1990年頃だったか、山形新幹線をつくることになった。奥羽本線、福島〜山形間の、板谷峠の区間をミニ新幹線にすると言うものである。車体の大きさは在来線のままで、線路幅だけ1,067mmから1,435mmに拡幅した。簡単に言えば改軌なのだが、これにより在来線車輌は走れなくなる。

今から考えると、この山形新幹線は、整備新幹線計画復活のための手段として、つくられたものだと思う。その後、1998年の長野オリンピックに合わせて長野新幹線を建設することとなり、当初は山形新幹線と同じくミニ新幹線になる予定であったが、自民党がフル規格を主張して、結局自民党の意見が通ってしまった。

在来線の切捨ては、この頃から本格化したのである。長野新幹線の開通に伴い、信越本線の碓氷峠部分は廃線となり、分断されてしまった。軽井沢から長野方面は、しなの鉄道に転換されたが、第三セクター鉄道は収益源の特急列車を失い、赤字構造に陥った。経費節約のために列車はどんどん短くなり、朝のラッシュ時には全く座れなくなった。

これはJRの地方交通線で全国的に見られ、列車編成の短縮化と運転本数の削減、ワンマン運転と駅の無人化が同時に進められたのである。かつて国労で、これらの動きに反対していた組合員は、新会社にいけなくなる恐怖から次々と離脱し、JRは御用組合ばかりになってしまった。反対勢力が弱体化したJRでは、経営陣は経費節約のやりたい放題になってしまい、在来線はますます不便になってきているのである。

一方で整備新幹線やリニアモーターカーは、一度は死んだはずだったのだが、これが自民党反動勢力の力によって甦ったのである。大正時代の政治家に原敬と言うのがいるが、教科書には「よい人」と書かれているが、本当は金権腐敗汚職政治屋だったとか。当時、「我田引鉄」が盛んに行なわれた。

資料　鉄道と政治
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%89%84%E9%81%93%E3%81%A8%E6%94%BF%E6%B2%BB

●整備新幹線、リニアモーターカーは、この「鉄道と政治」の典型例である。自民党が、地元の票が欲しいために、政治力を使って無理やり需要の乏しい区間に整備新幹線を建設する。このために東北本線の盛岡以北ですら、第三セクター化されてしまった。このため運賃は高くなり、座れない短い電車で高校生通学者たちは苦労しているのである。地方では、鉄道の乗客と言えば高校生が大半だ。自動車を運転させてもらえないからである。高校を卒業すると運転免許が取得できるから、本数が少なくて座れない鉄道など乗らなくなる。

さてリニアモーターカーだが、これは「我田引鉄」とは別の意味合いを持つようになっている。すなわち、日本の技術は世界一なんだと自慢するためのショールームであり、それがアベコベ国家主義政権の下で、「日本は世界一の国だ」と、国民の愛国心を煽るための手段になりつつあると言う事実だ。これらは自民党の推進する軍国主義とセットで協力に推進されている。

JR東海の葛西は、国家主義者である。当方をはじめ、国鉄部内では敵が多かった。ところが国鉄の解体に成功し、JR東海と言う一社の主に収まると共に、敵がなくなり、奴の暴走が始まった。もうつくらないと宣言していたリニアモーターカーが復活したのも、自民党にうまく取り入ったからである。自民党と組むなど、昔だったら労働組合の糾弾を受けて、そのまま失脚したところである。

リニアモーターカーは日本の技術のシンボルと化しているところがある。その意味では、かつての戦艦大和、戦艦武蔵と同じだと言えよう。これらの戦艦は、連合国の戦艦より大きく、これを沈められる連合国の戦艦はないと信じられていた。不沈艦だと考えられていたのである。

日本の技術の象徴だから、リニアモーターカーは必ず建設しなければならないと、日本政府やJR東海は考えているのだろう。これを国威発揚に結びつけ、更なる愛国心を盛り上げて、戦争ができる国にしようとしているアベコベ首相。リニアモータカーのバックボーンに、軍国主義の姿が見え隠れするのを感じるのは、当方だけではあるまい。

しかし、実際の日本の今日の姿は、阿修羅掲示板の原発板にも書かれているように、福島第一原発の状況は日に日に悪化している。その事実から国民の目を逸らすため、ますます軍国主義とリニアモーターカーに注力するアベコベ。いずれ、年貢の納め時が来る。あの不沈艦と思われた大和、武蔵だって、最後は海底に沈んだ。リニアモーターカーも、同じ運命を辿るだろう。