1JBFFO77mpI : cLoPFxP7a2
アイスランド共和国の銀行モラトリアムから、次の教訓をまなぶ必要があります。

@高金利で外国からの資金を集め、自国のバブルを膨張させ繁栄させた国家は、バブルが崩壊すると、デフォルト(支払い停止)せざるをえなくなる。
Aバブル崩壊で外国からの資金が逃出すと、株・土地・債権・通貨が大暴落する。
B外国からの資金が逃げ出すと、カネの流れが逆流して貸手の円ドルが上昇し、自国通貨は暴落するため、物価高騰・品不足・購買力激減で、経済は大混乱する。
C国家・銀行・企業・国民の各レベルで、デフォルトを発生させ、国民は自国の通貨より強い通貨を選好するようになる。
D国内国外からの消費者カードの引出しが停止され、パニックは国境を超える。
Eユーロ通貨体制に加盟しているギリシアと加盟していないアイスランド救済が遅れ、EUがダメならロシアからとゴネて、やっとIMFから借りた。しかし、その額は少なすぎて、日本の円建てサムライ債などの外債は、返済期日延期か棒引きが必要となる。

ギリシアの公務員と日本の官僚の構造はよく似ています,アイスランドの銀行モラトリアムは、どんな国家でも、自国民が外貨を選考した場合には、デフォルトが避けられないことを証明しました。これは、予期せぬ危機の前兆です。中国・インド・ブラジルのバブルも弾けました。スペイン・イタリア・東欧など予備軍次々と現れます。

こうなると基軸通貨はキン本位制を選択するまで,古今未曾有のパニックは収束しません。


02. 2015年3月15日 22:49:05 : jXbiWWJBCA

>ぎリシャの勝利はヨーロッパとアメリカの敗北となり、そして中国とロシアの勝利となります。果たしてこの通りになるでしょうか?

勿論ならない


03. 2015年3月16日 00:06:08 : C9qhLMXdZI
予定どうり。
初めから長期ごたごたの噛み付かせ。


04. 2015年3月16日 01:52:21 : DGihM4V3be
ギリシャを中国が助ければ、EUは助ける必要がない。EU、中国、ギリシャの3方がハッピーになる妙手だ。

05. 2015年3月16日 08:05:52 : 58bOsbjZOc
<ギリシャの勝利はヨーロッパとアメリカの敗北となり、そして中国とロシアの勝利となります。>

間違い。

ギリシャ問題はネオコン作。


06. 2015年3月16日 08:19:53 : jXbiWWJBCA

ギリシャの古いドラマを彷彿させるチプラス首相
2015年03月16日(Mon) Financial Times
(2015年3月13日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

ギリシャ政府、改革案の提出を延期 支援延長の条件
急進左派連合(SYRIZA)を率い政権の座に就いたアレクシス・チプラス首相〔AFPBB News〕

 年配のギリシャ人にとって、アレクシス・チプラス新首相と同氏の率いる左派政権のメンバーがドイツに対して放つ辛辣な言葉は聞き覚えのあるものだ。

 雄弁家で米国仕込みの経済学者、故アンドレアス・パパンドレウ氏*1が全ギリシャ社会主義運動(PASOK)を率いて1981年に総選挙で圧勝して政権の座に就いた時、チプラス氏はようやく小学校に上がったばかりだった。

反欧米感情を巧みに利用したパパンドレウ元首相

 パパンドレウ氏は、ギリシャ人が抱いていた強い反欧米感情を巧みに利用し、ギリシャを北大西洋条約機構(NATO)から脱退させると公約した。多くの人は当時、1974年にトルコが行ったキプロスへの軍事介入を防げなかったことでNATOを非難していた。

 パパンドレウ氏は米国政府に狙いを定め、自身の政府はギリシャ各地の4つの米軍基地を閉鎖すると宣言した。これは、1967〜74年のギリシャ軍事独裁政権への米国の支援に対する人々の根深い鬱憤を晴らす公約だった。

 中産階級のギリシャ人は、自分たちが住む町の広場でPASOKの党集会が開かれると、パパンドレウ首相が西側同盟国を厳しく非難するのを聞くために大挙して繰り出した。外国の外交官たちは、ギリシャがNATOを離脱し、米ソ両国から距離を置く国々の非同盟運動に加わるのではないかと心配した。

 時計の針を進め、チプラス首相と同氏が率いる急進左派連合(SYRIZA)の話をすれば、当時とは標的が異なるし、問題は政治的というより経済的だが、物語は酷似している。

 今では、緊縮策に打ちのめされたギリシャ人の災いの元としてドイツが米国に取って代わり、NATOではなく、欧州委員会、国際通貨基金(IMF)、欧州中央銀行(ECB)の救済監視団の「トロイカ」がギリシャの苦悩の責めを負わされている。

 チプラス氏がパパンドレウ氏の戦略を採用している1つの理由は、「古い」PASOKの古参議員たちが、厳しい経済改革の実施で担った役割のせいで同党が人気を失った後、SYRIZAに群がったことだ。「古い」PASOK出身の著名な議員数人は今、新政権で要職に就いている。

