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コラム:円高逆戻り招く日銀緩和「出口論」=政井貴子氏
http://www.asyura2.com/15/hasan95/msg/626.html
投稿者 rei 日時 2015 年 4 月 23 日 18:01:00: tW6yLih8JvEfw
 

コラム:円高逆戻り招く日銀緩和「出口論」=政井貴子氏
2015年 04月 23日 17:33 JST 
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0NE01W20150423

 4月23日、新生銀行執行役員・市場調査室長の政井貴子氏は、現段階で日銀金融緩和の縮小や出口を議論することは、通貨の安定推移の観点からも得策ではなく、今は我慢のしどころだと指摘。提供写真(2015年 ロイター)

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政井貴子 新生銀行執行役員・市場調査室長

[東京 23日] - このところ、2%から1%程度へのインフレ目標の引き下げや、国債購入額の減額など、緩和縮小スタンスの打ち出しを日銀に対して勧める意見をよく耳にするようになった。しかし現段階で、こうした議論は通貨の安定推移の観点から得策ではないと考えている。

日本経済は、構造改革も含めてデフレ型からインフレ型思考へと、やっと変化し始めた「かもしれない」という段階だ。アベノミクスの原点が「金融緩和と円高是正」にあったことを考えれば、ここは我慢のしどころだろう。

円を取り巻く外部環境は昨年末に比べ、全体として緩和度合いを強めている。米国経済の基調の強さに市場の迷いはあまりないものの、その成長率に関しては、年初の見通しから下方修正される方向だ。利上げのタイミングとその頻度も、ずいぶんと後ずれした。したがって、すでに相当な高値圏にあるドルを一層買い進んでよいのかどうかについては、少し迷いが出始めている印象を受ける。

また、ギリシャ問題はユーロ圏にとって、もはや真の脅威ではないとはいえ、同国の資金繰りや支援をめぐる駆け引きが悪材料であることに変わりはない。加えて、ユーロ圏は欧州中央銀行(ECB)の量的緩和とマイナス中銀預金金利の影響をいまだ消化しきれていない。

こうした状況下、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、利上げに対して非常に慎重な態度が示されたり、中国が今年に入って2回目の預金準備率引き下げを発表するなど、むしろ世界的に緩和スタンスは強まっている方向にある。にもかかわらず、仮に日本が緩和スタンスの後退を市場に明示するようなことがあれば、通貨高を受け入れるとのメッセージにもなりかねない。

<円の需給環境も様変わり>

円自体の需給環境にも変化が生じている。2011年から減少の一途をたどっていた日本の経常収支は、2014年中盤から持ち直し、すう勢的に黒字幅が拡大してきている。財務省が8日に発表した2月の国際収支速報によれば、経常収支は前年同月比2.4倍となる1兆4000億円規模の黒字だった。

内容を見ると、第1次所得収支(旧所得収支)が、2月としては過去最大の1兆8000億円超。世界的な金利低下傾向で通常では減少が予想されるところだが、円安の寄与もあって債券利子の受け取り拡大などで証券投資収益が増加したことに加えて、直接投資収益も増加したためだ。

さらに、貿易収支が大幅に改善したことも大きい。原油価格の下落は、昨年末から急速に日本の貿易収支に影響を与えており、財務省の貿易統計によれば、今年3月の原油の輸入価格は前年同月比で4割以上下落した。仮に1バレル50ドル程度の状況が続けば、年間輸入金額は8兆円超減少する見通しだ。

また、このところ輸出の伸びにも底堅さが見え始めており、この3年間の円安効果がようやく表れてきた状況だ。実際、3月の貿易収支は自動車や半導体輸出の伸びと、原油などの輸入減少で差し引き2000億円超の黒字となった。大幅な貿易赤字が計上され、経常赤字の常態化が危惧された2014年初頭とは様変わりだ。

加えて、環太平洋連携協定(TPP)交渉が妥結すれば、長期的にも対内投資や日本からの輸出増加の可能性が大きく広がる。交渉妥結に向けた動きが後退していた昨年とはこの点も異なる(当然、これは悪い変化ではないが)。

<円安継続心理の支えは何か>

念のために言っておけば、筆者は、これ以上の円安加速が望ましいと主張しているわけではない。足元の実勢レートは、今月13日に浜田宏一内閣官房参与がテレビ番組で指摘したように、購買力平価から見て妥当な水準(105円程度)に比べ、確かに円安方向へとかい離している。

ただし、ここで問題にしているのは、仮に今のタイミングで日本が緩和スタンスを後退させるようなことがあれば、円高方向への調整を招き、デフレ心理を再燃させ、せっかく弾みのつき始めた企業業績や輸出動向の気勢をそいでしまう可能性である。

実勢レートと購買力平価のかい離拡大の原動力(日米金融政策の方向性の違い、円安を担保する貿易収支の赤字、経常収支黒字の大幅な減少)は、1年前に比べれば幾分衰えている。

