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マクドナルドの「原価」を調べてみた。  中嶋よしふみ(BLOGOS)
http://www.asyura2.com/15/hasan95/msg/541.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 4 月 21 日 09:15:15: igsppGRN/E9PQ
 

マクドナルドの「原価」を調べてみた。
http://blogos.com/article/110552/
2015年04月21日 05:00 中嶋よしふみ


マクドナルドの話題が途切れずに続いている。昨年の鶏肉問題や異物混入事件が原因で2014年度決算は上場来初の赤字と報じられた。前社長・現社長の巨額報酬が現場の士気を下げているというニュースもあった。そして先日は早くも今年度の赤字拡大、早期退職者の募集、そして店舗閉鎖が大きく報道されている。
日本マクドナルドホールディングス(HD)は16日、今年2月の決算発表時点で未定とした2015年12月期連結決算見通しで、本業のもうけを示す営業損益が250億円の赤字になると発表した。前期よりも182億円悪化し01年の上場以来最大の赤字となる。赤字は2年連続。同時に本社(東京都新宿区)社員を対象にした約100人の早期退職募集や、不採算店舗131店を年内に閉鎖するなどの再建策も発表。
マック、上場来最大の営業赤字 今期見通し 早期退職100人募集 SankeiBiz 2014/04/17
最近ではマクドナルドに関する分析記事を多数見かけるようになった。赤字に転落したことは事実であり、問題が多数発覚したことも事実だが、それらの記事や報道を読んでもすっきりとしない。赤字や売上以外の数字にほとんど言及していないからだ。

そこでマクドナルドの「原価」に注目したい。ビジネスの構造は原価を抜きに語ることはできない。つまりマクドナルドはどれだけ儲かっているのか?という事だ。

■マックの「粗利」は10%以下。
日本マクドナルドホールディングスの有価証券報告書によれば、マクドナルドの原価率はおよそ90%前後となっている。

過去3年の原価の割合を見てみよう。数字はそれぞれ 材料費(食材など)、労務費(人件費)、その他(賃料など)、そして合計額である総原価の4つだ(いずれも直営店のデータ)。

2013年 34.5% 30.2% 24.6% 89.3%
2014年 35.3% 31.3% 26.7% 93.2%
2015年 35.9% 32.4% 27.8% 96.1%

ドリンクと飲食物、あるいはチーズバーガーとビックマックの利益率は全く違うが、全体の傾向はわかる。売り上げから原価を差し引いた数字を粗利(あらり)という。売り上げを100として上記の原価を差し引くと粗利率は2013年から10.7%、6.8%、3.9%と年々悪化していることがわかる。売上の減少により効率が低下している事が原因だろう。

わずかな差に見えるかもしれないが、マックの売り上げは2000億円を超えているため、1%の違いが数十億の差となる。飲食業で働く人はまあそんなものだろうと感じるかもしれないが、他業種の人はあまりの利益率の低さに驚くのではないだろうか。

現在マクドナルドのセットメニューは500円から700円程度となっている。たとえば600円のセットメニューを販売した際の粗利は昨年ならば23.4円程度となる。しかもこれは直接的な原価を差し引いているだけで、本業の利益である「営業利益」は、ここから商品開発コストや本社人件費、宣伝広告費などのいわゆる販売管理費も差し引く事になる。

■マックの強みと弱点は「規模」。
まず、粗利率が10%を切っている時点で、利益率は相当に低いと言わざるを得ない。

これだけ薄い利幅で外食産業としては国内最大手まで拡大したのだから、赤字に転落するときは一気に落ち込むことも容易にわかる。規模が大きいという事は損益分岐点が高く、利益を出すために越えなければいけないハードルが上がるからだ。

巨額の赤字と店舗閉鎖を余儀なくされている原因もマックの利幅の薄さと規模の大きさが原因だ。航空ビジネス、ホテル、結婚式場など、固定費が高く、稼働率が命のビジネスは儲かる時と損をする時の落差が激しい。先日はアルバイトとして何年も働いている知人から「こんなにお客さんが少ない事は過去に無かった、レジの売上を数えたら本当にびっくりした」という話も聞いた。この状況では大赤字も仕方ないだろう。