*1=ギリシャ危機が勃発した時に首相を務めていたヨルゴス・パパンドレウ氏の父親

ギリシャが無条件での支援延長を申請、ドイツは難色
ギリシャ向けの金融支援は6月末まで延長されたが、債務問題を含む本格交渉はこれから始まる〔AFPBB News〕

 もう1つの理由は、この戦略が党内の反対意見を抑え込むのに有効であることが分かったことだ。

 今は亡きパパンドレウ氏と同様、チプラス氏は大声でわめく極左派閥と闘わなくてはならない(SYRIZAの場合、この派閥は、ギリシャが国際的な債権者と妥協することに猛反対している)。

 チプラス氏が先日、ドイツに対し、1600億ユーロ超の未払いの戦時賠償の請求を続ける姿勢を改めて表明したことは、そうした例の1つだ(ドイツはかねて、このような請求権を否定している)。

 パパンドレウ氏の戦略は西側の政府内では反発を招いたものの、最終的にはワシントンおよびブリュッセルとの緊張を和らげる成果を生み出した。

 PASOKのプロパガンダ担当者は米国の資産を国有化すると脅かすことに勤しんだが、軍事基地に関する水面下の交渉は基地を存続させる合意をもたらした。また、ギリシャは静かにNATOの軍事演習への参加も再開した。

1980年代当時よりも難しい綱渡り

 チプラス氏がこれと似たようなことを成し遂げたいと思っている兆候がある。同氏が「第三帝国の勢力によってもたらされた犯罪と災害」を非難したのは、ギリシャがちょうど、現在の救済プログラムを完了することに関する「諸機関」――国際的な債権者のトロイカは最近、呼称が変わり、「諸機関」と呼ばれるようになった――との詳細な交渉を始めた時のことだった。

 交渉が成功すれば、救済資金のうち72億ユーロ分の支払いが認められ、ギリシャ政府はドイツが提案している第3弾の救済プログラムに関する協議を始める可能性もある。そうなれば、ユーロ圏加盟国としてのギリシャの存続が確実になるだろう。

 だが、チプラス氏は、かつての前任者が野党だった時に直面したような、自身の権威に対する挑戦に直面している。

 パパンドレウ氏は、党を厳しく掌握し、信頼する仲間たちの「私設顧問団」とともに決断を下した。

 チプラス氏は先月、SYRIZAの議員たちとの11時間に及ぶマラソン会合で、現在の救済の完了に関して政府が180度の方針転換をしたことを擁護しなければならなかった。この会合では、30人前後の議員が反対を表明したと報じられている。

 党内の議員の非公式の投票で、新政府は新欧州派の野党の支援なしに救済延長の決定を押し通すことができないことが分かり、チプラス氏は救済延長を議会で正式に採決にかけて恥をかく危険を冒さないことにした。

 マルクス・レーニン主義者からベネズエラの故ウゴ・チャベスの支持者まで多岐にわたるグループからなるSYRIZA内の「左翼プラットフォーム」を今後数週間で仲間に引き入れるのは、パパンドレウ氏をも挫折させたかもしれない難しい仕事だ。

By Kerin Hope in Athens
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43204


07. 2015年3月16日 10:09:03 : 2QBqDKD7DU
04に同意。
EUからの借金を不払いにして、ロシアや中国から資金を借りてドラクマを発行したとしても、ギリシアの貿易収支が良くなる展望はなかろう。41兆円の踏み倒しメリットだけで、同じことだ。借金の利息はEUどころではなかろう。
 国民が困難なことを回避する道はありえない。その中で、どのように努力していこうかというだけだ。

08. 2015年3月18日 06:40:10 : jXbiWWJBCA

ギリシャ暫定合意は砂上の楼閣 交渉決裂すればチプラスはロシアへ

2015年3月17日(火)  熊谷 徹

 ギリシャ、ロシア、不況、移民、イスラム過激派…。欧州で様々な問題が噴出している。欧州が現在直面している難局は、EU加盟国が欧州の統合に関する様々な幻想を捨てて現実を直視し、成熟期に移行するべき時がやってきたことを浮き彫りにしている。

ギリシャ暫定合意で危機は回避されていない

 日本の多くのメディアは、2月20日にユーロ圏財務相会合(ユーロ・グループ)の参加国が、ギリシャに対する支援プログラムを4カ月延長することを決めた時、「ユーロ・グループ、ギリシャ支援延長で暫定合意」と報じた。そこでは、「切迫した危機は回避された」という論調が目立った。しかしこれは現象面だけを見た皮相的な分析であり、現実には病の根源は全く解決していない。それどころか、ここヨーロッパでは20日の合意後も、「EUとギリシャの正面衝突」という雰囲気が続いている(関連記事「ギリシャとEUが正面衝突?」)。危機回避とは程遠い状況だ。

チプラス政権の二枚舌

 その最大の原因は、ギリシャ政府のチプラス首相とバルファキス財務相の二枚舌である。バルファキスは2月20日にユーロ・グループに対し6ページの文書を提出した。文書の1ページ目でバルファキスは、「ギリシャ政府はヨーロッパのパートナーや諸機関、国際通貨基金(IMF)と緊密に協力し、国家財政の健全化、金融システムの安定化、経済復興の促進のために努力することを約束する」と述べ、署名した。

