フォード・ソラーズのフセボロシュスク工場（ロシア） Andrey Rudakov/Bloomberg News
　【モスクワ】15日発表されたロシアの経済指標は予想外に明るい内容だった。3月の鉱工業生産は前月比で増加し、週間インフレ率は約6カ月ぶりの最低を記録した。

　ロシア政府高官らは最近、欧米諸国の制裁と原油安で大打撃を受けたロシア経済の最悪期が近く終わると自信を示していたが、その自信はこれらの指標でさらに強まりそうだ。

　だがエコノミストらは、制裁によって資本調達が困難となり、インフレで所得が目減りする中、投資や個人消費はまだ縮小しており、重大なリスクは残っていると警告している。

　それでも、ルーブルと原油価格の急落を受けて昨年末に聞かれた経済危機への恐怖は、原油価格の回復に伴い安定化の兆しへと移行している。

　ロシア連邦統計局が15日発表した3月の鉱工業生産（季節調整済み）は前月比0.4％増加した。1月と2月は減少していた。1-3月期の生産は前年同期比0.4％の減少となった。原油など採掘業の伸びに加え、制裁やルーブル安の影響で輸入が減少した食料品などの生産急増が増加に寄与した。だが、1-3月期は自動車生産が19.7％減少するなど、消費財部門の弱さも目立った。

　制裁とルーブル安の影響で今年早々に約10年ぶりの高水準へ達したインフレは、ここ数週で減速している。統計局の15日の発表によると、13日までの週の消費者物価上昇率は0.1％となった。伸びは年初の10分の1に当たり、昨年9月以降で最小だった。

　ロシア銀行（中央銀行）は昨年12月、ルーブルの急落に歯止めをかけるため大幅利上げに踏み切ったが、インフレの低下を受け、利下げを続けることが可能になりそうだ。

　ズベルバンクCIBのチーフエコノミスト、アントン・ストルチェネフスキー氏は「景気は底を打ち、今は回復し始めている。2008〜09年の金融危機の経験からすると、回復は通貨と金融市場の安定に支えられる。当然だが、回復が急速かつ簡単に進むことはない」と指摘する。

　ロシア政府高官らは楽観を強めている。メドベージェフ首相は14日、経済成長について「落ち込んでいるが、その度合いは控えめな楽観論者の予想さえ下回ることが分かっている」と述べた。高官らによると、昨年急増した資本流出はこの数週間で急減速しているという。