■マクドナルドの継続した利益は奇跡の水準。
世間からマクドナルドがどのように見られているかは何とも言えないが、利益構造からわかることは一般的な飲食ビジネスと大きな違いはなく、「儲かりにくく、赤字になりやすい利幅の薄いビジネス」であることだ。

マクドナルドは一等地に大きな店舗を構え、CMを多数流し、オリンピックのスポンサーには必ず名を連ねるなど、知名度は高く派手にビジネスを展開しているように見える。しかし実態としてはごく普通の飲食業だ。上場後初の赤字転落は「あのマックが?」と衝撃を与えたかもしれないが、今まで赤字にならなかった方が奇跡だ。

それくらい飲食業はハイリスクのビジネスだ。食事をしない人はいないが競合は多数あり、飲食店以外にもコンビニエンスストア、お弁当屋などライバルは多数いるからだ。

■フランチャイズ化は正しかった。
赤字転落のきっかけとして指摘されるのが、今では「戦犯」扱いの前社長・原田泳幸氏が推し進めたフランチャイズ化だが、この指摘は正しいのだろうか。

赤字転落した2014年の数字を見ても、フランチャイズ収入は約625億円、フランチャイズ収入原価は約488億円と、粗利率は約22%で直営店の数字と比べて5倍以上と非常に高い。これは直営店の運営と全く異なり、経営指導や店舗運営支援など、ノウハウを提供することでフランチャイズ店からロイヤリティを得ているからだろう。実態としてはコンサルティング業に近いと思われる。決算書でも数字を分けて書いている理由は利益構造が全く違うからだろう。

■フランチャイズはコンサル業。
飲食業とコンサル業では効率が全く違うのは当然で、原田氏が利益率の高いフランチャイズ化に大きく舵を切ったことは決して間違いだとは思わない。ただ、これが店舗運営の質の低下につながったのであれば、それはコンサルティングの質の問題であり、フランチャイズ化自体の問題ではない。

従来からフランチャイズ店はあり、マクドナルドが経営指導をできないはずはない。しかし急激なフランチャイズ化により店舗指導をできる人材などが不足したとか、直営店時代のベテランアルバイトがオーナーに経営を引き継いだ時に辞めてしまうとか、現場レベルでの混乱はあったのかもしれない。

こういったトラブルが起きていたのであれば一言でいえばフランチャイズ化は失敗という事になるが、正確に考えればやり方の問題という事になるだろう。他業種でもフランチャイズ化がうまくいくかどうかはケースバイケースでしかない。

■24時間営業は正しい。
もう一つやり玉に挙げられるのが24時間営業だ。24時間営業のせいでこれまで閉店後に行っていた徹底的な清掃が出来なくなった、それがクリンネスの低下を招いて顧客離れにつながった、という指摘もある(マック、失われた清潔感 なぜピカピカだった店舗がボロボロに? ビジネスジャーナル 2015/04/11)。

これについては一理あるかもしれないが、24時間営業のメリットは何か?という点も考えるべきだ。

マクドナルドは駅の目の前など一等地に店舗を構えていることも多い。当然家賃も高い。そういったお店を例えば7時から23時までしか営業しなければ、一日のうち1/3もお店を閉めていることになり、稼働率の観点からいえば効率が悪い。人件費や各種コストを賄える以上の売り上げが期待できるのなら、お店を開いたほうが当然利益は増える。

徹底した清掃ができずに客離れが起きているのであれば、それは24時間営業をしながら従来のクリンネスを保つ清掃方法をまだ確立できていない、あるいはメンテナンスのしやすい構造に店舗が作り変えられていない、というだけで24時間営業が問題という事ではない。もちろん従来より清掃はしにくくなっているだろうが、できない理由を探す事は簡単で、難しい事をどうすれば実現出来るか?という事を考えなければ利益が出るはずもない。

※一部店舗で深夜帯はメンテナンスや資材搬入のためテイクアウトのみ、あるいはドリンク販売のみ、という形で対応していたり、毎月特定の日時に一時閉店をしてメンテナンスの時間にあてている店舗もある。