 文書の中でギリシャ政府は、徴税システムの強化、脱税者の追及、年金制度の近代化、国家財政の監視強化、銀行システムの近代化、汚職に対する取り締まり強化などを約束している。

 しかし文書の内容は総花的で、具体性を欠いていた。ユーロ・グループが求めていたのは、「X年X月までに公的債務を国内総生産のXX%まで減らす」とか、「X年X月までに公務員の数をXX人減らす」「国営企業の民営化によって、歳入をXXユーロ増やす」といった具体的な数値目標だった。文書には、そのような数値目標は書かれていない。

 また文書には、「前政権がEUに対しこれまで約束した緊縮策を実行する」とも書かれていない。「借金や利子をきちんと払う」ことも約束していない。政治家の所信表明演説のように、美辞麗句がちりばめられているだけだ。このためユーロ圏加盟国の財務相たちは、4月末までにチプラス政権がより詳細な施策のリストを提出するという条件で、支援プログラムの延長を認めた。

 ユーロ・グループは3月9日にもブリュッセルで会合を持った。この場でもギリシャ政府は具体的な提案を示さなかった。ユーロ・グループの議長であるオランダの財務相、ダイセルブルームは、「ギリシャが具体的な提案を示さず、緊縮策を実行しようとしないので、貴重な2週間がむだになってしまった」と苦言を呈している。

 ユーロ・グループは、ギリシャ政府に対し、EU、IMF、欧州中央銀行(ECB)の調査団とブリュッセルとアテネで引き続き協議することによって、具体的な数値目標を盛り込んだ改革案を提出するよう求めている。

 しかし、チプラス政権がEUへの約束を100%履行できるわけがない。この政権は、「EUと約束した緊縮策を拒否し、債務を減らすこと」を約束したゆえに、国民に選ばれたのだ。

 バルファキスは、2月20日の合意後、複数のメディアとのインタビューの中で、「ギリシャ政府はユーロ・グループに対し債務の削減を求めていく」と発言し、他国の財務相たちを唖然とさせた。彼は、「ユーロ・グループとの合意文書は、ギリシャ支援に批判的な国々を合意させるために、わざと曖昧にした」とすら語っている。

 またチプラスも「ユーロ・グループとの交渉では、スペインとポルトガルの財務相が、債務削減をめぐってギリシャを降伏させようとした。これらの国々の政府は、ギリシャで起きたような反EUの動きが自国に飛び火することを恐れているのだ」と発言。スペインとポルトガルは、この発言についてEUの政府に相当する欧州委員会に正式に抗議した。

国民投票や戦時補償も持ち出す

 つまりチプラスとバルファキスは、EUからの融資を引き出すために、他国の財務相たちの交渉では「経済改革を実施する」と約束しながら、自国民に対しては「EUから攻撃を受けているにもかかわらず、選挙前の公約つまり緊縮政策の拒否と、債務削減の要求は維持する」というメッセージを送っている。ギリシャ国内では、左派勢力が「チプラスとバルファキスはユーロ・グループに譲歩した」と抗議するデモをすでに起こしている。チプラスとバルファキスは、ユーロ・グループと有権者の間で板ばさみになっているのだ。

 さらにバルファキスは、「ユーロ・グループがわが国への融資を行わないのならば、国民投票や再選挙によって、緊縮策を続けるかどうかについての民意を問う」と発言し、他国の財務相たちの神経を逆撫でした。もしも国民投票や再選挙が実施されれば、有権者の圧倒的多数が、緊縮策の廃止や債務削減を要求することは確実だからだ。

 EU、特にドイツに対するギリシャの舌鋒は鋭くなる一方だ。チプラス政権の国防相で、連立政権のパートナーである右派政党の党首も務めるカメノスは、「もしも他の国々がギリシャを支援しないのならば、我々は、渡航に必要な書類を渡して、ベルリンに難民を送り込む。大量の難民の中に、テロ組織『イスラム国(IS)』の戦闘員が混ざっていたとしても、それはヨーロッパの責任だ」と脅迫めいた発言を行っている。

 またギリシャ政府の司法相は、3月に入って、ナチスドイツがギリシャで行った虐殺や占領時に生じた経済損害について、数10億ユーロの補償金を支払うようドイツ政府に改めて要求。ドイツが応じない場合には、アテネにあるドイツ語学校ゲーテ・インスティトゥートやドイツ人学校の建物など、ドイツが所有する不動産を差し押さえる方針を明らかにした。ギリシャは、ドイツ人にとって最もデリケートな「ナチス時代の過去の清算」の問題まで持ち出して、彼らの神経を逆撫でしているのだ。

「チプラス政権は反則」

 ドイツでは、ギリシャ政府に対する批判が強まっている。3月2日にドイツ連邦財務省の広報官、イェーガーは、「ギリシャ政府の振る舞いは、反則(ファウル)だ」と厳しい口調で非難した。ファウルという言葉は、ふつう外国政府を批判する時には使わない、強い表現であり、ドイツ財務省の怒りがこめられている。

