★阿修羅♪ > 経世済民95 > 565.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
一時凌ぎのアベノミクスでは“日本病”の悪化は止められない(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/15/hasan95/msg/565.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 4 月 22 日 00:06:05: igsppGRN/E9PQ
 

一時凌ぎのアベノミクスでは“日本病”の悪化は止められない
http://diamond.jp/articles/-/70507
2015年4月22日 宿輪純一 [経済学博士・エコノミスト] ダイヤモンド・オンライン


■アベノミクスでは日本病を治せない

“日本病”とは、海外のメディアが使った言葉ですが、90年代の初めにバブル経済が崩壊した後、長期にわたって経済が低迷していても、景気回復や財政再建ができない日本の状況を揶揄する言葉です。2000年ぐらいまでは「失われた10年」、2010年ぐらいまでは「失われた20年」といわれていました。

 この間の特徴は、短期的な政策である「財政政策」と「金融政策」で景気刺激策を行うことに終始してきたことです。財政政策とは、インフラなどを建設することに資金を使い、景気対策とすることです。インフラへの投資によって景気が良くなるとも考えられましたがその効果は薄かったようです。現在、日本の財政状態は逼迫しており、財政赤字は膨らんでいます。2014年末での財政赤字(政府総債務残高)約1200兆円の内、約4割はこの10年で増えたものです。

 金融政策とは世の中に資金を供給し、金利を下げて景気を刺激する。金利を下げ続け、ついにはゼロ金利となり、さらに量を増やせということで、量的金融緩和が導入されました。しかし、この財政政策と金融政策のフル稼働も、日本病を治すまでには至らなかったのです(米国では量的金融緩和からの脱却を「正常化」としてこの異常事態から早期の脱却を目指しています)。

 金融緩和をしても実体経済が資金を必要しないために、その資金は金融資産市場に流れ込み、現在、ミニバブルの様相を呈しています。金融資産を持つ者と持たない者との間で“格差”も広がりました。

 米国以外の先進国には似たような傾向があるのですが、経済が成熟化するにしたがって経済成長は鈍化し、“年配”の経済になっていくのです。

 通常、経済成長はGDP(国内総生産)の拡大でみます。それは国内でどれだけモノが生産されたか、経済を企業に例えれば、売上が伸びている状態が経済成長している(景気が良い)状態です。逆に景気が悪くなるというのは、企業でいえば売上が落ちていき、手をこまねいていると収益率も落ち、借金が増えていく。社員の給料も下がっていくことになります。行きつく先は“倒産”です。国でいうと“財政破綻”ということになります。こういう流れを、一言でいうと、“衰退”ということになります。

■アベノミクスの財政政策や金融政策はモルヒネ

 アベノミクスで財政政策も金融政策が行われていますが、実質的には短期的な経済政策です。しかも、異常事態への対応ということで、財政政策、金融政策共に大量に行っています。あくまでも緊急対応でした。企業でいえば売上は瞬間的に伸び、株などの資産価格は上昇し、一時的には「景気回復」も味わえるため、一時凌ぎにはなります。安倍首相が企業に賃金の引き上げを要求していることも、やり方には疑問がありますが、短期的な景気回復の一因でしょうか。しかしこれはすべて“質”ではなく、“量”の議論なのです。

 しかし、この「一時凌ぎ」は、逆に曲者です。痛み止めのようなもので、悪化した経済への痛みは薄らぎます。しかし、抜本的な治療、すなわち経済を強化するような政策は打てていません。つまり、悪い患部や病気はさらに悪化してしまうのです。

 この日本の痛み止めのことを、海外のメディアは“モルヒネ”と揶揄していました。使うと気持ち良くなります。しかし、切れると欲しくなるという中毒性があります。しかも、もっともっと欲しくなるわけです。

 筆者は、財政政策や金融政策のような、痛み止めとしての短期的な政策は、本来はすべきではないと考えます。例えばドイツは、原則として景気対策に財政政策を使いません。そのため、財政赤字が少ないのです。また、現在はECB(欧州中央銀行)にその主体が移りましたが、ドイツの中央銀行ブンデスバンクは基本的には物価のコントロールに金融政策を使い、金融政策を景気対策には使いませんでした。さらに言えば、景気対策の主体は企業であることが徹底されており、したがって、規制緩和が景気政策の主力なのです。

 経済は生き物であり、常に変化しています。つまり諸行無常です。本来はその動きに合うように、経済・産業・企業を変革(Transform)させていく経済改革を続けていくことこそが、本当の経済政策と考えます。日本ではそれができていないのです。