過去に否定的な意味で話題になった60秒以内の商品提供やメニュー表の廃止、パソコンを開いただけでお店を追い出された、といった話もすべて稼働率を上げるためのアイディアや対応であり、これらが完全に間違いだとは言えない。

24時間営業やフランチャイズ化も含めて、なぜそこまで効率化しないといけないのか……? この問いへの答えは原価の構造を見ればわかるように「利幅が薄いから」という一点に集約される。当たり前だが経営者は数字を見て判断をしているという事だ(ただしこれらマックの施策が最善の方法か、そして上手くいっていたかどうかは当然別の問題だ)。

■「持ち帰り」がマックを救う?
自分が改善策を考えるのであれば、持ち帰り客を増やす事だろうか。店舗に長居されることは効率ダウンにつながる。原価の「その他」のコストは店舗の賃料が大きな割合を占めるだろう。海外のカフェではテーブル席とスタンドでは料金が違う事もあるが、これもコストの問題だ。

持ち帰りにしか使えない割引クーポンを発行し、POSレジで店内と持ち帰り客を分けて管理し、持ち帰り客の増加に努めるなど、いくらでも対応方法はあるだろう。あるいは品数を思い切り絞り込んで持ち帰りに特化した「ミニマック」のような新業態もありかもしれない。

イメージとしてはあちこちにある弁当屋のようなコンパクトなお店だ。うまくいけばローコストに、なおかつこれまでお店を作れなかった場所にも出店可能で効率の良いお店になるかもしれない。

■マックの問題点は単純ではない。
マクドナルドは健康志向の時代に合わなくなってきたという指摘もある一方、周りの人から話を聞いてみるとマックに健康なんて望まないとか、健康面が気になる人はそもそもマックにいかない、マックは体に悪くてもあのポテトが良いんだ、という話も聞く。店舗が汚いとは特に思わないが、他のファストフードやファミリーレストランと比べて接客がやけに悪い、昔はマック=接客がハイレベルというイメージだったのに、という話も聞いた。

いずれも個人の感想・意見でしかないが、人によって全く見方は異なる。自分が書いた「破れたソファーと落書きを放置するマクドナルドはしばらく復活出来ないと思う件について。」という記事では、店舗設備がボロボロでこれではとてもリピートは望めないのでは、と指摘した。さきほど書いたように問題とされる24時間営業やフランチャイズ化もメリット・デメリットの両面がある。

結局マクドナルドのような大企業は、問題点はココでこれさえ解決すれば売り上げは回復する、などといえるほど単純な処方箋は無い。もし問題点をスパっと指摘できる人であれば、カサノバ社長より高い報酬で経営コンサルタントとして契約できるだろう。

企業分析については以下の記事も参考にされたい。
■マクドナルドの「時給1500円」で日本は滅ぶ。
http://blog.livedoor.jp/sharescafe/archives/43641340.html
■グーグルはなぜ新入社員に1800万円の給料を払うのか?
http://blog.livedoor.jp/sharescafe/archives/43503648.html
■破れたソファーと落書きを放置するマクドナルドはしばらく復活出来ないと思う件について。
http://blog.livedoor.jp/sharescafe/archives/42649631.html
■ライザップと行列ができる本屋の共通点 〜平凡な商品がバカ売れする理由〜
http://blog.livedoor.jp/sharescafe/archives/43405362.html
■「残業代ゼロ法案」は正しい。
http://blog.livedoor.jp/sharescafe/archives/43530974.html

先日の会見でカサノバ社長はビジネスリカバリープランと題した再建策を提示している。今後もマクドナルドの動向に注目したい。

中嶋よしふみ
シェアーズカフェ・店長 ファイナンシャルプランナー
シェアーズカフェ・オンライン 編集長


 

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コメント
 
01. 2015年4月21日 13:28:15 : nJF6kGWndY

中嶋よしふみ か

赤カブにしては珍しいなw


http://blog.livedoor.jp/sharescafe/archives/41886861.html
「安定した雇用」という幻想。〜雇用のリスクは誰が負うべきか?〜
2014年12月19日 07:25
中嶋よしふみ シェアーズカフェ・オンライン編集長 シェアーズカフェ株式会社・代表取締役社長 ファイナンシャルプランナー

