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ブラジルの通貨安でコーヒー豆と砂糖が下落
2015.4.1（水） Financial Times
（2015年3月31日付 英フィナンシャル・タイムズ紙）

コーヒー値上がり？ 最大産地ブラジルで収量減少の見通し
レアル安を受け、ブラジルのコーヒー農家が輸出を増やしている〔AFPBB News〕
　中南米の政界賄賂スキャンダルと、安くなったコーヒー1杯の値段を結びつけるものは何か？　その答えは、年初から対ドルでほぼ20％下落し、11年ぶりの安値をつけたブラジルの通貨レアルだ。

　ブラジル経済に対する懸念からすでに下落傾向が続いていたレアルは、国営石油企業ペトロブラスを取り巻くスキャンダル発覚の煽りを食った。

　ペトロブラスの元取締役数人が、政治家と結託して契約業者から賄賂を引き出したと告発されている。

　大半の原材料はドル建てで価格が設定されているため、通貨の変動は常にコモディティー（商品）市場に影響を及ぼしてきた。

　ブラジルの農家はレアルの弱さを感じ取っており、地元通貨に換算したドル建てコモディティーの収益が増加するにつれて、輸出を増やしてきた。

ブラジル農家を後押しするレアル安

　ニューヨークのコモディティーブローカー、ニューエッジのマイケル・マクドゥーガル氏は「ブラジルの通貨安はブラジル輸出業者に大きな後押しを与えている」と言う。

　通貨安は、賃金などの国内コスト基盤がドル建てで低下し、利益率を押し上げることも意味した。コーヒーから砂糖、大豆に至るまで、レアル安は国際市場におけるブラジル産コモディティーの競争力を高めることにもなった。

　レアルは今年第1四半期に、一時1ドル＝3.31レアルまで下げ、最もパフォーマンスの悪い通貨の1つとなっている。ブラジルはコーヒーと砂糖の世界最大の生産国だが、為替要因はブラジルが輸出する他のコモディティー――大豆と鉄鉱石――にも波及する可能性があるとアナリストらは話している。

　コメルツ銀行はブラジル通貨の弱さが続くと見ており、「弱いマクロ経済的ファンダメンタルズ（基礎的条件）、複雑な政治情勢、社会不安に起因するレアルの弱さは長引くだろう」と予想する。

　コーヒー市場では、アラビカ種のコーヒー豆の価格下落にもかかわらず、ブラジルの輸出業者が国際市場で売り続けている。コーヒー相場は年初から16％下落し、1ポンド＝1.40ドルをつけた。だが、ブラジルレアル建てに換算すると、市場は3.4％上昇している。

　国際コーヒー機関（IOC）によると、昨年の世界のコーヒー輸出量は過去最大の1億1170万袋だった。輸出量を15％増の3630万袋に伸ばしたブラジルの出荷に牽引されたという。

　レアル安に関連した売りをさらに悪化させたのが相場の弱さで、アラビカ種のコーヒー市場では下方スパイラルが生じた。

　砂糖も似たような話だ。ドル建てでは市場が年初からほぼ17％下落し、1ポンド＝12.10セントという6年ぶりの安値をつけた。レアルに換算すると、市場は年初からこれまでに2％上昇している。

　1年前と比べると、違いが一段と際立つ。砂糖相場はドル建てで32％下落したが、ブラジルレアル建てでは3％しか下げていない。

　通貨の下落は、債務水準が高く、キャッシュフローを求める生産者の間でブラジルによる売りを促した。通貨安のおかげで、ブラジルの砂糖はタイやインドといった他の生産国より競争力のある価格設定が可能になった。タイなどの通貨は2015年の年初から対ドルで若干上昇している。

大豆の作付けが増える可能性

　大豆市場は、現在収穫が行われているブラジル――および隣国アルゼンチン――からの新たな大豆収穫に身構えている。ブラジルと米国は世界最大の輸出国の座を巡って争ってきたが、ドル高・レアル安は、米国の農家が競争するために値下げを強いられるかもしれないことを意味している。

　レアル安はブラジル農家がトウモロコシよりも大豆の作付けを多くすることを意味する可能性があると、ラボバンクのシュテファン・フォーゲル氏（ロンドン在勤）は言う。通貨の下落は種子や肥料といった農業投入物の価格を引き上げるが、大豆が必要とする肥料はトウモロコシよりも少ないからだ。

　「レアル安が続けば、今年は大豆の作付け拡大が見られるかもしれない」と同氏は言う。

鉄鉱石価格にも影響か

　レアルの下落は、BHPビリトン、リオ・ティントと並ぶ世界最大級の鉄鉱石生産業者であるブラジルの鉱業大手ヴァーレでのコスト低下に一役買い、鉄鉱石価格に影響を及ぼす可能性がある。

　マッコーリーによると、ヴァーレの鉄鉱石事業の営業コストの70％――そしてヴァーレ全社の営業コストの50％――がレアル建てだという。

　ヴァーレは過去数年間、極端にレバレッジを効かせたバランスシートのために生産量の伸びを高めるのに苦労してきたが、一部のアナリストは、鉄鉱石市場の弱さにもかかわらず、通貨下落がヴァーレに追い風を提供すると見ている。

　供給過多に対する懸念は鉄鋼生産の主原料である鉄鉱石の価格を金融危機後の最安値まで押し下げた。

　だが、ヴァーレでの生産拡大と輸送費低下から得られる追加の後押しは、すでに供給過多の市場に鉄鉱石がさらに流れ込んでくることを意味するかもしれない。

By Emiko Terazono


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