 イェーガーは、「チプラス首相がスペインとポルトガルを名指しで批判したことは、ユーロ・グループのルールに違反する。ここ数週間のギリシャ政府の発言で、信頼が大きく損なわれた。特にバルファキス財務相はあまりにも様々なことについて発言しているので、何が本当のことなのかわからなくなっている」と述べた。

 チプラス政権とメルケル政権の対立は、感情的な泥仕合になりつつある。バルファキスは、「ショイブレは私のことを“愚かで経験が不足している”と侮辱した」として、ベルリン駐在のギリシャ大使を通じて、ドイツ政府に抗議した。ショイブレは「そんなことは言っていない。通訳のミスではないか」とはねつけた。一方ドイツ政府の中では、バルファキスについて「ごろつき(Halbstarke)のように振る舞う男」という言葉がささやかれている。もちろんドイツ政府が公式にバルファキスをそう呼んでいるわけではないが、これは非公式なレベルでも、本来は一国の財務相に対して使われるべき言葉ではない。

 これまでチプラス政権は、EU、IMF、ECBの調査団がギリシャの財政状態についてアテネで調査することを、原則として拒否してきた。このためEUなどは、ギリシャの財政状態がどの程度悪化しているのか、現状を把握できなかった。だが同国の財政状態は急激に悪化しているようだ。

 3月6日にチプラスは、EUの政府に相当する欧州委員会のジャン・クロード・ユンカー委員長に電話し、緊急援助について会談を申し込んだが、ユンカーはスケジュールが合わないとして拒否した。チプラスはこの日、ギリシャ国立銀行の総裁や前財務相のヤニス・ストルナラスらとアテネで会議を行った。会議では、財政状態の悪化を食い止めるための対策が話し合われた模様だ。

 ギリシャ政府が今年3月から12月までに返済しなくてはならない債務と利息の総額は、174億ユーロ(約2兆2000億円)。3月だけでも17億ユーロ(約2000億円)を返さなくてはならないほか、7月には48億ユーロ(約6000億円)もの返済が待っている。しかしギリシャ政府の金庫はすでに事実上からになっており、公務員の給料すら払うのが難しい状況になっている。

 このためEUは、ギリシャ政府が債務不履行に陥るのを防ぐためには、今年だけでも200億ユーロ(約2兆5000億円)の追加融資、今後5年間で400億ユーロ(約5兆円)の追加融資が必要になると見ている。正に、底が抜けたバケツだ。

 特に深刻なのは、この国の銀行業界をめぐる状況だ。ギリシャの銀行は、ここ数カ月間に約200億ユーロ(約2兆5000億円)の預金を失った。市民がギリシャのユーロ圏脱退を恐れて、預金を引き出したからである。私の知っているギリシャ人も、預金をギリシャからドイツに移した。ギリシャが通貨をユーロからドラクマに切り替えた場合、ユーロに対するドラクマの交換レートは暴落すると予想されている。

 ギリシャの銀行の唯一の生命線は、ECBによる緊急流動性支援(ELA)だ。1月だけでその融資額は820億ユーロ(約10兆4000億円)にのぼっている。ギリシャ国立銀行など主要4行が抱える不良債権の総額は、898億ユーロ(約11兆4000億円)に達する。これはギリシャの銀行が国内の債務者に対して貸し出している融資総額の33%に相当する。ECBがこの緊急融資を打ち切った途端に、ギリシャの銀行は支払い不能状態に陥る。

 ELAは本来、緊急事態に実施するもの。ギリシャのように銀行がELAに恒常的に依存している状態は、ELAの本来の目的に反するものだ。ドイツのIFO経済研究所のハンス・ヴェルナー・ジン所長は、「ECBはELAを供与することによって、ユーロ圏の納税者に負担させて、ギリシャの銀行の倒産を先延ばしにしている」と批判する。

 しかもユーロ・グループの財務相たちの間では、ギリシャ政府が2月20日に約束した改革をどのように実行するのかについて、具体的な提案を全く行っていないことについて、不満の声が高まっている。

 ユーロ・グループは、チプラス政権が具体的な改革案を提示しない限り、ギリシャに緊急融資を実施しない方針である。いわんや、ギリシャ政府が債務削減を求めたり、国内の有権者に約束したように、緊縮策を停止したりした場合には、EUがギリシャ政府の口座に1ユーロでも振り込むことはないだろう。

対ロシア政策でも不協和音

 さてEUとチプラス政権との対立は、EUの外交政策にも影を落とし始めた。3月7日にリガで開かれたEU外相会議で、ギリシャの外相、コツィアスが、「EUが対ロシア経済制裁を実施しているために、ギリシャの農民たちはロシアへ農産物を輸出できなくなり、損害を受けている。我々はEUによる対ロシア制裁について拒否権を発動するつもりはないが、少なくともEUに損害を賠償してほしい」と語った。