カテゴリー  経済 働き方
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先日行われた総選挙において、自民党は雇用が100万人も増加したとアベノミクスの成果を強調した。一方野党は、増えたのは非正規雇用ばかりだとその効果を否定した。

非正規雇用は安定した雇用ではない、だから良くない、という事は当然のように言われる。では、そもそも安定した雇用はあるのだろうか。

前回書いた「給料はどこから出ているのか?」という記事では、正社員でもアルバイトでも、給料は企業の売上・利益から出ている、そして企業の売上・利益の源泉は「リスク」であると指摘した。

「安定した給料」を「不安定な売上・利益」から生み出さなければいけない。

雇用にはそもそもこのような矛盾、リスクが根源的にあることも指摘した。つまり「安定した雇用」は幻想ということだ。たまたま長期にわたって国や企業が安定的に成長を続けた場合に、ごく一部で偶然生まれる産物が終身雇用であり、日本はその偶然が多少広い範囲で運良く長続きしただけだ。

企業収益が不安定である以上、雇用も不安定である。

これをふまえた上で、避けようの無い雇用のリスクにどのように対処すれば良いか考える必要がある。企業は雇用に責任を持つべきだ!と言った所で、そもそもその企業が不安定な存在だ。従来はここで思考停止されていた。

繰り返すが、雇用の責任を誰が持つべきは別にして「雇用は不安定なものである」という不都合な真実から目を背ける限り、この議論はスタート地点にすら立てない。

■雇用リスクの受け手は三つ。
雇用にはリスクがある。かと言って全てのリスクを従業員が負担べきでない事は明らかだ。では雇用のリスクをどのようにコントロールすべきか?どこが負担すべきか? 

これは三つの主体がある。かなり大雑把だが以下のように分類してみた。

●アメリカ型 →従業員 自己責任型。
●北欧型   →国   国民全体の税負担。
●日本型   →企業  解雇規制が強く、雇用自体がセーフティネット。

それぞれ簡単に説明してみたい。

業績が悪化すれば解雇されてしまうアメリカ型は自己責任型と言えるが、雇用の流動性は高く、再就職しやすいことがセーフティネットになる。これは女性の社会進出は少子化の原因なのか? 〜少子化を止める二つの方法〜でも紹介したが、アメリカ・カナダでは再就職が容易なため、産休・育休が無くともさほど問題ではないという研究結果がある。出産に限らず退職した従業員全般に言えることだろう。

北欧型も業績が悪化すれば解雇される。ここはアメリカ型と違いはないが、国が提供する手厚い失業保険・職業訓練がセーフティネットだ。ただし、そのコストは国民全体で負担するため税負担が大きい。

日本型は他のタイプと較べて解雇されにくい事がセーフティネットだ。これは一見するとメリットに見えるが、解雇された後の再就職が難しいというデメリットがある。

かなりステレオタイプな分類・ネーミングになったが、日本型が他の2つと違うのは企業が雇用リスクを負っている点だ。

■社員の雇用は億単位の設備投資。
経済学者の池田信夫氏はツイッターで「正社員は1人4億円の、やり直しのきかない投資。そのリスクを減らさないと、雇用は増えない。」と指摘する。

企業経営にはリスクがあり、雇用でもリスクを抱えることを求めるとどうなるか。答えは単純で、企業は雇用を控える。売上が減った時に解雇出来ないのなら最初から雇用しないのが正しい判断だ。

人が足りない時は、まず残業をさせる。それでも人手が足りなければ長時間の残業をさせる。それでも足りなければ非正規雇用や業務委託、請負などで可能な限り正規雇用を避ける。

つまり企業経営のリスクを社員の労働時間で調整しているということだ。これが違法なレベルになれば残業代を払わないという形になり、企業が吸収したリスクが最後には従業員に還流してしまう。ブラック企業が誕生する瞬間だ。

