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キリン、凋落を招いた稚拙な海外戦略 遠ざかる“M&A巧者”サントリーの背中(Business Journal)
http://www.asyura2.com/15/hasan94/msg/708.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 3 月 28 日 09:06:05: igsppGRN/E9PQ
 

キリン、凋落を招いた稚拙な海外戦略 遠ざかる“M&A巧者”サントリーの背中
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150328-00010001-bjournal-bus_all
Business Journal 3月28日(土)6時0分配信


 サントリーホールディングス(HD)がついにキリンHDを抜き、国内加工食品メーカーのトップに上り詰めた。

 サントリーHDが2月16日に発表した2014年12月期連結決算は、売上高が前期比20.3%増の2兆4552億円、営業利益が同30.2%増の1648億円だった。海外事業の好調が好業績に貢献した。キリンHDが同12日に発表した同期連結決算と比較し、売上高が2594億円、営業利益が503億円とそれぞれ上回るなど、すべての主要業績指標でサントリーHDはキリンHDを凌駕し、名実共にトップの座に躍り出た。

 サントリーHDは15年12月期も売上高を7.9%増の2兆6500億円、営業利益を17.1%増の1930億円と見込んでおり、キリンHDとの差はさらに開く見通しだ。

●稚拙な海外M&A

 キリンHDが「不動」といわれた業界トップの座から転落した要因の一つとして指摘されているのは、海外事業の拙さだ。その典型がブラジル2位のビールメーカー、スキンカリオール買収である。

 キリンHDは11年8月にスキンカリオールを約2000億円で買収すると発表し、当時のニュースリリースで次のように説明していた。

「ブラジルのビール・清涼飲料市場は、それぞれ3兆円近くある大規模市場で、人口増加及び個人所得の増加に伴う経済発展を背景に、安定的な成長が見込める有望市場。今回の買収により南米最大の経済国であるブラジルに事業基盤を獲得し、スキンカリオールのブランド力にキリンの技術力や商品開発力、マーケティング力などを付加し、スキンカリオールの成長加速を目指す」

 ところが、買収発表直後に現地では買収をめぐり裁判が起こり、結局スキンカリオールの買収額は当初の約2000億円から約3000億円へと1.5倍にも跳ね上がった。

 買収の誤算は、それだけではなかった。スキンカリオールはブラジル2位のビールメーカーだが、市場シェアはわずか15%。ブラジルでは「バドワイザー」で有名なアンハイザー・ブッシュ・インベブが65%のシェアを占め、1位との競争力の差は歴然だ。

「スキンカリオールは『1強多弱』の多弱の1社。多弱同士の消耗戦で業績は長期低迷。キリンのいうブランド力など、なきに等しい。現地では、身売り先探しをしているビール会社として有名だった。実際、ハイネケン、SABミラーなど世界大手ビールメーカーに身売り話が持ち込まれたものの『旨味がない』と断られ、国内ではアサヒHDにも話が持ち込まれたが、業績低迷を理由に断られたいわくつきの案件だった」(ビール業界関係者)

 さらに「買収はM&A仲介企業へ丸投げの状態だった」(同)との指摘もある。

●サントリーの用意周到さ

 そんなキリンHDに比べ、昨年話題となったサントリーHDの米蒸留酒最大手ビーム買収は「M&A巧者」と評されるほど用意周到で戦略的だった。

 13年11月上旬、東京・台場のサントリーワールドヘッドクォーターズへ、ビームのマット・シャトックCEO(最高経営責任者)が足早に入っていった。訪問の目的は、自社製品の売れ行き状況を視察するための挨拶だった。サントリーはビーム製蒸留酒10ブランド26品目の国内独占販売権を取得し、13年1月から販売を開始していた。シャトック氏を社長室に迎え歓談を終えた直後、サントリーの佐治信忠社長(当時、現会長)はビーム買収を決断したといわれている。

 ビームは1967年に米国酒類・家庭用品メーカー、フォーチュン・ブランズ(69年にアメリカン・ブランズに社名変更)に買収され、その子会社になっていた。しかし、主要株主たちが「相乗効果がない」とビームの分離を要求し、アメリカン・ブランズは11年にビームを分離、上場していた。サントリー関係者は「上場直後から佐治氏はビーム買収を検討していた」と打ち明ける。米国の代表的なバーボンウィスキー「ジムビーム」をはじめ、カナディアンウィスキーの代名詞にまでなっている「カナディアンクラブ」など多くの有名ブランドを擁し、世界約120カ国に販路を持つ世界4位の蒸留酒メーカーを買収すれば、サントリーは世界10位から3位の蒸留酒メーカーに躍進できるからだ。