 EU諸国の間で、対ロシア制裁をめぐって足並みの乱れが生じたのは、今回が初めてである。前回このコラムでお伝えしたように、チプラス政権はロシア・カードをちらつかせ始めている。チプラス政権の要求をEUが完全に拒否した場合、ギリシャがロシアに急接近することは、火を見るよりも明らかだ。ウクライナ危機をめぐってEUとの対決色を深めているロシアの大統領プーチンは、チプラス政権と手を結ぼうとするだろう。

 私はユーロ危機を、ギリシャの債務危機が表面化した2009年12月から観察し、約5年間にわたってこのコラムで詳しく報じてきた。ヨーロッパでの不協和音が今ほど大きくなったことは、一度もなかった。

 ギリシャがドイツを非難し、ドイツがギリシャを罵倒する。ドイツの言論界からは、「こんな状態を生むために、我々ヨーロッパ人は、通貨同盟を作ったのだろうか」という慨嘆が聞こえてくる。

傷つけられた誇り・爆発した感情

 私は仕事でギリシャに何度も訪れており、ギリシャ人はヨーロッパで最も優しい人々だと思っている。彼らの「おもてなし」は、日本以上だと思う。アジア人である私は、ドイツで会社のオフィスを訪れたり、商店に客として入ったりすると、人々から「どこの馬の骨だ」という感じの冷たい表情で見られることがある。だがギリシャでは、笑顔で迎えられることが多かった。

 ギリシャ人のホスピタリティー(客を温かくもてなす態度)には、定評がある。あるドイツ人が、ギリシャの田舎を旅行中に病気にかかって入院したところ、その病院は治療費を取らなかった。あるギリシャ人のビジネスマンは、外国からの客と車でレストランに行こうとしている時に、交通違反のために警察官に制止された。そのギリシャ人は警官に「いま外国からの大事なお客様を連れてレストランに行くところなのだから、勘弁してくださいよ」と説明した。警察官は、交通違反のチケットも切らずに、見逃した。法律が重視されるドイツではあり得ないことである。

 つまりギリシャ人にとっては、外国からの客に対し親切にすることが、当たり前になっているのだ。多くのヨーロッパ人が、似たような経験を持っている。国としての経済的パフォーマンスには大いに問題があるが、一人ひとりは大変優しい人々である。私は個人的に、大好きな国民だ。

 だが彼らは国家に強い誇りを抱いており、ヨーロッパ北部の人々に比べると感情的だ。このため、誇りを傷つけられたと思うと爆発することがある。今ギリシャがほとんど理不尽な振る舞いをし、EUに反抗しているのは、2010年以来、EU特にドイツに首根っこを押さえられ、鬱屈してきた感情がついに爆発したためである。したがって、現在ギリシャとEUが陥っている袋小路からの出口を見つけるのは、容易なことではない。

「財政規律は自然に収斂する」という幻想の崩壊

 ヨーロッパの言論人の間では現在、2015年が欧州統合にとって端境期となるという意見が高まっている。1989年のベルリンの壁崩壊以降、欧州統合は猛スピードで進んできた。EU官僚、そして各国の政治家や財界関係者、知識層など欧州のエリートたちは、「欧州の統合はスムーズに進み、統合市場の経済力は高まっていく」と考えていた。各国の財政規律に対する考え方には大きな違いがあったが、ユーロという共通通貨を導入すれば、そうした違いは解消されて、財政状態が自然に収斂すると信じたのだ。

 一方、ドイツ連邦銀行や一部の経済学者たちは、すでに1990年代の初めに「政治同盟を持たない通貨同盟は失敗する」と警鐘を鳴らしていた。彼らは、「財政規律に関する姿勢が水と油のように異なるドイツとギリシャが同じ通貨を使って、問題が起こらないわけがない」と主張していたのだ。だがその言葉に90年代に耳を貸す者は、ごく少数だった。大半の政治家、経済関係者たちは、共通通貨導入を称え、「ヨーロッパの時代がやって来た」と信じた。

 今日のギリシャ危機の萌芽は、14年前に生まれていた。ギリシャがユーロ圏に加盟したのは2001年。その3年後の2004年11月に、ギリシャが公的債務に関するデータを粉飾してEUに報告し、通貨同盟に加盟するための条件を満たしていなかったことが発覚した。本来、ギリシャはユーロ圏に入る資格がなかったのだ。いわば、「不正入学」である。データを改竄してユーロ圏に入る方法については、米国の大手投資銀行がギリシャ政府に助言したと言われている。

 だが当時、ユーロ・グループはギリシャの加盟を無効にしたり、制裁措置を取ったりすることはなかった。興味深いことに、ドルなどに対するユーロの交換レートやギリシャ国債の利回りが大きく変動することもなかった。金融市場は、「EUの政治力学を考えれば、ギリシャが嘘の数字を使ってユーロ圏に入ったことは、大きな問題にはならない」と判断したのである。実際、この問題は欧州政界や経済界で忘れ去られた。