嫌なら辞めれば良いのだが、辞めた所で再就職は難しい。辞めても地獄、残っても地獄、ということでうつ病は国民病となり、最悪のケースでは自殺に至る。

「調整弁」たる正社員は会社の意のままに働かなければ存在価値は無く、サービス残業、長時間労働、パワハラとありとあらゆる手を使う。

パワハラもサービス残業も立派な違法行為で罰則もあるが、経営者にとっては労働基準監督署から文句を言われる程度なら、会社が潰れるよりマシだ。つまり経営者は「ブラック経営」をするインセンティブがある、ということになる(だからサビ残を減らす直接的な方法は経営者を逮捕すれば良い。見せしめとして大手上場企業の社長がサビ残で逮捕・連行される映像が報道ステーションあたりで放送されれば経営者は自らタイムカードを血眼で確認し、アッという間にサビ残は消えてなくなるだろう)。

■ブラック企業は辞められない雇用習慣から生まれる。
もう随分前になるが、朝まで生テレビでブラック企業問題が取り上げられた際、議論の流れが一方は辞めてしまえば良い、もう一方は企業が悪い、と真っ二つに分かれていた。そんな酷い待遇でなぜ辞めないのかさっぱりわからない、と「辞めてしまえ派」は繰り返すが、それに対してはっきりとした回答は示されず、洗脳されているから辞められないなど不可思議な理由が挙げられていた。

答えは辞めても次の就職先が無いことがブラック企業に残る理由になってしまっている、ということになる。結果的に、残るも辞めるも地獄という状況で悲劇は生まれる。

大儲けしてる企業にだってブラック企業はあるじゃないか、潰れないためなんて大ウソだ!というのは利益の構造を知らない人だ。金額で言えば大儲けをしているように見えても、日本企業の利益率は総じて低い。5%もあればマシな方で、2.3%の企業もザラにある。

例えば飲食業ならば、FL比率は売上の60%以内に抑えろ、と言われる。Fはフード・原材料、Lはレイバー・労働コストだ。ざっくりとFとLが半々とすれば売上に占める人件費は30%となる。人件費が1割上昇すれば33%で、多くの企業で損益分岐点をウロウロするレベルになる。こういう数字を知れば企業が人件費を限界まで切り詰めようとする理由も分かるだろう。

ブラック企業と名指しされる会社で、売り上げに占める人件費率が高く、利益率が低い飲食業が多いように見えるのも偶然ではないということだ。

■企業はどこまで責任を負うべきか。
このような書き方をすると、企業に雇用責任は無くて良いのか?と指摘されるかもしれない。問題はまさにそこだ。企業に雇用の責任をどこまで負わせるべきなのか、という点について全く議論がなされていない。

上で挙げた三つのタイプは、どれが正解という事は無い。うまくいくのならどれでも良いが、重要な事は「雇用にはリスクがあり、誰かがそれを負担しなければいけない」ということだ。

アメリカ型ならば企業は楽だが、従業員は職を転々とする可能性がある。
北欧型は解雇されても安心だが、重い税負担がある。
日本型は企業が負担する。

結局は誰かが負担をしているので、個々のケースで見れば自分は北欧型の方が得なのにとか、ウチの会社はアメリカ型だったら楽だったのにとか、そういったケースはいくらでもあるだろうが、全体では「負担の総量」は同じと考えて良いだろう。

しかし、一つ問題がある。日本型はアメリカ型・北欧型と比べて雇用とセーフティネットが切り分けられていない。本来は雇用が失われた際にあるべきセーフティネットが企業に内在されているため、解雇されることが人生の転落につながりかねない。一時問題になった派遣村はまさにそれを象徴していた。多くの人に「ため」が無いため、派遣切りされた途端にホームレスに転落してしまうという指摘があった。

これは100%同意しかねる部分もあるが「雇用自体がセーフティネット」という、歪んだ、そして倒錯した状況を指摘したものであれば正しいということになる。そして最もセーフティネットが必要な非正規雇用者は失業保険を受け取る事すら出来ない。

■企業のインセンティブをコントロールすべき。
何の話をしているのかというと、これは企業のインセンティブ(動機付け)の問題と大きく関わる。

雇用のリスクを企業に負わせると、すでに説明したように従業員にリスクは還流されてブラック企業発生の原因になり、池田氏も指摘するように雇用に強いブレーキが掛かる。例えば給料の一年分を払えば解雇できる、というルールになったらどうなるか。4億円の投資が一気に数十分の一に減る。これは城繁幸氏も指摘する方式だ。