日米金融政策の方向性は確かに違うが、前述した通り、市場では米利上げのテンポは当初想定よりも緩慢になるとの見通しが広がっている。国際通貨基金(IMF)は、強気に見ていた米成長率を下方修正し、欧州と日本の成長率を引き上げた。このように成長率の伸びの違いも年初よりも縮んでおり、材料整理としては元来、一層の円安を見込むには少し無理がある状況となりつつある。

確かに、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)など年金基金の資産運用積極化の流れや、それに続く生命保険会社や郵貯の海外資産投資積極化の予想が市場の円安期待の下支えとなっているが、そうした機関投資家の行動変化も、政府・日銀による断固たるデフレ脱却姿勢、金融緩和継続予想が根底にあればこそではないだろうか。

言い換えれば、こうした運用姿勢の変化は、現下のインフレ志向型の金融政策にポートフォリオをマッチさせる結果なのであって、政策が再びデフレ的になれば、その運用スタイルもデフレ志向に回帰する可能性がある。どのような環境下でも無条件にこの円投フローが存在すると考えるのは、少しナイーブではないかと思っている。

通貨のすう勢は、常に相対評価だ。自国のスタンスに変化がなくても、海外情勢によっては、傾向が変化することは十分あり得る。政府・日銀がデフレ脱却のための政策連携を担保し、日銀が物価安定目標を欧米並みの2%にアンカーしたことは、変化し得る海外情勢と並走するとの決意表明になった。それがあって初めて、過去20年以上にわたって円市場に吹いていた理論値の円高トレンドを少なくともトレンドレス(横ばい)化させる可能性を暗示できたのだ。

加えて、昨年10月末のサプライズ追加緩和の実行が円安維持心理として市場に与えている影響は大きい。仮にデフレ期待が再び台頭しかねない円高傾向の強まりがあったとしても、その折には、迷わず日銀による追加緩和があるという期待が市場で維持されている。

このプットが効いているからこそ、今年1月のスイスフランショックや昨今のユーロ圏の動向、あるいは米国の利上げスピード、また国内フローの変化にあっても、円相場が安定した動きを維持できているのだろうと考えている。また、結果として、企業や家計、機関投資家の行動にも最近ようやく良い変化が見られ始めているのだと思う。

<ここは我慢のしどころ>

最後に実体経済の動向について少し触れておきたい。4月1日に発表された3月調査の日銀短観を見ると、雇用人員判断は、大企業から中小企業にいたるまで全規模・全産業で人手不足感が強まっているほか、生産・営業用設備判断(製造業)は、リーマンショック時の大幅で急激な過剰感から、足掛け7年近くかけてようやくほとんど過不足のない状況にまで回復してきている。

もっとも、製造業の海外現地法人と国内法人の設備投資の推移に注目すれば、2000年代初頭からリーマンショックまでは、国内・海外双方とも設備投資の伸びが確認できていたが、2010年から4年程度で投資額が倍になった海外法人設備投資額に比べ国内法人設備投資額はほとんど伸びていない。昨年後半になってやっと伸びる兆しが見え始めた段階だ。第3次産業活動指数もいまだリーマンショック前の水準を回復できていない。それどころか、消費税率引き上げ後は大幅に低下し、足元でようやく回復が確認でき始めた状況だ。

また、資金循環統計によれば、2014年末の家計の金融資産残高は約1700兆円。このうち約180兆円が2012年9月末以降の増加分だが、主に株価や投信の価格上昇要因で説明できるのはその約半分(95兆円)であり、約3割(50兆円)は現預金の増加だ。家計のポートフォリオのリスク選好へのシフトはまだ流れになったとは言えない。今、株価が落ちてしまえば、家計の金融資産がシフトを起こす前に目減りしてしまう。

繰り返すが、アベノミクスの出発点が「金融緩和と円高是正」にあったことを考えれば、デフレ型からインフレ型経済思考へと完全脱皮できていない道半ばの段階で緩和姿勢の縮小スタンスを明示することは得策とは思えない。実験的な政策だけにいろいろな副作用の議論があるのは理解できるが、我々がもう少し経済成長に対して貪欲になるのであれば、ここは我慢のしどころではないか。

*政井貴子氏は、新生銀行執行役員・市場営業本部市場調査室長。トロントドミニオン銀行、クレディ・アグリコル銀行などを経て、2007年5月新生銀行に入行。キャピタルマーケッツ部部長、市場営業部部長などを歴任後、2013年4月に新生銀行初の女性執行役員として、市場営業本部市場調査室長に着任。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。
 

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コメント
 
01. 2015年4月23日 18:16:17 : nJF6kGWndY

>円安継続心理の支えは何か

特に消費税先延ばしと財政ファイナンス効果は大きいだろう

ただ前から言っていたとおり、円高圧力は強まっている(特にクロス円)から、米国だけ見ていると失敗するだろう



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