 だがギリシャは、ユーロ導入によって国債を発行するコスト(利回り)が、通貨がドラクマだった頃に比べて大幅に下がったことを利用して、大量の国債を発行。借金によって社会保障の拡充やインフラ整備を行った。ギリシャ政府の詐欺的行為について「臭い物にフタ」という解決手段が2004年に取られた後も、ユーロ圏の地下では、債務危機を引き起こすマグマが膨れ上がっていたのである。

 2009年の末にそのマグマが地表に現れた時に、「各国の財政規律は、ユーロを導入すれば自然に収斂する」という、EUの政治家、官僚たちの幻想は打ち砕かれた。その危機は、「噴火」から5年経った今も収束するどころか、極左・極右が手を組んだポピュリスト政権がギリシャに誕生することにより、一段と悪化した。チプラス政権とユーロ・グループは、相手の発言をお互いに信用できなくなっている。ユーロ圏加盟国の間で信頼関係が崩壊していることは、極めて深刻な事態である。

「ユーロはハード・カレンシー」という幻想の崩壊

 さて3月9日、ECBは欧州史上最大の金融緩和作戦に踏み切った。ドラギ総裁は、総額1兆1400億ユーロ(約145兆円)を投じて国債を購入する量的緩和を開始したのである。ECBとユーロ圏加盟国の中央銀行が毎月買い取る国債の額は、600億ユーロ(約7兆6000億円)に達する。

 ECBは量的緩和の目的について、物価上昇率を目標値である2%前後まで引き上げて、ユーロ圏のデフレ傾向に歯止めをかけることだと説明している。だがECBが絶対に公言しない本音の部分には、市場を流動性(カネ)でじゃぶじゃぶに満たすことによって、他の通貨に対するユーロの交換レートを引き下げ、輸出産業を後押しすることによって景気の回復を狙うという意図もある。

 実際、ドルに対するユーロの交換レートは、今年3月11日に1ユーロ=1.0578ドルまで下がり、過去11年間で最低の水準となった。米国が量的緩和を終えて、利上げに踏み切る可能性が強まっていることから、ヨーロッパの外国為替市場関係者は、1ユーロ=1ドルまで下がる可能性もあると指摘している。ドイツのある大手銀行は、米欧間の金利差のために、現在大量の資本がヨーロッパから米国に流れていることから、1ユーロ=0.85ドルまで下がるかもしれないと予想している。

 ユーロに対して、ドルの交換レートは31.6%、韓国ウオンの交換レートは24.9%、英国ポンドの交換レートは18.9%も上昇した(2014年3月との比較)。これらの国に対して、ユーロ圏の輸出企業の価格競争力は、大幅に高まったことになる。

 物づくり大国・貿易立国であるドイツは、ユーロ安によって短期的には潤う。現在この国の株式市場が、連日のように最高値を更新しているのは、そのためである。だが経済学者らの間には、ユーロ安への誘導は、長期的に見れば各国の間で「通貨戦争」を引き起こす危険があるので、楽観できないという慎重論もある。たとえばドイツ卸売・貿易・サービス企業連合会(BGA)のアントン・ベルナー会長は、「ECBが始めた措置は、通貨戦争につながる危険がある。この措置は、安定通貨への信頼を切り崩すものだ」と警告している。

 保守系日刊紙フランクフルター・アルゲマイネ紙(FAZ)のヨハネス・ペンネカンプ記者は「量的緩和は、ユーロ圏加盟国に対するドーピングであり、不健全だ。このドーピングのために、ユーロ圏加盟国は自力で労働生産性を高め、競争力を回復するための努力を怠るようになるだろう」と述べ、ECBの措置を厳しく批判している。つまりユーロ安は、スポーツ選手がトレーニングと節制によって身体を鍛えることで競争に勝つ力を付けるのではなく、薬物によって一時的に瞬発力を強めるのと同様であるという主張だ。

 私は1990年から欧州通貨同盟の創設に至る議論をウォッチしてきた。当時のコール政権は、マルク放棄に消極的だったドイツの経済界と市民に対し、「欧州共通通貨はマルクと同じように安定性の高いハード・カレンシーになります。ECBがドイツ連邦銀行と同じように、政府から独立した通貨政策を実施するので、欧州共通通貨がソフト・カレンシーとなることはあり得ません」と訴えてきた。

 つまりECBは、量的緩和を実施したことで、当時のドイツ政府の公約を破ったことになる。マルクをしぶしぶ放棄したドイツ人たちは、いまユーロが乱高下するソフト・カレンシーになりつつあることについて、強い危惧を抱いているはずだ。

「ロシアは敵国にならない」という幻想の崩壊

 ヨーロッパ人たちが抱いていたもう1つの幻想は、「ベルリンの壁崩壊後、ヨーロッパは1つの大きな家のような、誰もが安心して住める場所になり、ロシアが敵国になることはあり得ない」という考えである。去年3月にロシアがクリミアを併合、その後、ウクライナ東部の内戦に介入したことによって、この幻想は打ち砕かれた。