例えば年収500万円で若い社員を雇うことは、解雇規制を考えれば億単位の投資となる。しかし一年分の年収でいつでも解雇出来るのなら雇用のリスクは億単位から一気に500万円まで下がる。結果的に社員を雇いやすくなる。つまりインセンティブが大きく変わり、クビに出来るから雇える、という事だ。

コレがわからない人は、クビに出来るから全員クビになると勘違いをする。リスクを受け入れる事で利益が増える……これは資産運用でもビジネスでも基本的な原則だ。預金と株の違いと同じで、安定と大儲けは両立出来ない。

もちろん、誰もがリスクを取りたいとは限らないが、歩合制で働く人を除けば殆どの人が「預金」しか選択肢が無い状況だ。

■解雇特区が日本を救う?
解雇規制を緩和した地域を作って企業を誘致しようというアイディアが当初アベノミクスにはあった。しかし、このアイディアは遅刻をすれば解雇するなど従業員に不利な雇用契約が結ばれかねない、と批判されて頓挫した。この批判もあまりにトンチンカンとしか言いようが無い。社員1人を雇う事がいかに手間がかかり、いかにコストがかかるか全く理解していない。企業が解雇のオプションを確保しておきたい理由は、企業経営のリスクを下げたいからだ。

雇用のリスクは誰が背負うべきか。これに現実的な答えをだすのなら、企業に集中していたリスクを国と従業員にも分散すればいい、ということになる。企業に集中していた雇用のリスク・責任を先ほどの例のように年収一年分など金銭解雇を認めることで限定する。

この限定というのが企業経営では重要だ。様々な条件をクリアすれば現在でも解雇は可能だ。しかしそれをクリアする頃には会社は潰れているかも知れないし、クリアしたつもりでも後から裁判でひっくり返されるかもしれない。つまり「雇用リスクは500万円」というように定量的に計算できない。計算できないからリスクとなり、雇用が絞られる。

そしてリスク負担の一部は失業保険と職業訓練の充実で国に、一部は解雇を可能にする事で従業員に、といった具合だ。年収一年分の負担はあくまで一例だが、企業のリスク負担としては金銭解雇の支払い分と雇用保険の負担を増やせば良い。

今の雇用保険は給料のわずか1.5%だ(業種により異なる)。この料率は健康保険や年金の1/10以下であり、はっきり言って異常だ。病気になるリスクや長生きをして生活費が足りなくなるリスクと較べて、失業するリスクは1/10という事か。これは終身雇用の幻想を引きずったままだ。

シンプルに方針を示すのであれば、企業は徹底した競争を、国は手厚いセーフティネットを、という形で切り分ける形にすれば歪んだインセンティブを解消できる。

解雇規制の緩和については散々議論されてきたが、「企業は雇用を守れ!」とハチマキを巻いて拳を振り上げるレベルから一歩も進んでいない。解雇規制の問題は企業が社員をクビできるようにすべきかどうか?という小さな議論ではなく、雇用のリスクを誰がどのように背負うべきか、という社会保障制度も含めた非常に重要な経済政策だ。何度も繰り返すが立場や意見の違いは一切関係なく、雇用にはリスクがあり、そのリスクは誰かが負担しないといけない。

働き方については以下の記事も参考にされたい。
■給料はどこから出ているのか? 〜「ブラック企業ブーム」に関するオレなりに何ヶ月か考えた結論のようなもの〜
■元フジテレビアナウンサーが主張する「専業主婦が増えれば少子化は解決する」という意見がいまさら過ぎて頭痛が痛い。
■女性の社会進出は少子化の原因なのか? 〜少子化を止める二つの方法〜
■大学で簿記3級を教える事は正しい。
■日経新聞で退職した社員を罵倒するサイバーエージェントの藤田社長が正しすぎる件について。

今のまま人手不足が解消されたら、またブラック企業ネタの記事が経済メディアで並ぶことになるだろう。もう同じ過ちは御免被りたい。

中嶋よしふみ
シェアーズカフェ・店長 ファイナンシャルプランナー
シェアーズカフェ・オンライン 編集長 


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