 サントリー社内で秘かにビーム買収プロジェクトチームが組織され、活動を始めたのは13年春頃からとみられる。

「サントリーがテネシーウィスキー『ジャックダニエル』の販売権を捨て、ビーム蒸留酒の国内独占販売権を取得したのは買収への布石。業務提携を通じて相互交流を重ね、その中でサントリーとビームとの相性や相乗効果を確かめるのが目的だった」(食品業界関係者)

 こうした長期的な視野に立つ取り組みが実り、「シャトック氏が帰国すると佐治氏は直ちにシャトック氏やビーム主要株主に買収の意向を伝える私信を送り、彼らの賛同を得た。それからわずか2カ月で買収交渉が決着した」(サントリー関係者)。

●大胆な組織改編

 サントリーがビームに狙いを定めたのは、蒸留酒事業の規模拡大だけが目的ではなかった。20%台を保持し続けている営業利益率の高さが、サントリーにとっては何よりも魅力だった。サントリーの営業利益率は6.7%(14年12月期)であり、グローバルプレーヤーの条件といわれる10%台に遠く及ばない。営業利益率の高いビームを買収すれば、その差を一気に縮められる。キリンが狙ったような営業利益率の低いビールの海外事業をいくら拡大しても、世界には勝てない。それを考えると、株式市場の一部から「高値づかみ」と批判された約1兆6500億円の買い物は決して高いものではなかった。ちなみに買収額は、過去3カ月のビーム社平均株価に24%上乗せした金額である。

 また、海外蒸留酒市場はスコッチウィスキーの有名ブランド「ジョニー・ウォーカー」を擁する英ディアジオ、同じく「シーバスリーガル」を擁する仏ペルノ・リカールなど上位メーカーの寡占化が進み、サントリーが海外の蒸留酒市場で戦う上でも大手蒸留酒メーカーの買収は不可欠だった。

 ビームを買収したサントリーは、業界関係者があっと驚く挙に出た。それが昨年10月1日付で実施した組織改革だった。サントリー酒類を蒸留酒事業とビール事業に分割。サントリー酒類を国内蒸留酒事業の専業会社とし、ビール事業は新設のサントリービールに移管した。さらにサントリー酒類を子会社化したビームサントリーの傘下に置き、蒸留酒事業は国内外ともビームサントリー主導で進める体制に改めたのだ。

 祖業の蒸留酒事業を買収企業の傘下に置くという、業界内で誰も予想しなかった組織改革の背景には、「ビームサントリーを軸に蒸留酒事業の海外展開を加速し、サントリーの新しい歴史の幕開けをしなければならない」(佐治氏の社員宛メッセージ)という覚悟があった。

●新浪社長の真価が試される「売り上げ4兆円への道」

 国内市場にとどまっていては先細り。佐治会長は社長時代から自社の生き残りをかけ、海外事業拡大とサントリーの国際ブランド化を図ってきた。その佐治氏が初めて手掛けた海外M&Aは、社員時代の80年に行ったペプシコーラ系ボトラー、ペプコム買収だった。この買収を足掛かりに、サントリーは米国清涼飲料市場へ進出した。これはペプシコから国内販売権を取得し、98年からサントリーがペプシコーラを国内販売する布石にもなった。

 ペプコム買収を皮切りに、サントリーは海外事業拡大を本格化している。それを主導したのが佐治氏だった。古くは83年の仏ボルドーの名門シャトー、シャトールグランジュ買収をはじめ、近年ではニュージーランドの清涼飲料メーカー、フルコア買収や仏の清涼飲料メーカー、オランジーナ・シュウェップス買収を主導してきた。そして、昨年のビーム買収が佐治氏による海外事業拡大の陣頭指揮の最後になった。今後は、佐治氏自らが三顧の礼で迎えた新浪剛史社長が担うことになる。

 その新浪氏が背負った目標は「20年に売上高4兆円」。飲料の「グローバルプレーヤーになるための必須ライン」(サントリー関係者)と、佐治氏が設定した目標といわれる。うち1兆円を蒸留酒事業で稼ぐ計画だ。15年12月期の蒸留酒事業売上高目標は、前期比約26%増の6733億円。ビームサントリーの業績が通年寄与するため今期の伸び率は高いが、16年12月期以降も10%台の前期比増を保持しなければ、20年の1兆円は達成できない。

 新浪氏には、ローソン再建を託された時以上の重圧がのしかかっている。

(文=福井晋/フリーライター)


 

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