 EUの官僚たちはソ連崩壊以降、あたかも事務作業を行うかのように、中東欧諸国をEUに加盟させ、ロシアの影響範囲を狭めてきた。その際に、ロシアには帝国主義的な発想を抱く勢力が残っていることに十分な配慮をしなかった。ヨーロッパのエリートたちが、過去25年間に地政学的な発想を疎かにしてきたことには、驚くばかりである。EUの東方拡大の試みが、かつてソ連に属していたウクライナに至った時、ロシアは冬眠から覚めた。

 ヨーロッパは、事実上ロシアとの新しい東西冷戦時代に突入した。プーチンがどこまで勢力範囲を拡大すれば矛を収めるのか、欧米諸国は読みきれていない。かつてソ連の勢力範囲に編入されていたバルト3国やポーランドでは、ロシアの将来の動きについて、不安が強まっている。北大西洋条約機構(NATO)は、不測の事態に対応できる緊急展開部隊を編成。さらにEUも、欧州への軍事介入を米国が拒否した場合にも、独自に危機管理作戦を展開できるように、「EU軍」の創設を検討し始めた。これまで防衛費の削減を続けてきたドイツ連邦政府も、2017年以降は防衛費を増やす方針だ。同国は旧式になったレオパルド戦車を廃棄する方針を撤回し、温存することを決めた。これも、東欧諸国での不測の事態に備えるためである。

 東西間で高まる緊張を象徴するのが、ロシアが今年3月11日に「欧州通常戦力条約(CFE)」の解消を正式に宣言したことだ。CFEは、NATOと旧ワルシャワ条約機構それぞれの加盟国が、欧州の通常兵器(戦車や装甲車、野砲など)の均衡を維持するため1990年に調印したもので、東西間の雪どけを象徴する軍縮条約だった。


日本では大きく報じられなかったが、戦車など通常戦力に関する軍縮条約をロシアが正式破棄したことは、欧州の安全保障担当者に衝撃を与えた。写真は、冷戦の時代にソ連が製造したT72型戦車(筆者撮影)
 ロシアは2007年に「西側諸国がCFE条約を守っていない」として一方的に条約を履行しない方針を発表したが、今年3月まで脱退はしていなかった。だがプーチンが今年、この条約を正式に破棄したことで、国際的な合意に縛られることなく、ヨーロッパで通常戦力を増強することができる。日本のメディアはロシアがCFE条約を正式に破棄したことを大きく報じていないが、ヨーロッパの安全保障体制にとっては、重要な出来事だ。このことは、ヨーロッパが1980年代に逆戻りしたことを意味している。

青年期から成熟期へ

 EU諸国は、ある意味でベルリンの壁崩壊以降、幸福な「青年期」を謳歌してきた。ユーロ導入や東方拡大、EUの政府に相当する欧州委員会の権限拡大は、東西分断から脱却したヨーロッパが、求心力を強めたことの象徴である。当時、EUの前途には、明るい未来だけが待っているかに見えた。

 人間は青年期には、非現実的な幻想を抱くものだ。青年は、中高年層に比べると病気や死への不安を抱かないので、定期的な健康チェックなどを疎かにしがちである。EUが過去25年間に、地政学的な事情や各国の財政規律に関する違いなどについて、深い配慮をしてこなかったのはそのためだ。欧州では今、ギリシャの反乱、ユーロのソフト化、ロシアの敵国化を通じて、EUのエリートたちが過去25年間に抱いてきた様々な幻想が打ち砕かれつつある。

 EUはこれらの幻想に早急に別れを告げ、青年期から成熟期への移行を果たさなくてはならない。ヨーロッパが今直面している急激な変化は、この地域が成熟期を迎えるための、産みの苦しみである。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20150316/278748/?ST=print


09. 2015年3月18日 06:55:23 : jXbiWWJBCA
最悪のシナリオは「グリグジデント」
ギリシャ問題は明確な早期決着よりも曖昧に引き延ばす方が安全
2015年03月17日(Tue) Financial Times
(2015年3月16日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

ギリシャのユーロ離脱はハルマゲドンか、損失額80兆円の試算も
ギリシャがユーロ圏から離脱し、ドラクマを復活させる日は来るのか〔AFPBB News〕

 経済に対するドイツ人の無理解と外交に対するギリシャ人の無理解が出合っても良い結果は生まれない。

 ギリシャのある閣僚は先週、イスラム教徒の難民をドイツに大量流入させてやると脅しをかけた。

 片やドイツでは、ギリシャがアクシデントで、すなわちきちんとした計画に沿うのではなく偶発的にユーロ圏から離脱する「Grexident(グリグジデント)」についての議論が再び行われている。

 また、ギリシャのアレクシス・チプラス首相は、ドイツは第2次世界大戦の賠償金を支払うべきだという主張を融資合意の延長に関する今日の議論と結びつけた。

 賠償金の請求それ自体はいい加減なものではない。ギリシャ政府の言い分にも一理あると考える法律家はドイツにも存在する。しかし、この2つを結びつけるのは政治的にはむちゃくちゃな話だ。ここまで来ると、よくある雑音が飛び交っているだけだと片付けることはできない。どちらも相手を信頼できなくなっているのだ。