■構造改革を先送りにする日本の選挙制度

“常に変革”していくことができていれば、不況にはなりにくいでしょう。しかし、その変革は実は大変なことです。一方、変革をしないで放置しておくと、将来的に、もっと大規模に「構造改革」を実行しなければならなくなります。

 こうした構造改革は、中長期的に見れば、間違いなく方向は正しいのですが、産業・企業・個人にとっては大きい負担(痛み)を伴います。しかも、構造改革は政策として政治家が行わなければならない。すると、一時的にせよ、変革期は経済成長率も落ち、辛い思いをする人も増えます。このことが、その実行した政治家の選挙における人気を落とすことになります。

 もっといえば、構造改革はどうしても3年〜4年は成果が出るまで時間がかかります。その間に選挙があると、たとえ経済成長率が上がったとしても、その政治家は落選する可能性が高くなります。さらに、政治家は落選すると無職になってしまうため、構造改革のような中長期的な政策は望まれなくなる可能性があります。これは、“制度”の問題でしかたがないことなのです。筆者は、年金・医療・農業が抱える課題も、“制度”の問題なのではないかと考えます。

 以前この連載でも書きましたが、ドイツでは、メルケルの前の首相だったシュレーダーが、当時「欧州の囚人」とまでいわれたドイツの構造改革「シュレーダー改革」を2003年に断行しました。その結果、シュレーダーは次の選挙で落選しました。彼の最後の演説は「この改革を行うと私は首相でいられないかもしれない。しかし、ドイツにとって大事な政策なので実行する」。予想通り、2005年の選挙ではメルケルが勝利しました。しかし、その直後からドイツ経済の成長が始まりました。その改革を基礎として現在のドイツの経済的繁栄があります。

 筆者には個人的に政治家の方々の友人が多数いますが、優秀で立派な方が多い。一方、選挙の短期化も進んでおり、どうしても、“制度”として辛い政策は取りにくくなっています。この制度を変えることが大事になります。

 選挙をする国民の側にも問題があります。選挙の面倒くささや、政治に対する無力感もあるのでしょうが、投票に行かない人が増えています。しかも、年配の方の投票率が高いということで、年配向けの政策が選挙では有効になります。統一地方選前半が12日に行われましたが、道府県議選では大半が最低を更新し、平均は推計で45%前後となっています。

 また国民も「先を考えてつらい」政策を選択しなくなり、「楽で甘い」政策を選択する傾向があるようです。例えば、ギリシャに対しては「年金を下げて、税金を上げればいい」など厳しいコメントをする方も、日本(自分)の問題としては、「先のことはいいから、とにかく当面、年金は下げないでくれ、税金は上げないでくれ」となることがあります。

 日本の財政問題についても、粗い数字ですが、だいたい95兆円を支出(歳出)していて、税金が昨年は多めで55兆円でした。つまり40兆円が赤字ということになります。つまり、約4割が赤字なのです。この数字を異常と思わないほうが、異常であると筆者は思います。企業としてはあり得ません。月給55万円の人が、毎月95万円使っていたら、しかもそれを何年も続けていたら、いずれ破綻することは明らかです。財政赤字をもっと拡大して、永遠に国債を日銀に買ってもらえばいいなどと、おっしゃる方もいます。

 経済・金融教育の必要性が叫ばれて久しいですが、それは投資教育だけではなく、経済の基本的な考え方が大事であると考えます。借金は必ず返すとか、身の丈を超えた借金をしないとか、目の前のことだけではなくて、将来を考えてつらいことを嫌がらないとか。それは突き詰めれば「生き方」になってくると思います。

 たとえば、「日本国債は現在、金利が低く、値崩れしないから大丈夫」という考え方は、「病気だけど、発病しないから大丈夫」というのと同じで、これは生き方としていかがなものかと筆者は思います。こうした基本的な経済・金融教育が選挙民の方に身について来れば、経済政策も自然と変わってくると考えます。

 個人的には、経済政策は「教育」と考えています。経済政策は、国民を単純に一時的にサポートするものではなく、「国民や企業がどんな環境でも生きて行ける能力を身に付けること」と考えています。

 したがって、経済が悪化したときには、経済政策は「治療(医療)」となります。その時は、外科手術をしたり、苦い薬を飲んだり、しなければならなくなります。つまり、構造改革が必要となっている。手術を嫌がって、病気が進むことがないように祈りたい。アベノミクスでも「成長戦略」の項目はありますが、とにかく、逆に、日本が、今のギリシャのような政治体制にならないことを祈ります。

※本連載は自身の研究に基づく個人的なものであり、所属する組織とは全く関係はありません。

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法

▲上へ      ★阿修羅♪ > 経世済民95掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
経世済民95掲示板  
次へ