この2週間で劇的に高まったグリグジットの可能性

 こうした動きから筆者は、ギリシャのユーロ離脱の可能性は過去2週間で劇的に高まったと考えている。今後数日で双方が表現を和らげていく可能性はあるものの、先月の金融支援延長合意の条件について債権国側が寛大になるとは筆者には思えない。また、ギリシャ政府がこの条件を満たすとも思えない。

 ギリシャが支払い不能の状態に陥るまであと何日、あるいは何週間なのかは誰にも分からないため、ユーロ圏から突然離脱するリスクがあることは明白だ。グリグジットに至らない可能性もあるものの、今はこれに備えるべきである。

 合理的にものを考える人なら、グリグジットを望んだりはしない。もしグリグジットになったら、欧州連合(EU)の戦略地政学的な影響力は低下する。経済の面でも、通貨同盟は実は固定為替相場制度の強化版にすぎないという真実が暴かれてしまう。

 数多くの金融取引がすぐにデフォルト(債務不履行)になる。世界金融システムがこれにどう対処するかは定かでない。ユーロ圏で始まったばかりの景気回復もリスクにさらされるだろう。

 ギリシャにしてみれば、ユーロ圏からの離脱は、上手に制御していけば長期的にはうまくいくかもしれない。だが短期的には、経済が悲惨な状況に陥るだろう。ギリシャの経常収支は依然赤字であり、国内消費は外国からの資金に支えられているのが実情だ。もしギリシャが債権国側にデフォルトを通知すれば、この資金は日ごとに減っていく恐れがある。

 グリグジットに備えるとは、プランBを用意することではない。ギリシャが実際に離脱した時に必要になる一連の行動についてあらかじめ合意しておき、実行に移せるようにすることだ。通貨体制を短期間で変えるとなれば、組織や作業計画の面で、通常の国家では遭遇することのない困難が生じるからだ。

 筆者としては、新しい通貨体制への転換――ユーロを新ドラクマに切り替えるような転換――を突然行うことは避けるよう推奨したい。そういう作業が実行可能かどうか疑わしく、経済的に望ましいかどうかも疑わしいと思うからだ。

 筆者は暫定的な体制を設ける方が、それもギリシャがユーロ圏にとどまっているのか離脱してしまったのか誰にもはっきり分からない目くらましのような体制にする方がよいと考えている。

並行通貨の導入が望ましい理由

 筆者のお気に入りの選択肢は、交換手段にはなるものの価値の貯蔵手段や価値尺度になるとは限らない並行通貨の導入だ。これはユーロで表示される疑似通貨で、法定貨幣ではない。その成否は、人々がこれを受け入れるか否かによって決まるだろう。導入当初は、ギリシャが中央銀行からの資金供給を絶たれた場合に一時的な流動性を提供するという機能しか持たないだろう。

徴税強化に「素人探偵」大量採用?ギリシャ政府文書
ギリシャのヤニス・バロファキス財務相〔AFPBB News〕

 並行通貨については、将来の税収を裏付けにするものなど様々なパターンが提案されている。例えばギリシャのヤニス・バロファキス財務相は昨年、つまり大臣になる前に著した一文でさらに奇抜な選択肢を論じていた。

 バロファキス氏の議論は、ユーロ圏周縁国の政府はビットコインに似た特徴を持つ暗号通貨のシステムを運営すればよいのではないか、というものだった。

 インターネット通貨の潜在力については、期待する声がかなりある。長期的には、ビットコインの土台になっている技術が我々の経済に大きな影響を及ぼす可能性もあるかもしれない。

 しかし、現在のバージョンではビットコインもそのほかのデジタル通貨も、米ドルやユーロに取って代わる通貨にはなり得ない。その仕組みからしてデフレ的だからだ*1。このバグが特徴として認められるのは、その国の通貨に比べて発行量が膨張しないものが求められる時に限られる。

 暗号通貨は、公開されているアルゴリズムに基づいて作られるため、政府や中央銀行が暗号通貨を発行したり制御したりすることはできないのだ。

 並行通貨という選択肢で必ず問題になるのは、銀行の破綻を防ぐのは難しいという点だ。従って移行期においても、ギリシャは国外からの資金調達を必要とする可能性がある。政府が資本規制の発動や国境、港、空港などの一時閉鎖といった措置を講じざるを得ないこともあるかもしれない。

 そのため、並行通貨は容易に選べる策ではない。それでも、ほかの選択肢に比べれば低リスクだ。ギリシャがユーロ圏に復帰する道も開いてくれるかもしれない。最悪でも、より秩序のあるユーロ圏離脱に向けた経過的な体制にはなるだろう。

グリグジデントを回避する最善策は・・・

 並行通貨は少なくとも、人々を最大の危険から守ってくれるだろう。ここで言う最大の危険とはグリグジットではなく、前述のグリグジデントだ。このギリシャ金融システムの発作がもし起これば、人道的危機の発生や世界金融市場への感染が生じ、EUの評判も低下するだろう。

 従って、結論は必然的に次のようになる――グリグジデントを回避する最善の策とは、グリグジットに備えることなのだ。

*1=発行量の上限が最初から固定されているため

By Wolfgang Munchau

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43224


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